重要事項説明書とは?契約前に知っておきたいチェックポイントや注意点を解説

重要事項説明書とは 契約前のチェックポイント

不動産の売買契約や賃貸借契約を結ぶ際は、重要事項説明書を用いて、宅地建物取引士による重要事項説明が行なわれます。重要事項説明書には、不動産取引に関わる大切な情報が記載されているため、確認ミスがないように注意しましょう。

本記事では、重要事項説明書の概要や記載が必要な項目、チェックポイントなどについて紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 重要事項説明書の概要や記載の必要がある項目
  • 重要事項説明書でチェックするべきポイント
  • 重要事項説明書を確認する際の注意点
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1.重要事項説明書とは?

重要事項説明書とは、売買や賃貸などの不動産取引において、取引条件などの重要事項を記した書面のことです。

重要事項説明書を用いた重要事項説明(重説)は、契約前に買主(借主)に書面を交付したうえで、宅地建物取引士による口頭での説明が法律で義務付けられています(宅地建物取引業法 第三十五条)。

これは、不動産取引の専門知識を持たない買主(借主)が、契約に関連する重要事項を理解したうえで契約を締結できるようにすることが目的です。

また、宅地建物取引士は、重要事項説明の際に自身の宅地建物取引士証を提示しなければなりません(提示義務)。

参考:“宅地建物取引業法(宅建業法)第三十五条”. e-Gov法令検索

1-1.重要事項説明書を確認する時期

重要事項説明書を用いた重要事項説明は、売買や賃貸の契約が成立するまでの期間に行なう必要があります。

売買の流れ
賃貸の流れ

契約○日前といった明確な時期は定められていませんが、重要事項説明書の内容は買主(借主)の意思決定に影響があることから、契約直前の実施は一般的には不適切とされています。

参考:“重要事項説明の基本”. 公益社団法人全日本不動産協会. (参照2024-04-03)をもとに、HOME4Uが独自に作成

1-2.売主(貸主)には重要事項説明が行なわれない場合がある

重要事項説明を行なう相手は買主(借主)であり、売主(貸主)への重要事項説明の実施は義務ではありません。

そのため、取引によっては売主(貸主)への重要事項説明が省略される場合もあります。

しかし、売主(貸主)側も契約条件や詳細な情報を十分に理解してから契約を締結するべきであり、売主(貸主)にも重要事項説明を実施するのが望ましいといえます。

不動産取引では、買主・売主の双方に重要事項説明を実施し、両者が認識の相違なく契約内容を把握することで、トラブル発生のリスクを軽減できるでしょう。

なお、買主(借主)が宅地建物取引業を営む不動産会社や個人である場合は、重要事項説明書の交付のみが必要で、口頭での説明義務はありません。一方、一般の買主(借主)が契約当事者となる場合には、重要事項説明の省略はできません。

参考:
“平成29年度宅建業法改正に伴う重要事項説明の記載例等と留意点”. 全国宅地建物取引業保証協会
“宅地建物取引業法(宅建業法)第三十五条の六”. e-Gov法令検索
重要事項説明に必要な要素”. 国土交通省

2.重要事項説明書に記載される項目

書類と印鑑

重要事項説明書には、宅地建物取引業法(宅建業法)第三十五条で定められた内容を記載する必要があります。

重要事項説明書に記載する必要がある事項は、大きく分けて次の4項目です。

  • 不動産会社の情報
  • 取引物件に関わる事項
  • 取引条件に関わる事項
  • その他の事項

各項目でどのような内容が記載されているのか詳しく見ていきましょう。

2-1.不動産会社の情報

重要事項説明書には、売主(貸主)となる不動産会社(宅地建物取引業を営む不動産会社や個人)の情報が必ず記載されていなければなりません。

具体的には、以下のような情報が必須です。

不動産会社の情報
  • 免許証番号
  • 免許年月日
  • 事業所の所在地
  • 事業所名
  • 代表者の氏名
  • 重要事項説明を行なう宅地建物取引士の情報
  • (氏名、登録番号、従事する事務所の住所と電話番号)

重要事項説明の際、宅地建物取引士は、重要事項説明書と併せて「宅地建物取引士証」を提示する必要があります。

宅地建物取引士証

参考:“重要事項説明に必要な要素”. 国土交通省. (参照2024-03-21)をもとに、HOME4Uが独自に作成

2-2.取引物件に関わる事項

取引物件とは、取引の対象となる土地や建物などの不動産のことです。

取引物件に関わる事項として記載される内容には、次の6つが挙げられます。

  1. 土地や建物に関わる事項
  2. 登記に関わる事項
  3. 法令に基づく制限
  4. インフラの整備状況
  5. 災害警戒区域に関わる事項
  6. 建物の性能評価や調査・診断に関わる事項

