区分所有とは?区分所有者が知っておくべき権利や禁止事項を解説

区分所有とは 権利や禁止事項を解説

区分所有とは、建物の一部分を所有することを指しますが、すべての建物で認められているわけではありません。区分所有が可能な建物は「区分所有建物」と呼ばれ、所有するにあたり、一戸建てのような住宅とは異なる扱いとなります。

本記事では、区分所有の定義のほか、区分所有建物における権利や禁止事項などを紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 区分所有の定義
  • 区分所有建物の専有部分と共用部分、土地の権利について
  • 区分所有法における禁止事項
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1.区分所有とは?

設計図と模型

区分所有とは、複数戸からなる建物の一部分を所有することです。区分所有の可否は建物の構造によって異なり、「建物の区分所有等に関する法律」が定める区分所有建物に該当する建物でのみ、区分所有が認められます。

建物の区分所有等に関する法律は「区分所有法」や「マンション法」とも呼ばれ、建物の区分所有について次のように定義しています。

(建物の区分所有)
第一条 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。

引用:“建物の区分所有等に関する法律 第一条”. e-Gov法令検索

2.区分所有建物とは?

区分所有建物とは、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)が定める次の2つの条件を満たす建物をいい、代表的なものに分譲マンションが挙げられます。

  • 構造上の独立性がある
  • 利用上の独立性がある

参考:“建物の区分所有等に関する法律 第一条”. e-Gov法令検索

2-1.区分所有建物の条件

一棟のなかに、住居や店舗などの独立した空間が複数ある建物は、区分所有建物です。

区分所有

ただし、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)が定める、上に挙げた2つの条件(「権利上の独立性がある」「利用上の独立性がある」)を満たさない場合は、区分所有建物と認められません。

参考:“建物の区分所有等に関する法律 第一条”. e-Gov法令検索

2-1-1.構造上の独立性がある

構造上の独立性とは、壁や床、天井などで各部屋が完全に区別されている状態を指します。廊下と部屋といった建物の各部分が、襖や障子、間仕切りなどによって仕切られているだけでは、構造上の独立性があるとはいえず、区分所有建物と認められません。

例えば、廊下と部屋の仕切りや、上下階につながる階段の仕切りに襖や障子が使用されている日本家屋のような建物は、各部屋が独立していても区分所有建物とは認められないということです。

ただし、各部屋が常時遮断されている必要はなく、店舗などのようにシャッターやガラスで仕切られて独立性を保てる場合は、区分所有建物として認められます。

2-1-2.利用上の独立性がある

利用上の独立性とは、各部屋が独立して一定の用途に使用できる造りとなっている状態を指し、この「一定の用途」には住居だけでなく店舗や事務所、倉庫なども含まれます。

具体的には、各部屋が独立した出入り口を備え、室内から屋外へ直接出入りできる構造です。分譲マンションや商業ビルのように、外部への出入りに階段やエレベーターを使用する場合でも利用上の独立性があるとみなされ、区分所有建物となります。

しかし、外部への出入りにほかの専有部分を通らなければならない建物の部分については、利用上の独立性がないものとみなされ、区分所有建物となりません。

2-2.区分所有建物に該当する建物

前述のように、区分所有建物は住居だけに限りません。具体的には、以下のような建物が該当します。

  • 分譲マンション
  • 商業店舗
  • オフィスビル
  • 倉庫
  • 二世帯住宅 など

ただし、居住者が建物の一部を所有することを前提としていない賃貸マンションやアパートなどは区分所有建物に該当せず、区分所有も不可となります。

3.区分所有建物の「専有部分」と「共用部分」の違い

エントランス

区分所有建物は専有部分と共用部分に分かれ、それぞれ所有権の扱いが異なります。本章では、以下の内容について解説します。

  • 専有部分とは?
  • 共用部分とは?
  • 共用部分でも専用使用が認められる「専用使用部分」とは?

専有部分と共用部分

3-1.専有部分とは?

専有部分とは、区分所有建物のうち、構造上で独立している部分のことです。分譲マンションでは、住居となる各戸が専有部分にあたります。

また、専有部分を所有できる権利は「区分所有権」、専有部分を所有する方は「区分所有者」と呼ばれます。

分譲マンションの場合、専有部分はマンション管理規約に則った範囲で自由に設備機器の取り替えやリフォームが可能なため、部屋ごとに異なる内装になっていることも珍しくないでしょう。

参考:“建物の区分所有等に関する法律 第二条”. e-Gov法令検索

3-1-1.専有部分に含まれるもの

建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)では専有部分の明確な定義がなく、専有部分の規定はマンションごとにマンション規約で定められるケースが少なくありません。

一般的には、床や壁、天井などで区切られた各部屋の内側に存在する部分は、専有部分となります。例として、分譲マンションで専有部分に含まれるものには、以下のような場所が挙げられます。

  • 玄関ドアの内側の塗装
  • 玄関ドアの内側の鍵部分
  • 室内の床や壁、天井の内装(畳、フローリング、壁紙 など)
  • 室内にある住宅設備機器
  • 室内にある戸や襖
  • 室内にある収納スペース(クローゼット、押入れ など)
  • キッチン
  • レンジフード
  • 洗面台
  • 浴室
  • トイレ など

3-2.共用部分とは?

