マンション売却で税金がかからないはウソ?正しい計算方法や特例を解説

マンション 売却 税金 かからない

個人がマイホームのマンションを売却するときは、政策的な配慮から税金は「かかりにくく」なっています。
「かからない」とは断言できませんが、結果的に「かからない」ことは多いです。
仮に「かかりそう」になっても、税金が発生しにくくするための節税特例が用意されています。

ただ、そうは言っても、「自分のマンション売却の場合はどうなのか?」と気になる方はたくさんいらっしゃるでしょう。

そこでこの記事では、これからマンション売却を予定している方に向けて、

  • 税金がかからないケースとかかるケースの違い
  • 各種計算方法やシミュレーション
  • 節税特例
  • 税金が発生する可能性の高いケース

などについて解説していきます。

ぜひ最後までおつきあいいただき、自分のマンションの場合はどうなるのかをイメージしながら、売却の準備を進められるようにしてください。

「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格”を見つけましょう
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます
この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.マンション売却で税金がかからないケースとかかるケースの違い

マンションを売却したときは、譲渡所得と呼ばれる売却益に対して税金がかかります。
譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1譲渡価額とは売却価額です。
※2取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3譲渡費用は、仲介手数料や印紙税など、売却に要した費用のことを指します。

取得費は「ピッタリ購入価額のこと」ではなく、建物について減価償却という計算を行うため、「購入価額からやや下がった価格」となります。

売却額が購入額からやや下がった価格よりも安くなれば譲渡所得はマイナスとして計算されます。

計算の結果、譲渡所得がプラスのときは「譲渡益」、譲渡所得がマイナスのときは「譲渡損失」と呼びます。

マンション売却では譲渡益が発生したときは税金が生じ、譲渡損失が発生したときは税金が生じないというのが原則的なルールです。

譲渡益と譲渡損失が発生している状況を図示すると以下のようなイメージとなります。

譲渡益と譲渡損失が発生している状況

取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額となるため、年数が経過するとともに建物取得費が小さくなっていきます。

減価償却とは、建物の取得価格を毎年一定の金額を減価させていく会計上の手続きのことです。

会計では建物価格は年々下がるという考え方が採用しており、建物取得費を減額していく計算手続きを行うことになります。

ここで、以下に首都圏における中古マンションの築年数別の平均価格を示します。

以下に首都圏における中古マンションの築年数別の平均価格を示します

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)

グラフ内のパーセントの数値は、「築0~5年」を100%とした場合の下落率を示します。
マンション価格は、築年数が経過すると下落していくことがわかります。

つまり、マンションは購入時よりも売却時の方が価格は下がっていることが一般的であり、譲渡損失が生じて税金はかからないことが多いです。

譲渡所得税以外にかかる税金についても知りたい方は『マンション売却時の税金はいくらか計算!シミュレーション有りで詳しく解説』をご覧ください。

「マンションを売りたい」と悩んでいる方へ
  • マンションを売りたいけど、どうしたらいいか分からない方は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」なら複数社に査定依頼でき”最高価格”が見つかります
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます

2.譲渡所得の計算方法

本当に税金がかからないかどうかは、最終的に譲渡所得を計算して確認することが必要です。

本章では、譲渡所得を計算するにあたり必要となる以下の3点を解説します。

  1. 譲渡価額
  2. 取得費
  3. 譲渡費用

それではひとつずつ見ていきましょう。

2-1.譲渡価額

譲渡価額とは、基本的には売却価格です。
ただし、実際の売却では固定資産税の精算を行うことが一般的であるため、売却価格に固定資産税精算金を加えたものが譲渡価額となります。

【譲渡価額の求め方】

譲渡価額 = 売却価格 + 固定資産税精算金

固定資産税精算金とは、引渡日以降の固定資産税および都市計画税相当額の実施的な負担を買主へ移転するために行う精算のことです。
固定資産税精算金は、売主が買主からもらうお金になります。

