【マンションの耐震等級】概要・調べ方・メリットを簡潔に解説

マンション 耐震 等級

日本では、建物の耐震性を表す指標に複数の表現方法があります。
耐震等級も耐震性を表す指標の一つです。

耐震等級は、新耐震基準や免震構造といった用語より認知度は低いものの、地震保険の割引やフラット35の低金利適用等で突然登場してくる言葉となっています。

マンションの購入時に耐震等級という言葉を知る人も多いため、そもそもどこに耐震等級が書いてあるのか知りたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、「マンションの耐震等級」の基本知識をわかりやすく解説します。
ぜひ最後までおつきあいいただき、有益な情報を得ていただければと思います。

マンションの売却をお考えの方は、『【完全版】マンション売却の注意点』や『マンション売却の流れを9ステップで詳しく解説!』も合わせてご覧ください。

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この記事の執筆者

1.耐震等級の制度の概要

まずは、耐震等級の制度の概要について、以下の3点を解説します。

  1. 耐震等級は3段階
  2. 耐震基準との違い
  3. 耐震・制振・免振との違い

それではひとつずつ見ていきましょう。

1-1.耐震等級は3段階

耐震等級とは、住宅性能評価書の中で出てくる耐震性を表す指標のことです。
住宅性能評価書とは、第三者の建物専門家である登録住宅性能評価機関が、10分野34項目(新築は32項目)について評価を行う建物性能の評価書を指します。

住宅性能評価書では、「構造の安定に関すること」、「火災時の安全に関すること」、「劣化の軽減に関すること」等の10分野にわたる評価を行います。

10分野の中のうち、「構造の安定に関すること」では、地震や暴風、積雪の3種類の力の作用がどの程度大きくなるまで傷を受けたり壊れたりしないかを「等級」で表示します。

耐震等級は、この「構造の安定に関すること」の分野の地震に対する強度の程度を表した等級です。

耐震等級は1~3の3段階で表示され、それぞれの特徴は下表のようになっています。

等級 建築基準法に対する強度 内容
耐震等級1 建築基準法レベル 100年に1度といった極めて稀に発生する地震に対して倒壊や崩壊はしない。さらに、数十年に1度程度の地震による力に対しては、構造躯体に損傷を与えない性能。
耐震等級2 建築基準法の1.25倍 100年に1度といった極めて稀に発生する地震による力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊はしない。さらに、数十年に1度程度の地震による力の1.25倍の力に対しては、構造躯体に損傷を与えない性能。
耐震等級3 建築基準法の1.5倍 100年に1度といった極めて稀に発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊や崩壊はしない。さらに、数十年に1度程度の地震による力の1.5倍の力に対しては、構造躯体に損傷を与えない性能。

ポイントとしては、耐震等級1は建築基準法レベルであることから、現行の建築基準法の基準を満たしていれば、どの建物も耐震等級1以上にはなるということです。

耐震等級1ですら、「100年に1度といた極めて稀に発生する地震に対して倒壊や崩壊はしない」とされており、耐震等級1だからといって決して耐震性が低いわけではありません。

耐震等級2以上になると、極めて耐震性の高い建物ということになり、例えば耐震等級2なら「学校や避難所といった公共建築物」、耐震等級3なら「消防署や警察署といった災害復興の拠点となる防災施設」が想定されています。

耐震等級1といっても耐震性が劣るというわけではなく、普通に生活する分には耐震等級1の建物であっても耐震性は十分に確保されているのです。

1-2.耐震基準との違い

耐震性に関しては、耐震等級よりも「新耐震基準」または「旧耐震基準」といった分類の方が重要です。
建物の耐震基準に関しては、1981年6月に建築基準法が大きく改正されました。

新耐震基準とは、1981年6月1日以降に確認申請を通過した建物のことです。
それに対して、旧耐震基準とは、1981年5月31日以前に確認申請を通過した建物になります。

確認申請とは、着工前に行う設計図面の審査のことです。
合法的な建物が建築される予定であるかどうかを確認申請によってチェックされます。

新耐震基準と旧耐震基準の特徴を示すと下表の通りです。

耐震基準 建築確認申請の時期 耐震性
新耐震基準 1981年6月1日以降 大規模の地震(震度6~7)に対しても倒壊しないことを目的としている。
旧耐震基準 1981年5月31日以前 中規模の地震(震度5強) に対しても倒壊しないことを目的としている。

実際、1995年に発生した阪神・淡路大震災(最大震度は震度7)では、被害が多かった建物は旧耐震基準の建物であり、新耐震基準の建物の多くは倒壊等の被害を免れています。

