長期優良住宅とは?認定の条件や申請のメリット・デメリットを徹底解説

長期優良住宅とは メリット・デメリット

長期優良住宅とは、数世代にわたり安心して快適に住める住宅のことです。長期優良住宅は、税制優遇や住宅ローン金利優遇、地震保険の割引などを受けることができるため、近年注目が集まっています。

本記事では、長期優良住宅の概要やメリット・デメリット、認定基準、認定申請の流れなどについて詳しく解説します。

この記事を読むと分かること
  • 長期優良住宅の概要
  • 長期優良住宅の認定条件
  • 長期優良住宅のメリット・デメリット
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1.長期優良住宅とは

長期優良住宅とは

長期優良住宅とは、長期にわたって良好に使用する措置が講じられた住宅のことです。一般の住宅よりも性能が優れており、安心して長く住み続けられます。また、省エネ対策や維持管理のしやすさにも配慮されているのが特徴です。

長期優良住宅は、建築および維持保全の計画を作成して、着工前に所管の行政庁に申請することで認定を受けられます。

主な認定基準は以下の5つです。

  1. 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること
  2. 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること
  3. 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること
  4. 維持保全計画が適切なものであること
  5. 自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること

出典:“長期優良住宅のページ”. 国土交通省. (参照2024-03-29)

2009年(平成21年)6月4日より新築に関する認定制度が開始され、2016年(平成28年)4月1日からは、既存住宅の増築・改築を対象とする認定制度が始まりました。さらに、2022年(令和4年)10月1日からは、建築行為を伴わない既存住宅についての認定制度も開始されています。

2.長期優良住宅の認定条件

長期優良住宅の認定条件

長期優良住宅の認定条件には、以下の10項目があります。

  1. 劣化対策
  2. 耐震性
  3. 維持管理・更新の容易性
  4. 可変性(共同住宅・長屋)
  5. 省エネルギー性
  6. バリアフリー性(共同住宅等)
  7. 居住環境
  8. 住戸面積
  9. 維持保全計画
  10. 災害配慮

ここでは、新築の戸建て住宅における認定条件について解説します。

2-1.劣化対策

劣化対策とは、一般的に想定される維持管理条件下において、数世代にわたって住宅の躯体構造が使用できるようにする措置のことを指します。

具体的には、劣化対策等級(構造躯体等)の「等級3」に該当し、木造・鉄骨・コンクリートの各種類に応じた基準に適合することが条件となります。

劣化対策の各等級に要求される水準は、以下のとおりです。

劣化対策

参考:“評価方法基準案(劣化対策)の各等級に要求される水準の考え方”. 国土交通省. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

2-2.耐震性

長期優良住宅には、大規模地震が起きた際にも建物の変形を一定以下に抑え、改修して住宅に住み続けられるように損傷レベルの低減を図ることが求められます。

具体的には、下記のいずれかの基準に適合する必要があります。

  • 耐震等級(倒壊等防止)の等級2の基準に適合すること
  • 耐震等級(倒壊等防止)の等級1の基準に適合し、なおかつ安全限界時の層間変形が1/100(木造の場合は1/40)以下であること
  • 耐震等級(倒壊等防止)の等級1の基準に適合し、なおかつ各階の張間方向およびけた行方向について、所定の基準に適合すること(鉄筋コンクリート造等の場合に限る)
  • 住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に定める免震建築物であること

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省
“耐震性(倒壊等防止)に係る評価方法基準改正の方向性の検討”. 国土交通省
“住宅の品質確保の促進等に関する法律”. e-Gov法令検索

2-3.維持管理・更新の容易性

住宅の構造躯体が長持ちしても、給排水管などの設備は耐用年数が長くありません。したがって、長期優良住宅では、耐用年数の短い設備や内装において、メンテナンスや定期点検を容易に行なうための措置を講じることが求められます。

新築の長期優良住宅においては、以下が原則の適合基準となります。

  • 維持管理対策等級(専用配管・共用配管)の等級3
  • 更新対策(共用排水管)の等級3

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省

2-4.可変性

可変性は、共同住宅や長家のみに該当する基準です。居住者のライフスタイルに合わせて、間取りの変更工事が容易にできる措置を講じることが求められます。

例えば、間取りの変更時には電気などの配線や給排水用の配管ができるよう、躯体天井高を確保します。新築の場合には、躯体天井高(階高から天井のコンクリートの厚さを差し引いた高さ)2.65m以上が適合基準です。

