フラット35とは?基礎知識やメリット・デメリット、利用条件などを全解説

フラット35とは メリット・デメリット

金利高騰のリスクに備え、住宅ローン選びでフラット35を検討している方もいるのではないでしょうか。フラット35を利用すれば、返済期間中に金利変動が起こっても影響を受けずに済みます。

本記事では、フラット35の基礎知識やメリット・デメリットのほか、向いている方の特徴や民間ローンとの違いなどについて詳しく紹介します。

この記事を読むと分かること
  • フラット35の特徴や利用条件
  • フラット35のメリット・デメリット
  • フラット35を選ぶ際のポイント
「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
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Contents

1.フラット35とは?

フラット35とは、住宅金融支援機構が全国の金融機関と提携し、「最長35年」「全期間固定金利」で融資する住宅ローンのことです。

住宅の購入や新築、中古住宅のリフォームなどでフラット35を利用する際は、フラット35の取り扱いがある民間の金融機関へ申し込みを行なうことになります。

フラット35は住宅金融支援機構が母体となる住宅ローンであるため、どの金融機関から利用申込を行なっても、条件などが大きく変わることはありません。ただし、金利や融資手数料、保障などの細かな条件は金融機関で異なるため、必ず詳細を確認しましょう。

2.フラット35の特徴

はじめに、フラット35の主な特徴を紹介します。

  1. 全期間固定金利
  2. 返済期間は最長35年
  3. 融資額は100万円~8,000万円
  4. 保証人・保証料が不要
  5. 買取型と保証型のほか、目的に応じたメニューが豊富

それぞれの詳細を見ていきましょう。

2-1.全期間固定金利

フラット35の返済期間中は、全期間で金利が固定されます。そのため、返済途中で金利が上がったとしても返済額が変わることはありません。

84_全期間固定金利型

フラット35の金利は利用申込をする金融機関によっても若干異なりますが、年2%~年3%が目安です。

実際に適用される金利は住宅ローン申込時ではなく、融資実行のタイミングで決定するため、最新の金利情報を確認しておくとよいでしょう。

借入期間21年以上35年以下でフラット35を利用する場合、2024年(令和6年)2月時点の金利範囲は、以下のとおりです。

融資率 金利範囲
9割以下 年1.820~年3.470%
9割超 年1.960~年3.610%

参考:“【フラット35】金利情報”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

なお、金融機関ごとの金利は各社のホームページ、もしくはフラット35のホームページから検索可能です。

参考:“【フラット35】金利情報”. 住宅金融支援機構

2-2.返済期間は最長35年

フラット35の返済期間は、最短15年から最長35年まで、1年単位で選択可能です。ただし、申込者や連帯債務者が満60歳以上の場合は、最短10年からになります。

返済期間の上限は、35年もしくは「80歳-申込時の年齢(1年未満切上げ)」のいずれか短い年数となります。

  • 申込者が42歳の場合:「80歳-42歳=38歳」で最長35年ローンが可能
  • 申込者が52歳の場合:「80歳-52歳=28歳」で最長28年ローンが可能

また、申込時に20年以下に設定した場合、あとから21年以上に変更することはできません。

2-3.融資額は100万円~8,000万円

フラット35の融資額は100万円以上8,000万円以下(1万円単位)で、住宅の売買契約書や請負契約書などに記載された金額以内で設定可能です。

融資対象となる費用の一例には、以下のようなものがあります。

  • 土地の取得費
  • 新築住宅の工事費用(店舗・事務所などの非住宅部分は対象外)
  • 諸費用(登記費用、仲介手数料など)

