【不動産売却の税金計算方法】具体例や節税のコツも解説!

不動産の売却では大きな金額が動くので、「税金がかかるのかな?」と心配に思う方も多いでしょう。
最も注意したいのが、売却で生じた「利益」に課税される「譲渡所得税・住民税」です。

簡単に言うと、買ったときよりも高く売れたときなどに、税金がかかります(詳しい計算方法は、本記事内でご紹介します)。

不動産の売却益にかかる税金のポイント

  • 売却利益(譲渡所得)が3,000万以下の場合は、税金の特例を適用できれば税金はかかりません。
  • 3,000万円より高く売れた場合は、売却益から特例の分の3,000万円を引いた額に対して税金がかかります。
  • 取得費など、売却の必要経費を売却益から引くことができます。
  • 所有していた家の年数に応じて税率が変わります。
    ※ 所有期間が5年以下なら約39%、5年超なら約20%
  • 所得税のほかに「印紙税」「登録免許税」「消費税」もかかります。

この記事では、不動産売却にかかる税金の種類、譲渡所得税のシミュレーション、節税のための3つのコツなど、不動産売却に関連する税金計算のノウハウをわかりやすく解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、不動産を売却する際に余計な税金を払わずに済むように対策しましょう。

先に「売却額別の税金のシミュレーション」をご覧になりたい方はこちらへお進みください。

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この記事の監修者
秋山 芳生
家計簿アプリマネーフォワードMEの元事業責任者。
複数のベンチャー企業での上場経験を通じて資産構築をしFIREを達成。現在はFPとして講演・執筆・面談を行う傍らYouTube(チャンネル登録2万人以上)で情報発信するなどマルチに活動をしている。
あなたのよしおさんFP相談室

Contents

1.不動産売却でかかる税金の種類5つ

不動産売却で発生する可能性がある税金は、次のとおりです。

税金の種類 税率・税額
所得税・住民税
(復興特別所得税含む)
所有期間5年以下:39.63%
所有期間5年超:20.315%
※10年超所有するマイホームなら14.21%(利益のうち6,000万円まで)
※譲渡所得(売却の利益)に課税される。売却の翌年に支払う。
印紙税 売買代金に応じて決まる
(例)
・売買代金1,000万円超5,000万円以下:印紙税1万円
・売買代金5,000万円超1億円以下:印紙税3万円
※売買契約書に貼り付ける。
登録免許税
(抵当権抹消登記)
土地1筆・建物1棟あたり1,000円
※住宅ローンを利用していた場合に必要。
消費税 10%
※仲介手数料、司法書士報酬等にかかる。

不動産を売却するときに、一番注意したいのが、利益に課税される「所得税・住民税・復興特別所得税」です。

その他の税金は比較的少額ですし、仲介してくれる不動産会社から支払いのタイミングについても説明があるので、あまり心配いりません。

それでは、それぞれの税金の詳細を説明していきます。

1-1.所得税と住民税

不動産が買ったときよりも高く売れて、利益が出た場合などに、課税される税金です。

仲介手数料などの諸費用を差し引いた「純粋な利益」に課税されるとイメージしてください。

「所得税」「住民税」「復興特別所得税」を合わせた税率は、不動産を所有していた期間が5年以下なら約39.63%、5年超なら20.315%です。

所得税 住民税 復興特別所得税 合計
長期譲渡所得(5年) 15% 5% 0.315% 20.315%
短期譲渡所得(5年以内) 30% 9% 0.63% 39.63%

「こんなに税金がかかるの!?」と思われた方も多いと思いますが、マイホームを売却した場合には、利益が3,000万円まで非課税になる制度があります(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)。

したがって、この特例が使えれば、上の例で所得税・住民税はかかりません。

特例を適用するためには要件がありますが、一般的なマイホームの売却では課税される人は少ないので安心してください。

3,000万円の特別控除の主な要件

  • 自分が住んでいた家を売ること(別荘や投資用マンションは対象外)。
  • 以前に住んでいた家屋や敷地等の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
  • 売った年の前年、前々年にこの特例を受けていないこと。
  • 売却の相手方が親子や夫婦等でないこと。

