不動産取得税とは?計算方法や軽減措置、特例について全解説

不動産取得税とは 計算方法や軽減措置を解説

購入や贈与などによって不動産を取得すると、不動産取得税が課されますが、場合によっては非課税になるケースもあります。また、軽減措置や特例を利用することで、節税を図ることも可能です。

本記事では、不動産取得税の概要と計算方法、課税対象になるケースとならないケース、軽減措置と特例、申請方法について解説します。

この記事を読むと分かること
  • 不動産取得税の概要と計算方法
  • 不動産取得税が課税されるケース、免除になるケース
  • 不動産取得税が減税される軽減措置と特例の種類
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1.不動産取得税とは?

不動産取得税

不動産取得税とは、土地や建物の購入、建物の建築、贈与などで不動産を取得したとき課税される税金のことです。取得方法(有償か無償か)や登記の有無にかかわらず課税されるため、注意が必要です。

不動産取得税の対象となる不動産の種類は、次のとおりです。

不動産 種類
土地 田んぼ、畑、住宅地、塩田、鉱泉地(温泉など)、池沼、山林、牧場、原野など
家屋 住宅、お店、工場、倉庫などの建物

出典:“不動産取得税”. 総務省. (参照2024-03-29)

なお、毎年課される固定資産税・都市計画税とは異なり、不動産取得税は取得時に1度だけ支払います。

2.不動産取得税の計算方法

本章では、不動産取得税を計算する方法について解説します。

2-1.不動産取得税は固定資産税評価額で算出する

前述のとおり、贈与などにより無償で取得した不動産も、不動産取得税の課税対象になります。したがって、不動産取得税は不動産の購入価格ではなく、「固定資産税評価額」で算出します。

固定資産税評価額は、固定資産評価基準に基づいて、市町村ごとに設定されます。土地と建物を個別に評価し、3年に1回に「評価替え」という見直しが行なわれます。

なお、固定資産税とは、固定資産を所有している方に課せられる「市町村税」のことです。ただし、東京23区では、東京都が「都税」として課税するということを覚えておきましょう。

2-2.固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額は、自治体から毎年通知される「固定資産税の納税通知書」に記載されています。納税通知書が手元にない場合は、市区町村の役所で固定資産評課税台帳を閲覧申請する、または固定資産評価証明書を取得して調べることも可能です。

そのほか、固定資産税評価額は不動産の実勢価格(時価)や工事金額から概算を求めることもできます。実勢価格とは、実際に不動産が市場で売買されたときの価格のことです。

固定資産税評価額は、土地の場合、実勢価格の7割程度となるのが一般的です。一方、新築物件の固定資産税評価額は、工事金額の5割~6割程度が目安とされています。

2-3.不動産取得税の税率と計算例

不動産取得税の税率は、不動産の種類を問わず、「固定資産税評価額の4%」が基本です。

ただし、2024年(令和6年)3月31日までに取得した土地と住宅においては、軽減措置により以下の条件の税率が適用されます。

不動産の種類 税率
土地 3%
家屋(住宅) 3%

出典:“不動産取得税”. 総務省. (参照2024-03-29)

なお、住宅の用途ではない土地・家屋については、軽減措置は適用されません。

課税される不動産取得税は、「土地または建物の固定資産税評価額×税率」の計算式で求められます。

前述のとおり、土地の固定資産税評価額は実勢価格の7割程度となるため、2024年(令和6年)3月31日までに4,000万円の土地を購入した場合の不動産取得税は、「4,000万円×0.7×3%=84万円」となります。

各都道府県の公式ホームページでは、不動産取得税の軽減措置に関するアナウンスが出されています。軽減措置の詳細については、都道府県の情報を参考にしてください。

参考:“不動産取得税の軽減制度について”. 東京都主税局. 2023-07

3.不動産取得税の課税対象になるケース

家のかたちの紙を持たビジネスパーソン

不動産取得税が課税されるのは、基本的に新築や購入で不動産を取得したときです。ただし、増改築で不動産の価値が上がったときや、不動産を交換したとき、共有部分の持ち分を取得したときなどにも、不動産取得税が課税されます。

