マンション売却シミュレーションとは│手取り(手残り)額や査定方法も解説

誰でも簡単にマンション相場を把握できるサービスに、「マンション売却シミュレーション」があります。

マンションシミュレーターは信憑性の低いものがほとんどですが、一部に精度の高いシミュレーターも存在します。

また、マンションシミュレーターは誤解を生むものも多いため、その特性を理解して利用する必要があります。

そこでこの記事では、手持ちのマンションを売却するにあたり、「マンション売却シミュレーション」の利用を検討している方に向けて、

  • 机上査定や訪問査定との違い
  • マンション売却シミュレーションでできること
  • 使うにあたっての注意点

などについて紹介していきます。

マンション・不動産の売却を基礎から詳しく知りたい方は『【完全版】マンション売却の注意点』や『マンション売却の流れを9ステップで詳しく解説!』、『不動産売却の入門書』もご覧ください。

「マンションを売りたい」と悩んでいる方へ
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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.マンション売却シミュレーションとは

マンション売却の流れとして、まずは、マンションの価値を把握することからスタートします。そのために「マンション売却シミュレーション」の利用を検討する方も多いでしょう。

マンション売却シミュレーションとは、無料で簡単にマンション売却の相場を把握することができるインターネットサービスのことです。

様々なタイプのものがありますが、過去の売却事例を元にAIによって価格が自動計算されるタイプのものもあります。

マンション名を入力するだけで価格が出てくる便利なものもあり、誰でも気楽に利用することができるという点がメリットです。

ただし、注意したい点がふたつあります。
一つ目は、売却事例を元に算出された相場であるため、実際のマンションの設備の劣化具合や周辺環境など、詳細な条件は査定内容に反映されていないということです。

二つ目は、相場とマンション売却の手取り(手残り)の金額は異なるという点です。マンションを売却すると、売買を仲介してくれた不動産会社に支払う「仲介手数料」や、固定資産税などの「税金」、さらに「ローンの残債」があればその分も差し引かれます。

以下、具体的な条件でシミュレートして、手元にいくら残るかみてみましょう。

  • マンションの売却価格 4,500万円
  • 住宅ローンの残債額 500万円

この場合、かかる諸費用は以下の通りです。

仲介手数料 売買の仲介を依頼した不動産会社に支払う費用 142万円
印紙税 売買契約書に課せられる税金。契約書に税額相当の収入印紙を貼る 1万円
抵当権抹消費用 銀行がローンを貸し出す際にマンションにかける担保権を抹消するための費用。司法書士への報酬を含んだ金額 5万円

参照:HOME4U マンションプライス

諸費用がわかれば、実際にいくらが手元に残るか算出できます。手残りの額は以下の通りに求められます。

3,852万円(手残り額) =
4,500万円(マンション売却額) - 500万円(ローン残債) - 148万円 (諸費用)

ただ、このような計算式を用いてマンション売却のシミュレーションをするのは手間がかかります。
そこで利用をおすすめしたいのが、無料で「売却価格の概算」と「手残り金額」を手軽に確認できる売却シミュレーションサイト「マンションプライス」です。

マンションプライス

「マンションプライス」を使えば、たったの4ステップでシミュレーションが完了します。

マンションプライスの使い方

  1. マンション名を入力
  2. ヒットしたマンション名をクリックして詳細を確認
  3. 物件情報の下の「売り出し価格」の事例を見る
  4. 【マンションプライス独自】「売却額シミュレーション」で事例から手残りを算出

もっとも手軽にマンション売却のシミュレーションをしたいなら、「マンションプライス」の利用をおすすめします。

「マンションプライス」を使うと、マンション売却時の諸費用と「手残り金額」がおおまかに把握できます。
ただし、マンションの売却によって利益が出た場合は、別途、譲渡所得税がかかる可能性があるので注意しましょう。
「譲渡所得」とは、仲介手数料や印紙代、建物解体費用など、不動産を売却するために支払った費用を売却額から差し引いた、利益分です。譲渡所得にかかる税金は、不動産に対して、5年を超えた保有か(長期譲渡所得)、5年以下の保有か(短期譲渡所得)によって税率が大きく変わります

