所有権移転登記は自分でできる?不動産売買・相続時などの必要書類や手続きの流れ

所有権移転登記 不動産の売買・相続・贈与

土地や建物を手に入れたり、手放したりした場合は、「所有権移転登記」を行ないます。所有権移転登記が自分でもできるのか、気になる方もいるでしょう。

そこで本記事では、所有権移転登記の概要や必要な場面を解説するとともに、所有権移転登記を自分でしやすいケースの特徴や、手続きの流れ、必要書類などを紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 所有権移転登記が必要な場面
  • 所有権移転登記は自分でできるのか、司法書士に依頼したほうが良いのか
  • 所有権移転登記の流れ・必要書類・かかる費用
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1.そもそも所有権移転登記とは?

登記

所有権移転登記とは、不動産の持ち主に関する登記記録を変更する手続きのことです。

不動産の登記記録には、土地や建物の所在地、使用目的、面積といった基本情報とともに、所有権をはじめとする権利情報が登録されています。

不動産の現在の持ち主を証明するには、土地や建物を手に入れたり、手放したりして持ち主が変わったタイミングで、法務局で所有権に関する登記記録の変更が必要です。所有権移転登記をしなかった場合は、第三者に対して不動産の所有権を主張できません。

所有権移転登記について詳しくは、「所有権移転登記とは?どのタイミングで実施する?手続きと必要書類も解説」をご覧ください。

また、登記記録を確認できる登記事項証明書(登記簿謄本)については、「不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)の読み方は?注意点もわかりやすく解説」を参考にしてください。

参考:“不動産登記法”. e-Gov法令検索

2.所有権移転登記が必要な4つの場面

後述する「相続登記」を除き、所有権移転登記は法的な義務ではありません。しかし、所有権移転登記をしないと、トラブルの原因にもなり得ます。

ここでは、所有権移転登記をすべき4つの場面を見てみましょう。

  • 不動産を売買したとき
  • 贈与で不動産を譲り渡した・譲り受けたとき
  • 不動産を相続したとき
  • 離婚で不動産を財産分与したとき

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2-1.不動産を売買したとき

自分が所有する不動産を売却したときや、他人が所有する不動産を購入したときは、所有権移転登記を行ないます。

不動産売買では、売主と買主が共同で所有権移転登記を申請します。ただし、司法書士に依頼した場合、司法書士が売主・買主の双方の代理人として、単独で登記申請が可能です。

所有権移転登記をしないことによるトラブルの例としては、1つの不動産を2人(以上)の買主に売却する「二重譲渡」が挙げられます。

  1. 売主Aが、1人目の買主Bに不動産Xを売却
  2. 買主Bは所有権移転登記をしなかった
  3. その後、売主Aは2人目の買主Cに不動産Xを売却
  4. 買主Cは所有権移転登記を済ませた

その結果、先に不動産を購入していても、Bは原則として所有権を主張できなくなる

不動産を売却するときの注意点については、「不動産売却時の決済から引き渡しまでの流れ!必要な書類と持ち物も解説!」をご覧ください。

2-2.贈与で不動産を譲り渡した・譲り受けたとき

生前贈与などで不動産を譲り渡した・譲り受けたときも、所有権移転登記が必要です。贈与による所有権移転登記は「贈与登記」とも呼ばれ、不動産売買と同様に、贈与する者とされる者の共同で申請します。

贈与者が生きているうちに贈与登記をしなかった場合は、贈与者の相続人全員の同意を得なければ、登記申請ができません。相続人のなかに贈与に否定的な方がいると、贈与登記が困難になると想定されます。

不動産の贈与については、「贈与とは?売買、相続との違いや、メリット・デメリット、贈与税の基礎知識などを徹底解説」をご覧ください。

2-3.不動産を相続したとき

不動産の所有者(被相続人)が亡くなり、相続人が不動産を相続したときには、相続人による所有権移転登記が必要です。相続が原因の所有権移転登記は、「相続登記」とも呼ばれます。