固定資産税精算金は、売主が買主からもらうお金になります。</p>
<p><img decoding=

その年の固定資産税等の納税義務者は1月1日時点の所有者であることから、当該年で売却が行われても納税義務者は1月1日時点の所有者のままです。

売却してもその年の固定資産税を納税しなければならない人は売主であるため、本来は引渡日以降もその年は買主が負担すべきものではありません。

よって、固定資産税精算金は単純に買主からお金を追加でもらっている「単なる値上げ」であり、譲渡価額に加わるものとなります。

また、マンションの売却では管理費及び修繕積立金(以下、「管理費等」と略)の精算も行います。
管理費等の精算金は、譲渡価額には加えません。

管理費等の精算金は、譲渡価額には加えません

引渡日以降の管理費等は、本来は買主が負担すべきものであり、売主が当月分を前払いしている場合には、売主が「立て替え」をしているお金に相当するからです。

2-2.取得費

取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額でした。
式で表すと以下のようになります。

取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)

マイホームは居住用財産と呼ばれます。
居住用財産の減価償却費の計算方法は以下の通りです。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率については建物の構造によって以下のように定められています。

構造 非事業用の償却率
木造 0.031
木造モルタル 0.034
鉄骨造(3mm以下) 0.036
鉄骨造(3mm超4mm以下) 0.025
鉄骨造(4mm超) 0.020
鉄筋コンクリート造 0.015
鉄骨鉄筋コンクリート造 0.015

マンションは一般的に「鉄筋コンクリート造」または「鉄骨鉄筋コンクリート造」で建てられているため、償却率は「0.015」を用います。

経過年数とは購入の引渡から売却の引渡までの「所有期間」を表します。

経過年数は「築年数ではない」ことがポイントです。

経過年数は年単位で表され、6ヶ月以上の端数が出た場合は1年と計算し、6ヶ月未満の端数が出た場合は切捨てで計算します。

(経過年数の計算例)
1996年3月~2019年6月・・・23年3ヶ月は「23年」として計算
2001年2月~2019年10月・・・18年8ヶ月は「19年」として計算

2-3.譲渡費用

譲渡費用は、売却に要した費用のことです。
一般的なマンションの売却で譲渡費用となるものは、以下のものになります。

売却の際の仲介手数料
売却時の売買契約書に貼付けした印紙税

譲渡費用に含めることができる費用は限定的であり、例えばマンション売却時に発生する「抵当権抹消登録免許税」、「司法書士手数料」、「家財処分費用」、「引越費用」といった費用は譲渡費用に含めることはできないことになっています。

これから売却を始める予定で、詳しく税金を計算したい方は、不動産会社へ査定を依頼しましょう。
譲渡所得税は、査定額がわかることでおおよその価格を計算できるためです。

査定を依頼する際は、NTTデータグループが運営する査定サービス不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)を利用すると便利です。
最短1分程度の入力で、最大6つの不動産会社にまとめて査定依頼ができるため、査定額を簡単に比較できます。

3.取得費の求め方

「取得費」というのは単純に「買った金額」というわけではありません。
本章では、取得費の求め方について、以下の3つのパターンを解説します。

  1. 新築でマンションを購入した場合
  2. 中古でマンションを購入した場合
  3. 購入価額が分からない場合

それではひとつずつ見ていきましょう。

3-1.新築でマンションを購入した場合

新築でマンションを購入した場合の取得費の計算方法を解説します。
新築マンションは、購入時の売買契約書に土地と建物の内訳価格が記載されていることが一般的です。

以下の条件で取得費を計算します。

マンション購入価額:6,000万円
内訳 土地購入価額:4,000万円
   建物購入価額:2,000万円
経過年数:20年

取得費は以下の通りです。

最初に減価償却費を求めます。
減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 20年
      = 540万円

よって取得費は以下のように求められます。
取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)
    = 4,000万円 + (2,000万円 - 540万円)
    = 4,000万円 + 1,460万円
    = 5,460万円

減価償却費の計算方法について詳しくは『減価償却費の計算方法は?』をご覧ください。

3-2.中古でマンションを購入した場合

中古でマンションを購入した場合の取得費の計算方法を解説します。
中古マンションを個人の売主から購入している場合、「土地と建物の内訳価格」が分からないことが一般的です。