不動産取得税は、所有権の移転とも関係するため、不動産の交換や贈与も課税の対象になります。増改築に関しても、価値が上がった部分は、不動産の新規取得とみなされます。

また、生前贈与や死因贈与、法定相続人以外の方が不動産を遺贈した場合にも、不動産取得税の課税対象になるため注意が必要です。

生前贈与とは、生前に子どもや孫に財産を贈与することを指し、死因贈与とは、所有者が亡くなったときに財産を贈与することです。

一方の遺贈とは、遺言書に基づき、特定の人物に財産を引き継がせることを指します。遺贈は、法定相続人ではない方に財産を相続させたいときに用いる方法です。

不動産の贈与では、不動産取得税に加えて贈与税が課税されるのが一般的です。不動産の贈与を受ける際には、2つの税金が発生することを覚えておきましょう。

4.不動産取得税が非課税・免税になるケース

不動産を取得した条件や価格によっては、不動産取得税がかからないケースもあります。不動産取得税が非課税、または免税になる条件は、以下のとおりです。

4-1.相続人が不動産を相続した場合

相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は原則非課税です。

相続は、本人の意思とは無関係に行なわれるうえに、財産だけでなく負債も相続しなければなりません。したがって、相続で不動産を取得する相続人に不動産取得税を課税すべきではない、といった税務上の配慮から、非課税が認められます。

ただし、非課税になるのは法定相続人に限られます。

遺言書で遺産の内容と遺贈者を指定する特定遺贈により、法定相続人以外が遺産を継承するときには、不動産取得税が課されるので注意しましょう。

なお、遺贈する財産の内容を指定しない「包括遺贈」の場合、法定相続人以外でも不動産取得税は課税されません。

4-2.不動産の価格が低く免税点に満たない場合

取得した不動産の価格が低く、免税点に満たない場合、不動産取得税は課税されません。

免税点とは、不動産取得税の課税標準になる金額のことです。各区分に対する免税点は、以下のとおりです。

区分 課税標準となるべき額
土地 10万円未満の場合
家屋(新築、増築、改築によるもの) 1戸につき23万円未満の場合
家屋(売買、交換、贈与等によるもの) 1戸につき12万円未満の場合

出典:“不動産取得税”. 大阪府. 2023-11-21. (参照2024-03-29)

ただし、土地(家屋)を取得した1年以内に、隣接する土地(家屋)を取得した場合、前後の土地や家屋を合わせて取得したものと評価されます。免税点を超えた場合は、不動産取得税が課税されるので注意しましょう。

5.不動産取得税に関する軽減措置や特例

節税

ここからは、ケース別の不動産取得税の軽減措置・特例について解説します。

5-1.新築住宅における不動産取得税の軽減措置

新築住宅を取得した場合に適用される、土地と建物に対する軽減措置の要件、控除額について紹介します。

5-1-1.【新築】住宅部分の軽減措置

新築住宅の取得や増改築をした場合、一定の要件を満たすと土地と建物のそれぞれに軽減措置が適用されます。

不動産取得税の軽減措置が受けられる条件は、居住用の住宅であること、延べ床面積が50平米(戸建て以外の賃貸住宅では40平米)以上、240平米以下であることです。

上記の条件を満たすと、不動産の価格から1,200万円が控除されます。

固定資産税評価額が1,500万円、かつ税率の軽減措置が適用される場合、「(1,500万円-1,200万円)×3%=9万円」と高い節税効果が得られます。一方、固定資産税評価額が1,200万円未満の場合、1,200万円が控除されるため不動産取得税は課税されません。

5-1-2.【新築】土地部分の軽減措置

前述のとおり、土地を2024年(令和6年)3月31日までに取得すると、軽減措置により3%に税率が引き下げられます。新築住宅と土地を取得した場合、条件に応じた額がさらに減額されます。

土地の不動産取得税は、「固定資産税評価額×1/2×税率(3%)-軽減額」の計算式で求めることが可能です。具体的には、以下の(ア)、(イ)のいずれか高いほうが土地の税額から減額されます。

