【図解】農地は売却できる?売却の流れや費用などをわかりやすく解説

【図解】農地は売却できる?売却の流れや費用などをわかりやすく解説

農地などの土地を売却したいと思いつつ、「売却の仕方がわからず放置している」方は多いのではないでしょうか。

農地は、一般的な土地と比べて売れない土地と思われがちですが、放置するほど売却しづらくなり、管理費用や税金の負担をしなければならないので、早めの売却がおすすめです。まずは農地売却の流れや、かかる費用を理解することから始めましょう。

この記事を読むとわかること
  • 農地売却が難しい理由
  • 農地売却の流れ
  • 農地売却にかかる費用と税金

カンタン
1分入力

最大6社に一括で査定依頼あなたの不動産いくらで売れる?

\ お持ちの物件を選んでください /

選択してください

\ 「」の所在地を選択してください /

都道府県が選択されていません。

市区町村が選択されていません。

物件種別が選択されていません。

査定をご希望のマンション名を教えてください。

マンション名を選択して▼一括査定依頼スタート▼

「マンション」の検索結果はありませんでした

検索リストにマンション名が無い場合も
査定依頼ができます
下部の「査定依頼スタート」からお進みください

上部マンション名を入力いただくと
マンションの候補が表示されます

1.【図解】農地の売却が難しい3つの理由

農地売却が難しい3つの理由

図解の通り、農地売却が難しい理由は以下の3つになります。

  • 農地法による購入者の制限
  • 農家の高齢化
  • 農地の宅地転用には許可が必要

以下、一般的な土地と比べて売れづらい理由を解説しますので、ぜひ理解しておきましょう。

1-1.農地法による購入者の制限

農地法によって、「農地の購入が可能なのは農業委員会から許可を受けた農家 」と定められているため、購入者に制限がかかります。

「農業委員会から許可を受けた農家」とは、個人の農家、または農地所有適格法人(農業を行える法人)に限定されています。

そのため、これから農業を始めたいと考えている方が現れても、すぐに売却することは困難です。農地を維持することは、国の食糧政策に影響を及ぼすため、簡単に農業以外の使い方がされないように、農地法で購入者を規制しているのです。

1-2.農家の高齢化

農家の高齢化が進み、買い手が見つからない農地が増えています。

農林水産省によると、2020年の農業従事者のうち約70%が65歳以上を占めており、49歳以下の若年層は約11%の割合でした。 年齢階層別基幹的農業従事者

出典:農林水産省.”変化する我が国の農業構造”.(参照2024-04-25)

農家の高齢化が進むと、新たに農地を購入する農業従事者が減り、売却が難しくなる可能性があります。さらに、農家の後継ぎ不足も重なり、農業を仕事としている方の人口も減少しています。

高齢化や後継ぎ不足問題により、売却できずに放置されている農地が多く存在しているのです。

1-3.農地の宅地転用には許可が必要

農地を宅地転用して売却するには、農業委員会の許可が必要です。

宅地転用とは、農地を建物や住宅などに使用するための土地に、地目(土地の種類)を変更することです。農地を宅地転用できれば、一般的な土地と同様に幅広く買い手を探せて、農地のまま売却するよりも売れやすい傾向があります。

しかし、どんな農地でも転用できるわけではなく、特定の基準を満たしている農地にしか許可が出ません。

農地は、食料を生産する重要な土地と定められているため、簡単に許可が下りないように厳しく規制されています。

参考:農林水産省「農地転用許可制度について」

2.それでも農地は売却すべき!