参考:“【フラット35】対象となる住宅の建設費・購入価額とはどのようなものですか?”. 住宅金融支援機構

2-4.保証人・保証料が不要

フラット35は、連帯保証人が不要で、保証料がかかりません。

民間の金融機関が独自で提供する住宅ローンでは連帯保証人が必要になる場合があり、連帯保証人の代わりに保証会社を利用すると保証料が発生します。

なお、住宅ローンの保証料は借入金額の0~2%ほどが相場とされています。

2-5.買取型と保証型のほか、目的に応じたメニューが豊富

フラット35には、大きく分けて「買取型」と「保証型」があります。

どちらも利用申込をした金融機関から融資が実行され、返済していく点は同じですが、抵当権者や金利設定、取り扱う金融機関の数などに違いがあります。

2-5-1.買取型

買取型とは、金融機関が持つ住宅ローンの債権を住宅金融支援機構が買取るタイプのフラット35のことです。多くの金融機関で取り扱っているタイプで、単に「フラット35」という場合は、買取型を指すケースが多いでしょう。

買取型では、住宅ローンの債権者が住宅金融支援機構となることから、住宅を担保とする際の抵当権者も住宅金融支援機構になります。

2023年(令和5年)12月21日時点での取り扱い金融機関は、全国で320もの金融機関に上ります。

2-5-2.保証型

保証型とは、住宅金融支援機構により、金融機関の住宅ローンに保証が付けられるタイプのフラット35のことです。

住宅を担保とする際の抵当権者は金融機関となり、頭金を入れると金利が低くなるなど、金融機関ごとに条件が異なる場合があります。

2023年(令和5年)12月21日時点で、フラット35(保証型)の新規受付を行なっている金融機関は、以下の8機関です。

  • 日本住宅ローン
  • アルヒ
  • 財形住宅金融
  • クレディセゾン
  • 住信SBIネット銀行
  • 日本モーゲージサービス
  • ファミリーライフサービス
  • オリックス・クレジット

参考:“【フラット35(保証型)】”. 住宅金融支援機構

2-5-3.目的に応じて選べるメニュー

フラット35には、目的に応じて選べるさまざまなメニューがあります。

建設・購入する住宅や利用条件に応じてメニューを組み合わせることで、フラット35より低い金利での住宅ローンの借入が可能です。

フラット35に関連するメニューやオプションには、以下のようなものがあります。

  • 【フラット35】S
  • 金利引継特約付き【フラット35】
  • 家賃返済特約付き【フラット35】
  • 【フラット35】リノベ
  • 【フラット35】維持保全型
  • 【フラット35】地域連携型
  • 【フラット35】地方移住支援型

また、返済期間が異なる【フラット20】や【フラット50】も存在します(各メニューの詳細は記事後半で紹介します)。

3.フラット35の利用条件

フラット35では、申込者と住宅それぞれに利用条件が設けられており、各条件を満たしている場合のみ利用申込が可能です。

3-1.申込者の条件

フラット35を利用する場合、申込者は以下の利用条件を満たす必要があります。

  1. 国籍・年齢
  2. 資金使途
  3. 返済負担率
  4. 頭金
  5. 火災保険
  6. 団体信用生命保険

3-1-1.国籍・年齢

フラット35を申し込めるのは、日本国籍を持つ満70歳未満の方(申込時点)となります。永住許可を受けている方や、特別永住者の方も対象です。

また、親子2世代で住宅ローンの返済を引き継ぐ「親子リレー返済」を行なう場合は、満70歳以上の方もフラット35の利用申込が可能です。

3-1-2.資金使途

フラット35の借入金の使い道は、申込者本人もしくはその親族が住む住宅の建設費用や購入資金に限られます。そのため、賃貸に出す投資用住宅や事務所などの購入には利用できません。

認められていない資金使途でフラット35を利用していることが判明した場合、借入金の一括返済が求められます。

3-1-3.返済負担率

返済負担率とは、年収のうち年間返済額が占める割合のことで、以下の計算式で求められます。

返済負担率(%)=年間返済額÷年収×100

フラット35では、返済負担率が一定の基準内に収まっている必要があり、年収によって以下のように定められています。

  • 年収400万円未満:30%以下
  • 年収400万円以上:35%以下

なお、返済負担率の計算には、フラット35での借入だけでなく、その他のローンやキャッシング、商品購入時の分割払いやリボ払いなども含める必要があるので注意が必要です。

