滅失登記は1か月以内に申請を|申請方法や流れを全解説

滅失登記とは 登記申請期限は1か月以内

古い家屋の解体など、建物の取り壊しをした際には「滅失登記」を行なう必要があります。滅失登記とは、建物が物理的になくなったことを記録するための手続きです。建物の所有者には申請が義務付けられており、怠ると罰金が科されることがあります。

本記事では、滅失登記の申請方法や期限、滅失登記の流れなどについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • 滅失登記の申請期限
  • 滅失登記の申請ができる方について
  • 滅失登記の具体的な申請方法や流れ
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1.滅失登記とは?

法務局

土地や建物など不動産を取得した際には、法務局で不動産登記を行ないます。

不動産登記には、土地や建物の情報を一般に公開し、誰にでも権利関係がわかるようにすることで、取引が安全かつスムーズに進められるようにする役割があります。そのため、手数料を払えば、登記事項証明書(登記簿謄本)の交付を誰でも受けることが可能です。

作成される登記記録は、大きく「表題部」と「権利部」に分かれ、記載される内容が以下のように異なります。

表題部と権利部

  • 表題部の記録事項
    土地:所在や地番、地目(土地の現況)、地積(土地の面積)など
    建物:所在や地番、家屋番号、建物の種類、構造、床面積など
  • 権利部(甲区)の記録事項
    所有者の住所や氏名、所有権を取得した原因や日付など、所有者に関する事項
  • 権利部(乙区)の記録事項
    抵当権など所有権以外の権利に関する事項

そして、解体や火災による消失などを理由に建物がなくなった場合は、その結果を登記記録に反映させる必要があり、この手続きを「建物滅失登記(滅失登記)」と呼びます。なお滅失とは、法律上で「経済的な効果を失う程度に、物や家屋などが失われたり、破壊されたりすること」を意味する言葉です。

参考:“不動産登記のABC”. 法務省

2.滅失登記の申請期限

滅失登記を行なうにあたり、申請期限はあるのでしょうか。以下に申請期限の詳細と、申請をしなかった場合のデメリットを紹介します。

2-1.建物を壊したら1か月以内に滅失登記を申請する

不動産登記法第57条により、建物の所有者もしくは所有権の登記名義人は、建物が滅失した日から1か月以内に、滅失登記申請をしなければならないと定められています。

また同法第164条で、滅失登記の申請を怠ると10万円以下の罰金が科される旨が定められているため、注意しましょう。

参考:
“不動産登記法 第五十七条”. e-Gov法令検索
“不動産登記法 第百六十四条”. e-Gov法令検索

2-2.滅失登記を申請しないことで生じるデメリット

続いて、期限までに滅失登記を申請しなかった場合に生じるデメリットを紹介します。

2-2-1.罰金を科される

前述したように、滅失登記の申請をしなければ、不動産登記法第164条に基づいて10万円以下の罰金が科されることがあります。1か月以内に申請を行なうことを忘れないようにしましょう。

参考:“不動産登記法 第百六十四条”. e-Gov法令検索

2-2-2.固定資産税を請求される

滅失登記の申請をすると法務局から自治体に通知され、該当する建物は課税台帳から外されます。つまり、滅失登記を行なわずにいると、自治体は建物を解体した事実を知ることができません。そうなると、実際には存在しない建物に対して、固定資産税や都市計画税が課される可能性があります。

ただし、空き家などを相続して解体を検討する場合は、その後の土地の活用方法を十分に考えておく必要があります。なぜなら、解体して更地にすることにより、固定資産税が高くなる場合があるからです。

建物を取り壊して更地にすることで、「これまで建物にかかっていた固定資産税が不要になるため、税金は安くなるのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし実際には、住宅用地に対する特例措置の適用外となり、固定資産税は最大6倍、都市計画税は最大3倍になってしまう可能性があるのです。

なお、固定資産税評価額は、その不動産が属する市町村(東京23区は東京都)によって決定されます。

参考:“固定資産税・都市計画税(土地・家屋)”. 東京都主税局

2-2-3.土地の活用ができない

滅失登記をしていないと、不動産登記上は建物が存在していることになるため、土地の売却や活用に支障をきたす恐れがあります。

例えば、新たに建物を建てようとした際に建築許可が下りない、売却しようとした際に権利上の瑕疵(欠陥)とみなされ売却ができない、といったことが考えられるでしょう。

また、登記内容に不備があると、土地を担保とした融資を受けられない場合もあります。

3.滅失登記の申請は誰がする?

