所有権移転登記とは?どのタイミングで実施する?手続きと必要書類も解説

所有権移転登記とは 実施のタイミング4選

不動産の売却や相続で所有者が変わる場合、所有権移転登記が必要です。所有権を移転するタイミングは4つあり、それぞれで必要な書類が異なります。

そこで本記事では、所有権移転登記の基本情報、必要性のほか、所有権移転登記を実施する4つのタイミングの詳細、必要書類、登記手続きにかかる費用などについて詳しく解説します。

この記事を読むと分かること
  • 所有権移転登記の概要と必要性
  • 所有権移転登記を行なう4つのタイミング
  • 基本的な所有権移転登記手続きの流れ
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1.所有権移転登記とは?基本情報をおさらい

登記関連の書類

まずは所有権移転登記の概要や、登記を行なう必要性について解説します。

1-1.所有権移転登記とは?

所有権移転登記とは、不動産の所有権の変更があった際、変更内容を登記簿に記録するための手続きです。

不動産に関する登記を法務局に申請すると、登記した内容はすべて登記簿に残ります。所有権移転登記を行なうことで、不動産の所有権が誰にあるかを登記簿上で証明できるのです。

なお、所有権移転登記の手続きが完了すると、登記簿の「権利部(甲区)」に新たな所有権の情報が記載されます。

所有権移転登記

1-2.所有権移転登記を行なう目的

所有権移転登記を行なう目的は、誰に所有権があるかを証明することです。

ただし、所有権移転登記には法的な義務はなく、あくまでも任意で行なう手続きです(相続登記のみ2024年4月1日から義務化されます)。不動産の所有者が変わっても、所有権移転登記をしないケースは少なくありません。

しかし、登記を通じて公的に所有権を移転しないと、不動産の所有権を対外的に主張できなくなります。所有権を主張できないことで、不動産の売買の場合、売主と買主の双方にデメリットやリスクが生じます。

    <売主のデメリットやリスク>

  • 固定資産税・都市計画税の支払いが必要になる
  • 土地工作物の賠償責任が生じる
    <買主のデメリットやリスク>

  • 二重譲渡の被害を受ける
  • 不動産を担保にするローンを利用できない
  • 災害時の補償が受けられない可能性がある

不動産の売買において、特に注意が必要なのは「二重譲渡」によるトラブルです。二重譲渡とは、1つの不動産を複数の買主に譲渡する行為を指します。

二重譲渡のトラブルでよくあるケースは、1人目の買主と売買契約を締結したあとに、高値で買いたいと主張する第三者に不動産を売ってしまうことです。

1人目の買主が所有権移転登記を行なっておらず、第三者が所有権移転登記を行なっている場合、先に不動産を購入していても、1人目の買主は所有権を主張できません。

不動産の所有権はトラブルの原因になるため、不動産の所有権が変わった時点で登記をすることが大切です。

2.所有権移転登記を実施する4つのタイミング

家と離婚届

所有権移転登記は、以下のタイミングで実施する必要があります。

2-1.不動産を売買したとき

第三者に所有権がある不動産を購入、または自分が所有権を持つ不動産を第三者に売却したときには、所有権移転登記が必要です。

中古住宅だけでなく、土地を購入するときも所有権移転登記を行なう必要があります。

なお、不動産の売買時は、売主と買主が共同で所有権移転登記を申請します。不動産の売買契約の締結から、1ヵ月以内に所有権移転登記の手続きを実施する必要があります。

2-2.不動産を相続したとき-「相続登記」

不動産の所有者(被相続人)が死亡した際、遺言書や遺産分割協議に基づき、不動産を相続人が相続します。不動産の名義を相続人に変更することを「相続登記」といいますが、これも所有権移転登記の一つです。

不動産を相続する場合は、相続人が手続きを行なうことが基本です。しかし、相続登記は任意だったため手続きをしない方も多く、所有者が不明の不動産が多発する問題に発展しました。

この問題を受け、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。「相続を知った日から3年以内」に相続登記する義務があり、期限までに登記しない場合は10万円以下の過料が適用されます。