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省

2-5.省エネルギー性

長期優良住宅では、住宅の屋根や壁、床などの断熱性能を高め、冷暖房使用時の省エネルギー化を図る必要があります。

新築においては、断熱性能等級5および一次エネルギー消費量等級6が適合基準です。

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省

2-6.バリアフリー性

長期優良住宅では、将来的にバリアフリー住宅に改修できるよう、共用廊下などの共用部分にそのためのスペースを確保することが必要です。

具体的には、共用廊下の幅やエレベーターの開口幅を広げたり、スロープを設置したりするためのスペースを確保します。

新築においては一部を除き、高齢者等配慮対策等級(共用部分)が等級3に適合することが条件とされています。

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省

2-7.居住環境

居住環境では、住宅を建てる地域で景観などについて定められているルールや、居住環境の向上への配慮が必要です。

景観計画や地区計画、建築協定などの区域内に建築する場合には、これらの計画・協定などとの調和を図ります。

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省

2-8.住戸面積

長期優良住宅では、良好な居住水準の確保に必要な住戸の面積を定めています。例えば、一戸建てでは75平米以上、共同住宅等では40平米以上が必要です。

いずれも、階段部分を除いて少なくとも、1階の床面積が40平米以上なくてはなりません。

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省

2-9.維持保全計画

長期優良住宅を建てる際には、定期点検や補修を行なうための計画を策定する必要があります。

点検の時期や内容を定めるのは、具体的に以下の部分です。

  1. 住宅の構造耐力上主要な部分
  2. 住宅の雨水の浸入を防ぐ部分
  3. 住宅の給水・排水のための設備

維持保全期間を30年以上として、点検は少なくとも10年ごとに実施します。

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省

2-10.災害配慮

災害配慮では、災害発生リスクのあるエリアにおいて、所管の行政庁が定めた措置をリスクの高さに応じて講じることが求められます。

災害リスクが高いエリアでは、災害の発生状況に合わせた対策が講じられている住宅を認定し、災害リスクが特に高いエリアでは、認定対象外とする、といった選別を行ないます。

以前の長期優良住宅の認定基準では、地震以外の災害リスクが考慮されていませんでした。しかし「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の改正に伴い、2022年(令和4年)2月10日からこの災害配慮が認定基準として追加されたのです。

参考:“長期優良住宅認定制度の技術基準の概要について”. 国土交通省
“長期優良住宅の普及の促進に関する法律”.e-Gov法令検索

3.長期優良住宅の6つのメリット

家と電卓

長期優良住宅には快適性以外に、税制優遇や住宅ローンの金利優遇など資金面のメリットもあります。ここでは、長期優良住宅のメリットを、以下の6つに分けて解説します。

  1. 長い間安全かつ快適に住み続けられる
  2. さまざまな税制優遇が受けられる
  3. 住宅ローンの金利優遇が受けられる
  4. 地震保険の割引がある
  5. 地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けられる
  6. 住宅の資産価値を高められる

3-1.長い間安全かつ快適に住み続けられる

長期優良住宅には、災害対策や劣化対策が講じられており、数世代にわたって安全に住み続けられます。

具体的には、耐震性に優れているため、万が一大きな地震が起きても家屋の損傷を抑えられ、損傷した場合でも容易に改修が可能です。

また、省エネルギー性やバリアフリー性もあり、快適に暮らすことができます。省エネルギー対策が施されている住宅は断熱性に優れ、通常の住宅よりもエアコンの効きが良くなります。そのため、暑い時期は涼しく、寒い時期は暖かく室温を保つことが可能です。