3-1-4.頭金

フラット35は頭金がなくても借入可能な住宅ローンであり、近年は頭金なしのフルローンを選ぶ方も増えてきました。

しかし、フラット35で購入金額に対して1割以上の頭金を用意できれば、金利の引下げが可能です。

頭金なしの場合は初期費用を抑えられるメリットがあるため、どちらが良いとは一概にいえませんが、頭金の有無で返済計画に変化があることを覚えておくとよいでしょう。

3-1-5.火災保険

フラット35の借入期間中は、借入金額以上の保険金額を設定した火災保険への加入が必須です。

一般的には、フラット35を申し込むタイミングで火災保険の申し込みを行ない、住宅の引渡し日から補償が開始されるように加入手続きを進めます。

火災保険の商品を個別に選びたい場合は、フラット35を申し込む金融機関へ事前に相談しておきましょう。

3-1-6.団体信用生命保険

フラット35では団体信用生命保険(団信)への加入は任意となります。

団信とは、返済途中で契約者に万一のことがあった場合に、住宅ローンを完済するために加入する保険のことです。保険が下りると、生命保険会社から住宅支援金融機構に、住宅ローンの残債額に相当する保険金が支払われる仕組みとなっています。

民間金融機関が提供する住宅ローンを組む場合は、団信への加入が必須となるケースがほとんどですが、フラット35では、団信への加入は任意であるため、健康上の理由などから団信に加入できない場合には、フラット35を検討しましょう。

なお、団信の詳細については、「団体信用生命保険(団信)とは?メリット・デメリット、加入できない場合の代替案を解説」で紹介していますので、ぜひご一読ください。

3-2.借入対象となる住宅の条件

フラット35の借入対象となる住宅の条件は、次の2つです。

3-2-1.住宅の技術基準

フラット35の利用には、住宅金融支援機構が定める技術基準を満たしている住宅である必要があります。

技術基準に適合した住宅であることを証明するには、適合証明検査機関が発行する適合証明書の提出が必要です。

参考:“【フラット35】技術基準”. 住宅金融支援機構

適合証明書が発行できない以下のような住宅では、フラット35の利用申込はできません。

  • 耐火構造、準耐火構造、耐久性の基準を満たしていない住宅
  • 接道義務規定に反している住宅
  • 住宅の規格・型式が適合しない住宅

3-2-2.床面積の平米数

フラット35では住宅ごとに床面積の基準が設けられており、一定の広さがないと利用申込ができません。

フラット35で借入対象となる住宅の床面積の基準は、以下のとおりです。

住宅 床面積
一戸建て、連続建て、重ね建て 70平米以上
マンションなどの共同住宅 30平米以上

参考:“【フラット35】”. 住宅金融支援機構

4.フラット35のメリット

天秤

フラット35は、民間金融機関の住宅ローンと比べると融資を受けやすい住宅ローンといえます。ここでは、フラット35のメリットとして、以下の5点について解説します。

  1. 返済期間中の金利が変動しない
  2. 繰上返済手数料がかからない
  3. 融資手数料が安い
  4. 民間の住宅ローンに比べて審査に通りやすい
  5. 借入期間中に返済方法を変更できる

4-1.返済期間中の金利が変動しない

金利は国の情勢などにより日々変動していますが、全期間固定金利のフラット35では融資実行時の金利が返済完了時まで固定され、返済期間中に金利変動の影響を受けません。

総返済額は融資実行時に決定した金額から変わらないため、返済計画を立てやすいでしょう。

4-2.繰上返済手数料がかからない

収入増などにより資金に余裕が出てきたときは、将来返済する予定の借入金を前倒しで返済する「繰上返済」が可能です。

フラット35では繰上返済手数料がかからないため、定期的に繰上返済をしても損をする心配がありません。

なお、フラット35で繰上返済する場合には、金融機関の窓口では100万円から、インターネットサービス「住・My Note」では10万円から返済できます。

参考:“【フラット35】住・My Noteでできること”. 住宅金融支援機構

住宅ローンの繰上返済については、「住宅ローンの繰上返済手数料を徹底比較!繰上返済をしないほうがいいケースについても解説」「住宅ローンの繰り上げ返済とは?メリット・デメリットや損をしないコツを解説」も併せてご覧ください。