男性の指

農地法による購入者の制限や、農家の高齢化が進んで売却しづらい現状ですが、それでも農地は売却すべきといえます。

理由は、以下のとおりです。

  • 農地が荒廃するとより売却しづらくなる
  • 固定資産税が毎年かかる

上記のデメリットについて、詳しく解説します。

2-1.農地が荒廃するとより売却しづらくなる

農地が荒廃すると、雑草などが生い茂り、害虫が発生しやすくなるので、放置するほどより売却しづらくなる傾向があります。

長い期間放置すると、農地として復旧するのにお金がかかる上に、時間や手間もかかり、売却のタイミングを逃してしまいます。また、害虫や鳥などの住処になることで、近隣農家に迷惑がかかり、トラブルに発展するかもしれません。

後回しにすると、より売却が困難になるため、使用しない農地があれば早めに売却活動を行いましょう。

2-2.固定資産税が毎年かかる

使わない農地でも、固定資産税が毎年かかります。国としても、将来的に耕作する予定のない「耕作放棄地」や「遊休農地」を減少させることは課題であり、固定資産税の引き上げが行われています。

こうした背景もあり、平成29年の税改正により、耕作放棄地と判断された農地は、固定資産税が通常の農地よりも約1.8倍かかることが定められました。

耕作放棄地を所有しているだけで、固定資産税を毎年支払う必要があり、負担が増え続けていくので、早めに手放すことをおすすめします。

参考:農林水産省「荒廃農地の現状と対策」

3.農地の売却方法

家のマークとメモを取っている男性

農地の売却方法には、以下の2つがあります。

  • 農地転用して売却する
  • 農地のままで売却する

自分が所有している農地によって、転用できるかどうかは変わります。まずは、農地の基本区分を解説しながら、2つの売却方法についても紹介します。

3-1.農地の基本区分を知る

農地の基本区分は、農地の条件や市街地化の状況から判断して、以下の5種類に分かれています。区分ごとに農地転用の許可の基準が定められており、その審査する基準を「立地基準」と言います。

■農地区分5種の転用許可の要件

区分 主な要件 許可の方針
農用地区域内農地 市区町村が定めている農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 原則不許可
甲種農地 市街化調整区域内の
・農業公共投資後8年以内の農地
・集団のうちで高性能農業機械での営業可能農地
原則不許可※1
第一種農地 ・集団のうち(10ha以上)
・農業公共対象農地
・生産力の高い農地
原則不許可※2
第二種農地 ・農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力の低い農地
・市街地として発展する可能性がある農地
第三種農地に立地困難の場合などに許可※3
第三種農地 ・都市的整備がされた区域内の農地
・市街地にある農地
原則許可

※1.土地収用法認定事業等公益性が高い事業(第一種農地の場合よりも更に限定)の用に供する場合等は許可
※2.土地収用法認定事業等公益性が高い事業の用に供する場合等は許可
※3.第三種農地等に立地困難な場合に許可

農用地区域内農地は、通称「青地」と呼ばれ、5種類の中で最も制限が厳しい農地です。自身の農地が該当していれば、転用はまずできないと考えましょう。

甲種農地は、市街化調整区域内の農地の中でも、特に良好な営農条件を有している土地です。原則転用はできませんが、道路や空港、学校や公園などの公益性の高い事業に転用する際は、許可される場合があります。

第1種農地は、良好な営農条件を有しており、10ヘクタール以上の土地で、農業公共投資対象の農地のことです。原則転用は不可ですが、甲種農地と同様に、公益性の高い事業に転用するのであれば、許可されるケースもあります。

第2種農地は、生産性の低い小集団の農地や、市街化が見込まれる農地のことです。具体的には、市役所や鉄道の駅などから500m以内にある農地で、周辺の他の土地で事業の目的を達成できない場合や、第3種農地に立地困難な場合に許可されます。

第3種農地は、都市的施設が整備された区域内、または市街地区域内にある農地のことです。具体的には、駅や市町村役場などの公共施設から300m以内にある農地で、原則許可されます。

3-2.農地転用して売却する

農地転用して売却する場合は、農家以外の買い手を探せるので、早く売却活動を終わらせられる可能性があります。

しかし、一般的な土地とは違い、農地転用の申請手続きを行う必要があるため、不動産会社を選ぶ際は農地転用に強い会社と契約するのがおすすめです。

買い手が見つかれば、農業委員会に農地転用する旨の許可を申請します。
農地の基本区分によって転用できる土地は違うので、自分の農地の種類をきちんと確認しておきましょう。