さらに、所有期間が10年を超える場合は、「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例(国税庁)」を受けられる可能性があります。

また、所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けることができる「No.3302 マイホームを売ったときの特例」もあります。マンション売却の税金シミュレーションや節税のコツを詳しく知りたい方は、ぜひ関連記事をご参照ください。

2.「机上査定」や「訪問査定」がある

「シミュレーターが使えるなら、机上査定や訪問査定は受けなくても良いんじゃないの?」と考える方もたまにいらっしゃるのですが、違いはありますので、利用にあたっては理解しておくことをおススメします。

本章では、

  1. 机上査定との違い
  2. 訪問査定との違い

について、解説していきます。

2-1.過去事例から簡易的に算出する机上査定

机上査定とは、不動産会社の営業担当者が物件を見ずに、登記簿謄本や住宅地図、取引事例等の資料に基づき行う査定 のことで、簡易査定とも呼ばれます。

マンション売却シミュレーションとの最大の違いは、人間が査定を行っているという点になります。

机上査定は昔からある査定方法ですが、昨今は「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」のように、インターネットの無料一括査定サイトの中にサービスの一部として存在するケースが増えています。

シミュレーションも机上査定もインターネット上から無料で申し込めるため、同じものと誤解されやすいですが、人が査定しているか否かという点が大きく異なります。

シミュレーションはコンピューターが行うため一瞬で価格が出ますが、机上査定は申し込んでから回答を得るまで数日程度の時間がかかります。

また、シミュレーションは誰でも利用できますが、机上査定を利用できる人は売主のみです。
机上査定は、例えば売却予定はあるけれども、とりあえず売却価格が住宅ローン残債を上回るかどうか知っておきたい等の場合に利用されることを前提としています。

2-2.実際にマンションを見て精度の高い査定額を出す訪問査定

訪問査定とは、不動産会社の営業担当者が実際に物件を見て行う査定のことです。
リフォームや損傷の有無、周辺環境の状況、日照や騒音・眺望等を確認した上でマンション価格が査定されるため、最も精度が高いです。

机上査定と同様に、人間が査定を行っているという点がシミュレーションとの最大の違いになります。

また、訪問査定も売主しか利用できない査定です。
これから売却予定の人が、適正な売り出し価格を知るために行うのが訪問査定になります。

机上査定も訪問査定も、インターネットの無料一括査定から依頼することができます。マンション売却は、複数の不動産会社の査定額を比較・検討して信頼できる仲介先を見つけることが重要です。無料で利用できるので、積極的に活用しましょう。

NTTデータグループの運営する不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)なら、全国から厳選された不動産会社の中から、最大6社の不動産会社に査定を依頼できます。
査定依頼フォームでは、机上査定と訪問査定の選択や、要望の入力などもできます。

3.マンション売却シミュレーションでできること

では、「マンション売却シミュレーションでできること」はどんなことになるのでしょうか?
本章では、以下の2点を解説します。

  1. 匿名で価格を瞬時に知ることができる
  2. 賃料もわかるシミュレーターもある

それではひとつずつ見ていきましょう。

3-1.匿名で価格を瞬時に知ることができる

マンション売却シミュレーションは、匿名で価格を瞬時に知ることができるという特徴があります。
匿名で利用できるため、不動産会社から営業電話もかかってこない点がメリットです。

サービスによってはメールアドレス程度の個人情報を入力する必要がありますが、基本的に電話番号や自宅の住所を入力する必要がありません。
マンション名を入力するだけで価格が出てくるサービスもあります。