2-2-1.土地や建物に関わる事項

重要事項説明書には、取引対象となる土地・建物の所在地、面積など、基本的な情報が記載されます。土地と建物で、記載される内容には以下のような違いがあります。

土地に関する情報
  • 所在地、地番
  • 地目
  • 地積
  • 権利の種類
  • 敷地権割合(持分割合)
  • 借地権の場合は借地権の割合や存続期間
  • 備考 など
建物に関する情報
  • 所在地
  • 構造
  • 住宅の種類
  • 延床面積
  • 専有部分のある建物の場合はその詳細
    (家屋番号、建物の名称、間取り、建築の時期 など)

重要事項説明の際、土地に関する内容は地図や公図などを用いて再度確認されます。

建物については必要に応じて図面と照らし合わせながら、記載内容に誤りがないか確認されます。

2-2-2.登記に関わる事項

登記に関わる事項は、基本的に登記事項証明書(登記簿謄本)の権利部の内容が転記されています。

表題部と権利部

なお、売買により抵当権が抹消されるような場合でも、現時点で登記に記録されている内容はすべて重要事項説明書に記載されていなければいけません。

登記事項証明書(登記簿謄本)について詳しく知りたい方は「登記簿謄本(登記事項証明書)とは?種類や記載内容、取得方法」をご覧ください。

2-2-3.法令に基づく制限

重要事項説明書には都市計画法や建築基準法など、取引対象の不動産に関する法律上の制限についても記載されます。

都市計画法と建築基準法に基づく制限には、主に以下のようなものがあります。

都市計画法
  • 区域区分
  • 市街化調整区域の場合の開発行為、建築行為に関して
  • 都市計画道路に関して など
建築基準法
  • 用途地域
  • 地域・地区
  • 建ぺい率
  • 容積率
  • 高さ制限
  • 敷地と道路に関する制限
  • 日照や日陰に関する制限 など

2-2-4.インフラの整備状況

インフラとはインフラストラクチャーの略語で、一般的には産業や生活における基盤を指す言葉として用いられます。

重要事項説明書では、生活に関連するインフラ(電気・ガス・飲用水・下水道)について、以下のような情報が記載されます。

インフラに関する情報
  • 設置者
  • 管理者
  • 配管の設置状況
  • 配管の整備状況
  • 配管の整備予定の有無
  • 整備予定がある場合は実施予定年月日や負担金
  • 備考 など

2-2-5.災害警戒区域に関わる事項

災害警戒区域とは、災害により住民の生命・身体に危害をおよぼすリスクがあると認められた土地(区域)のことです。

重要事項説明書には、土砂災害や津波災害のほか、水災害履歴や液状化予測など、その土地(区域)で警戒すべき災害について記載されます。

重要事項説明の際は、取引対象の物件がハザードマップ(自然災害が想定される区域や避難場所などが表示された地図)上でどのような位置に所在しているかも説明を受け、確認しておきましょう。

参考:
“ハザードマップ”. 国土交通省 国土地理院
“ハザードマップポータルサイト”. 国土交通省 国土地理院

2-2-6.建物の性能評価や調査・診断に関わる事項

重要事項説明書には、建物状況調査(インスペクション)、住宅性能評価、耐震診断などの調査や診断の実施状況、結果が記載されます。

各項目でどのような内容が記載されるのかについては、調査や診断の種類により以下のように異なります。

建物状況調査(インスペクション)
  • 実施の有無
  • 調査結果の概要
  • アスベスト(石綿)の使用状況 など
住宅性能評価
  • 評価を受けている住宅に該当するかの当否
  • 交付されている住宅性能評価書
  • 住宅性能表示 など
耐震診断
  • 実施の有無
  • 適用されている耐震基準(新耐震または旧耐震)
  • 耐震診断の内容
  • 耐震診断を実施した機関名 など

なお、新築以外の建物では、過去1年以内の建物状況調査(インスペクション)の有無や、調査結果の概要を記載する必要があります。

建物状況調査(インスペクション)の詳しい実施方法や注意点については、「不動産のインスペクションとは?メリット・デメリット、方法、費用を解説」をご覧ください。

2-3.取引条件に関わる事項

取引物件に関わる事項では、既存の情報がそのまま記載されるのに対し、取引条件に関わる事項では売主・買主間で取り決めた条件に沿った内容が記載されます。

取引条件に関わる事項として記載される内容には、以下の5つが挙げられます。

  1. 取引代金に関わる事項
  2. 契約解除に関わる事項
  3. 手付金の保全措置の定め
  4. 金銭の貸借に関わる事項
  5. 契約不適合責任に関わる事項