など。

参考:“No.3302 マイホームを売ったときの特例”. 国税庁. (参照2024-04-11)

3,000万円控除については、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

1-2. 印紙税

不動産の売買契約書に印紙を貼って納税します。2014年(平成26年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までに作成された不動産売買契約書には、一覧表の右側の軽減税率が適用されます。

税額は次のとおりです。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円を超え 50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え 100万円以下のもの 1千円 500円
100万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円

出典:“不動産売買契約書の印紙税の軽減措置”. 国税庁. (参照2024-04-11)

1-3. 登録免許税

売却する不動産について、住宅ローンを借入していた場合には、金融機関が「抵当権(ていとうけん)」を設定しています。

抵当権とは、お金を貸す銀行などの金融機関が、借りる方の家や土地をその借金の担保とするために設定する権利のことです。

売却時には抵当権の抹消登記が必要となるため、登録免許税を支払います。

税額は、土地・建物それぞれの個数×1,000円なので、登録免許税は数千円で済むことがほとんどです。

例えば、一戸建てなら土地・建物を合わせて少なくとも2,000円で、土地が2筆以上に分かれていれば登録免許税は増えます。

なお、所有権移転登記にも登録免許税がかかりますが、こちらは買主負担となるのが一般的です。

1-4. 消費税

不動産を売却するときには、仲介手数料司法書士報酬に消費税がかかります。

2019年10月に消費税が増税となりましたが、個人がマイホーム等を売却するときには増税の影響はあまり大きくありません。

例えば、売買代金が3,000万円の場合の仲介手数料の上限は96万円(3,000万円×3%+6万円)ですので、消費税8%なら税額は76,800円、10%なら96,000円です。

なお、課税事業者になっている不動産投資家が事業用の不動産を売却したときには、建物部分について消費税が課税されます(2年前の売り上げが1,000万円を超える場合は課税事業者になります)。

不動産売却でかかる税金で主なものは、所得税・住民税です。これは不動産購入時より高い金額で売却できた時に適用されます。税率が約14.21%~39.63%と高いですが、マイホームを売却した場合の3,000万円の特別控除を利用することで抑えることができます。主な要件はありますが、一般的なマイホームの場合は課税される人は少ないですね。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

不動産売却時にかかる税金と計算方法|税金対策の方法も解説」の記事でも同様の内容を紹介しています。併せてご覧いただくことで、より理解が深まります。

2.不動産売却で発生する「譲渡所得税・住民税」の計算方法

不動産売却で発生する税金に、「譲渡所得税・住民税」があります。3,000万円の特別控除を利用する方、しない方に向けて計算式を紹介しますので、参考にしてください

2-1. 通常の計算式

それでは、「譲渡所得税・住民税(「復興特別所得税」含む)」を試算してみましょう。 なるべく専門用語を減らして解説します。

わかりやすくするため、減価償却費などを省略して簡略化しています。より正確に試算したい方は、このあとの「4.減価償却の計算方法」をご覧ください。

通常の計算式
(売った値段-買った値段※1-諸費用※2)×税率※3

※1:買った値段がわからない方は、「買った値段」のところに、「売却価格×5%」の数字を入れます。購入した値段が「売却価格×5%」より少ないときにも、5%の数字を採用できます。
※2:諸費用とは、仲介手数料、印紙代、登録免許税、登記費用、取壊し費用、測量費用などのことで、売るときの費用と、買ったときの費用を計上できます。
※3:税率は「2-3の表」をご覧ください。

2-2. 3,000万円の特別控除を利用する方

「3,000万円の特別控除」を利用する方
(売った値段-買った値段※1-諸費用※2-3,000万円)×税率※3

※1:買った値段がわからない方は、「買った値段」のところに、「売却価格×5%」の数字を入れます。購入した値段が「売却価格×5%」より少ないときにも、5%の数字を採用できます。
※2:諸費用とは、仲介手数料、印紙代、登録免許税、登記費用、取壊し費用、測量費用などのことで、売るときの費用と、買ったときの費用を計上できます。
※3:税率は「2-3の表」をご覧ください。