3-2.さまざまな税制優遇が受けられる

長期優良住宅では、税制面の優遇を受けられる点もメリットです。

戸建てにおける長期優良住宅と一般住宅の税制優遇について、下表にまとめたので比較してみましょう。

長期優良住宅 一般住宅
住宅ローン控除 2023年入居の場合
借入限度額5,000万円
年間で最大35万円まで控除
2023年入居の場合
借入限度額3,000万円
年間で21万円まで控除
不動産取得税 1,300万円控除 1,200万円控除
登録免許税 不動産評価額に対して
所有権保存登記:0.1%
所有権移転登記:0.2%
不動産評価額に対して
所有権保存登記:0.15%
所有権移転登記:0.3%
固定資産税 1/2減額
適用期間は1~5年間
1/2減額
適用期間は1~3年間

いずれも、長期優良住宅のほうが控除額は高く、控除期間も長いことがわかります。

3-3.住宅ローンの金利優遇が受けられる

長期優良住宅を取得する際には、住宅ローンの金利優遇が受けられるケースがあります。例えば、「フラット35」に申し込んで長期優良住宅を取得すると「フラット35S」の利用が可能です。

また、長期優良住宅を対象とした「フラット50」では、多くの金融機関の借入期間が最長35年であるなか、全額固定金利で住宅ローンを最長50年間組めます。フラット35より金利は高いものの、借入期間が長いため、1ヵ月あたりの返済負担を軽減できるでしょう。

3-4.地震保険の割引がある

長期優良住宅では、地震保険に関して以下2種類の割引制度を活用できます(以下割引やその他割引との併用は不可)。

割引の種類 割引率
免震建築物割引 50%
耐震等級割引 耐震等級1:10%
耐震等級2:30%
耐震等級3:50%

参考:“問63 地震保険の保険料の割引制度について教えてください。”. 一般社団法人 日本損害保険協会. (参照2024-03-29)

割引を受けるには、保険会社へ確認資料の提出が必要です。長期優良住宅であれば、無条件に割引が適用されるわけではないため注意しましょう。

例えば、耐震等級3の住宅でも、書類の不備や不足があると正確な等級を確認できず、耐震等級2がつけられて本来より低い割引率が適用される可能性があります。

3-5.地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けられる

地域の中小工務店が国土交通省の採択を受けたグループに所属しており、その工務店を通じて木造の長期優良住宅を建築すると、地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けられます。補助金額は条件によって変動しますが、住宅1戸につき最大135万円です。

ただし、建築する地域によっては対象の工務店がない場合もあるため、近隣の対象工務店をあらかじめ確認しておきましょう。

参考:“令和5年度 地域型住宅グリーン化事業(認定長期優良住宅、ZEH・Nearly ZEH、認定低炭素住宅、ZEH Oriented)”. 国土交通省 (参照2024-03-29)

3-6.住宅の資産価値を高められる

長期優良住宅は、安全性や快適性に関して国のお墨付きを受けているため、住宅の資産価値が高くなる可能性があります。将来的に売却する際にも「価値が高い」と評価され、築年数が古くても高値で売却できるでしょう。

一般的に、物件は築年数が古いほど価格は下がるものです。しかし、長期優良住宅の認定を受けていることは売却時のアピールポイントになり、中古物件の購入を検討している方の目に留まる可能性が高まります。

なお、住宅の売却に関して初歩的なことから押さえたい方は、「家を売る完全ガイド!注意点と初めにやるべき準備|高く売るコツも解説」もご覧ください。

4.長期優良住宅の4つのデメリット

施工中の家の模型

長期優良住宅は多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは、4つのデメリットを詳しく解説します。

  1. 着工までに時間がかかる場合がある
  2. 長期優良住宅の申請に手数料がかかる
  3. 建築コストが通常の住宅より高くなる場合がある
  4. 定期点検が必要

4-1.着工までに時間がかかる場合がある

長期優良住宅は、一般の住宅よりも着工に時間がかかる場合があります。これは、所管の行政庁に長期優良住宅の認定を得てから着工するためです。一般の住宅と比較して1週間~1ヵ月、状況によってはそれ以上かかることもあります。

長期優良住宅を建築する際には、書類作成や手続きなどに慣れている経験豊富なハウスメーカーや工務店を選ぶとよいでしょう。自社でノウハウを持っている会社であれば、申請がスムーズに進む可能性があります。