3-3.農地のままで売却する

農地のままで売却すると、転用の申請や手続きを省けて手間なく売却できますが、農家か農地所有適格法人(農業を行える法人)の中から買い手を探す必要があります。

具体的な買い手を見つける方法は、以下のとおりです。

  • 農協に問い合わせる
  • 農業委員会に相談する
  • 近隣農家に購入してもらう
  • 農地売買を専門とする不動産会社に仲介を依頼する

農地の区分次第では、農業委員会に買い手をあっせんしてもらえます。
あっせんにより農地を売却する場合は、譲渡所得から800万円の特別控除を受けられます。

ただし、あっせん依頼できる農地は、農用地区域内の農地(市区町村が定めた生産性の高い農地)のみです。

不動産会社に仲介を依頼する場合は、農地の売買実績がある会社を選ぶとスムーズです。
農地は、宅地売却よりも複雑なため、一般的な不動産会社だと売却が長引いたり、適切なアドバイスが貰えなかったりする可能性があります。

また、農地を売却する際は、農業委員会に許可の申請が必要です。
申請には、買い手の営農計画書などの資料を提出しなければいけないため、買い手が決まったら申請を行います。
許可が下りたら農地の売却は完了です。

4.農地売却の流れ

のうち売却の流れを書いている男性

農地売却の流れは、以下の2つの内容によって手順が違います。

  • 農地転用して売却する場合の流れ
  • 農地のまま売却する場合の流れ

自身の状況に合わせて、参考にしてください。

4-1.農地転用して売却する場合の流れ

農地転用して売却する場合の流れ

まずは、自分が所有している農地の基本区分を確認しましょう。
対象地を管理している農業委員会事務局や、市町村の農政課や農林課に問い合わせることで確認できます。このとき、併せて売却先についても相談します。

また、農地転用できると分かったら、知り合いにも声をかけ買い手を探しましょう。

買い手が見つかれば売買契約を締結します。
注意点として、「農業委員会の許可が下りなければ契約解除となる」ことを了承のもと売買契約を結びましょう。農業委員会に許可申請を行う前に売買契約を無図部理由は、購入者が不明で売買契約の成立が不透明な場合、申請が通らない可能性が高くなるためです。

売買契約の締結後、農業委員会に農地転用の許可申請(農地法第5条の許可)を行います。
申請の際には、登記事項証明書や位置図、公図の写しなどの書類が必要になり、自治体によって必要書類が違うので、事前に各自治体のHPを確認しておきましょう。

農業委員会から許可が下りたら、都道府県知事から許可証が交付されます。転用許可が下りなければ、売買契約が取り消される点に注意しましょう。

許可証が交付されたら、買い手に農地を引き渡します。売買代金を受け取り、所有権移転登記(所有権を明確にするための登記)を行えば完了です。

4-2.農地のまま売却する場合の流れ

農地のまま売却する場合の流れ

まずは、農地を購入してくれる買い手を探します。
土地の用途が農地の場合は、購入できるのは農家に限定されるため、知人や近隣農家から買い手を探したり、農協に依頼したりして、買い手を紹介してもらいます。

買い手が見つかれば売買契約を締結しましょう。
農地転用して売却する場合と同様に、「農業委員会の許可が下りなければ契約解除となる」ことを了承のもと売買契約を結びます。

売買契約の締結後、必要書類を準備して、農業委員会に許可申請(農地法第3条の許可)を行います。書類には、登記事項証明書や位置図、公図の写しなどが必要になり、自治体によって必要書類が違うので、事前に各自治体のHPを確認しておきましょう。

農業委員会から許可が下りると、許可証が交付されます。許可が下りなければ、売買契約が取り消される点に注意が必要です。

許可証が交付されたら、買い手に農地を引き渡します。売買代金を受け取り、本登録となる所有権移転登記(所有権を明確にするための登記)を行えば取引は完了です。

5.農地の売却にかかる費用と税金

農地売却にかかる費用・税金

農地の売却にかかる費用と税金は、以下のとおりです。

費用項目 内容
仲介手数料 不動産会社に支払う手数料
行政書士への依頼報酬 行政書士に各許可の申請を依頼した場合にかかる費用
譲渡所得税 売却時の利益に対してかかる税金
印紙税 売買契約書に貼る印鑑代

