市街化調整区域とは?建築の可否や土地活用の方法などを徹底解説

市街化調整区域 建築可否と土地活用方法

都市の区域区分の一つに、「市街化調整区域」があります。市街化調整区域に土地を所有している方や、住宅用地などとしての活用を考えている方は、市街化調整区域ならではの規制に注意が必要です。

本記事では、市街化調整区域の特徴や建築の可否を解説するとともに、市街化調整区域における代表的な土地活用方法を紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 都市計画法の概要と市街化調整区域の特徴
  • 市街化調整区域での建築の可否
  • 市街化調整区域での建物を建てない土地活用方法
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1.市街化調整区域とは、都市計画法に基づく区域区分の一つ

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市街化調整区域とは、「市街化を抑制する区域」のことです。乱開発から農地や緑地を守るため、市街化調整区域内では、原則として住宅や商業施設、ビルなどの建物を建てられません。

市街化調整区域を含めた区域区分は、「都市計画法」で定められています。

1-1.都市計画法とは?

都市計画法は、都市の健全な発展や秩序ある整備を図ることを定めた法律です。都市の利用・開発・整備などに関するルールを定めています。

実際に、都市計画法第1条では、以下のように法律の目的が示されています。

この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

引用:“都市計画法第一条”. e-Gov法令検索. (参照2024-04-01)

1-2.都市計画法の区域区分

都市計画法の区域区分には、「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域」の3つがあります。

119_1(都市計画法の区域区分)

市街化区域とは、住宅や商業施設などが密集しており、すでに市街化している区域です。また、おおむね10年以内に率先して市街化すべきとされる区域も、市街化区域に指定されます。

一方の非線引き区域とは、都市計画法上では「区域区分が定められていない都市計画区域」のことを指します。すなわち、市街化区域にも市街化調整区域にも該当しない区域が非線引き区域です。

市街化調整区域とは異なり、市街化区域と非線引き区域には、原則として建物を建てられます。

このような区域区分により、「優先的に市街地にする」「自然環境を守る」などと各エリアの目指す姿が明確になり、メリハリのある都市づくりが可能になります。

参考:“都市計画法”. e-Gov法令検索

2.市街化調整区域の特徴

ここでは、市街化を抑制する市街化調整区域について、具体的にどのような特徴があるのかを紹介します。

2-1.生活するのには向いていない

市街化調整区域のほとんどは、市街地から距離がある、あるいは広大な農地のエリアです。スーパーやコンビニエンスストアなどの施設が周辺になく利便性に欠けることが多く、市街化調整区域に属する土地は、立地が良いとはいえません。

さらに、電気・ガス・水道といったインフラの整備が行き届いていないケースもあり、生活するのにはあまり適していないでしょう。

一方で、市街化調整区域内で暮らすと仮定した場合、周辺には建物が少なく、人や車の往来も限られるため、静かな住環境を確保しやすい点はメリットになります。

2-2.土地価格が安い傾向にある

原則として建物を建てられない市街化調整区域では、前項のような特徴により市場価値が下がるため、土地の価格は安い傾向にあります。

価値が低いと判断される土地は、固定資産税評価額も下がります。結果として、固定資産税の負担も比較的軽くなるでしょう。

なお、固定資産税評価額は、その土地が属する市町村(東京23区は東京都)によって3年に1度、評価額が見直され、決定されます。

3.市街化調整区域で建物を建てるには?

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市街化調整区域で新たに建物を建てるには、土地の面積を問わず「開発許可」が必要です。開発許可とは、宅地の造成や道路の設置などの開発行為をする者に対し、行政が出す許可のことです。

ただし、申請すれば必ず開発許可が下りるわけではありません。市街化調整区域内の開発行為は、都市計画法第34条に定められている基準を満たす必要があります。

そのうえで、自治体との事前協議や開発審査会などを経て、問題ないとみなされれば開発許可が下ります。

一方で、市街化調整区域でも開発許可が不要なケースがあります。代表例は、農業・林業・漁業の従事者の住宅を建てるための開発行為です。

参考:“都市計画法第三十四条”. e-Gov法令検索

4.市街化調整区域では、建て替えや増改築でも開発許可が必要

市街化調整区域では、建物を新築するときだけでなく、すでにある建物の建て替えや増改築時にも、原則として開発許可を受けなければなりません。

建て替えや増改築が不可能ではないものの、一定条件を満たさなければならない点や、規模(建ぺい率・容積率など)に制限がかかる可能性がある点に注意が必要です。

124_2(建ぺい率・容積率)