今後、不動産を相続する可能性がある方は、相続登記が必須になることを心得ておきましょう。

2-3.不動産を贈与されたとき-「贈与登記」

生前贈与などで土地や建物の贈与を受けたときも、所有権移転登記の手続きが必要です。贈与された不動産の所有権を移転することを、「贈与登記」といいます。贈与登記も売買のときと同様に、贈与者と贈与される者(受贈者)の共同で申請します。

生前贈与では、贈与登記を行なわないまま贈与者が死亡してしまうことがないように注意が必要です。

生前に贈与登記を行なっていないと、受贈者と相続人全員で贈与登記の申請を行なわなければなりません。相続人のなかで贈与を否定する方や、申請に協力してくれない方がいれば、贈与登記ができなくなってしまうこともあります。また、贈与が認められずに、相続財産とみなされる可能性もあるでしょう。

贈与者が健在であっても、贈与登記しないことで不利益を被ることがあります。不動産の贈与登記を行なわないと「口頭による贈与(口約束)」となり、贈与者の都合で撤回される可能性があるためです。贈与登記を済ませていれば、生前贈与を取り消すことはできなくなります。

2-4.離婚で財産分与したとき-「所有権移転登記」

離婚における財産分与では、不動産の名義変更、または共同名義を解消するために所有権移転登記の手続きが必要です。共同名義の不動産を、夫か妻の単独名義に変更するときも所有権移転登記を行ないます。

売買や贈与と同様に、夫婦共同で所有権移転登記を申請します。ただし、共同で申請するのは、協議離婚をした夫婦に限られ、裁判を経て離婚した場合は、財産分与を受ける方が単独で申請可能です。

なお、離婚を機に不動産を売却するケースもあります。売却によって不動産を現金化すれば、適正に分け合うことが可能です。

3.所有権移転登記の手続きの流れ

司法書士事務所の看板

ここでは、所有権移転登記の申請から完了までの流れや、登記手続きのポイントについて解説します。

3-1.所有権移転登記の申請から登記完了までの流れ

所有権移転登記の申請から登記完了までの流れ

所有権移転登記の基本的な流れは、以下のとおりです。

  1. 不動産の売買、相続、贈与、財産分与などが発生
  2. 所有権移転登記の必要書類を用意
  3. 不動産の所在地を管轄する法務局に書類を提出
  4. 法務局で所有権移転登記の審査実施
  5. 所有権移転登記完了

必要書類について、詳細は後述します。書類の提出は、法務局の窓口に直接出向くほか、郵送やオンラインでも可能です。

ただし、法務局による審査で、提出書類に何らかの不備があった場合は、訂正や再提出が求められるため注意が必要です。

審査に通過すると、所有権移転登記は完了となり、法務局から登記完了証、登記識別情報通知書が送付されます。これらの書類を受領後、法務局や法務局証明サービスセンターの窓口などで、「登記事項証明書」を取得すれば手続きは終了です。

所有権移転登記が完了するまでには、申請後1~2週間程度かかります。

なお、登記完了証は登記が完了したことを通知する書類で、手続きなどで利用することはありません。一方、登記識別情報通知書は従来の登記済証に変わる書類で、英数字を組み合わせた登記識別情報が記載されています。登記識別情報通知書は、売買や贈与における名義人の本人確認で用いられます。

3-2.所有権移転登記手続きは司法書士に依頼するのがベター

所有権移転登記の手続きは、司法書士を通さずに自分で行なうことも可能です。

しかし、一部の例外を除き、所有権移転登記は基本的に、売主と買主、贈与者と受贈者などが共同で申請する必要があります。他者とのやりとりが発生するうえに、さまざまな必要書類を用意しなければなりません。

なかには自力での手続きを試みたものの、書類を準備する過程が煩雑で、結局、司法書士に依頼したというケースもよくあります。最終的に手間やコストが想像以上にかかってしまったという事態を避けるためにも、始めから司法書士に依頼することをおすすめします。