2-3-1.取引代金に関わる事項

取引代金に関わる事項では、買主・売主間で合意した各種取引代金について記載されます。

例えば、不動産売買では以下のような項目に関して、金額代金授受の時期について記載されます。

不動産売買の場合の取引代金の項目
  • 売買代金
  • 手付金
  • 清算金
    (固定資産税、修繕積立金・管理費 など)

2-3-2.契約解除に関わる事項

契約解除に関わる事項では、契約解除の条件や方法、解除する場合の取り決めなどについて記載されます。

契約違反があった場合の違約金や損害賠償についても記載されますが、詳しい条件は対象取引の契約書にまとめられているケースが一般的です。

重要事項説明の際は、契約書と照らし合わせながら、重要事項説明書の記載内容に相違がないか確認するとよいでしょう。

2-3-3.手付金の保全措置の定め

手付金の保全措置とは、宅地建物取引業を営む不動産会社や個人が売主となる場合に、状況に応じて買主への手付金の返還が認められる措置のことです。

買主から一定の金額を超える手付金が支払われる取引では、手付金の保全措置を設けることが法律で義務付けられています。

参考:“宅地建物取引業法(宅建業法)第四十一条”. e-Gov法令検索

重要事項説明の際には、手付金の保全措置の有無や概要について、宅地建物取引士から説明があります。

2-3-4.金銭の貸借に関わる事項

金銭の貸借に関わる事項では、住宅ローンなどの不動産会社による融資の斡旋(あっせん)の有無や、融資承認を取得する期日といった、融資に関する情報が記載されます。

融資に関する情報としては、主に以下の内容が記載されます。

融資に関する情報
  • 金融機関名
  • 融資額
  • 金利
  • 借入期間
  • 返済方法
  • 保証料
  • 事務手数料

2-3-5.契約不適合責任に関わる事項

契約不適合責任とは、契約内容に反している事実が認められたとき、売主が負うべき責任のことです。契約不適合責任は、「担保責任の履行」と表現される場合もあります。

この項目では、主に以下のような内容が記載されます。

契約不適合責任(担保責任の履行)に関する内容
  • 売主(貸主)が事前に告知するべき欠陥や瑕疵
  • 売主(貸主)の責任の範囲
  • 契約不適合と認められた場合の措置
  • 保証や保険契約の有無 など

契約不適合責任については、「契約不適合責任(瑕疵担保責任)とは?2020年の法改正による変更点やトラブル回避のポイントを解説」をご確認ください。また、不動産における瑕疵については、「瑕疵とは?種類や具体例、不動産取引におけるトラブルを防ぐ方法も解説」をご確認ください。

2-4.その他の事項

取引の内容によっては、取引物件や取引条件のほか、その他の事項として以下の内容が記載される場合があります。

  • 区分所有建物に関わる事項
  • その他の特約事項

2-4-1.区分所有建物に関わる事項

取引物件が分譲マンションのような区分所有建物の場合、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」に基づいた重要事項を説明する必要があります。

区分所有建物に関する重要事項としては、以下が挙げられます。

区分所有建物に関する重要事項
  • 敷地の権利の種類
  • 借地権の地代
  • 共用部分における管理規約や使用細則の内容
  • 専有部分における管理規約や使用細則の内容
  • 専用使用権に関する管理規約や使用細則の内容
  • 修繕積立金の月額、滞納額、積立総額
  • 管理費の月額、滞納額
  • 修繕積立金や管理費以外の費用
  • 管理委託先の情報、管理形態
  • 修繕の実施状況の記録
  • 実施が予定されている修繕工事

参考:“建物の区分所有等に関する法律”. e-Gov法令検索

区分所有建物については、「区分所有とは?区分所有者が知っておくべき権利や禁止事項を解説」の記事を併せてご覧ください。

2-4-2.その他の特約事項

その他の特約事項では、ここまでに記載された内容以外で、売主(貸主)から買主(借主)へ伝えておくべき重要事項がまとめられています。

具体的には、近隣環境や独自の費用負担、事前に承知してもらいたい容認事項などが記載されます。

特約事項の例
  • 近隣の嫌悪施設(※)の有無
  • 個別で発生する費用負担の有無
    (インターネット契約、テレビ・衛星放送契約など)
  • 自治会や町内会に関する情報
  • 周辺環境に関する注意事項 など

