更新日:2024.11.07 不動産売却の基礎講座, 不動産売却のノウハウ 市街化調整区域とは?建築許可は下りる?土地活用の方法 現在住んでいる場所や、購入を検討している不動産が市街化調整区域の場合、家を建てたり、増築やリノベーションをしたりすることはできるのでしょうか。 市街化調整区域は、原則として建物を建てることができません。 本記事では、市街化調整区域とは何か、また市街化調整区域の土地活用の方法と注意点を解説します。 不動産売却の初歩的なことを把握したい方は「不動産売却の入門書」もご覧ください。 この記事を読むとわかること 市街化調整区域とは何か 市街化調整区域の注意点 市街化調整区域の土地を活用する方法 Contents1.市街化調整区域とは「市街化を目的としない」区域2.市街化調整区域の建て替えは許可が必要3.市街化調整区域の注意点4.建物を建てずに市街化調整区域の土地を活用する方法5.建物を建てて市街化調整区域を活用する方法6.市街化調整区域の調べ方7.市街化調整区域の開発許可を申請する手順と費用まとめ 1.市街化調整区域とは「市街化を目的としない」区域 市街化調整区域は都市計画法によって区分されています。 市街化調整区域では、市街化を抑制するため原則として建物を建設することが認められていません。 都市計画法による区域区分は、以下の3つがあり、建物を建てられるかどうかに違いがあります。 区域区分 建物建設の可否 市街化区域 〇 市街化調整区域 × 非線引き区域 〇 2.市街化調整区域の建て替えは許可が必要 新しく建物を建てられない市街化調整区域では、建て替えやリノベーションなども、原則として許可が必要です。 今住んでいる家が古くなり、住むことが難しくなった場合も、建て替えるには申請をして許可を受けなければなりません。 市街化調整区域は、建てられる規模を決める容積率や建ぺい率の制限の他、現在の建物と比較して、一定の規模までの建て替えしか認められないこともあるのです。 とはいえ、自治体の条例により、許可を得れば開発が認められる地域もあるため、事前に建て替えたい家のある自治体の担当部署に問い合わせてみましょう。 3.市街化調整区域の注意点 市街化調整区域の土地は、インフラ整備が必要、また不人気で買い手がつかないなどの注意点がありますので、事前に把握したうえで購入を検討してください。 3‐1.インフラ整備が必要 市街化調整区域の土地は電気やガス、下水道といったインフラ整備が不足しているため、購入するなら整備しなければなりません。 インフラが整っていないのは、建物の建設が認められていない市街地調整区域では、人が住むことを前提としていないためです。 電気やガス、水道などのインフラ整備にかかる費用はご自身で負担することになり、時間と手間がかかります。 そのため、市街化調整区域に建物を建てるなら、まずはインフラ整備の内容や費用を計算したうえで計画を立てましょう。 3‐2.不人気なため買い手がつかない 市街化調整区域はインフラ整備がされておらず、日常生活を送るには不便な立地であることから不人気で買い手がつきにくいです。 先述のインフラの他、スーパーや商業施設、娯楽施設なども充実していません。 物件選びにおいて利便性は重要な要素ですので、仮に価格を下げたとしても、なかなか買手が見つからないのが現実でしょう。 4.建物を建てずに市街化調整区域の土地を活用する方法 市街化調整区域の土地を活用するには、以下のような方法があります。 駐車場にする 資材置き場として活用する 太陽光発電を設置する 墓地・霊園として貸し出す 4-1.駐車場にする 市街化調整区域の土地活用の方法として、比較的かんたんなのが駐車経営です。駐車場だと土地を整備するだけで良いため、コストや手間をおさえることができます。 駐車場は必ずしもアスファルトを整備する必要はありません。コストをおさえたい場合は枠線を引くなど区分けをするだけの青空駐車場にする方法も検討しましょう。<月極駐車場として貸し出せば、安定した収入源となります。 需要がなく、駐車場の経営が難しい場合は、別の用途に切り替えることも可能ですし、切り替える際も撤去や解体などが必要ない点も駐車場として活用するメリットと言えます。 4-2.資材置き場として活用する 土地に手を加えることなく、そのまま活用するなら、資材置き場として貸し出すのがおすすめです。 資材置き場なら業者に土地を貸すだけなので、管理や運営は基本的に必要ありません。 そのため、貸主の負担となるコストも最小限におさえられます。 駐車場やアパート経営と比較すると収入は少ないですが、手入れなどの手間をかけずに収入を得られる点は大きなメリットと言えるでしょう。 資材置き場への転用は、大きく儲けたいと考える方よりも、「土地の使い道に困っている」「空き地にしておくより活用したい」と考える方に向いています。 4-3.太陽光発電を設置する 地面に直接設置する、フィールド設置タイプの太陽光発電は、市街化調整区域の土地に適した活用方法です。 フィールド設置タイプの太陽光発電設備は、建築基準法上で「建物」とされていないことから、開発の許可が必要ありません。 最初に設置する費用がかかりますが、その後のランニングコストは、定期的なメンテナンスくらいです。