4.【シーン別】所有権移転登記の必要書類

登記識別情報通知

前述のとおり、不動産の売買、相続、贈与、財産分与では所有権移転登記を実施する必要があります。所有権移転登記における必要書類は、シーンによって内容が異なります。

所有権移転登記の申請を「司法書士に依頼する」ことを前提に、申請者が用意すべき書類は次のとおりです。

4-1.すべての所有権移転登記で共通する必要書類

不動産の売買、相続、贈与、財産分与の所有権移転登記すべてで、以下の書類を用意する必要があります。

名称 概要 入手先 用意する人物
所有権移転登記申請書 所有権移転登記の原因や目的を伝える書類 法務局 申請者本人または司法書士
本人確認書類 運転免許証やマイナンバーカードなど 当人のもの
  • 売主、買主
  • 相続人
  • 贈与者、受贈者
  • 財産分与する者、財産分与を受ける者
固定資産評価証明書 登録免許税の根拠となる書類 市区町村の役所
  • 売主
  • 相続人
  • 贈与者
  • 財産分与する者
印鑑証明書・実印 印鑑証明書は発行日から3ヵ月以内 印鑑証明書は市区町村の役所、またはマイナンバーカードがあればコンビニ
  • 売主、買主(※1)
  • 相続人
  • 贈与者
  • 財産分与する者
登記識別情報通知書
または登記済権利証
登記上の所有者を証明する書類 所有者が保管
  • 売主
  • 相続人
  • 贈与者
  • 財産分与する者
住民票の写し 現住所を示す書類 市区町村の役所、またはマイナンバーカードがあればコンビニ
  • 売主(※2)、買主
  • 相続人
  • 贈与者(※2)、受贈者
  • 財産分与する者(※2)、財産分与を受ける者(※2)
委任状 司法書士に手続きを依頼する書類 司法書士
  • 売主、買主
  • 相続人
  • 贈与者、受贈者
  • 財産分与する者、財産分与を受ける者

(※1) 買主が不動産購入でローンを利用し、抵当権設定登記が必要となる場合

(※2) 現住所が現状での登記簿の内容と異なる場合

4-2.売買|所有権移転登記の必要書類

不動産を売買する際の所有権移転登記では、「登記原因証明情報」という書類の提出が必要です。

登記原因証明情報とは、登記を申請する原因となった事実を証明するための書類です。売買による所有権移転登記においては、「売買契約書」が登記原因証明情報に該当します。

なお、売買契約書は、売買の仲介を依頼された不動産会社が作成するのが基本です。

4-3.贈与|所有権移転登記の必要書類

贈与登記を申請するには、売買のときと同様に、登記を申請する原因となった事実を証明する「登記原因証明情報」が必要です。贈与登記においては、「贈与契約書」が登記原因証明情報に該当します。

贈与契約書とは、「誰が」「どの財産を」「誰に」「いつ贈与したか」を証明する書類で、贈与する側とされる側の共同で作成します。

贈与契約書は決まった書式がなく、自身で作成することも可能です。ただし、難しいときは、司法書士か行政書士に依頼してもよいでしょう。

4-4.財産分与|所有権移転登記の必要書類

離婚に際して財産分与をする場合、離婚日を証明できる「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)」が必要です。

また、売買や贈与のときと同様に、登記を申請する原因となった事実を証明する「登記原因証明情報」が必要で、協議離婚の場合は「離婚協議書」や「財産分与契約書」、裁判上の離婚の場合は「調停調書」「審判書」「和解調書」「判決正本」などが登記原因証明情報に該当します。

なお、裁判上の離婚で、調書に財産分与の内容が記載されている場合、財産分与を受ける者が単独で所有権移転登記を申請できます。

4-5.相続|所有権移転登記の必要書類

不動産を相続する場合、ほかの不動産手続きと比べて多くの書類が必要です。法定相続、遺産分割協議による相続、遺言による相続、遺産分割調停・審判による相続で、必要書類の内容が異なるためです。