4-3.融資手数料が安い

フラット35は、民間金融機関の住宅ローンに比べると融資手数料が安い傾向にあります。

融資手数料はフラット35を申し込む金融機関により異なりますが、定額型は融資額を問わず、3万円~5万円もしくは借入金額の1~2%が目安です。

金融機関ごとの融資手数料を比較したい場合は、フラット35の金利情報ページから金融機関検索を利用するのが便利です。

参考:“【フラット35】金融機関名で検索”. 住宅金融支援機構

4-4.民間の住宅ローンに比べて審査に通りやすい

フラット35は、民間金融機関の住宅ローンに比べて、審査に通りやすい傾向があります。審査では雇用形態は問われず、返済負担率が基準内であれば低所得の方でも融資を受けられます。

また、民間金融機関の住宅ローンでは基本的に団信への加入が必須ですが、フラット35では団信への加入が義務付けられていません。

既往歴などにより団信への加入が難しく、民間金融機関の住宅ローンを組めない方でも、フラット35なら申し込めるでしょう。

4-5.借入期間中に返済方法を変更できる

フラット35では、返済途中で家計に変化があったときなどに返済方法の変更が可能です。

返済方法の変更メニューには次の3つがあり、状況に応じて複数のメニューを併用できます。

  • Aタイプ:返済期間の延長や元金支払いを一時休止する
  • Bタイプ:一定期間における返済額を減額する
  • Cタイプ:ボーナス分の返済額を変更する、ボーナス返済を取り止める

返済方法の変更メニューの併用可否は、以下のとおりです。

Aタイプ Bタイプ Cタイプ
Aタイプ ○(※)
Bタイプ ○(※)
Cタイプ

(※)Aタイプで元金支払いの一時休止を希望する場合は、Bタイプと併用不可

参考:“【フラット35】月々の返済でお困りになったときは”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

5.フラット35のデメリット

フラット35は金利変動のリスクがなく、民間金融機関の住宅ローンより融資を受けやすい一方で、以下のようなデメリットも存在します。

  1. 変動金利より高い金利が設定される
  2. 融資率が9割を超えると金利が高くなる
  3. 団体信用生命保険に加入すると金利が高くなる
  4. 物件検査手数料がかかる

5-1.変動金利より高い金利が設定される

変動金利型の民間金融機関の住宅ローンに比べると、フラット35は金利が高めに設定されています。金利は金融機関によっても異なりますが、2024年(令和6年)1月現在、変動金利では年0.3%~年0.5%ほどが相場です。

一方、フラット35(返済期間21年以上35年以下)では、2024年(令和6年)2月現在の金利相場が年1.820%~年3.610%であるため、変動金利とは1%以上の金利差が生じていることになります。