4-2.長期優良住宅の申請に手数料がかかる

長期優良住宅の申請には、手数料がかかります。申請に必要な手数料は所管の地域によって異なりますが、自身で申請する際の費用は5~6万円程度が目安です。ただし、審査書類や図面などの書類を自身でそろえるため、時間も手間もかかってしまいます。

一方、ハウスメーカーや工務店に申請を依頼する場合は、手数料が20~30万円程度かかるのが一般的です。

4-3.建築コストが通常の住宅より高くなる場合がある

長期優良住宅の認定基準を標準で満たしているハウスメーカーや工務店であれば、長期優良住宅を建築するにあたって、追加費用がかからないのが一般的ですが、長期優良住宅の施工経験がない会社に依頼する場合は、認定条件を満たすために追加工事の発生や建築資材の変更、工期の長さによる人件費増加などが影響し、建築コストが上がることが考えられます。

したがって、依頼時には長期優良住宅の建築実績も併せて確認することをおすすめします。

4-4.定期点検が必要

長期優良住宅では、入居後も維持保全計画に沿った点検を行なう必要があります。設備によっては、少なくとも10年に1度の頻度で点検し、適宜修繕を行ないます。

また点検の際には、点検内容の記録を作成・保存しなければなりません。維持保全計画に沿って点検を実施しないと、長期優良住宅の認定を取り消される恐れもあるため、注意しましょう。

5.長期優良住宅の申請手続きの流れと必要書類

家の模型と書類

長期優良住宅を建築する際には、着工前に所管の行政庁へ申請する必要があります。申請は自身でも行なえますが、複雑で手間がかかるためハウスメーカーなどに依頼するのが一般的です。専門的な書類が多いため、事前にハウスメーカーの担当者と打ち合わせしておくとよいでしょう。

長期優良住宅の申請手続きは、大きく分けて以下の5ステップで行なわれます。ぜひ、手続きの際の参考にしてください。

長期優良住宅の申請手続きの流れ

  1. 長期優良住宅建築等計画を作成する
  2. 登録住宅性能評価機関の審査を受ける
  3. 登録住宅性能評価機関から確認書を受け取る
  4. 所管行政庁の審査を受ける
  5. 所管行政庁から認定通知書の交付を受ける

また、申請に必要な書類の一例は以下のとおりです。

  • 認定申請書
  • 設計内容説明書
  • 配置図などの各種図面
  • 各種計算書 など

これらの書類とともに申請して認定通知書が交付されると、長期優良住宅の工事が開始されます。

手続きの方法や必要な書類は自治体や建物の種類により異なるため、事前に問い合わせて確認すると安心です。

6.長期優良住宅の認定後の注意点

最後に、長期優良住宅の認定後の注意点について解説します。

6-1.認定を受けた後の設計変更やリフォームには再度申請が必要

長期優良住宅の設計変更やリフォームには、再度申請が必要です。

長期優良住宅認定の申請は着工前に行なうため、申請後に設計変更するケースもあるでしょう。その場合は、新たに所管の行政庁へ申請しなければなりません。

また、建築後に増築やリフォームをする際にも、認定時と設計が変わるため計画変更の申請が必要です。

6-2.長期優良住宅を売却・相続するときは地位の継承が必要

長期優良住宅を売却・相続する際は、購入者や相続人が、所管の行政庁に地位の継承に関する承認を受ける必要があります。地位を継承すると、長期優良住宅建築等計画やメンテナンス内容もともに引き継がれます。

売却・相続の際には、長期優良住宅の認定を受けていることや、維持保全計画に沿って建物を管理して、その記録を保存する必要があることも伝えておきましょう。

まとめ

長期にわたって安全で快適に住める長期優良住宅は、耐震性などの安全面だけでなく省エネルギー性もあるなど、環境にも配慮されている住宅です。国から安全性や快適性を認定されているため、資産価値も高い傾向にあります。

長期優良住宅には、税制優遇などのさまざまなメリットがありますが、着工までに日数がかかる、建築コストが高い、定期的なメンテナンスが必須、といったデメリットもあります。

購入を考える際には、将来の居住スタイルや入居後の手間についても、併せて検討することが大切です。購入した物件を将来的にどうしたいのかといった長期的な視点を持って検討するようにしましょう。

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