相続登記の申請では、先述の「すべての所有権移転登記で共通する必要書類」のほかに、「相続人」が以下の書類を準備します。

相続方法 必要書類
法定相続を含むすべての相続 被相続人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、除籍謄本、改製原戸籍
被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)の写し
相続人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
相続関係説明図
遺産分割協議による相続 遺産分割協議書
遺言による相続 遺言書(公正証書遺言と遺言書保管法に基づく遺言書以外の場合は、検認済証明書付きのもの)
遺産分割調停・審判による相続 調停調書(正本または謄本)

5.所有権移転登記で発生する費用

役所と手数料

本章では、所有権移転登記にかかる費用の内訳や、金額の目安について解説します。

5-1.登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記にかかる税金で、土地と建物のそれぞれに課税されます。

登録免許税は、「固定資産税評価額×税率」で求めることが可能です。ただし、所有権移転登記では、以下のように不動産の取得方法で税率が変動します。

取得方法 登録免許税率
土地の売買・贈与・財産分与 2.0%
土地の相続 0.4%
建物の売買・贈与・財産分与 2.0%
建物の相続 0.4%

なお、上記の税率は「本則」のもので、一定期間は以下の軽減措置が適用されます。

  • 売買した土地の所有権移転登記:2.0%→1.5%(2026年3月31日まで)
  • 住宅用家屋の所有権移転登記:2.0%→0.3%(2024年3月31日まで)

また、相続した土地の所有権移転登記において、不動産の価額が100万円以下のときは、登録免許税が課されない「免税措置」を受けることが可能です(2025年3月31日まで)。

5-2.書類の取得費用

不動産の所有権移転登記を行なう際には、戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)や住民票、印鑑証明書など、手数料がかかる書類を数多く用意しなければなりません。特に、不動産の相続人が複数人いる場合、全員分の書類を用意することで費用がかさみます。

必要書類の取得費用の目安は、以下のとおりです。

必要書類 取得費用の目安
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 450円程度
除籍謄本 750円程度
住民票の除票の写し 300円程度
住民票の写し 300円程度
印鑑証明書 300円程度
固定資産評価証明書 400円程度
遺言書の検認済証明書 950円程度

なお、マイナンバーカードを利用して取得することができない書類に関しては、役所までの交通費や、郵送にかかる切手代などの諸費用も考慮する必要があります。

5-3.司法書士の報酬

司法書士に登記手続きを依頼すると、不動産1件につき5万円程度の報酬が発生します。

相続の所有権移転登記を依頼する際は、相続人数が多いほど報酬が高額になります。また、遺産分割協議書や離婚協議書など、自身でもできる書類作成を司法書士に依頼した場合は報酬が発生しますが、所有権移転登記の手続き自体を司法書士に依頼した場合、協議書の作成費用も含めた費用設定になっていることがほとんどです。

登記の費用をなるべく抑えるには、複数の司法書士事務所で見積もりをとりましょう。それにより、司法書士報酬の相場も把握できます。

ただし、同じ士業であっても、「行政書士」に所有権移転登記の手続きは依頼できません。不動産の登記は司法書士の独占業務であり、行政書士の業務範囲外だからです。

離婚協議書、遺産分割協議書、遺言書など、一部の書類作成に関しては、行政書士に依頼することができます。

5-4.所有権移転登記の費用は誰が負担する?

不動産売買の際の所有権移転登記の費用は、買主が負担するのが基本です。

そもそも売主は、不動産の権利を失うため、費用をすべて負担する必要はありません。ただし、買主が費用を負担する義務はないため、事前に費用負担割合について双方で合意する必要があります。

なお、不動産の相続、贈与、財産分与においても、不動産の所有権を取得する側が所有権移転登記の費用を負担するのが一般的です。

まとめ

不動産の売買、相続、贈与、財産分与を行なうときは、所有権移転登記の手続きが必要です。不動産の所有権移転登記の手続きを行なわなかった場合、公的な所有者であると主張できず、さまざまなデメリットやリスクが生じます。また、2024年4月1日以降は、相続登記が義務化されるため、忘れずに行ないましょう。

所有権移転登記は、申請する原因により必要書類の内容が異なります。必要書類の準備は非常に煩雑であるため、所有権移転登記の手続きは司法書士に依頼するのがおすすめです。

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