参考:“【フラット35】金利情報”. 住宅金融支援機構

また国の政策により、現状から金利がさらに引き下げられたとしても、全期間固定金利のフラット35では返済額は減りません。

5-2.融資率が9割を超えると金利が高くなる

フラット35では、融資限度額の8,000万円以内で、住宅の建設や購入にかかる費用を借り入れできます。

しかし、借入金額が対象費用の9割を超えると、金利が高くなります。

借入期間:21年以上35年以下の場合
融資率 金利範囲
9割以下 年1.820%~年3.470%
9割超 年1.960%~年3.610%

※2024年(令和6年)2月時点

参考:“【フラット35】金利情報”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

5-3.団体信用生命保険に加入すると金利が高くなる

フラット35で団信に加入すると、金利が年0.18~年0.24%ほど高くなります。

加入する団信の種類によって、引上げられる金利は、以下のとおり異なります。

団信の種類 引き上げ率
新機構団信 デュエット(ペア連生団信) +0.18%
新3大疾病付機構団信 +0.24%

参考:“【フラット35】金利情報”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

5-4.物件検査手数料がかかる

フラット35の申し込みに必要な適合証明書を取得するには、専門機関による物件検査が必要です。

物件検査手数料の金額は、適合証明機関や住宅の種類によって異なりますが、目安として5万円~10万円程度です。

6.フラット35が向いている方の特徴

家族の後ろ姿

フラット35の特徴やメリット・デメリットを踏まえて、フラット35が向いている方の特徴を紹介します。

  1. 長期計画を立てて一定のペースで返済していきたい方
  2. 健康面の不安がある方
  3. 勤続年数が短く、収入が不安定な方

6-1.長期計画を立てて一定のペースで返済していきたい方

金利上昇の影響を受けないフラット35は一定のペースで返済を続けられるため、長期的な資金計画を立てやすい住宅ローンです。

出産や子どもの進学など、今後さまざまなライフイベントを予定している方でも、将来に向けて堅実な計画を立てられます。

また、転職や休職などで経済状況が変化しても、返済額が長期間一定に保たれるフラット35なら、家計の影響を最小限に抑えられるでしょう。

6-2.健康面の不安がある方

団信への加入が難しい方は、民間金融機関の住宅ローンを利用できないケースが考えられます。一方、健康面に不安がある方でも、フラット35なら申し込み可能です。

団信は過去に既往歴がある方でも、現在の状態によっては加入できる可能性があるのです。そのため、団信への加入に不安があり、どの住宅ローンに申し込むか迷っている場合は、一度金融機関に状況を相談したうえで、加入審査を受けてみるのがおすすめです。

6-3.勤続年数が短く、収入が不安定な方

転職したばかりで勤続年数が短いと、民間金融機関の勤続年数の条件を満たせず、審査に通らない可能性があります。また、個人事業主や自営業などで収入が不安定な場合も、民間金融機関の住宅ローンでは審査に通りにくいでしょう。

上記のような場合、勤続年数や雇用形態に関する要件がないフラット35がおすすめです。

7.フラット35が向いていない方の特徴

本章では、フラット35が向いていない方の特徴を紹介します。

  1. 最低金利で返済していきたい方
  2. 住宅が審査基準に適合しない方
  3. 繰上返済による早期完済を予定している方

7-1.最低金利で返済していきたい方

最低金利で返済していきたい場合は、フラット35ではなく、金利変動型の住宅ローンが向いています。民間金融機関の住宅ローンを比較検討して、より低金利なローン商品を選びましょう。