相談する人

滅失登記の申請は、誰でも行なえるものではありません。本章では、申請を行なう資格のある方について解説します。

3-1.建物の所有者

滅失登記の申請ができるのは、その建物の所有者もしくは所有権の登記名義人です。共有の建物であれば、どちらかが単独で申請することも可能です。

参考:“不動産登記法 第四十二条”. e-Gov法令検索

したがって、配偶者や子どもなどの相続人であっても、所有者自身での申請が困難な場合などを除き、原則代理で申請することはできません。所有者が亡くなっている場合は相続人のうち1人が申請を行なえますが、相続関係を証明する書類(亡くなった方の住民票の除票など)を提出する必要があります。

また、建物の所有者が行方不明である場合は、所有者の親族やその敷地の所有者が、建物滅失登記の申出を行なうことも可能です。

3-2.代理人(第三者)

建物の所有者が亡くなっていない場合、代理で滅失登記の申請ができるのは、土地または家屋に関する調査や測量を行なう専門家である土地家屋調査士のみです。

不動産登記を代理で行なえる資格者は司法書士と土地家屋調査士ですが、それぞれ業務の範囲が異なります。

司法書士が代理で申請を行なえるのは、抵当権の設定や所有権の移転といった不動産の権利部に関する登記です。一方の土地家屋調査士は、新築物件の登記や土地の分筆など、表題部に関する代理申請を行ないます。

滅失登記は表題部に関する登記に該当するため、土地家屋調査士にしか依頼できません。

参考:“○登記の申請を代理して行う専門家はいるのですか?”. 法務局

4.滅失登記を自分で申請する場合の流れ

所有者自身が滅失登記を申請する場合は、書類を作成し法務局に提出します。ここでは、必要な書類や流れについて解説します。

滅失登記の流れ

4-1.必要な書類を用意する

所有者自身が申請者となり、滅失登記を申請する際に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 建物滅失登記申請書
  • 建物滅失証明書(取り壊し証明書/解体工事完了証明書)
  • 解体工事を請け負った法人や個人の資格証明書
  • 位置図(任意)
  • その他状況に応じて求められた書類

また、提出書類ではありませんが、書類の作成にあたり該当する建物の登記事項証明書(登記簿謄本)も必要です。申請時に、法務局で取得することもできます。

4-1-1.建物滅失登記申請書

建物滅失登記申請書には様式があり、法務局の窓口で入手するか、法務局ホームページからダウンロード可能です。基本的には、建物の登記事項証明書(登記簿謄本)を参照し、以下のような内容を記載します。

  • 不動産番号
  • 建物の所在
  • 家屋番号
  • 建物の種類
  • 構造
  • 床面積
  • 登記原因およびその日付
  • 所有者の情報

法務局ホームページでは記載例もダウンロードできるため、参考にするとよいでしょう。

参考:“不動産登記の申請書様式について 23)建物滅失登記申請書”. 法務局

4-1-2.建物滅失証明書

建物滅失証明書は、名前のとおり建物が取り壊された旨を証明するための書類です。「取り壊し証明書」や「解体工事完了証明書」などと呼ばれることもあり、通常は建物の解体を請け負った工事会社に依頼すると用意してもらえます。

ただし、建物滅失証明書を添付できないケースもあります。例えば、解体から時間が経っていて工事会社がわからない、工事会社が倒産してしまった、証明書を紛失してしまった、などの場合です。この場合には、法務局宛ての上申書を作成して申請を行ないます。

上申書には以下の内容を記載し、所有者の署名・押印(実印)のうえ、印鑑証明書を添付します。

  • 建物の所在
  • 家屋番号
  • 建物の種類
  • 構造
  • 床面積
  • 解体証明書を添付できない理由

4-1-3.解体工事請負人の資格証明書

滅失登記の申請には、解体工事を請け負った工事会社(解体工事請負人)を証明するための書類も必要です。解体工事請負人が法人か個人かによって、以下のように対応が異なります。

  • 解体工事請負人が法人の場合
    法人の代表者の資格を証明する書類(法人の登記事項証明書など)と、登記所登録の印鑑証明書を添付します。ただし、会社法人等番号を建物滅失登記申請書に記載済みの場合、証明書類は必要ありません。
  • 解体工事請負人が個人の場合
    市区町村に登録済みの、個人の印鑑証明書を添付します。

4-1-4.位置図

位置図とは、該当する建物の位置を示す地図のことです。提出は任意のため、添付しなくても問題はありません。

住宅地図の利用が一般的ですが、インターネットの地図(Google マップなど)でも代替可能です。わかりやすいように、該当する位置に目印を付けるとよいでしょう。

参考:Google マップ

4-1-5.その他の書類

登記事項証明書(登記簿謄本)に記載された住所や氏名と、現在の住所や氏名が異なる場合は、変更を証明するための書類が必要です。

  • 住所が異なる場合
    住民票や全部事項証明書(戸籍謄本)、戸籍の附表など
  • 氏名が異なる場合
    全部事項証明書(戸籍謄本)や除籍謄本など

その他、所有者が存命であるものの、申請を代理人に依頼する場合には、委任状が必要です。委任状は一般的に、代理人となる土地家屋調査士が作成します。

4-2.管轄の法務局に申請書を提出する

必要な書類をそろえたら、該当の建物を管轄する法務局に提出します。管轄の法務局については、法務局ホームページから確認できます。

参考:“管轄のご案内”. 法務局

法務局への持参が難しい方は、郵送での提出も可能です。ただし、書類に不備があると、申請に使用した印鑑を持参のうえ、法務局に出向かなければならない場合があります。

提出した書類や申請内容に問題がなければ、滅失登記が承認されて法務局から登記完了証が発行されるので、大切に保管しましょう。登記完了までにかかる時間は、おおむね1週間から10日とされています。

