瑕疵とは?種類や具体例、不動産取引におけるトラブルを防ぐ方法も解説

瑕疵とは 種類と具体例を紹介

新しい住まいで生活を始めた矢先、雨漏りがする、床が傾斜している、といった欠陥が見つかることもあるでしょう。このような欠陥のことを瑕疵(かし)と呼びます。

本記事では、不動産における瑕疵の概要や、瑕疵の種類、よくある具体例3選のほか、トラブルの予防法、住宅瑕疵担保履行法の内容などについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • 不動産における瑕疵とその種類
  • よくある瑕疵の具体例3選とトラブルの防ぎ方
  • 瑕疵があった場合の法的責任
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1.不動産における、瑕疵(かし)とは?

瑕疵(かし)とは、一般的に傷や欠点などを意味する言葉ですが、不動産における瑕疵とは、土地・建物に生じた欠陥のことを指します。

不動産の瑕疵の有無は、その物件が一般的に備えているはずの性能を備えているか、契約者の要望・要件をクリアしているか、といった点から判断します。

また、民法では住宅の売買や注文住宅の新築、増改築(リフォーム)などの請負工事において瑕疵が見つかった場合の規定も設けています。

参考:“民法 第五百六十二条”. e-Gov法令検索

2.不動産における瑕疵の種類

家と虫メガネ

土地や建物の瑕疵は、「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「環境的瑕疵」の3種類に分類できます。

2-1.物理的瑕疵

物理的瑕疵とは、対象物件の土地や建物自体にある看過できない物理的な欠陥のことを指します。

物理的瑕疵には、以下のようなものがあります。

具体例
建物の瑕疵 床の傾斜
給排水管の詰まりや故障
雨漏り
壁のひび割れ
土地の瑕疵 有害物質による土壌汚染
ゴミなどの地中埋設物
地盤の歪み

また、外見からはわからない物理的瑕疵を「隠れた瑕疵」と呼びます。具体的には、屋根の一部の損傷による雨漏りや、建物の基礎部分のシロアリ被害などが該当します。

隠れた瑕疵について、より詳細な情報が知りたいという方は「隠れた瑕疵のリスク回避のため売主が知っておくべき3つの対策」をご確認ください。

2-2.心理的瑕疵

心理的瑕疵とは、物件の性能や機能に問題がなくても、「ここには住めない」「住みたくない」といった抵抗感や嫌悪感を与える瑕疵のことです。いわゆる「事故物件」は、心理的瑕疵のある物件といえます。

心理的瑕疵の具体例は、以下のとおりです。

  • 過去にその物件で自殺・事故死・殺人などの事件や事故があった
  • 直接的な被害はないものの、反社会的勢力の事務所などが近所にある

心理的瑕疵は、個人の感じ方によるところが大きいため、明確な基準はありません。どうしても不安だという方は、事故物件情報サイトなどで過去のトラブルを調べてみることをおすすめします。ただし、こういったサイトがすべての情報を網羅しているわけではなく、また誤情報が記載されている場合もあるため、参考程度に捉えるとよいでしょう。

2-3.環境的瑕疵

環境的瑕疵とは、環境的な要因で不快感や嫌悪感を与える瑕疵のことです。

環境的瑕疵の具体例は、以下のとおりです。

  • 近所にゴミ処理場や火葬場、墓地、工場などがある
  • 近隣の工場などから騒音・異臭がする
  • 鉄道や高速道路などによる騒音や振動がある

環境的瑕疵は、物件の立地条件や周辺環境によって発生します。心理的瑕疵のように実害はないものの、個人の感じ方によって瑕疵になり得るものもあれば、騒音や異臭のように、快適な生活を直接的に害するものもあります。

3.よくある瑕疵の具体例3選

ケース

本章では、瑕疵にまつわるよくあるトラブル3選を紹介します。

3-1.土地が都市計画道路に指定されていた

都市計画道路とは、都市計画によって計画された道路のことをいいます。これには事業化されていない予定地も含まれており、工事が完了すれば、道路法による国道や県道、市町村道になります。

こうした都市計画道路の区域内にある土地に建築物を建築するには、都市計画法第53条に基づいて、都道府県知事等による許可が必要です。

また、建築できる建物は、以下のすべてに該当するもののみです。

  • 2階建て以下
  • 地階を有しない
  • 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造、その他これらに類する構造

さらに、自治体より買取の申し出があった際には、その協議に応じる必要があるほか、該当する土地を有償で譲渡するには、都道府県知事、または市長への届出が必須です。

参考:“都市計画法”. e-Gov法令検索

このように、都市計画道路の区域内にある土地にはさまざまな制限があるため、売買後にトラブルに発展しやすいので注意が必要です。

3-2.入居後に雨漏りに気が付いた

住宅を購入して新生活を始めてから、雨漏りに気が付くケースもあります。雨漏りは、住宅の屋根や外壁、開口部、柱などの「雨水の侵入を防ぐ部分」の欠陥によって生じる場合が多く、入居後に雨漏りが発覚した場合は、瑕疵とみなされるのが一般的です。