(ア)45,000円
(イ)(土地1平米あたりの固定資産税額×1/2)×(住宅の課税床面積×2 ※)×3%
※上限200平米

新築住宅における土地の不動産取得税の軽減措置を受けるには、建物の軽減措置の条件を満たしたうえで、以下のウまたはエに該当する必要があります。

土地を先に取得した場合 土地を取得後3年以内に、当該土地上に住宅が新築されていること
ただし、次の(1)(2)のいずれかに該当する場合に限る。
(1) 土地の取得者が、住宅の新築までその土地を引き続き所有していること
(2) 土地の取得者からその土地を取得した方(譲渡の相手方)が、住宅を新築したこと
新築住宅を先に取得した場合
(同時取得を含む)
(1) 住宅を新築した方が、新築後1年以内にその敷地を取得していること
(2) 新築未使用の住宅とその敷地を、新築後1年以内(同時取得を含む)に同じ方が取得していること

出典:“不動産取得税”. 東京都主税局. (参照2024-03-29)

なお、新築住宅の軽減措置の詳細については、各自治体の情報を確認しましょう。

5-2.【新築】長期優良住宅の特例措置

2024年3月31日までに新築の長期優良住宅を取得すると、不動産取得税の控除額が1,200万円から1,300万円に引き上げられます。

長期優良住宅とは、耐震性や省エネ性などに優れ、長く住める基準を満たした住宅のことです。以下のような基準を満たし、なおかつ行政から認定を受ける必要があります。

性能の種類 認定基準
耐震性 耐震等級2以上、または品確法に定める免震建築物など
省エネルギー性 断熱等性能等級5以上、一次エネルギー消費量等級6
居住環境 景観や騒音など、地域全体の環境に配慮する
維持保全計画 点検や補修を実施する維持保全計画を策定する
維持管理・更新の容易性 維持管理対策等級3(専用配管)など
劣化対策 劣化対策等級(構造躯体等)等級3など
住戸面積 戸建て住宅は75平米以上など

参考:“長期優良住宅 認定制度の概要について”. 一般社団法人 住宅性能評価・表示協会. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

認定長期優良住宅は、不動産取得税の特例措置に加え、所得税(住宅ローン控除)、固定資産税の減税効果も得られます。

ただし、長期優良住宅の認定を受けるには、費用を出して申請しなければなりません。住宅の設備の点検やメンテナンスなど、家を維持するのに手間がかかることも考慮する必要があります。

5-3.中古住宅の不動産取得税における軽減措置

中古住宅を取得した場合、新築住宅と同様に一定の条件を満たすと不動産取得税の軽減措置が適用されます。本章では、建物と土地に対する、軽減措置の内容について解説します。

5-3-1.【中古】住宅に対する軽減措置の内容

中古住宅も不動産取得税の軽減措置が適用されますが、新築住宅と異なり「新耐震基準の適合の有無」も条件に加わります。

東京都を例に、中古住宅における不動産取得税の軽減措置の条件を見てみましょう。

以下のア~ウのすべてを満たす中古住宅
個人が自分の住居用に取得した住宅であること
床面積が50平米以上~240平米以下であること

(1、2のいずれか)
  1. 1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅
  2. 1981年(昭和56年)12月31日以前に建築された住宅で、耐震診断により新耐震基準の適合が証明されたもの
    (調査等が住宅の取得日前2年以内に終了した書類が必要)

出典:“不動産取得税”. 東京都主税局. (参照2024-03-29)

新築住宅は一律で1,200万円控除されますが、中古住宅では「新築された日」によって控除額が変動します。2024年(令和6年)1月現在、建築日による不動産取得税の控除額は、以下のとおりです。

新築された日 控除額
1976年(昭和51年)1月1日~1981年(昭和56年) 6月30日 350万円
1981年(昭和56年)7月1日~1985年(昭和60年) 6月30日 420万円
1985年(昭和60年) 7月1日~1989年(平成元年)3月31日 450万円
1989年(平成元年)4月1日~1997年(平成9年)3月31日 1,000万円
1997年(平成9年)4月1日以降 1,200万円

出典:“不動産取得税の軽減制度について”. 東京都主税局. (参照2024-03-29)

なお、新耐震基準に適合しない中古住宅では、耐震改修工事を実施することで不動産取得税の軽減措置が適用されます。東京都の場合、中古住宅の取得から6ヵ月以内に耐震改修工事を実施し、耐震基準適合の証明を受けたうえで居住することが条件です。