2-3.税率の表

税金の計算を行うときにご活用ください。
所有期間※4 「譲渡所得税・住民税・復興特別所得税」を合計した税率
5年以下(短期譲渡所得) 39.63%
5年超(長期譲渡所得) 20.315%
10年超のマイホーム※5 14.21%(利益のうち6,000万円まで) 20.315%(利益のうち6,000万円超の部分)

※4:「所有期間」は、売却した年の1月1日時点で数えるのでご注意ください。原則として引渡し日で考えますが、契約日を採用できる場合もあります。また、相続した不動産の場合は、亡くなった人が取得した日から計算するのが原則です。判断に迷う場合は税務署に相談してください。

※5:所有期間が10年超の「マイホームの軽減税率の特例」を適用するためには一定の要件があります。詳しくは、下記国税庁のページをご覧ください。

参考:“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”. 国税庁. (参照2024-04-11)

3.【ケース別】不動産売却の税金のシミュレーション

不動産売却時の税金計算について、3つのシミュレーション例をご紹介します。ご自身の不動産売却シミュレーション時の参考にしてください。

3-1. 2,000万円で購入した土地を2,500万円で売却したケース

1つ目のシミュレーションは、2,000万円で購入した土地を2,500万円で売却したケースです。売却物件の所有期間は4年、諸費用は250万円を前提として計算を行いました。

譲渡所得税・住民税(「復興特別所得税」含む)の計算式

(売却価格 – 購入価格 – 諸費用)×税率(39.63%)
=(2,500万円-2,000万円-250万円)×39.63%
=約99万円

3-2. 2,000万円で購入したマイホームを2,500万円で売却したケース

2つ目のシミュレーションは、2,000万円で購入したマイホームを2,500万円で売却したケースです。物件の所有期間は7年、諸費用は250万円として「3,000万円の特別控除」が使える場合のシミュレーションです。

(売却価格 – 購入価格 – 諸費用 – 特別控除)を計算する。

(2,500万円-2,000万円-250万円-3,000万円)=-2,750万円

計算を行うと答えがマイナスとなる。
マイナスの場合は所得が0になるので、税率(39.63%)をかけても0円。
0×39.63%=0円

よって、譲渡所得税・住民税(「復興特別所得税」含む)は0円

3-3.購入額不明のマイホームを4,000万円で売却したケース

3つ目のシミュレーションは、買った値段がわからないマイホームを4,000万円で売却したケースです。
所有期間は9年、諸費用は150万円として「3,000万円の特別控除」が使えるものとします。

今回は、取得費がわからないことが計算のポイントです。

不動産を手に入れた時の資料がなく、購入金額が不明な場合、売却額の5%相当を取得費として計算できるルールがあるので利用しましょう。

購入時の値段が不明なため、購入額4,000万円 x 5% = 200万円で取得したものと仮定して計算を行います。

譲渡所得税・住民税(「復興特別所得税」含む)の計算式

(売却価格 – 購入価格 – 諸費用 – 特別控除)×5年超(長期譲渡所得)の税率20.315%を計算する。

=(4,000万円-200万円-150万円-3,000万円)×20.315%
=約132万円

参考:“No.3258 取得費が分からないとき”. 国税庁. (参照2024-04-11)

税金の計算を専門家に任せたい場合

計算式を紹介しましたが、ピンと来ない場合、不動産にかかる税金に強い税理士に依頼してください。税理士に当てがない方は、売却の際に利用した不動産会社に紹介依頼をしてみましょう。

これから家を売る方で税金が心配な方は、一括査定サービスで不動産会社とつながりを持ってください。業務提携をしている税理士がいるか確認することがポイントです。売却のご相談は「HOME4U」の一括査定サービスをご利用ください。

4.減価償却の計算方法

より正確な税金を算出したい場合は、減価償却も含めて計算します。

計算例では省略しましたが、建物を売却した場合には「買った値段」の計算で「減価償却費」を差し引きます。

こちらでは、減価償却費の計算方法を紹介します。

買った値段=購入代金-減価償却費

減価償却は、所有期間中に建物の価値が少しずつ減っていくという考え方です。 土地の場合は減価償却しません。

また、買った値段が不明で、売却価格×5%で計算した場合には減価償却は行いません。

居住用の場合の減価償却費の計算式は、次のとおりです。

減価償却費=建物の取得価格×0.9×償却率×経過年数

償却率は、建物の構造によって異なります。

構造 償却率
木造 0.031
軽量鉄骨(3mm以下) 0.036
軽量鉄骨(3mm超4mm以下) 0.025
鉄筋コンクリート 鉄骨鉄筋コンクリート 0.015