このほか、許容範囲を超えた家の傾きなど、住人の日常生活に支障をきたし、「住宅の通常の機能を備えているとはいえない」と判断される場合にも、瑕疵が認められます。

3-3.施工不良が見つかった

新築住宅の屋根をはじめ梁や柱、壁、土台など、建物の構造耐力上の主たる部分に施工不良などが認められた場合にも、瑕疵があるとみなされます。

特に中古住宅では、建物の構造上重要な部分の木材の腐食、シロアリ被害のほか、給排水管の損傷などが問題になることが多いです。

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また中古物件では、アスベスト(石綿)が利用されていないかも必ず確認しましょう。

アスベスト(石綿)とは、「繊維状ケイ酸塩鉱物」のことで、細かい繊維を吸い込むと、肺がんや石綿肺(じん肺の一種)、悪性中皮腫などを引き起こすことがわかっています。

以前は断熱材や絶縁材などに広く用いられていましたが、2006年(平成18年)以降、アスベストは全面禁止となりました。宅地建物取引業法に基づく重要事項説明でも、アスベストに関する説明が義務付けられています。

参考:
“アスベスト全面禁止”. 厚生労働省
“宅地建物取引業法”. e-Gov法令検索

重要事項説明の詳細な内容やチェックすべきポイントについては、「重要事項説明とは?詳しい内容と買主がチェックすべき重要項目を全解説」をご一読ください。

4.瑕疵があった場合、法的責任は誰がとる?

地盤調査報告書

ここでは、土地や建物に瑕疵があった場合の法的責任の所在について解説します。

4-1.契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは、2020 年(令和2年)4月1日に施行された改正民法により新たに設けられた制度で、改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。

瑕疵担保責任では、買主が売買契約前に「通常の注意を払っても気付くことができなかった瑕疵(主に隠れた瑕疵)」に対してのみ、売主が責任を負うことになっています。

しかし、契約不適合責任では、「住宅の種類や品質に関して契約の内容に適合しない状態」に対して、売主が責任を負うことになり、売主側の責任の範囲が拡大したといえます。

契約不適合責任で買主の権利として認められているものは、以下の4つです。

買主の権利 概要
履行の追完請求 契約に適合しない傷や欠陥、施工不良があった場合、契約に適合した内容の実現を求める権利のこと。補修請求・代替品引き渡し請求・不足分の引き渡し請求ができる。
代金減額請求 あらかじめ定められた期間内に契約に適合した内容が実現されない場合、買主は代金の減額を請求できる。ただし、減額できるのは、不適合の程度に基づいた金額のみ。
損害賠償請求 住宅の施工不良を理由として追完請求をしたが売主が応じなかった場合、買主は損害賠償請求ができる。進展がない場合は調停や裁判になることもある。
契約の解除 条件が揃えば解除できる。ただし、不適合の内容が軽微な場合は適用されないケースもある。

参考:“民法 第二款 売買の効力”. e-Gov法令検索. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

これらの権利を行使するには、引き渡し後10年以内、かつ不適合を知ったときから1年以内に、不適合の存在を売主に対して通知しなければなりません。

ただし、契約不適合責任の損害賠償請求については、下記のような留意点があります。

留意点 詳細
売主による過失責任がある場合のみ損害賠償請求が可能 売主の故意や過失がない場合、損害賠償の責任を負わない。
損害賠償請求が認められる範囲 信頼利益:
登記費用や契約締結にかかった費用など、契約が無効になった場合の損害(※)
履行利益:
営業利益や転売利益など、契約が成立した場合に得られたはずの利益
その他の方法で契約不適合の事案が回復された場合は損害賠償請求不可 例えば、住宅の床材が契約とは異なっており、代金減額請求によって回復した場合、床の張替え費用の損害賠償請求は不可。

(※)旧民法では、信頼利益のみが請求範囲

4-2. 住宅の品質確保の促進等に関する法律上の瑕疵担保責任とは?

住宅の品質確保の促進等に関する法律(以降、「品確法」)上の瑕疵担保責任とは、売買契約によって引き渡しをした目的物の種類または品質が、契約の内容に適合しない場合は、売主が責任を負うことになるというものです。

新築住宅のうち、品確法上の瑕疵担保責任の対象となるのは、以下の部分と定められています。

対象 詳細
構造耐力上主要な部分 下記のうち、建物の自重、積載荷重、水圧、風圧、土圧、積雪、または地震などの衝撃や振動を支える部分

住宅の基礎、基礎ぐい、土台、柱、壁、小屋組、斜材、横架材、床版、屋根版など

雨水の浸入を防止する部分 住宅の屋根、外壁、開口部など

参考:“住宅の品質確保の促進等に関する法律”. e-Gov法令検索. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

品確法上の瑕疵担保責任の追及方法は、民法上の契約不適合責任と同じく、履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除の4種類です。