そのため、中古マンションではまず購入時の土地と建物の内訳価格を求めることから始めます。

内訳価格を求めるには、国税庁の示す「建物の標準的な建築価額表」を利用します。
建物の標準的な建築価額とは、建築当時の新築工事費の単価相場のことです。

中古でマンションを購入した場合の取得費は、以下の3ステップで計算します。

  1. 建物の標準的な建築価額表により「新築時」の建物価格を求める。
  2. 新築時の建物価格を購入時まで減価償却を行い、「購入時」の建物価格を求める。
  3. 購入時の建物価格を売却時まで減価償却を行い、「売却時」の建物取得費を求める。

中古でマンションを購入した場合の取得費

【条件】

マンションの構造:鉄筋コンクリート造
マンション新築年:1985年(昭和60年)
マンション購入年:2000年(平成12年) 経過年数15年の中古マンションとして購入
マンション売却年:2020年(令和元年) 購入から売却の経過年数は20年
マンションの床面積:70平米  登記簿謄本に記載された専有面積
マンションの購入価額:4,000万円 中古マンションとして購入した価額

取得費の算出方法は以下の通りです。

【ステップ1】

建物の標準的な建築価額表により「新築時」の建物価格を求めます。
建物の標準的な建築価額表では、1985年の鉄筋コンクリート造の建築費単価を「144.5千円/平米」としています。

よって、新築当時の建物価格は以下のように計算できます。

新築当時の建物価格 = 標準建築費 × 床面積
          = 144.5千円/平米 × 70平米
          = 1,011.5万円

【ステップ2】

新築時の建物価格を購入時まで減価償却を行い、「購入時」の建物価格を求めます。
条件より、新築から購入当時までの経過年数は「15年」です。

新築から購入当時までの減価償却費は以下のようになります。

減価償却費 = 新築建物価格 × 0.9 × 償却率 × 新築から購入までの経過年数
      = 1,011.5万円 × 0.9 × 0.015 × 15年
      ≒ 204.8万円

よって、購入当時の建物価格は以下のようになります。

購入時の建物価格 = 新築建物価格 - 減価償却費
         = 1,011.5万円 - 204.8万円
         = 806.7万円

【ステップ3】

購入時の建物価格を売却時まで減価償却を行い、「売却時」の建物取得費を求めます。

条件より購入から売却までの経過年数は「20年」でした。
減価償却費は以下のようになります。

減価償却費 = 購入時の建物価格 × 0.9 × 償却率 × 購入から売却までの経過年数
      = 806.7万円 × 0.9 × 0.015 × 20年
      ≒ 217.8万円

建物取得費は以下の通りです。

建物取得費 = 購入時の建物価格 - 減価償却費
      = 806.7万円 -  217.8万円
      = 588.9万円

次に中古マンションの購入価額から購入時の建物価格を控除することで購入時の土地取得費を求めます。

土地取得費 = 中古マンションの購入価額 - 購入時の建物価格
= 4,000万円 - 806.7万円
      = 3,193.3万円

よって、売却時の取得費は以下の通りです。

売却時の取得費 = 土地取得費 + 建物取得費
        = 3,193.3万円 + 588.9万円
        = 3,782.2万円

経過年数は「所有期間」であり、中古マンションを購入したときの過去の築年数とは無関係に売主が保有していた「所有期間」で減価償却費が計算される点がポイントです。

3-3.購入価額が分からない場合

購入価額が分からない場合、「概算取得費」というものを用います。
概算取得費は、「譲渡価額の5%」です。

【概算取得費の求め方】

取得費 = 譲渡価額 × 5%

~1年以内にマンション売却の予定があるなら~

税金の計算は専門知識も要するため、「自分でやっても正しいのかどうか不安」と思う方も多いでしょう。
もしこの先1年以内に売却する予定があるのであれば、不動産会社の売却査定を受け、その際にあわせて見積もってもらうことをおススメします。

優良な不動産会社を手間なく見つけるなら、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」が便利です。

 

売却したいマンションの所在地や広さなどを入力するだけで、そのエリアでマンション売却の実績が豊富で最新の法令にもしっかり対応している不動産会社がピックアップされ、最大6社に査定が申し込めます。
複数の不動産会社を比べることで、「どの会社が高く売ってくれそうか」「税金等の相談も丁寧に受けてくれる会社がどれか」など、客観的に把握することができます。