ただし、申請方法や必要書類が異なる場合もあるため、詳細は管轄の法務局に問い合わせてください。

5.相続人が滅失登記を行なう場合の流れ

登記事項証明書の申請書

建物を解体したあとに所有者が亡くなり、まだ滅失登記の申請が済んでいない場合や、所有者が亡くなったために住んでいた建物を取り壊す場合は、相続人が滅失登記を申請する必要があります。

本章では、相続人が滅失登記を行なう際のポイントと流れを紹介します。

参考:“不動産登記法 第三十条”. e-Gov法令検索

5-1.相続人が滅失登記を行なう際のポイント

亡くなった方が所有していた不動産については、はじめに登記事項証明書(登記簿謄本)を確認しましょう。

なぜなら、家族は本人から「自分の所有物だ」と聞いていたにも関わらず、実際は第三者の名義であったり、建物に抵当権が設定されていたりする場合があるからです。いずれも勝手に取り壊すと、損害賠償請求などのトラブルにつながる恐れがあります。

通常、不動産を所有していた方が亡くなった場合は、相続人への名義変更(相続登記)を行ないます。しかし、相続登記をする前に建物を取り壊していれば、相続登記を省略して滅失登記の申請が可能です。

複数の相続人がいたとしても、滅失登記の申請自体は相続人の1人が行なうことが可能です。ただし、遺産分割協議前に相続した建物を取り壊す場合は、民法251条の共有物の変更に該当するため、相続人全員の同意が必要です。

また、建物の取り壊しには、数百万もの費用がかかるケースも考えられます。そのため、不動産を相続する際には、解体費用や土地の活用方法について相続者全員でよく話し合う必要があるでしょう。

参考:“民法 第二百五十一条”. e-Gov法令検索

5-2.相続人が滅失登記を行なう場合の必要書類

相続人が滅失登記を行なう際には、通常の滅失登記(所有者が申請する場合)と同様の書類を準備します。詳細は前述のとおりですが、具体的には「建物滅失登記申請書」「建物滅失証明書」「解体工事を請け負った法人や個人の資格証明書」などです。

ただし、相続登記を行なっていない場合は以下の書類も必要になります。

書類の種類 詳細
所有者が亡くなったことを証明する書類 所有者の全部事項証明書(戸籍謄本)もしくは除籍謄本など。
亡くなった所有者が最後に住んでいた場所を証明する書類 亡くなった所有者の住民票の除票または戸籍の附票。
申請者と所有者の相続関係を証明する書類 申請者の全部事項証明書(戸籍謄本)。ただし、死亡した所有者の全部事項証明書(戸籍謄本)または除籍謄本に申請者が記載されている場合は不要。

相続人が申請を行なう場合は、通常の滅失登記と同様に、管轄の法務局に申請書類を持参もしくは郵送で提出します。

参考:“管轄のご案内”. 法務局

6.代理人(土地家屋調査士)を探すには?

前述したとおり、滅失登記の代理人になれるのは土地家屋調査士に限られています。しかし、日常ではあまり馴染みのない職業であるため、「どうやって探せばよいのか」と思う方もいるでしょう。

日本土地家屋調査士会連合会のホームページでは、各都道府県の土地家屋調査士会を公表しています。そこで、該当する建物のある地域の土地家屋調査士会に連絡し、紹介してもらうことが可能です。また、インターネット検索もできます。

参考:
“土地家屋調査士に相談する”. 日本土地家屋調査士会連合会
“土地家屋調査士検索”. 日本土地家屋調査士会連合会

7.滅失登記にかかる費用

最後に、滅失登記にかかる費用の目安を紹介します。

費用の種類 費用合計
所有者自身が申請を行なう場合 必要書類の取得(約1,000円) 約1,000~3,000円
交通費などの実費
土地家屋調査士に依頼する場合 専門家報酬 約4~5万円
必要書類の取得
現地調査
申請書・添付書類の作成
交付申請

土地家屋調査士に依頼すると費用はかかりますが、書類作成の手間がなくなる点は、大きなメリットといえるでしょう。

参考:“土地家屋調査士報酬ガイド”. 日本土地家屋調査士会連合会. (参照2024-03-21)をもとに、HOME4Uが独自に作成

まとめ

滅失登記とは、解体や火災で不動産が焼失した場合などに、その事実を登記事項証明書(登記簿謄本)に反映する登記のことです。

滅失登記は、建物が消滅した日から1か月以内の申請が義務付けられています。申請を怠ると10万円以下の罰金が科されるほか、土地の活用ができなくなる恐れがあるので注意しましょう。

滅失登記の申請を行なえるのは、建物の所有者もしくは所有権の登記名義人、代理人(土地家屋調査士)です。所有者が死亡している場合には、相続人も行なえます。

使う予定のない空き家などを相続した際には、安易に解体して更地にしてしまうと固定資産税が高くなる場合があるため、活用方法についてよく検討することをおすすめします。

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