市街化調整区域の問題点やメリットとは?売却のコツも解説

市街化調整区域 売却のコツを徹底解説

購入を考えている土地、あるいはすでに所有している土地が「市街化調整区域」の場合、建築や売却の際に不都合が生じるかもしれません。

本記事では、市街化調整区域の概要やメリットのほか、主な問題点、売却のコツなどを解説します。市街化調整区域に関する基礎知識を身に付け、スムーズに不動産売却を進めましょう。

この記事を読むと分かること
  • 市街化調整区域の問題点
  • 市街化調整区域のメリット
  • 市街化調整区域にある不動産を売却するコツ
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1.そもそも市街化調整区域とは?

田舎の風景

市街化調整区域とは、都市計画法に基づき定められている区域区分の一種です。無秩序な市街化を防ぐため、原則として「建物の建築が認められていないエリア」のことを指します。

市街化調整区域とは

主に市街地から離れた郊外の土地や、自然豊かな田舎の土地が当てはまります。周囲に建物が少ない土地、大きな田畑や山林などをイメージするとわかりやすいでしょう。

市街化調整区域が設定された背景には、戦後の高度成長期における都市部の乱開発があります。当時は都市の近郊においても農業が盛んに行なわれており、乱開発による農地の減少を懸念した政府は、大切な農地・農家を守りつつ、限られた土地を有効活用するため、都市計画法によって「市街化区域」「市街化調整区域」という2つの区分を定めました。

なお、この区分がされていない都市計画区域のことを「非線引き区域」といいます。

また、すべてのエリアであちこちに住宅が建つと、ライフラインも整備しづらくなります。市街化させるエリアを決めて効率的に街づくりを進めることも、市街化調整区域が定められた理由の一つです。

市街化調整区域について詳しく知りたい方は、「市街化調整区域とは?建築許可は下りる?土地活用の方法」も併せてご覧ください。

1-1.市街化区域とは?

市街化区域とは、すでに市街地が形成されているエリア、あるいは約10年以内に優先的・計画的に市街化を進めるべきエリアのことです。街の活性化を実現するため、各種インフラや公共施設が優先的に整備されています。

市街化区域にある土地には、建物を建てることが可能です。市街化区域の広さや場所は、人口や産業の動向を踏まえて設定されます。

市街化区域と市街化調整区域

1-2.非線引き区域とは?

非線引き区域とは、市街化調整区域・市街化区域のどちらにも当てはまらないエリアのことです。法律上の正式名称は「区域区分が定められていない都市計画区域」となっています。

地方の場合、市街地と自然環境が混在していて、区域区分の線引きが難しいエリアも少なくありません。このようなエリアはあえて明確に区分せず、グレーゾーンのまま保留されています。

非線引き区域では、土地利用に関する規制が比較的緩やかなので、原則として建物の新たな建築も認められています。

ただし、将来的に線引きが行なわれる可能性もあるため、非線引き区域の建物を売買する際には最新情報を確認しましょう。

参考:“都市計画法”. e-Gov法令検索

2.市街化調整区域における4つの問題点

森の中の道

市街化調整区域では、さまざまな規制が設けられている関係上、エリア内の不動産には、主に以下のような問題点があります。

  • 新たな建築や建て替えが制限される
  • インフラが整備されていない
  • 立地条件が悪い
  • 資産価値が低い

2-1.新たな建築や建て替えが制限される

市街化調整区域では、原則として建物を建てることができません。例外的に建築が認められるケースもありますが、あらかじめ自治体の許可を得ることが必須要件です。

新たに住宅や商業施設を建てるときはもちろん、既存建物の建て替えやリノベーションを行なうときも許可が必要となります。ただし、自治体によっては独自の条例を設けて、市街化調整区域でも開発許可を出しているケースもあるため、事前に確認しておきましょう。

また、あえて建物を建てず、駐車場や資材置き場として活用することも可能です。

2-2.インフラが整備されていない

市街化調整区域は住宅地として活用することを想定していないので、上下水道、電気、ガス、公共交通機関といったインフラが整っていないケースも見受けられます。

このようなエリアでインフラ整備工事を依頼する場合、自治体から助成金が出ない可能性が高いため、自己負担で費用を工面しなければなりません。

2-3.立地条件が悪い

市街化調整区域のほとんどは市街地から離れたエリアなので、最寄り駅まで遠く車が欠かせない、近辺に病院や商業施設がないといった問題もあります。住宅を建てても立地条件が悪いと、日常生活で不便を感じる可能性が高いでしょう。