マンション売却では、税金以外にも色々と相談したいことが発生するのが生じるものですので、ぜひ「不動産売却 HOME4U」を上手に活用し、頼りになる不動産会社を見つけ、売却成功への足掛かりとしてください。

4.譲渡所得の計算シミュレーション

以下の条件で譲渡所得の計算シミュレーションを行います。

【条件】

売却したマンション:新築で購入
マンション購入価額:6,000万円
内訳 土地購入価額:4,000万円
   建物購入価額:2,000万円
経過年数:20年

上記条件のマンションは「第3章1 .新築でマンションを購入した場合」と同じなので取得費は「5,460万円」です。

売却価格:3,500万円
固定資産税精算金:5万円
譲渡費用:112万円(仲介手数料:111万円、印紙税:1万円)

譲渡所得は以下の通りです。

譲渡価額 = 売却価格 + 固定資産税精算金
     = 3,500万円 + 5万円
     = 3,505万円

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 3,505万円 - 5,460万円 ― 112万円
     = ▲2,067万円

上記の例では譲渡損失が発生したため、税金はかからないことになります。

5.譲渡所得がプラスのときの税金の求め方

譲渡所得がプラスのときの税金の求め方について解説します。
譲渡益が発生した場合、税金は譲渡所得に税率を乗じて求めます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は、所有期間によって異なります。
売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」と呼ばれます。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

譲渡所得を100万円とした場合、税金は以下のように計算します。

(条件)
譲渡所得:100万円

(計算方法)
所得税 = 譲渡所得 × 税率
    = 100万円 × 15%
    = 15万円

復興特別所得税 = 所得税 × 税率
        = 15万円 × 2.1%
        ≒ 0.3万円

住民税 = 譲渡所得 × 税率
    = 100万円 × 5%
    = 5万円

税額 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
   ≒ 15万円 + 0.3万円 + 5万円
   ≒ 20.3万円

6.譲渡所得がプラスのときに使える節税特例

譲渡所得がプラスになっても、利用できる節税特例が存在します。
本章では、以下の3つの特例について解説します。

  1. 居住用財産の3,000万円特別控除
  2. 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え特例

それではひとつずつ見ていきましょう。

6-1.居住用財産の3,000万円特別控除

居住用財産の3,000万円特別控除とは、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

計算の結果、譲渡所得がゼロ円(マイナスもゼロ円)となれば、税金は生じないことになります。

詳細は、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

6-2.所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例

所有期間が10年超のマンションで、3,000万円特別控除の特例を適用しても、譲渡益が生じる場合は、「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例(以下、「軽減税率の特例」と略)」が利用できます。

軽減税率の特例を利用した場合の税率は以下の通りです。

課税譲渡所得金額 所得税 住民税
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円以下の部分 10% 4%
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円超の部分 15% 5%

詳細は、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

6-3.特定の居住用財産の買換え特例

買い替えを行うときに譲渡益が生じた場合は、特定の居住用財産の買換え特例が利用できます。

特定の居住用財産の買換え特例は、売却する不動産の「譲渡価額」と購入する不動産の「取得価額」で課税の有無が決まる特例です。

金額の関係 課税の有無
譲渡価額>取得価額 課税される
譲渡価額≦取得価額 課税されない(繰延される)

購入物件の取得価額が売却物件の譲渡価額を上回ると、売却時の課税が繰延(先送り)されます。
課税の先送りであるため、購入物件を将来売却する場合には、今回の売却に遡って課税されます。

詳細は、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

7.マンション売却で税金が発生する可能性の高いケース

今後マンション売却を検討している方の中には、「税金が発生しやすい事例」を知りたい方もいらっしゃることでしょう。
本章では、マンション売却で税金が発生する可能性の高いケースについて、以下の3例を解説します。