例えば、建て替えなら「もとの所有者やその親族が住む」「需要があり地域住民の生活に貢献できる」場合などに限り、認められるという特徴があります。「需要があり地域住民の生活に貢献できる」建物の例は、以下のとおりです。

  • 医療施設
  • 高齢者施設
  • 店舗・商業施設
  • 学校
  • ホテル
  • 理美容院

なお、開発許可の条件は自治体によって異なることもあるため、建て替えや増改築を検討している場合は、あらかじめ確認しておきましょう。

参考:“都市計画法第三十四条”. e-Gov法令検索

5.市街化調整区域における建物を建てない土地活用方法

建築資材

市街化調整区域に土地を所有しており、何らかの形で活用したいと考える方もいるでしょう。しかし、前述のとおり、市街化調整区域で建物を建てるのは簡単ではありません。

そこで、下記のような「建物を建てない」土地活用方法も検討しましょう。

119_2(市街化調整区域での土地活用)

  • 資材置き場
  • 駐車場
  • 太陽光発電
  • 墓地・霊園

ただし、活用しようとする土地が農地の場合は、「農地転用」の許可を受ける必要があります。農地転用の許可は、開発許可とは別物です。

なお、農地の種類によって許可条件は異なります。農地転用についての詳細は、「農地法とは?農地の売買・転用時の規制や法改正内容をわかりやすく解説」をご覧ください。

5-1.資材置き場

資材置き場としての土地活用は、建設資材などの関連会社に土地を貸し出し、対価として地代を得る方法です。基本的には土地の管理も任せられるため、ただ土地を貸すだけで良いという手軽さがあります。

大きな収入は望めないかもしれませんが、ランニングコストをかけずに、継続的な収入を得やすい点がメリットです。

5-2.駐車場

建物を建てられない市街化調整区域内の土地でも、駐車場としてなら活用可能です。

駐車場は、「月極駐車場」と「コインパーキング」の2種類に大別されます。特に、月極駐車場の場合は機器の導入も必要ないため、土地活用の初期費用を抑えられるでしょう。

ただし、利便性に欠ける市街化調整区域では、市街地の駐車場のような集客は見込みにくい傾向があります。駐車場経営を始めるなら、活用する土地の周辺で、車の利用者が多いかを見極めることが大切です。

5-3.太陽光発電

集客を気にせず土地を活用したいなら、太陽光発電設備の設置もおすすめです。市街化調整区域は、周辺に高い建物が少ないため、効率的な発電が期待できるでしょう。

地上に直接設置するタイプの太陽光発電設備なら、建物に該当せず開発許可がいりません。

ただし、太陽光発電を始めるにあたり、土地を造成する場合は開発許可が必要です。また、太陽光パネルの破損修理や定期点検など、設備のメンテナンスには手間・費用がかかることに留意しましょう。

5-4.墓地・霊園

市街化調整区域の土地価格は安い傾向にあるため、広めの土地を所有しているなら、墓地・霊園などを運営する会社からの需要が高いと考えられます。資材置き場と同様に、土地を墓地・霊園の関連会社に貸し出し、地代を得る方法で活用可能です。

墓地・霊園として貸し出す場合は、契約期間が数十年以上になると想定されるため、その間土地が使えなくても問題ないか慎重に判断しましょう。

6.土地を売却するのも有効な活用方法

土地活用と聞くと、「何か経営しなければならない」と考える方も多いかもしれません。しかし、事業を行なうだけでなく、土地や既存の建物を売却するのも有効な活用方法の一つです。

売却の場合、継続的な収入は得られませんが、一度にまとまったお金を得られるメリットがあります。制限の多い市街化調整区域内の土地をスムーズに売却するには、優良な不動産会社に仲介を依頼することが重要です。

土地の売買に関する基礎知識を知りたい方は、「【土地売買の基本】売主・買主の流れと費用、上手く進めるコツ」をご覧ください。

また、売却を検討している土地が農地の場合は、「【図解】農地は売却できる?売却の流れや費用などをわかりやすく解説」も併せて参考にしてください。

まとめ

市街化調整区域には、市街化を抑制するという特性上、利便性に欠ける、土地の市場価値が低いといった特徴があります。

市街化調整区域で建物を建てる場合は、建て替えや増改築のケースも含め、原則として開発許可が必要です。建築のハードルが高いため、土地を活用する場合は、建物を建てない方法を検討するとよいでしょう。

また、市街化調整区域内の土地は、売却するのも有効です。不動産の売却をお考えの方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご利用ください。

特に、価格が安い傾向にある市街化調整区域内の土地は、なるべく高く売るためにも複数社に査定を依頼し、比較検討することが大切です。

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