所有者が特定できない不動産の増加を防ぐため、相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務化されます。具体的には、相続の事実を知った日、または遺産分割が成立した日から、3年以内に相続登記をしなければなりません。

正当な理由なくこの期限を過ぎてしまった場合、10万円以下の過料が発生する可能性があります。

参考:“相続登記の申請義務化に関するQ&A”. 法務省

なお、相続登記の義務化に関しては、「相続登記の義務化は2024年4月1日から!申請期限と罰則は事前に把握しよう」で詳しく解説しています。そのほか、以下の記事も参考にしてください。

2-4.離婚で不動産を財産分与したとき

夫婦が離婚する際、婚姻中に築き上げた財産を公平に分配することを「財産分与」といいます。

ただし、不動産は物理的に分けられないため、夫と妻それぞれが何をもらうのか話し合いで決めるのが基本です。協議の結果に基づき、主に以下のようなパターンで、所有権移転登記をすると想定されるでしょう。

  • 夫の名義を妻の名義に変更する
  • 妻の名義を夫の名義に変更する
  • 夫婦の共同名義をどちらかの単独名義にする

協議離婚による財産分与の際は、夫婦共同で所有権移転登記を申請します。一方、裁判を経て離婚した場合は、所有権を取得した側が単独で申請可能です。

参考:“財産分与”. 法務省

財産分与における不動産の扱いや名義については、下記の記事をご覧ください。

3.所有権移転登記は自分でもできる

家の模型

所有権移転登記の申請は、自分(当事者同士)で行なう方法と、司法書士や弁護士に依頼する方法があります。後者の場合、登記業務を中心に行なう弁護士は限られるため、実際には司法書士に依頼することが多いでしょう。

所有権移転登記に特別な資格は必要なく、自分で手続きをすれば、司法書士に支払う報酬の分を安く抑えられる点がメリットです。ただし、一般の方が自分で登記申請をするのは、かなり大変なケースもあります。

ここでは、所有権移転登記を自分でしやすいケースと、司法書士に依頼したほうが良いケースの特徴を紹介します。

3-1.所有権移転登記を自分でしやすいケース

前提として、「このようなケースなら必ず自分でできる」と、一概にいえるわけではありません。不動産の売買・相続・贈与・財産分与のいずれに当てはまるのかに加え、対象となる不動産や関係者の状況も、ケースごとに異なります。

目安として、以下のような条件がそろっている場合は、自分でも比較的手続きしやすいでしょう。

  • 緊急ではない場合
  • 所有権移転登記をする不動産が1つだけである場合
  • 必要書類を集めるため、平日(法務局や役所が開いているとき)に時間を確保できる場合
  • 書類の読み解きや作成が苦にならない場合

なお、法務局では自分で登記申請をする方へ向けて、対面やWeb会議サービス、電話により必要情報を提供しています。

参考:“登記申請を御自身ですることを検討されている方からよくある質問”. 法務局

3-2.所有権移転登記を司法書士に依頼したほうが良いケース

所有権移転登記は、法律に基づき正しい手順で行なう必要があり、一定の専門知識が求められます。そのため、特に以下のようなケースでは、登記業務に精通している司法書士に任せると安心です。

  • 対象となる不動産に抵当権が設定されているなど、権利関係が複雑な場合
  • 何世代も前から登記手続きがされていなかった場合
  • 複数の不動産で同時に登記手続きをしたい場合

また、自分で登記申請をした場合は、登記ミスをしてしまう可能性があります。登記内容に誤りがあると、トラブル時に権利を主張できません。

このような点を踏まえたうえで、司法書士に依頼するかどうかを判断するとよいでしょう。

なお、抵当権については「抵当権とは?設定のタイミングや登記にかかる費用、抹消登記の方法をわかりやすく解説」を、抵当権を抹消する登記については「抵当権抹消登記とは?手続きの方法や必要書類、費用などを全解説」を参考にしてください。

4.所有権移転登記を自分でする際の流れ

ここでは、所有権移転登記の基本的な流れについて、5つのステップに分けて紹介します。

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  1. 現在の登記事項証明書(登記簿謄本)を確認する
  2. 必要書類を準備する
  3. 管轄の法務局で登記申請をする
  4. 法務局による審査を受ける
  5. 登記完了証・登記識別情報通知書を取得する