また、匿名であるため、誰でも利用できる点もメリットです。
机上査定や訪問査定は売主しか利用できませんが、シミュレーターであれば売主以外も利用することができます。

例えば、購入検討者や離婚の財産分与を予定している、または相続で財産の分割を検討したい等、「売る予定はないけれども資産価値だけ知りたい人」も利用可能 です。

3-2.賃料もわかるシミュレーターもある

マンション売却シミュレーションでは、賃料もわかるシミュレーターもあります。
価格だけでなく、「貸したらいくらになるか」の賃料も瞬時に出てくるサービスも多いです。
そのため、売却だけでなく賃貸についても検討することができます。

机上査定や訪問査定を依頼してしまうと、選択肢が自然と売却だけにシフトしてしまいがちですが、シミュレーターであれば賃貸についても冷静に検討しやすいです。

4.マンション売却シミュレーションを使うにあたっての注意点

ここまでの内容でマンション売却シミュレーターへの理解がだいぶ深まったことと思います。
ただ、実際に利用するにあたっては注意すべき点もあるので、本章ではマンション売却の失敗を防ぐために、以下の5つの注意点を紹介します。

  1. 査定できない地域もある
  2. シミュレーターによっては信憑性の低いものもある
  3. 価格が幅で表示されるものは誤認しやすい
  4. リフォームや損傷部分は価格に反映されない
  5. 住宅ローンの返済可否の判断材料としない

なお、不動産会社が行うマンション査定の注意点について知りたい場合は、関連記事をご参考ください。

4-1.査定できない地域もある

マンション売却シミュレーションは、サービスによっては査定できない地域もあるのが注意点です。

東京23区内のマンションであれば、ほとんどのシミュレーターは対応しています。
一方で、首都圏においても神奈川県や埼玉県、千葉県になるとマンションによっては価格が出てこないシミュレーターもあります。
さらに、首都圏以外では全く対応していないシミュレーターも多いです。

査定できない地域においては、まずは自分の地域で査定できるシミュレーターから探すことが必要となります。

4-2.シミュレーターによっては信憑性の低いものもある

シミュレーターによっては信憑性の低いものもある点も、注意すべき点です。

マンションシミュレーターでは、1つだけ精度の高いシミュレーターが存在します。
その精度の高いシミュレーターは、成約価格(実際に取引が行われた金額のこと)と照らし合わせても5%前後の誤差しか生じません。

一方で、その他のシミュレーターは誤差が10~40%以上も生じてしまうため、信憑性はかなり低いといえます。

物件によっては、成約価格とシミュレーターとの差が1,000万円以上も開きが出てしまい、誤認する危険性があります。

マンションシミュレーターの傾向として、特に価格が高い方に大きくずれてしまう点が特徴です。

例えば、実際には4,000万円の物件が5,000万円というように高く査定される傾向があります。

シミュレーターが高い査定額を出す傾向がある理由としては、恐らく高い金額を提示することで自社の訪問査定サービスに誘導する意図があるものと思われます。

期待だけ膨らませておいて、実際の訪問査定の価格はそれほど高くなかったということもありますので、シミュレーターの査定結果には一喜一憂しないよう意識することが必要 です。

4-3.価格が幅で表示されるものは誤認しやすい

多くのシミュレーターは、価格を幅で表示されるため、誤認しやすいという点が注意点です。
シミュレーターは、基本的に価格は4,500万円~6,500万円といった幅で評されるのが一般的です。

例えば、4,500万円~6,500万円と表示されると、どのあたりが本当の価格なのか判断付かなくなります。
真ん中をとって5,500万円くらいなのかと考えがちですが、実際の価格は4,600万円くらいというケースも多いです。

価格の幅はシミュレーターによっても異なります。
1,000万円以上の幅で表示されるシミュレーターは誤認しやすいため、なるべく狭い幅で表示されるシミュレーターを使うことをおススメします。

4-4.リフォームや損傷部分は価格に反映されない

シミュレーターはリフォームや損傷部分は価格に反映されないという点が注意点です。
実際の査定価格では、リフォームしていれば価格がプラスされますし、損傷が激しければ価格がマイナスされます。