【例】取得価格3,000万円(このうち建物価格2,000万円とする)のマンションを3,200万円で売却した場合。

諸費用は300万円、構造は鉄筋コンクリート、所有期間は6年、用途はマイホーム、「3,000万円の特別控除」を使わないものとする。

減価償却費=建物の取得価格×0.9×償却率×経過年数
=2,000万円×0.9×0.015×6年=162万円

譲渡所得税・住民税(「復興特別所得税」含む)
=((売った値段-(購入代金-減価償却費)-諸費用)×20.315%
=(3,200万円-3,000万円+162万円-300万円)×20.315%
=約12万円

なお、事業用の不動産の場合は、建物を取得してから売るまでの毎年の減価償却費の合計額を差し引きます。

減価償却の計算方法については、以下の記事でさらに詳しく解説していますので、ご覧ください。

5.節税するための3つのコツ

不動産売却で節税するには、物件購入時の購入金額、所有年数による売却のタイミング、節税できる制度を知ることは大切です。節税するための3つのコツをご紹介します。

5-1.購入額がわかる書類を探す

節税するための3つのコツ

購入代金がわからない場合は、売却代金の5%で取得したものとして計算することになります。

この場合、「売却益」が大きく計上され、課税額が大きくなりがちです。

相続した不動産など、売買に関する書類が見つけにくいケースもあると思いますが、購入額がわかる書類をできる限り探してみましょう。

売買契約書でなくても、通帳の記録などで確認できれば認められる場合もあるので、購入額が証明できる書類を探した上で税務署に相談してみてください。

5-2.売却のタイミングを検討する

最終的に手元に残るお金を最大化するためには、売却のタイミングに注意が必要です。

売却のタイミングを検討するときには、次の3つのポイントを総合的に検討しましょう。

5-2-1.【ポイント1】 各種の税金の特例を利用するための売却の期限があること

早く売らないと各種の特例を利用できなくなってしまう可能性があることを覚えておいてください。

例えば「3,000万円の特別控除」の場合は、「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末までに売ること」という要件があります。

5-2-2.【ポイント2】 所有期間が5年を超えると税率が下がること

売却益が出そうな場合で、所有期間が5年弱の場合には、5年を超えるまで売却を待つという考え方もあります。

ただし、売却時期を遅らせることで、各種の特例制度が受けられなくなる可能性や、維持費がかかることに注意が必要です。

5-2-3.【ポイント3】 現在の不動産市況は好調なので高く売りやすいタイミングであること

最近は、都心部の土地や中古マンションを中心に価格の高騰が続いていますが、2024年3月のマイナス金利解除などの影響により、徐々に下落に転じる可能性があります。

所有期間5年以下で売却すると税率は高くなりますが、高く売れれば手取りは多くなる可能性があるため、市況が良いうちに利益確定してしまうのも1つの選択肢です。

ただし、不動産価格が上昇中とはいえ、どの不動産会社に依頼しても必ず高く売れるわけではありません。なぜなら、不動産会社には得意分野や得意エリアがあるからです。

「税金を考慮しつつ、最適なタイミングで、最高価格で売りたい」という場合には、最適な不動産会社を探すために「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご活用いただければと思います。

5-3.節税できる制度をもれなく使う

節税できる様々な制度があるので、当てはまりそうな場合は税務署や税理士に相談して、もれなく使いましょう。

売却益が出た場合だけでなく、損失が出た場合に使える制度もあります。損失が出た場合でも、あきらめずに節税する方向で動いてください。

節税につながる制度は以下の5つです。

  1. 3,000万円の特別控除
  2. マイホームを売った時の軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例
  4. 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除制度の特例
  5. 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

次にご紹介する「6. 売却益が出た場合の5つの節税制度」でそれぞれの制度の特徴をご紹介します。

節税の制度は様々ですが、節税のポイントを押さえた不動産売却をしたい場合は、「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」の利用がおすすめです。複数の不動産会社に査定を出し、売却のタイミングや特例に関する相談ができる不動産会社を選びましょう。