コストをおさえて、毎月収入を得られます。また、集客が必要ないことも、大きなメリットです。 4-4.墓地・霊園として貸し出す 広い土地であれば、墓地や霊園として貸し出すのも、市街化調整区域の土地におすすめの活用方法です。 不動産としては人気がない市街化調整区域の土地も、墓地や霊園として使うなら需要があります。 土地を貸し出すだけで良いので、初期投資も必要なく、不動産を貸すことが初めてでも安心です。 注意点は、一度墓地にしてしまうと、元に戻すのが難しいこと。 長い期間貸し出すことになるため、慎重に検討する必要があります。 5.建物を建てて市街化調整区域を活用する方法 一般的には建物を建てられない市街化調整区域でも、以下のような施設だと自治体の基準を満たせば許可が下ります。 社会福祉施設を建てる 高齢者施設を建てる 医療施設を建てる 5-1.社会福祉施設を建てる 特別養護老人ホームなどの社会福祉施設は、事前協議をして届け出れば建設が可能です。 土地を事業者に貸して事業者が施設を建てて使用するのではなく、土地の所有者が施設を建てて、土地と建物をセットで事業者に貸すのが一般的です。 ただし、高額な初期費用が必要なうえ、事業者が施設を撤退してしまうと後の借り手を探すことが難しい点に注意が必要です。 5-2.高齢者施設を建てる 許可を得て建設するなら、住宅型有料老人ホームのような高齢者施設をつくる活用方法が良いでしょう。 建物を建てられない市街化調整区域でも、高齢者施設は許可がおりる可能性が高いです。 住宅型有料老人ホームの他、サービス付き高齢者向け住宅も高齢者施設です。サービス付き高齢者向け住宅とは、バリアフリー住宅のことを指します。 高齢者施設は、生活に必要なものが施設内に揃っていることが多く、市街化調整区域に最適な活用方法と言えるでしょう。 5-3.医療施設を建てる 医療施設を建てることも、市街化調整区域の活用方法のひとつです。 社会福祉施設と同じように、事前協議をおこなったうえで届け出なければなりません。 建設の許可が下りる条件は、土地がある地域に医療施設の需要があることです。また、開業したい医師や、医療法人が存在していれば、医療施設を建てて土地を活用できます。 とはいえ、一般的に土地だけを貸すのではなく、土地の所有者が建物を建設したうえで、土地と建物を貸す高額な初期費用がかかります。 6.市街化調整区域の調べ方 市街地化調整区域を調べる方法は、以下2つのケースで異なります。 特定の物件について、市街化調整区域かどうかを調べる場合 特定のエリアについて、市街化調整区域かどうかを調べる場合 購入を検討する物件が市街化調整区域かどうかを調べるには、物件資料に記載されている「用途地域」を確認してください。 市街化調整区域は、厳密には用途地域の区分ではなく、都市計画区分です。しかし、特にインターネットで検索する場合は、スペースの都合もあり、用途地域欄に「市街化調整区域」と記載されています。 市街化調整区域に該当するエリアかどうかは、「都市計画図」で調べることができます。都市計画図は全国の各自治体が公表しており、インターネットでかんたんに検索できます。 7.市街化調整区域の開発許可を申請する手順と費用 市街化調整区域の土地に建物を建てる場合には、都市計画法43条によって開発の許可が必要です。許可が下りる基準は自治体によって違いがあります。 開発許可の申請は、申請の書類を提出するだけでなく、事前準備が多岐にわたるため、専門家に依頼すると安心です。 そこで市街化調整区域の開発をおこなうために必要な開発許可申請の手順と、申請を専門家に依頼する場合の費用について解説します。 7-1.開発許可申請の手順 市街化調整区域の開発許可申請は、以下の手順で進めます。 開発許可申請をするまでの間に、さまざまな協議や書類の提出も必要となります。 市街化調整区域に建物を建設するにあたって周辺住民へ説明し、同意を得なければなりませんので、スケジュールは余裕を持って計画しましょう。 7-2.許可申請を専門家に依頼する場合の費用 市街化調整区域に所有している土地を活用する場合の申請を、専門家に依頼すれば当然費用がかかります。 開発許可申請は、さまざまな書類の準備が必要なため、とても大変です。自分で準備するのが難しいと感じたら、専門家である行政書士に依頼しましょう。 行政書士に依頼するとなると、気になるのは費用です。基本は行政書士への報酬と、手続きの手数料ですが、必要な書類を準備する際にかかる費用も上乗せされるため、余裕のある予算を立てるようにしましょう。 費用の相場としては、比較的狭い0.1ヘクタール未満の開発では、自己ビジネスで13,000円前後です。開発がビジネス目的なのか、自分が活用するためなのかによって費用が異なります。 まとめ 市街化調整区域とはどのような場所か、またその土地の活用方法について解説しました。 市街化調整区域は住むことを想定していない地域ですので、インフラ整備や買い手を見つけづらいなどの問題があります。 しかし、駐車場や資材置き場など、住む以外の方法で活用することで長期的な収入を生むことも可能です。 市街化調整区域に居住中もしくは不動産の購入を検討されている方は、建て替えの条件や購入後の活用方法などをまず把握し、ご自身に合った方法を選びましょう。