ただし、変動金利型の住宅ローンには金利上昇のリスクもあります。

返済額が増えたときに対応できるだけの収入や預貯金があれば問題ありませんが、収入面に不安がある場合は、フラット35の利用も視野に入れるのがおすすめです。

変動金利の詳細については「変動金利とは?固定金利との違いやメリット・デメリット、今後の金利の動向などを解説」も併せてご確認ください。

7-2.住宅が審査基準に適合しない方

民間金融機関の住宅ローンと比べると、フラット35は申込者の利用条件が厳しくないものの、住宅には細かな基準があります。

物件によってはフラット35を利用できないこともあるため、住宅がフラット35の技術基準に適合していない場合は、民間金融機関の住宅ローンを検討するとよいでしょう。

一般的に、民間金融機関の住宅ローンには住宅審査が設けられていません。

7-3.繰上返済による早期完済を予定している方

繰上返済で早期の完済を目指す場合、変動金利型の低い金利で着実に返済していったほうが最終的にお得になる可能性があります。

ただし、完済までの間に金利が上昇するリスクがあるほか、繰上返済手数料もかかるため、「繰上返済をすれば必ずお得になる」とは言いきれません。

8.フラット35と民間の住宅ローンの違い

フラット35のデメリットが気になる方は、民間金融機関の住宅ローンを検討することをおすすめします。

フラット35と民間金融機関の住宅ローンには、次のような違いがあります。

フラット35 民間金融機関の住宅ローン
取扱場所 住宅金融支援機構が提携する民間の金融機関 民間の金融機関
金利タイプ 全期間固定金利型のみ 変動金利型、固定金利期間選択型、全期間固定金利型などから選択可能
融資手数料 必要
(金融機関により異なる)
必要
(金融機関により異なる)
保証人・保証料 いずれも不要 どちらも必要、もしくはどちらか一方のみ必要
(金融機関により異なる)
繰上返済額 インターネットで10万円~
窓口で100万円~
1円~、もしくは1万円~
(金融機関により異なる)
繰上返済手数料 無料 有料
(金額は金融機関により異なる)
団体信用生命保険への加入 任意 必須の場合が多い
(金融機関により異なる)
資金使途 本人や親族が居住する住宅、セカンドハウスも対象 本人が居住する住宅のみ
住宅審査 あり なし
特典 住宅の性能に応じた金利の引下げ 金融機関独自の条件による金利の引下げ

フラット35では全期間固定金利型の住宅ローンとなるのに対し、民間金融機関の住宅ローンでは希望の金利タイプを選べるのが一般的です。

また、民間の住宅ローンは金融機関ごとに利用条件が異なり、以下のような金融機関独自の特典が設けられている場合もあります。

  • 優遇金利の適用
  • 銀行指定のホームセキュリティを申し込める
  • 銀行指定の引越しサービスを申し込める
  • 銀行ATMの手数料が無料
  • 火災保険料の割引き など

9.フラット35より低金利で借入できる「フラット35S」とは?

住宅と電卓

フラット35Sとは、住宅の性能に応じてフラット35よりも低い金利が適用されるプランのことです。

フラット35を申し込んだ際に、住宅が一定の技術基準を満たしていると、自動的にフラット35Sが適用され、フラット35より低い金利で融資を受けられます。

フラット35Sを利用するために満たす必要のある住宅基準は、次の4項目です。

  1. 省エネルギー性
  2. バリアフリー性
  3. 耐震性
  4. 耐久性・可変性

なお、フラット35Sで適用される金利は「ZEH」「Aタイプ」「Bタイプ」の3つに分かれており、金利の引下げ幅は住宅の技術基準に応じて異なりますが、基本的には、住宅性能が高いほど低い金利が適用される仕組みになっています。

84_1

フラット35Sの金利タイプごとの金利引下げ幅:
タイプ 引下げ幅(当初5年間) 引下げ幅(6~10年目)
ZEH 年-0.5% 年-0.25%
Aタイプ 年-0.25% 年-0.25%
Bタイプ 年-0.25% 引下げなし

参考:“【フラット35】S”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

ZEHについては「ZEH(ゼッチ)の基準や住宅の種類|ZEH住宅のメリット・デメリットを解説」も併せてご覧ください。

10.その他のフラット35

家の模型

フラット35には、さまざまなメニューがあります。本章では、フラット35、フラット35S以外に、どのような住宅ローン商品があるのかを紹介します。

  1. 金利引継特約付き【フラット35】
  2. 家賃返済特約付き【フラット35】
  3. 【フラット35】リノベ
  4. 【フラット35】維持保全型
  5. 【フラット35】地域連携型
  6. 【フラット35】地方移住支援型
  7. 【フラット20】
  8. 【フラット50】