共用部分とは、専有部分とは逆に、区分所有者が共同で利用する部分のことです。例えば、専有部分に含まれない床・壁・天井、共用廊下、エレベーターなどはすべて共用部分にあたります。

共用部分は区分所有者全員で共有されており、共用部分の持分を有する権利は「共有持分権」と呼ばれます。

共用部分の持分の割合は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)により、専有部分の床面積の割合によって定められているため、基本的には専有部分の割合が大きい区分所有者ほど、共用部分の持分割合も大きくなります。

なお、共用部分は区分所有者全員で所有されているため、居住者の独断でリフォームなどを行なうことはできません。

参考:
“建物の区分所有等に関する法律 第十四条”. e-Gov法令検索
“建物の区分所有等に関する法律 第二条”. e-Gov法令検索

3-2-1.共用部分に含まれるもの

共用部分には、法律によって共用部分と定められる部分と、マンション管理規約によって定められる部分があり、それぞれ以下のように区別されています。

  • 法律上で定められた共用部分:法定共用部分
  • マンション管理規約で規定された共用部分:規約共用部分

前述のとおり、法定共用部分は法律に則って区分されるためマンションごとの違いはありませんが、規約共用部分はマンションによって扱いが異なる点に注意しましょう。

法定共用部分に含まれるもの 専有部分に含まれない躯体部分(壁・床・天井・柱 など)
エントランス
通路、廊下
階段
屋上
エレベーター
建物の基礎
建物の外壁
建物の電気関連設備
建物のガス関連設備 など
規約共用部分に含まれるもの 集会室
管理用倉庫
管理人室
駐車場 など

マンション管理規約はマンションごとに定められますが、作成の際には法律のほか、国土交通省の「マンション標準管理規約」が参考にされます。

参考:“マンション標準管理規約(単棟型)”. 国土交通省. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

3-3.共用部分でも専用使用が認められる「専用使用部分」とは?

共用部分のうち、特定の区分所有者の使用が認められる部分を「専用使用部分」と呼びます。

専用使用部分には、主に以下のような場所が該当し、特定の区分所有者のみが使用できる専用使用権が設定されています。

  • 窓ガラス、窓枠
  • ベランダ、バルコニー
  • 室外機置場
  • 玄関ドアの外側、玄関ポーチ
  • インターホン
  • 専用庭 など

これらは通常、特定の区分所有者以外の方の使用は認められていませんが、例えばベランダやバルコニーは、火災などの万が一の場合に住民の避難通路として利用されます。そのため、勝手に改造することはできません。

専用使用部分でリフォームや補修の必要がある場合、誰が費用を負担するのかは、マンション管理規約から確認できます。

参考:“マンション標準管理規約(単棟型)”. 国土交通省

4.区分所有建物の土地の権利はどうなる?

広場

通常、土地と建物は別々に登記されますが、分譲マンションのような区分所有建物では、敷地権により建物の専有部分と区分所有者が持つ土地がまとめて登記されます。

区分所有建物が建つ土地に対する権利を「敷地権」、専有部分や土地を利用できる権利を「敷地利用権」と呼びます。敷地権があることで、区分所有建物の土地と建物の権利が分散せず、権利関係が明確になります。

参考:
“○「区分所有建物 「敷地権」とは,どのようなものですか?”. 法務局

“建物の区分所有等に関する法律 第二条”. e-Gov法令検索
“建物の区分所有等に関する法律 第二十二条”. e-Gov法令検索

敷地権について詳しく知りたい方は「敷地権とは?マンションの売買や相続で押さえるポイント」もご覧ください。

5.区分所有法における禁止事項

建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)では、区分所有建物の使用や処分に関する定めがあり、次のような行為が禁止されています。

  • 専有部分を無制限に使用すること
  • 専有部分と共用部分を分けて売ること
  • 専有部分と敷地利用権を分けて売ること

参考:“建物の区分所有等に関する法律”. e-Gov法令検索

5-1.専有部分を無制限に利用すること

専有部分は区分所有者が占有して使用できますが、持ち家の一戸建てのように制限なく自由に利用できるわけではありません。

建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の第6条では、区分所有者の権利義務について次のように定められています。

(区分所有者の権利義務等)
第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

引用:“建物の区分所有等に関する法律 第六条”. e-Gov法令検索

専有部分の利用で制限される内容はマンションごとに異なりますが、主に以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 住宅以外の用途への制限
  • ペット飼育の制限
  • リフォームの制限
  • 楽器使用の制限 など

5-2.専有部分と共用部分を分けて売ること

建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の第15条では、専有部分と共用部分を切り離して処分することが禁止されています。

(共用部分の持分の処分)
第十五条 共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
2 共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。

引用:“建物の区分所有等に関する法律 第十五条”. e-Gov法令検索

例えば、分譲マンションの専有部分をAさんに売却し、バルコニーや専用庭のみをBさんに売却するといった行為は、法律違反となり認められません。

5-3.専有部分と敷地利用権を分けて売ること

建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の第22条では、専有部分と敷地利用権を切り離して処分することが禁止されています。

(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。

引用:“建物の区分所有等に関する法律 第二十二条”. e-Gov法令検索

例えば、分譲マンションの専有部分をAさんに売却し、敷地利用権のみをBさんに売却するといった行為は、マンション管理規約で特別な規約が設けられていない限り不可となります。同様に、敷地利用権のみに抵当権を設定し、敷地利用権を借入金の担保とするといった行為も認められていません。

まとめ

分譲マンションのような区分所有建物では、専有部分の区分所有権や共用部分の共有持分権、敷地利用権など、さまざまな権利が定められています。

一戸建てのような無制限の利用や、専有部分と共用部分などを分けて売る行為は法律で禁止されているため、知らずに法律違反をしてしまうことがないよう注意しましょう。

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