また、事業目的で活用するとしても利用者が少ないため、収益化は難しいかもしれません。

2-4.資産価値が低い

市街化調整区域は開発許可やインフラの問題を抱えているので、土地としての資産価値も低くなりやすい傾向にあります。そもそも活用しにくい土地は需要が低いため、売りに出してもなかなか買い手がつかないかもしれません。

また、市街化調整区域の不動産を購入する際、金融機関から住宅ローン契約を断られる可能性もあります。契約者がローンを返済できない場合、金融機関は抵当権に基づいて物件を差し押さえますが、物件の資産価値が低いと債権を回収しきれないリスクがあるためです。

3.市街化調整区域にもメリットはある?

縁側でくつろぐ家族

市街化調整区域はさまざまな問題を抱えていますが、一方で以下のようなメリットもあります。

  • 土地価格が安い
  • 税金の負担が少ない
  • 落ち着いた環境で生活できる

各メリットについて詳しく解説します。

3-1.土地価格が安い

市街化調整区域に当てはまる不動産は資産価値が低い分、購入する際の土地価格も安い傾向にあります。広さや立地によって変動しますが、一般的に市街化区域の土地より2~3割ほど安くなるケースが多いため、金銭面での負担を減らせることがメリットです。

土地の費用を安く抑えれば、その分だけ建物に費用をかけることができるので、設備やデザインを充実させやすくなります。

3-2.税金の負担が少ない

市街化調整区域の不動産は資産価値が低いので、土地評価額も低めです。不動産を所有している場合に課せられる「固定資産税」は土地評価額に比例して決まるので、税額も低くなりやすい傾向にあります。

また、本来なら固定資産税とセットで納める「都市計画税」が課税されない点もメリットです。

なお、土地評価額(固定資産税を算出するもととなる固定資産税評価額)は、その不動産が属する市町村(東京23区は東京都)によって決定されます。

3-3.落ち着いた環境で生活できる

市街化調整区域は周りに住宅や商業施設が少ないため、一般的な市街地より落ち着いた、静かな環境で生活できる点もメリットです。敷地自体が広く、隣地との距離も離れていることが多いため、騒音問題やご近所トラブルが起こる可能性も低いでしょう。

また、車の交通量が少ないため、交通事故や排気ガスによる健康被害のリスクを抑えられる点も見逃せません。

4.市街化調整区域の不動産を売却するコツは?

市街化調整区域の不動産は、一般的な不動産より売れにくい傾向にあります。スムーズに売却したいなら、それなりの工夫が必要です。

例えば、市街化調整区域の売却実績が多い不動産会社に依頼すると、予算やスケジュールに応じて、適切な売却プランを提示してくれる可能性があります。仲介手数料などのコストはかかりますが、所有し続ける限り毎年固定資産税が発生することなどを考慮すると、売却を検討する価値は高いといえるでしょう。

また、売却前にあらかじめ自治体から開発許可を取得しておけば、購入後にすぐ建物を建てられるようになるので、買い手の需要も高まるでしょう。

ほかにも、市街化調整区域にある不動産の地目が「田」や「畑」なら、宅地ではなく農地として売却するのも一案です。農家または農家志望者にターゲットは限定されますが、農地転用の手続きなしでそのまま活用できるので、一定の需要が見込めます。

なお、土地の売却については、下記の関連記事も併せてご覧ください。

まとめ

市街化調整区域とは、無秩序な市街化を防ぐことを目的に定められた区域区分です。該当エリアには原則として建物を建てることができず、インフラや立地条件に関する問題も抱えているので、なかなか売却できないかもしれません。

一方、土地価格や固定資産税が安い、落ち着いた環境で生活できるというメリットもあります。そのメリットをアピール材料にしつつ、市街化調整区域の性質に合わせた売却プランを検討すれば、売却成功の可能性も高まるでしょう。

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