10-1.金利引継特約付き【フラット35】

返済期間中の長期優良住宅を売却する場合に、住宅の購入者へ住宅ローンを引継ぎ(債務承継)できる特約が付帯したフラット35です。

金利上昇が見込まれる場合でも、購入者は低い金利で住宅ローンを組めるため、金利高騰時の売却難のリスクに備えられます。

参考:“金利引継特約付き【フラット35】のご案内”. 住宅金融支援機構

10-2.家賃返済特約付き【フラット35】

住宅ローンの返済ができなくなったときに住宅を貸し出し、その賃料を返済にあてられる特約が付帯したフラット35です。

住宅ローンの返済が困難になったときは、住宅金融支援機構と提携する住宅借上機関に貸し出すため、賃貸期間中は別の住宅へ一時的に住み替えることになります。

参考:“家賃返済特約付き【フラット35】”. 住宅金融支援機構

10-3.【フラット35】リノベ

中古住宅の購入・リフォームを行なう際やリフォーム済みの中古住宅を購入する際に、一定の要件を満たすことで金利引下げが10年間適用されるタイプのフラット35です。

適用される金利プランは「Aプラン」と「Bプラン」に分かれています。金利引下げ幅はそれぞれ以下のとおりです。

  • Aプラン:当初10年間、年-0.5%
  • Bプラン:当初10年間、年-0.25%

参考:“【フラット35】リノベ”. 住宅金融支援機構

10-4.【フラット35】維持保全型

維持保全や維持管理に配慮された物件などを取得すると、金利引下げが5年間適用されるタイプのフラット35です。

【フラット35】維持保全型は、【フラット35】地域連携型や【フラット35】地方移住支援型、フラット35Sとの併用が可能なため、フラット35の借入がよりお得になります。

【フラット35】維持保全型に該当する住宅は以下のとおりです。

  • 長期優良住宅(新築、中古)
  • 予備認定マンション(新築のみ)
  • 管理計画認定マンション(中古のみ)
  • 安心R住宅(中古のみ)
  • インスペクション実施住宅(劣化事象などがない中古のみ)
  • 既存住宅売買瑕疵保険付保住宅(中古のみ)

参考:“【フラット35】維持保全型(利用要件)”. 住宅金融支援機構

10-5.【フラット35】地域連携型

住宅金融支援機構と連携する地方公共団体の財政支援により、金利の引下げが適用されるタイプのフラット35です。

「子育て支援」「空き家対策」「地域活性化」など異なるタイプがあり、金利引下げ幅にはそれぞれ以下のような違いがあります。

子育て支援:当初10年間、年-0.25%
空き家対策:当初10年間、年-0.25%
地域活性化:当初5年間、年-0.25%

参考:“【フラット35】地域連携型”. 住宅金融支援機構

10-6.【フラット35】地方移住支援型

地方へ移住する場合に、10年間にわたって年-0.3%の金利引下げが適用されるタイプのフラット35です。適用を受けるには、地方公共団体から交付される移住支援金の交付決定通知書を取得する必要があります。

移住支援金の交付決定日から5年以上経過すると、【フラット35】地方移住支援型の申し込みができなくなる点に注意しましょう。

参考:“【フラット35】地方移住支援型”. 住宅金融支援機構

10-7.【フラット20】

フラット20とは、フラット35で借入期間を15年以上20年以下に設定した場合に適用される商品名称です。

2024年(令和6年)2月時点の金利範囲は年1.340~年2.990%と、フラット35(21年以上35年以下)よりも低い金利が適用されます。

フラット20が適用されると、返済途中で返済期間を21年以上に変更できない点に注意してください。

参考:“【フラット20】”. 住宅金融支援機構

10-8.【フラット50】

フラット50とは、借入期間を最長50年まで選択できる全期間固定金利住宅ローンのことです。長期優良住宅が対象となり、借入金額は物件価格の9割までとなります。

フラット50を利用して取得した長期優良住宅を売却する場合、購入者に住宅ローンを引継ぐ「金利引継特約」の利用が可能です。

参考:“【フラット50】”. 住宅金融支援機構

11.フラット35の利用状況・利用者層

住宅金融支援機構の調査によると、2012年度(平成24年度)から2022年度(令和4年度)までで、フラット35の利用者数は減少しているものの、利用者層別では40歳以上の利用者が増加傾向にあります。

ここでは、フラット35がどのような層に利用されているのかを、以下の項目ごとに紹介します。

  • 住宅の種類
  • 申込者の年齢
  • 家族数
  • 世帯年収

11-1.住宅の種類(融資区分)