なお、品確法上の瑕疵担保責任の期間は、新築住宅の引き渡しのときから10年間と長く、注文者または買主に不利となる特約を付けることはできません。

5.不動産の瑕疵から消費者を守る住宅瑕疵担保履行法について

購入した住宅に傷や欠陥があった場合、買主としては「売主に責任を取ってほしい」「何かしらの補償をしてほしい」と思うのは自然なことでしょう。

そこで本章では、買主(消費者)を守る住宅瑕疵担保履行法について解説します。

5-1.住宅瑕疵担保履行法の概要

住宅を購入した方の利益を保護することを目的に、2007年(平成19年)3月「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(住宅瑕疵担保履行法)」が成立しました。

これにより、2009年(平成21年)10月以降、住宅事業者は十分な修理費用を用意したうえで新築住宅を引き渡さなければならない、と規定されました。

この背景には、2005年(平成17年)に発覚した構造計算書偽装問題があります。この法律は、住宅事業者が倒産して修理ができなくなった場合、購入者が自費で修理、建て替えをしなければならない状況を回避するためのものです。

参考:“特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律”. e-Gov法令検索

住宅事業者は、傷や欠陥に対する10年間の住宅瑕疵担保責任を負うため、万一の場合の修理費用を確保するために保険に加入するか、もしくは供託(金銭、有価証券などの財産をあらかじめ国家機関である供託所に提出・保管すること)が求められます。

5-2.保険制度

新築住宅の引き渡し後10年以内に傷や欠陥があった場合は、補修を行なった住宅事業者に保険金が支払われる制度のことを保険制度といます。

ただし、これは国土交通大臣指定の保険法人が提供する、「新築住宅の保険」を利用した住宅のみが対象です。

なお、住宅事業者が倒産してしまって補修が行なえない場合、発注者や買主は保険法人に対し、瑕疵の補修などにかかる費用を請求すること(直接請求)が可能です。

購入する住宅の保険加入の有無は、契約時にしっかりと確認することが重要です。

5-3.供託制度

新築住宅に傷や欠陥があれば、住宅事業者は補修を行なう責任があります。しかし、万が一その住宅事業者が倒産した場合、この責任を果たすことはできません。

そこで、倒産などの不測の事態に備えて、住宅事業者が法律で定められた額の保証金を、あらかじめ法務局などの供託所に預けておく制度のことを、供託制度といいます。

実際に、住宅事業者が倒産などで責任を負えない場合には、消費者(購入者)は、その補修などに必要な金額を、供託所に請求できます。

6.瑕疵によるトラブルを防ぐ方法

不動産売買契約書

万が一、購入した住居に瑕疵があっても、法律や保険により消費者は守られますが、できることならトラブルは未然に防ぎたいものです。

そこで最後に、瑕疵によるトラブルを回避する方法を、買主側・売主側に分けて解説します。

6-1.買主側|売買契約書を熟読する

買主側として瑕疵によるトラブルを防ぐには、売買契約書が瑕疵によるトラブルをカバーできる内容になっているかどうか確認することが大切です。

売買契約書類では、主に以下の点をチェックするとよいでしょう。

  • 物件の状態や特徴について、「特約・容認事項」の欄に、細かく記載されているか
  • 売主が契約不適合責任を負う期間に制限を設けていないか

6-2.売主側|住宅診断(インスペクション)を行なう

瑕疵による思わぬトラブルを防ぐには、契約前に住宅診断(インスペクション)を実施するのも有効です。インスペクションとは、住宅診断士という専門家が物件の劣化状況、欠陥の有無、補修が必要な箇所、補修にかかる費用などを診断することを指します。

インスペクションの費用相場は、物件のタイプ(戸建てかマンションか)や、築年数、広さによって変動しますが、おおむね4万円~12万円程度とされています。

それなりの費用はかかるものの、瑕疵によるトラブルを未然に防ぐために、検討する価値はあるといえるでしょう。

インスペクションについては「不動産のインスペクションとは?メリット・デメリット、方法、費用を解説」「ホームインスペクションの費用相場はいくら?効果や注意点を解説!」でも紹介しているため、ぜひご覧ください。

6-3.売主側|瑕疵保険に加入する

万が一、傷や欠陥が発覚して瑕疵トラブルになってしまった場合に備えて、売主側は既存住宅売買瑕疵保険を検討するのも一つの方法です。

個人間の不動産売買においては、保険の加入対象は検査事業者になります。売主は検査事業者に物件の検査を依頼し、依頼を受けた検査事業者は、その物件が一定の水準を満たした品質であることを買主に対し保証します。

その後、万が一瑕疵が発覚した場合には、買主は検査業者に対し補修を求めることが可能です。つまり、検査事業者は本来売主が負う責任を肩代わりする仕組みになっています。

加入には一定の基準があるほか、検査費用や保険料がかかりますが、トラブル回避のためにも、積極的に検討しましょう。

まとめ

土地や建物の傷や欠陥のことを「瑕疵」といいます。瑕疵には、外見ではわからないものも多いため、買主が入居してから瑕疵に気が付くことも少なくありません。

売主として瑕疵によるトラブルを防ぐには、住宅診断(インスペクション)を実施する、瑕疵保険に加入する、といった方法が考えられますが、信頼できる不動産会社と媒介契約を結ぶことも非常に重要です。

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