4-1.現在の登記事項証明書(登記簿謄本)を確認する

はじめに、所有権を移転する不動産の現在の登記内容を確認するため、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。

登記事項証明書(登記簿謄本)の取得方法は、以下の3つです。

  • 法務局の窓口で請求する
  • オンラインで請求する
  • 郵送で請求する

なお、登記内容を確認するだけなら、一般財団法人民事法務協会の「登記情報提供サービス」を利用するのもおすすめです。

参考:
“インターネットを利用して、登記事項を確認するサービスについて”. 東京法務局
“登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方”. 法務局

4-2.必要書類を準備する

続いて、所有権移転登記に必要な書類を収集・作成します。必要書類については、次章「5.所有権移転登記の必要書類」で詳しく紹介するので、参考にしてください。

特に、相続による所有権移転登記は必要書類が多いため、準備に時間がかかることを想定しておきましょう。

必要書類のうち所有権移転登記申請書については、法務局の窓口でもらえるほか、ホームページからもダウンロード可能です。

参考:“不動産登記の申請書様式について”. 法務局

4-3.管轄の法務局で登記申請をする

必要書類の準備が整ったら、所有権を移転する不動産を「管轄する」法務局に提出します。提出先は、「最寄りの」法務局ではない点に注意が必要です。

オンライン申請を希望する方は、法務省が運営する「登記ねっと」から、申請用総合ソフトをダウンロードしたうえで手続きをしましょう。

参考:
“管轄のご案内”. 法務局
“登記ねっと”. 法務省

4-4.法務局による審査を受ける

登記申請後は、申請内容が法務局で審査されます。所有権移転登記の申請から、審査を経て登記が完了するまでには、1~2週間程度かかるのが一般的です。

審査により書類の不備などが見つかった場合は、法務局の指示に従い対応します。

4-5.登記完了証・登記識別情報通知書を取得する

審査に通過すると、法務局から「登記完了証」と「登記識別情報通知書」が渡されます。

登記完了証は、登記手続きが完了したことを通知するものです。

一方の登記識別情報通知書は、不動産の所有者であることを証明するものです。本人確認にも用いられる重要な書類であるため、大切に保管しておきましょう。

参考:“登記識別情報って何?”. 福島地方法務局

5.所有権移転登記の必要書類

不動産売買契約書

所有権移転登記の必要書類は、登記の原因によって異なります。ここでは、ケース別に基本の必要書類を紹介します。

  • すべてのケースで必要な書類
  • 売買による所有権移転登記の必要書類
  • 贈与による所有権移転登記の必要書類
  • 相続による所有権移転登記の必要書類
  • 財産分与による所有権移転登記の必要書類

5-1.すべてのケースで必要な書類

不動産の売買・贈与・相続・財産分与、すべての所有権移転登記で共通する必要書類は、以下のとおりです。

  • 所有権移転登記申請書
  • 固定資産評価証明書
  • 登記識別情報通知書または登記済証(権利証)
  • 本人確認書類
  • 住民票の写し
  • 印鑑証明書および実印
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

「登記済証(権利証)」は、先述の「登記識別情報通知書」に切り替わる前、2005年(平成17年)まで発行されていた書類です。

詳しくは、「不動産売却の権利証とは?紛失して再発行できない時の対処法」をご覧ください。

参考:“新不動産登記法Q&A”. 法務省

5-2.売買による所有権移転登記の必要書類

不動産の売買による所有権移転登記では、「登記原因証明情報」が必要になります。登記原因証明情報とは、登記の原因となった事柄と、その事柄により権利に変動が生じたことを証明する書類です。