旧耐震基準と新耐震基準について

耐震等級が出てくる住宅性能評価書は、2000年4月1日に施行された「住宅の品質の確保の促進等に関する法律(品確法)」により創設された評価制度です。

住宅性能評価制度が1981年6月1日以降に創設されたものであることから、「新築」で住宅性能評価書を取得した建物は、全て「新耐震基準」かつ「耐震等級1以上」の建物となります。

一方で、住宅性能評価制度は「中古」でも取得することができます。
「中古」で住宅性能評価書を取得した建物でも、新耐震基準時代に建てられた建物であれば、全て「耐震等級1以上」です。

それに対して、旧耐震基準時代に建てられた建物は、原則として新耐震基準を満たしていないことから「耐震等級1」に満たない物件も多くなります。

「耐震等級1」に満たない物件は、「耐震等級0」と表現されます。
つまり、「耐震等級0」とは、「旧耐震の建物」ということです。

ただし、旧耐震基準時代に建てられた建物は、必ずしも全ての建物が旧耐震基準というわけではなく、例外的に当時の建物でも新耐震基準並みの耐震性を備えた建物も一部に存在します。

このような建物は、住宅性能評価書を取得すると耐震等級が1以上となっていることがあります。

よって、旧耐震基準時代の建物であっても「耐震等級1以上」と表示されていれば新耐震基準を満たしているということができるのです。

このように「耐震等級1以上」の建物は「新耐震基準」であることから、耐震等級1以上の住宅性能評価書は新耐震基準に適合することを証明する書類の一つとなっています。

旧耐震基準時代の中古物件でも、耐震等級1以上の住宅性能評価書があれば、買主は住宅ローン控除や登録免許税の軽減を適用することができます。

1-3.耐震・制振・免震との違い

建物の耐震性の指標には、耐震構造や制振構造、免震構造というのもあります。

建物の耐震性の構造

耐震構造とは、建物の強度を増すことで、地震力に耐える構造のことです。
柱や梁の鉄筋の数を増やし、柱の座屈を防ぐために鉄筋間隔を狭くするなど、構造部材の強度を上げることで丈夫な建物としています。

制振構造とは、建物に加わった地震力の応答を減衰する構造のことです。
建物内にダンパーを設け、エネルギーを吸収することで揺れを小さくします。
振動を制御することから「制振」と表記し、「制震」と表記するのは誤りです。

免震構造とは、地震力を軽減する装置を設け、揺れを直接伝わりにくくする構造のことです。
地下部分に積層ゴムと呼ばれる免振装置を設けることが一般的となっています。

耐震性能は、高い順から「免震構造」、「制振構造」、「耐震構造」となります
現行の建築基準法に基づき普通に建てた建物は、基本的に「耐震構造」です。

「免震構造」や「制振構造」は、「耐震構造」をさらに改良した建物という位置づけとなります。

耐震等級は、免震構造や制振構造、耐震構造とは別の指標であるため、1対1の関係はありません。

「耐震等級3だから免震構造」というわけでもないですし、「耐震構造でも耐震等級は3」となる可能性はあります

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2.マンションの耐震等級の調べ方・確認方法

耐震等級は住宅性能評価書に登場してくる指標であるため、耐震等級を知るにはマンション全体で住宅性能評価書を取得していることが必要です。

住宅性能評価書は「新築」と「中古」の2種類があります。
新築時にマンションディベロッパーが住宅性能評価書を取得していれば、耐震等級がわかります。

新築で住宅性能評価書を取得しているようなマンションは、ディベロッパーがアピールするために分譲パンフレットに耐震等級を規定していることも多いです。

また、中古の場合、管理組合が住宅性能評価書を取得していれば、耐震等級を知ることができます。

逆に言えば、マンション全体で住宅性能評価書を取得していない場合には、耐震等級はわからないということです。

住宅性能評価書には、設計段階で取得する「設計住宅性能評価書」と竣工段階で取得する「建設住宅性能評価書」の2種類があります。

国土交通省によると、2020年に新築物件で「設計住宅性能評価書」を取得した割合はわずか27.8%となっています。

ほとんどの物件が住宅性能評価書を取得していないため、そもそも自分が買おうとしているマンション(買ったマンション)が住宅性能評価書を取得していないケースも多いです。

住宅性能評価書を取得していないマンションであれば、耐震等級はわからず、調べようがないということになります。

新築でも中古でも、住宅性能評価書を取得していれば管理組合で住宅性能評価書を保管していることが一般的です。

よって、まずは管理組合に住宅性能評価書を取得しているかどうかを確認し、住宅性能評価書があれば耐震等級を聞くようにしましょう。

3.マンションの耐震等級の状況

マンションの耐震等級は思いのほか低く、「耐震等級1」の物件が多いです。
以下に、新築で住宅性能評価書を取得している建物のうち、共同住宅(アパートや賃貸マンションも含む)における耐震等級の割合を示します。