不動産会社が税金に対する対処を直接行うわけではありませんが、提携の税理士や司法書士につないでもらうことも可能です。

上記のように、不動産売却で節税をするにはコツがあります。その中でも、特例を使うことで大幅な節税が可能になります。特例は、利益が出た場合と損失が出た場合で異なったり、併用できる特例とできない特例があったりするため注意しましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

6.売却益が出た場合の5つの節税制度

売却益が出たときに使える「5つの節税制度をご紹介します。参考にしてください。

売却益が出た場合に使える特例制度はいくつかありますが、それぞれ使うためには一定の要件があるので注意しましょう。

6-1.3,000万円の特別控除

マイホームを売却した場合に、一定の要件に当てはまれば、売却益から3,000万円まで控除できる制度です。買換えの場合、「3,000万円の特別控除」と「住宅ローン控除」は併用できないのが原則なので、どちらを使ったほうが有利になるか検討する必要があります。

参考:“No.3302 3,000万円の特別控除”. 国税庁. (参考2024-04-11)

6-2.マイホームを売った時の軽減税率の特例

10年以上所有していたマイホームを売却した場合に、一定の要件に当てはまれば、軽減税率が適用されます。上記の「3,000万円の特別控除」の特例と重ねて受けることができます。

参考:“No.3305 マイホームを売った時の軽減税率の特例”. 国税庁. (参考2024-04-11)

6-3.特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例

10年以上所有するマイホームの買い替えで使える制度です。非課税となるわけではありませんが、課税を将来に繰り延べることができます。

参考:“No.3355 特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例”. 国税庁. (参考2024-04-11)

6-4.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除制度の特例

亡くなった人のマイホーム(マンションを除く)を相続によって取得して、2016年(平成28年)4月1日から2027年(令和9年)12月31日までの間に売却した場合、一定の要件に当てはまれば売却益から3,000万円まで控除できます。

参考:“No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除制度の特例”. 国税庁. (参考2024-04-11)

6-5.相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続税を支払った場合に、相続税額のうち一定金額を取得費用に加算できる制度です。

参考:“No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例”. 国税庁. (参考2024-04-11)

5つの特例を紹介しましたが、併用できない制度もあるので、どれを使うのが有利なのか迷った場合には税務署・税理士に相談しましょう。

マイホームの売却で利益が出た場合、使える特例がこれだけあるんです!どの制度が自分に使えるのか、要件を満たしているのか、他の制度と併用できるか、どれが一番得をするのかなど、事前にシミュレーションしておくと良いですね。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

7.売却損が出た場合の2つの節税制度

不動産売却で、売却損が出てしまった場合も、条件に当てはまれば節税制度を利用することができます。「売却損が出てしまった時の2つの節税制度」についてご紹介しますので、参考にしてください。

7-1.マイホームの買換えで損失が出たときの節税制度

不動産売却で売却損が出たときは、確定申告を行うことで、給与所得等に課税された税金が戻ってきます。

買換えで損失が出てしまった場合は「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用しましょう。

ただし、特例を利用するための条件が細かく設定されています。自分の不動産売却が特例利用可能か、条件を確認してください。

「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の条件(一部抜粋)

  • 自分が住んでいるマイホームを売りに出した
  • 2023年(令和5年)12月31日までに売却した物件である
  • 売却後、新たに住居を購入し
  • 旧居宅の譲渡による譲渡損失が生じた
  • 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産である
  • 新居に翌年の12月31日までに住むこと
  • 新居に償還期間10年以上の住宅ローンがあること

他にも、災害にあってしまった住宅、住まなくなった住宅など、様々なケースを想定した条件が設定されています。

特例を適用できる条件の詳細は、以下の国税庁のサイトをご確認ください。

参考:“No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)”. 国税庁. (参考2024-04-11)

7-2.住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が出たときの節税制度

マイホームの住宅ローンが残っている状態で買い替えを行い、損失が出た場合の特例もあります。

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用しましょう。売却損の確定申告は義務ではありませんが、要件に該当する場合は制度を活用してください。

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の条件(一部)