不動産売買では、登記原因証明情報として、以下のいずれかの書類を用意します。

  • 売買契約書
  • 売買契約書の写しに売主が記名押印したもの
  • 登記原因を記載した報告書に売主が記名押印したもの

参考:“登記申請の際に必要とされる「登記原因証明情報」とは、どのようなものですか?”. 法務局

5-3.贈与による所有権移転登記の必要書類

不動産の贈与の場合も、登記申請に登記原因証明情報が必要です。贈与登記では、以下のような書類が登記原因証明情報に該当します。

  • 贈与契約書
  • 贈与証書

5-4.相続による所有権移転登記の必要書類

不動産の相続の場合は、相続方法によって必要書類が異なります。

共通する書類 被相続人の全部事項証明書(戸籍謄本)または除籍謄本
被相続人の住民票の除票の写し
相続人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)
相続関係説明図(家系図)
遺産分割協議による相続の場合 遺産分割協議書
遺言による相続の場合 遺言書
遺産分割調停や審判による相続の場合 調停調書または審判書

5-5.財産分与による所有権移転登記の必要書類

離婚で不動産を分与する場合は、離婚日が記載された戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)が必要です。また、財産分与の経緯に応じた登記原因証明情報も求められます。

まとめると、財産分与時の必要書類は以下のとおりです。

共通する書類 戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)
協議離婚の場合 離婚協議書、財産分与契約書
裁判による離婚の場合 調停調書、審判書、和解調書など

6.所有権移転登記にかかる費用

家とお金

最後に、所有権移転登記で発生する費用を、大きく3つに分けて紹介します。

  • 登録免許税
  • 司法書士への報酬
  • その他の費用

6-1.登録免許税

登録免許税とは、不動産の各種登記にかかる税金のことです。登録免許税の金額は「固定資産税評価額×税率」で求められ、土地と建物それぞれ個別に計算する必要があります。

所有権移転登記の場合、税率は以下のように定められています。

登記原因 税率
不動産の売買・贈与・財産分与 2.0%
不動産の相続 0.4%

ただし、この税率には、以下のとおり軽減措置があります。

2024年(令和6年)3月31日まで 住宅用家屋の売買に関する所有権移転登記 2.0%→0.3%
2026年(令和8年)3月31日まで 土地の売買に関する所有権移転登記 2.0%→1.5%

また、一定の条件を満たす相続登記(土地)の登録免許税については、2025年(令和7年)3月31日までの免税措置もあります。

なお、固定資産税評価額は、その不動産が属する市町村(東京23区は東京都)によって決定されます。固定資産税評価額について、詳しくは「固定資産税評価額とその調べ方を教えて!」をご覧ください。

参考:
“No.7191 登録免許税の税額表”. 国税庁
“2023年(令和5年)4月1日以降の登録免許税に関するお知らせ”. 法務局
“相続登記の登録の免税措置について”. 法務局

6-2.司法書士への報酬

所有権移転登記を司法書士に依頼する場合は、報酬について考慮しておきましょう。一般的な相場は、不動産1件につき5万~10万円程度ですが、依頼する司法書士によって差があります。

また、権利関係が複雑で書類の準備に時間がかかるケースなどは、報酬が上乗せされることもあるため、事前に見積もりを取るとよいでしょう。

6-3.その他の費用

所有権移転登記をする際には、各種書類を取得する手数料・郵送料や、書類に貼る収入印紙代、法務局への交通費などもかかります。

例えば、登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局の窓口で取得する場合、手数料は600円です。また、住民票や印鑑証明書の写しを取得する場合は、自治体によっても異なりますが、少なくとも300円程度かかります。

ケースごとの差はあるものの、諸費用全体で1万~2万円程度が目安です。

参考:“登記手数料について”. 法務省

まとめ

不動産の現在の持ち主を証明するには、不動産の売買・相続・贈与・財産分与が発生したタイミングで、所有権移転登記が必要です。所有権移転登記をしないと、第三者に対して不動産の所有権を主張できず、トラブルの原因にもなり得ます。

自分で所有権移転登記をすれば、司法書士への報酬を削減できます。ただし、正しく手続きするためにも、自分で登記申請をするかどうかは、慎重に判断することが大切です。

実際に手続きをする際には、本記事で紹介した、所有権移転登記の流れや必要書類を参考にしてください。

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