各費用と税金の概要について解説します。

5-1.仲介手数料

仲介手数料は、不動産会社に成功報酬として支払う手数料のことです。

不動産会社に支払う仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限が定められていますが、農地売却の場合は規定の対象外のため、自由に料金を設定できます。

しかし、農地も一般的な土地と同様に、宅地建物取引業法の規定に準じることが多いです。

仲介手数料の目安は、以下のとおりです。

■仲介手数料の上限目安

売却価格 仲介手数料
200万円以下の部分 売買額×5%(+消費税)
200万円を超え400万円以下の部分 売買額×4%+2万円(+消費税)
400万円超えの部分 売買額×3%+6万円(+消費税)

なお、不動産会社を介さずに個人間で行う取引や、不動産会社が土地を直接買い取ってくれる「買取」の場合は、仲介手数料は発生しません。

5-2.行政書士への依頼報酬

行政書士に各許可の申請を行うと、依頼報酬がかかります。

たとえば、農地売却の許可申請の場合は約5万円、農地転用の許可申請の場合は、市街区域内地域なら約10万円、市街化調整区域なら約15万円です。

なお、知識があって、自分で申請できるのであれば費用はかかりませんが、農地転用の許可申請は、書類の取得や作成が複雑なため、行政書士に依頼すると安心です。

5-3.譲渡所得税

譲渡所得税とは、売却時に発生した「利益(譲渡所得)」に対してかかる税金のことです。
利益に対して、所得税、住民税、特別復興所得税が課税されます。

譲渡所得の計算方法は、以下のとおりです。

譲渡所得の計算式

譲渡所得=農地の売却額−(農地の取得費+農地売却にかかった費用)

農地の取得費(土地の購入代金や購入手数料)が不明な場合は、農地売却額の5%を取得費として計上します。

譲渡所得が算出できたら、税率をかけ合わせます。税率は、土地の所有期間で異なり、所有期間が5年以下の「短期譲渡所得」なら39.63%、所有期間が5年以上の「長期譲渡所得」なら20.315%です。

■短期譲渡所得と長期譲渡所得

所有期間 所得税 住民税 特別復興所得税 合計
短期譲渡所得(所有期間が5年以下) 30% 9% 0.63% 39.63%
長期譲渡所得
(所有期間が5年以上)
15% 5% 0.315% 20.315%

また、農地売却については、一定の条件を満たせば、以下の特別控除を受けられます。

■農地売却で利用できる控除額

利用目的 控除額 適用条件
農地のまま売却 800万円 ・農用地区内の農地である
・農用地利用集積計画または農業委員会のあっせんなどでの売却
・農地中間管理機構または農地利用集積円滑化団体への売却
農地のまま売却 1,500万円 農用地区内の農地を、農地中間管理機構との買入協議により売却
農地転用して売却 5,000万円 公共事業や区分整理などで売却

参考:農林水産省「農地を売った場合の税金」

5-4.印紙税

印紙税一覧
売却代金 本則税率 軽減税率
10万円を超え50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え100万円以下のもの 1千円 500円
100万円を超え500万円以下のもの 2千円 1千円

500万円を超え1千万円以下のもの

1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

出典:国税庁.”不動産売買契約書の印紙税の軽減措置”.(参照2024-04-25)

なお、軽減税率の措置は、令和4年3月31日までとされていましたが、税制改正により2年間延長されて、令和6年3月31日までであれば軽減税率の対象です。軽減税率とは、標準税率よりも低い税率を適用する措置のことです。

まとめ

農地を売却すべき理由や、売却の流れについて解説しました。

農地の売却は、農地法により購入者に制限がかかることや、農家の高齢化、転用するには簡単に許可が下りないことから、一般的な土地よりも売却が難しい傾向にあります。

しかし、放置しておけば、農地が荒廃してより売れづらくなる上に、固定資産税を毎年負担しなければならないので、早めの売却がおすすめです。農地転用して売却する際も、許可の申請や必要書類の準備など、通常の土地売却よりも複雑なことが多いです。

そのため、農地を売却する場合は、まずは農業委員会の窓口に相談し、農地売買を得意とする不動産会社を選ぶことをおすすめします。