ただし、新築した日や控除額などの条件が自治体で異なる場合があるため、各市区町村の情報を確認しましょう。

5-3-2.【中古】土地に対する軽減措置の内容

中古住宅が要件を満たし、なおかつ以下のアまたはイに該当する場合には、中古住宅の土地も軽減措置を受けられます。

土地を先に取得した場合
(同時を含む)
土地を取得した方が、当該土地を取得した日から1年以内(同時取得を含む)にその土地上の中古住宅を取得していること
中古住宅を先に取得した場合 中古住宅を取得した方が、当該住宅を取得後1年以内にその敷地を取得していること

なお、土地に対する不動産取得税の減税額は、新築の場合と同様です。

出典:“不動産取得税”. 東京都主税局. (参照2024-03-29)

6.不動産取得税の申請~納税するまでの手順

ペンを持った手元

不動産取得税の軽減措置や特例を受けるには、都道府県の税事務所で申請手続きが必要です。ここでは、具体的な申請方法から納税までの流れ、申請を忘れたときの対処法について解説します。

6-1.不動産取得税の軽減措置を受けるには申告が必要

購入や贈与などで不動産を取得したら、不動産の所在地を管轄する都道府県の税事務所に申告が必要です。

不動産取得税の申告期限は、不動産の取得日から30日~60日以内の範囲で設定されます。一般的な申請期限は60日以内ですが、東京都や大阪府などの主要地域は、期限が早い傾向にあるので注意しましょう。

6-2.不動産取得税の申告に必要な書類

不動産取得税を申告する際には、必要事項を記入した「不動産取得税申告書」を税事務所に提出します。不動産取得税申告書は、各都道府県の税事務所のホームページからダウンロードできます。

不動産取得税申告書には土地欄と家屋欄があり、必要項目をそれぞれ記入します。家屋の床面積などの情報や、不動産の登記事項説明書や図面を見ながら記入するとよいでしょう。

なお、各都道府県のホームページにある、不動産取得税申告書の記入例を参考にすることも可能です。

不動産取得税申告書のほかには、主に以下の書類が必要です。

  • 不動産取得税課税標準の特例適用申告書
  • 不動産取得税減額適用申請書(土地用)
  • 不動産取得税減税適用申請書(建物用)
  • 売買契約書のコピー
  • 住民票
  • 登記事項証明書
  • 平面図
  • 建物全部事項証明書
  • 住宅家屋証明書(中古住宅の場合)

なお、耐震基準に適合しない中古住宅は耐震基準を証明する書類、長期優良住宅認定通知など、不動産の条件により提出書類が異なります。各都道府県で必要な書類が異なる場合もあるため、管轄の税事務所に確認することをおすすめします。

また、都道府県によっては、郵送で申請書類を提出することも可能です。

6-3.申告から半年~1年ほどで納税通知書が届く

不動産取得申告書の提出後、半年~1年ほどで納税通知書が送付されます。

不動産取得税は、納税通知書に記載されている方法で支払います。税事務所や金融機関、郵便局などの窓口に加え、自治体によってはスマートフォン決済やクレジットカードで支払うことも可能です。

なお、不動産取得税は、原則一括で納付します。一括での支払いが難しい場合は、分割払いができるケースもあるため、税事務所に相談しましょう。

6-4.軽減措置の申請を忘れたときの対処法

不動産取得を申告する際に、軽減措置の申請を忘れてしまった場合、減税前の不動産取得税を納める必要があります。

ただし、不動産の取得日から5年以内であれば、払いすぎた不動産取得税が戻ってくる還付請求の申請が可能です。還付請求をする際には、不動産取得税還付申請書と必要書類を税事務所に提出します。

不動産取得税還付申請書は、都道府県のホームページからダウンロードできます。

なお、申告書の提出後、還付金が振り込まれるまで1ヵ月~2ヵ月ほどかかるため、軽減措置の申請は忘れず行なうよう心がけましょう。

まとめ

不動産取得税は、不動産の所有権を取得したときに課税されます。贈与や遺贈、相続人以外で不動産を相続する場合、不動産取得税が課税されることがあるので注意が必要です。

なお、不動産取得税は土地と建物でそれぞれ軽減措置があり、長期優良住宅では特例の利用が可能です。不動産の固定資産税評価額そのものが高額なうえに、税率も3%~4%と高いため、軽減措置を忘れずに申請しましょう。

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