(※)墓地、火葬場、ゴミ焼却場、下水処理場、危険物を製造する工場など

特約事項には、対象物件の利用に関わる独自の重要事項が記載されているケースが多いため、細部までよく確認することが大切です。

3.重要事項説明書でチェックするべきポイント

チェックする女性

重要事項説明書の内容は、基本的にすべて目を通す必要がありますが、なかでも必ずチェックしておきたいポイントがあります。

どのような点をチェックすればいいのか、重要事項の項目ごとに見ていきましょう。

3-1.取引物件に関わるチェックポイント

取引物件に関わる部分では、主に以下の内容を確認しましょう。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本)や公図などと比較して記載内容に誤りがないか
  • 法令に基づく制限に問題がないか(将来的な建て替えや増改築の制限など)
  • インフラの整備状況や費用負担について明確に記載されているか
  • 土地や建物の現況が明確に記載されているか
  • マンションの場合、マンション管理規約や使用細則の範囲まで確認できるか
  • 水害(洪水、雨水出水、高潮)ハザードマップの記載状況 など

参考:
“水害ハザードマップ上の対象物件の位置の説明”. 公益社団法人全日本不動産協会
“水防法施行規則”. e-Gov法令検索
“宅地建物取引業法施行規則”. e-Gov法令検索

3-2.取引条件に関わるチェックポイント

取引条件に関わる部分では、事前に取り決めた内容に相違がないかも含めて、以下のような内容を確認しましょう。

  • 代金以外の必要な金銭の目的や金額、授受の時期などが明確に記載されているか
  • 手付金や契約解除の条件が適切かつ明確に記載されているか
  • 契約不適合責任に関わる措置内容が明確に記載されているか
  • 不明瞭な特約や容認事項が記載されていないか

なかでも、特約や容認事項は認識の相違が発生しやすい部分でもあるため、契約後のトラブルを避けるためにもしっかり確認することが大切です。

特約事項や容認事項にどのような記載がされるのか、関連団体が公表する文章例なども併せてチェックしておくとよいでしょう。

参考:“不動産契約における特約・容認事項の必要性について(売買・賃貸)”. 東京都不動産協同組合

4.重要事項説明書を確認する際の注意点

書類を見る男女

あとから、「言った」「言わない」「聞いていない」「知らない」といったトラブルにならないように、重要事項説明書を確認する際は、買主(借主)、売主(貸主)ともに以下の点に注意しましょう。

4-1.不明点や疑問を抱えたまま契約に進まない

重要事項説明を受け、契約を締結すると、重要事項説明書の内容に承諾したものとみなされます。

契約後のトラブルを避けるためにも、重要事項説明書の内容は細部まで熟読・理解しておくことが大切です。

記載内容や説明内容に不明点・疑問点があれば、必ず契約に進む前に宅地建物取引士(不動産会社)や専門家に相談しましょう。

なお、2021年(令和3年)3月30日より、オンラインでの重要事項説明(通称:オンライン重説、IT重説)が可能となり、近年は重要事項説明書が電子書面で発行される機会も増えてきました。

オンラインで重要事項説明が実施される場合、対面ではなくビデオ通話によって重要事項説明を受けるため、聞き間違いや聞き逃しに注意が必要です。

参考:“不動産の売買取引に係る「オンラインによる重要事項説明」(IT重説)の本格運用について”. 国土交通省

4-2.事前に重要事項説明書のコピーをもらっておくと安心

不動産会社に依頼すると、重要事項説明が実施されるタイミングより早く、重要事項説明書のコピーをもらえる場合があります。

事前に重要事項説明書のコピーを受け取り、内容に目を通しておくことで、前もって不明点を確認したり、重要事項説明当日に聞きたい内容をまとめたりできるでしょう。

オンライン重説が採用され重要事項説明書が電子書面となる場合でも、必要があれば紙での書面発行が可能かどうか確認しておくとよいでしょう。

まとめ

不動産の重要事項説明書は、売買契約や賃貸借契約の締結前に、取引に関する重要事項を買主(借主)に説明するためにまとめた書面です。

取引対象となる物件情報や取引条件のほか、不動産の利用に関わる個別の要件が記載されるため、記載内容は必ず契約前に細部まで確認しましょう。

買主(借主)だけでなく、売主(貸主)も重要事項説明書の内容を把握しておくことで、その後の契約をスムーズに進められます。

不動産売却で「失敗したくない」「損をしたくない」という場合は、サポート体制が充実した不動産会社に相談し、状況に応じた適切なアドバイスを受けることをおすすめします。

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