  1. 値上り時にマンションを売るケース
  2. 概算取得費を用いるケース
  3. 買い替えで住宅ローン控除を使うケース

それではひとつずつ見ていきましょう。

7-1.値上り時にマンションを売るケース

マンションは築年数が経過すると価格が下がることが一般的ですが、値上り時にマンションを売るケースでは、税金が生じるケースがあります。

以下に首都圏における過去25年間の中古マンション価格の推移について紹介します。

首都圏における過去25年間の中古マンション価格の推移

出典:中古マンション「公益財団法人東日本不動産流通機構

例えば、底値の2002年頃に購入し高値の2020年に売却しているようなケースでは、中古マンションの売却相場が上がっているため、築年数が経過しても譲渡益が発生している可能性はあります。

特に総額の大きい「億ション」は、元々の金額が大きいことから、3,000万円特別控除を利用しても税金が生じることがあります。

7-2.概算取得費を用いるケース

概算取得費を用いるケースは譲渡所得が大きく計算されるため、3,000万円特別控除を利用してもプラスの譲渡所得が残り、税金が発生する確率が高くなります。

取得費が分かることが最も効果の高い節税対策となるため、売却前は今一度購入当時の売買契約書を探すことがポイントです。

7-3.買い替えで住宅ローン控除を使うケース

買い替えで住宅ローン控除を使うケースでは、以下の節税系の特例を同時に利用できないため、税金が生じることがあります。

【住宅ローン控除と併用できない特例】

  • 3,000万円特別控除
  • 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
  • 特定の居住用財産の買換え特例

住宅ローン控除は、購入物件に入居した年の他、その前年または前々年あるいはその翌年またはと翌々年に節税系の特例を適用すると利用できなくなります。

買い替えで住宅ローン控除を使うケース

一般的に、「購入物件で使う住宅ローン控除」と「売却物件で使う節税系の特例」では、「購入物件で使う住宅ローン控除」の方が節税効果は高いです。
よって、買い替えで譲渡益が生じた場合には、税金を支払うケースが多くなります。

8.むしろ税金は戻ってくる?税金還付が受けられる特例

「節税」というと、何となく「払わないようにするための手段」というイメージになりがちですが、「税金還付」の情報を知っておくことも重要です。
本章では、税金還付が受けられる特例を2つ紹介します。

  1. 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  2. 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

それではひとつずつ見ていきましょう。

8-1.居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

買い替えを行う場合、譲渡損失が発生したときに、その損失を他の所得と合算する(損益通算と呼ぶ)ことで税金の還付を受けられる特例になります。

例えば、譲渡損失が▲900万円、給与所得が600万円とすると、損益通算によってその年の所得は▲300万円とすることができます。

給与所得者は年間所得が600万円を前提として源泉徴収が行われているため、払い過ぎていた税金の還付を受けられるという仕組みです。

詳細は、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

8-2.居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

前節と同じ仕組みの特例ですが、本節の特例は買い替えを要件とはしておらず、住宅ローン残債が売却額を上回っているときに利用できる特例になります。
住宅ローン残債との差額が他の所得から控除できる限度額となる点がポイントです。

詳細は、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

9.確定申告の必要性の有無

確定申告の必要性の有無について解説します。
確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。

確定申告が必要なケースは、「譲渡益が生じている場合」または「特例を利用する場合」です。

確定申告の必要性の有無

    (確定申告が必要なケース)

  • 譲渡益が生じている場合
  • 特例を利用する場合
  • (確定申告が不要なケース)

  • 譲渡損失が生じており、かつ、特例を利用しない場合

譲渡損失が生じていても、税金還付を受ける特例を利用する場合には、確定申告が必要です。

まとめ

いかがでしたか。
マンション売却に関する税金や特例をテーマに解説してきました。

税金の有無を調べるには、譲渡所得を計算する必要があります。
譲渡所得がプラスの場合は、「居住用財産の3,000万円特別控除」等で節税をすることが可能です。

この記事で得た情報を活かして、上手にマンション売却の準備を進めてください。

これから売却をはじめる予定で、まだ査定を受けていない方は、さっそく不動産会社に査定を依頼していきましょう。
査定額を知れば、より明確に税金をシミュレーションできます。

以下のボタンより、最大6つの不動産会社に完全無料で査定依頼ができます。