シミュレーターは、机上査定と同様に見ないとわからない部分を価格に反映することはできません。

適正な売り出し価格を設定する上での材料にはできず、シミュレーターの結果に基づいて売り出し価格を決定すると「大きく損をする」または「全然売れない」といった状況に陥ります。
売却するのであれば、最終的に訪問査定を依頼することが必要 です。

4-5.住宅ローンの返済可否の判断材料としない

シミュレーターの結果は、住宅ローンの返済可否の判断材料としないことが注意点となります。

価格が幅で表示されるシミュレーターは、上限額が大きく上振れする傾向にあるため、その価格で住宅ローンが返済できると過信するのは危険です。

住宅ローンの返済可否は、少なくとも机上査定程度の精度がないと判断すべきでないといえます。

住宅ローンを返済できるかどうかは、売却できるかどうかの重要な判断ポイントとなりますので、必ず机上査定または訪問査定を依頼して慎重に見極めるようにしましょう。

なお、マンション売却で損しないためのコツや対処法は以下の関連記事をご参考ください。

不動産売却塾 コラム

~シミュレーターよりも同じマンションのチラシがおススメ!~

マンションの相場を知りたいのであれば、極めてアナログな方法ですが、シミュレーターよりも同じマンションのチラシがおススメです。

マンションには、同じマンション内の他の部屋の売却物件のチラシがよく入ります。
マンションを売却したいと思ったら、チラシを保管しておくと後で役立ちます。

チラシでは、どこの部屋がいくらで売りに出されているかを知ることができます。
階数やバルコニーの向き、リフォーム済みかどうかといった内容も分かります。

また、チラシには不動産会社が記載したアピールポイントが載っていますので、どのような内容がアピールポイントになるのかも知ることができます。

例えば、「2020年に外壁塗装実施済み!」等の共用部の大規模修繕の内容もアピールしているチラシもあり、自分の物件を売るときも同じ内容を使えるということもわかります。

さらに、チラシのすごい部分は、なかなか売れないと価格を値下げしたチラシが再度入ってくるため、高過ぎる値段設定で苦戦していることまでわかる という点です。

大規模なマンションでは数ヶ月に一度は同じマンション内の売却物件のチラシが入ってくることから、慣れてくると下手な不動産会社よりも相場を把握できるようになります。

いざ売却するときに、シミュレーターよりも遥かに役立ちますので、チラシには普段から極力目を通すようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか。
「マンション売却シミュレーション」について、特徴や注意点を解説してきました。

手軽に使える反面、住宅ローン返済の可否の判断に用いるには危険なので、くれぐれもご注意ください。

売却のご予定があるなら、精度の高い「訪問査定」がもっともおススメです。

手間なく優良な不動産会社が見つかる「不動産売却 HOME4U」を上手に活用して、マンション売却成功への第一歩を踏み出してください。

この記事のポイント

マンション売却シミュレーションって何?

マンション売却査定シミュレーションとは、無料で簡単にマンション売却の相場を把握することができるインターネットサービスのことです。AI査定と呼ばれるタイプもあり、過去の売却事例をデータベース化してマンションの査定額を算出するパターンが多いです。

詳しくは「1.マンション売却査定シミュレーションとは」をご一読ください。

「机上査定(簡易査定)」や「訪問査定」って何?

どちらもマンションを査定する方法ですが、不動産会社の担当者が直接査定する点が売却シミュレーションと異なります。マンションの個別状態や周辺環境なども加味するため、より精度の高い査定金額がわかります。

詳細は「2.「机上査定」や「訪問査定」がある」をご覧ください。

マンション売却シミュレーションを利用するとき、注意することは?

売却シミュレーション利用時の注意点は、以下の5つです。

  1. 査定できない地域もある
  2. シミュレーターによっては信憑性の低いものもある
  3. 収益価格が幅で表示されるものは誤認しやすい
  4. リフォームや損傷部分は価格に反映されない
  5. 住宅ローンの返済可否の判断材料としない

詳しくは「4.マンション売却査定シミュレーションを使うにあたっての注意点」をご覧ください。