住宅の種類(融資区分)

引用:“2022年度 フラット35利用者調査”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)

住宅の種類別に見ると、フラット35は土地付きの注文住宅で最も多く利用され、注文住宅での利用は全体の約45%を占めていることがわかります。

マンションと一戸建てで比較すると、マンションでの利用は全体の約2割なのに対し、一戸建てでの利用は全体の約8割を占めています。

11-2.申込者の年齢

年齢

引用:“2022年度 フラット35利用者調査”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)

フラット35は30歳代の利用者が最も多く、平均年齢は年々上昇傾向にあることがわかります。

2020年度(令和2年度)以降の推移を見ると、30歳以下の利用者が減少している反面、40歳以上の利用者が増加しています。

40代の方が住宅ローンを組むコツについては、「40代で住宅ローンは組めるの?審査をクリアするためのコツも解説!」をご覧ください。

11-3.家族数

家族数

引用:“2022年度 フラット35利用者調査”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)

フラット35を利用する世帯の家族数は2人または3人が多く、2022年度(令和4年度)は3人以上の利用割合に増加が見られました。

10年前の2012年度(平成24年度)と比較すると、1人の利用割合が2.5%増加しており、単身世帯でのフラット35の利用が増えていることがわかります。

11-4.世帯年収

世帯年収

引用:“2022年度 フラット35利用者調査”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)

フラット35利用者のうち、最も多い世帯年収は「400万円以上600万円未満」です。

また、全体の約8割を世帯年収800万円未満の世帯が占めており、世帯年収1,000万円以上の世帯の利用は、比較的少ないことがわかります。

参考:“2022年度 フラット35利用者調査”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-29)

12.フラット35を選ぶ際のポイント

民間金融機関の住宅ローンと比較して、フラット35のメリットが大きいと感じた場合には、フラット35の商品のなかから、自分に合った商品を絞り込んでいきましょう。

そこで最後に、フラット35を選ぶ際のポイントを紹介します。

12-1.住宅に合ったメニューから自分の希望やライフプランに合うものを選ぶ

フラット35は、条件に応じて選べるメニューが豊富で、それぞれ付帯する特約や金利に違いがあります。

将来的に自宅を売却する可能性があるのかなど、長期計画を見据えてメニューを選ぶことで、その利点を活かした借入ができるでしょう。

12-2.慎重な返済計画を立てる

全期間固定金利のフラット35は、月々の返済額が変動せず安定した返済を続けやすい性質がありますが、返済計画は慎重に立てましょう。

一般的に月々の返済額を調整したい場合は、頭金を用意する、返済期間を長くするなどの対策を検討します。

また、初期費用や月々の返済額だけでなく、今後のライフイベントなどを考慮して、無理なく返済を続けられる借入金額を設定することも大切です。

返済計画を立てる際は、現在の収入が変動する可能性も視野に入れ、仕事に変化があっても返済できるか、定年までに完済できるかといった点を確認しましょう。

12-3.専門家に相談する

フラット35と一口にいっても、取り扱い金融機関によって金利や融資手数料、保障などの条件に違いがあります。

事務手数料や金利などの費用を抑えて、自分に適した金融機関を選ぶには、中立の立場からアドバイスしてくれる、ファイナンシャルプランナーや不動産会社などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

フラット35は、最長35年の借入が可能な全期間固定金利の住宅ローンです。住宅金融支援機構が提供する住宅ローン商品で、特約や金利オプションが付いたさまざまなメニューがあります。

利用申込の窓口は住宅金融支援機構が提携する民間の金融機関となりますが、選ぶ商品によっては取扱いがない場合もあります。事前に、申し込み可能な金融機関を調べておきましょう。

参考:トップページ|【フラット35】

住宅ローン選びでは、メリット・デメリットをよく比較してご自身にとってメリットの多い商品を選び、無理のない返済計画を立てることが大切です。

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