  • 自分が住んでいるマイホームの売却であること
  • 2023年(令和5年)12月31日までに住宅ローンのあるマイホームを売却
  • 住宅ローンの残高を下回る価格での売却
  • 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えるマイホーム
  • 売却前日に、償還期間10年以上の住宅ローンの残高がある

他にも様々な条件があります。詳細は国税庁のページで確認してください。

参考:“No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)”. 国税庁. (参考2024-04-11)

8.不動産売却の一括査定なら「HOME4U」がおすすめ

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税金も含めて、しっかりとコンサルティングしてくれる不動産会社を選び、売却を成功させましょう。

なお、法律上、税理士以外が具体的な税務相談に乗ることはできません。

税制の概要について不動産会社に聞くことはできますが、「どちらの特例制度を使ったほうが有利か?」といった疑問があれば、不動産会社と提携している税理士や、税務署等に相談することをおすすめします。

まとめ

不動産売却に関係する税金のシミュレーションはできましたでしょうか。

それではおさらいです。

不動産売却で発生する税金のうち、一番注意したいのは、利益が出たときにかかる「所得税」「住民税」です。その他の「印紙税」や「登録免許税」は比較的少額です。

所得税・住民税(復興特別所得税含む)の税率は、所有期間が5年以下なら39.63%、5年超なら20.315%です。

利益がたくさん出ると、税金は高額になる可能性がありますが、一定の要件を満たしたマイホームを売る場合には利益のうち3,000万円まで非課税になります。

節税するために大切なことは、次の3つです。

  • 購入額がわかる書類を探すこと
  • 節税できる制度をもれなく使うこと
  • 売却のタイミングを検討すること

最終的な手取り金額を増やすには、税金を考慮しながら高く売る必要があります。

しっかりシミュレーションして無駄なく節税するためには、税金も含めたコンサルティング能力の高い不動産会社を見つけることが、はじめの一歩です。

ぜひ「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」を活用して最適な不動産会社に出会い、不動産売却成功のゴールを勝ち取ってください。

不動産売却の際にかかるもっとも大きな税金は所得税・住民税です。これらはマイホーム売却時の3,000万円の特別控除などを利用することで節税することができます。

こうした特例は複数あり、旧居の売却益の有無に関わらず適用できる場合がありますが、併用できるものとできないものがあるため、しっかりと確認することが必要です。物件を売却した際にどれくらい税金がかかるか、事前にシミュレーションをして把握しておきましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

この記事のポイント まとめ

不動産売却でかかる税金の種類は?

不動産売却でかかる税金は5種類あります。

  1. 所得税
  2. 住民税
  3. 印紙税
  4. 登録免許税
  5. 消費税

それぞれの税の詳細は「1. 不動産売却でかかる税金の種類5つ」をご覧ください。

不動産売却で発生する「譲渡所得税・住民税」の計算方法は?

譲渡所得税と住民税を計算する方法は2通りあります。

通常の計算式
(売った値段-買った値段-諸費用)×税率
「3,000万円の特別控除」を利用する人
(売った値段-買った値段-諸費用-3,000万円)×税率

計算方法の詳細は「2. 不動産売却で発生する「譲渡所得税・住民税」の計算方法」で解説しています。ご一読ください。

減価償却の計算方法は?

居住用の場合の減価償却費の計算式は、次のとおりです。

減価償却費=建物の取得価格×0.9×償却率×経過年数
※償却率は、建物の構造によって異なります。

減価償却について詳しく知りたい方は、「4. 減価償却の計算方法」をご覧ください。

不動産売却で節税するための3つのコツは?

不動産売却で節税するためのコツは以下の3つです。

  1. 購入額がわかる書類を探す
  2. 売却のタイミングを検討する
  3. 節税できる制度をもれなく使う

詳しく知りたい方は「5.節税するための3つのコツ」をご一読ください。

売却益が出た場合の5つの節税制度は?

不動産売却で売却益が出た場合の節税制度は5つあります。

  1. 3,000万円の特別控除
  2. マイホームを売った時の軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例
  4. 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除制度の特例
  5. 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

詳しく知りたい方は「6. 売却益が出た場合の5つの節税制度」をご一読ください。