【共同住宅】
評価項目 等級1 等級2 等級3 評価対象外※
倒壊等防止 81.7% 3.9% 4.4% 10.0%
損傷防止 81.2% 4.0% 4.1% 10.7%

※評価対象外は免震構造の建物を指す。

出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「令和元年度 建設住宅性能 評価書(新築)データ

統計はあくまでも新築で住宅性能評価書を取得している建物に限られますが、住宅性能評価書を取得していても共同住宅の8割以上は「耐震等級1」となっています。

そのため、仮にマンションが住宅性能評価書を取得していたとしても、「耐震等級1」となっている可能性は高いです。

一方で、参考までに新築で住宅性能評価書を取得している建物のうち、戸建ての耐震等級の割合を示します。

評価項目 等級1 等級2 等級3 評価対象外※
倒壊等防止 0.6% 2.5% 96.9% 0.0%
損傷防止 1.1% 2.7% 96.2% 0.0%

出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「令和元年度 建設住宅性能 評価書(新築)データ

驚くことに、新築で住宅性能評価書を取得している戸建ては95%以上が「耐震等級3」です。

恐らく戸建てで住宅性能評価書を取得するような人は、最初から高い耐震等級を狙うことを意図しており、せっかくだから住宅性能評価書も取得しておこうという人が多いものと思われます。

4.耐震等級で受けられるメリット

続いて、耐震等級があることで受けられるメリットについて、以下の2点を解説します。

  1. 地震保険の耐震等級割引
  2. フラット35の低金利適用

それではひとつずつ見ていきましょう。

4-1.地震保険の耐震等級割引

地震保険には、下表のような割引制度が設けられています。

割引制度 内容 割引率
建築年割引 1981年6月1日以降に新築された建物 10%
耐震等級割引 耐震等級1 10%
耐震等級2 20%
耐震等級3 30%
免震構造割引 品確法に基づく免震構造の建物 50%
耐震診断割引 耐震診断または耐震改修の結果、新耐震基準を満たす建物 10%

耐震等級1であれば10%、耐震等級2であれば20%、耐震等級3であれば30%の割引があります。

住宅性能評価書を取得していなくても、「1981年6月1日以降に新築された建物」であれば10%の割引が適用されます。

1981年6月1日以降に新築された建物は新耐震基準であるため、住宅性能評価書がなくても耐震等級1と同等の扱いがなされているということです。

4-2.フラット35の低金利適用

耐震等級2または3の建物では、一定期間金利を0.25%引き下げることができるフラット35Sを利用することができます。
フラット35Sの金利プランと適用対象住宅、割引内容は下表の通りです。

フラット35S 適用対象住宅 割引内容
金利Aプラン 耐震等級3 当初10年間0.25%引き下げ
金利Bプラン 耐震等級2以上
免振建築物
当初5年間0.25%引き下げ

住宅ローンを元利均等返済(元金と利息の合計額が毎月一定となる返済方法)で返済する場合、元金が多い返済当初の期間は金利負担が重いです。

そのため、当初10年または5年の間に金利が低くできるフラット35Sは、減額効果が大きい金利プランといえます。

~2022年以降の中古マンションの住宅ローン控除等~

2022年以降、中古マンションの住宅ローン控除や登録免許税の軽減等が適用できる物件のルールが変更されています。

以前は、築25年超のマンションは、耐震等級1以上の住宅性能評価書等によって新耐震基準に適合していることを証明できないと買主が住宅ローン控除等を利用できないというルールがありました。

しかしながら、2022年以降は25年ルールが撤廃され、「登記簿上の建築日付が1982年(昭和 57 年)1月1日以降の家屋」であれば築25年超のマンションでも買主が住宅ローン控除等を利用できるようになっています。

よって、2022年以降は築25年超でも1982年以降の物件であれば住宅性能評価書等がなくても住宅ローン控除等が適用できるため、築古物件が購入しやすくなったといえます。

まとめ

いかがでしたか?
耐震等級に関する基礎知識、ご理解いただけたでしょうか?

耐震等級とは、住宅性能評価書の中で出てくる耐震性を表す指標です。
耐震等級には、1~3までの3段階の指標があります。

耐震等級が高いと、地震保険の割引やフラット35で低金利の適用を選択することができます。

マンション購入時には、ぜひこういった制度などを利用して、メリットを享受していただければと思います。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット