住み替えローンとは?メリットや利用の流れ、注意点などを解説

住み替えローンとは 流れやメリット、注意点

住み替えローンとは、不動産売却後のローンの残債と新しい住宅の購入資金を、一緒に借りることができる住宅ローンの一種です。旧居のローンを完済し、新居の購入資金も入手できる魅力的なローンですが、利用には注意点もあります。

この記事では、住み替えローンの基礎知識やメリット・デメリット、ローンのシミュレーションなどを紹介します。

売却について初歩的な内容から知りたい方は、「家を売る完全ガイド」もご覧ください。
また、住宅ローン返済中の家の売却については「ローン中の家を売る2つの方法をプロが解説」でも詳しく解説しています。

この記事を読むと分かること
  • 住み替えローンのメリット・デメリット
  • 住み替えローンを取り扱う金融機関
  • 住み替えローンのシミュレーション
「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格”を見つけましょう
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます
この記事の監修者
秋山 芳生
家計簿アプリマネーフォワードMEの元事業責任者。
複数のベンチャー企業での上場経験を通じて資産構築をしFIREを達成。現在はFPとして講演・執筆・面談を行う傍らYouTube(チャンネル登録2万人以上)で情報発信するなどマルチに活動をしている。
あなたのよしおさんFP相談室

Contents

1. 住み替えローンとは?

住み替えローンとは、住宅ローンの残債があっても新たな家に住み替えたい方のために、旧居と新居のローンを一緒に借り入れできる便利なローンです。金融機関によっては、買い替えローンとも呼ばれています。

住み替えローンの例を図にすると、以下のようになります。

住み替えローン融資額

借り入れの条件は、借りる方の収入、職業、勤続年数など、返済能力が重視される傾向にあります。ただし、具体的な条件は各金融機関で異なるため、「7.住み替えローンを取り扱う主な金融機関」から気になる金融機関を調べてみましょう。

また、住み替えの売買には、旧居の売却を先に行なう「売り先行」と、新居の購入を優先して行なう「買い先行」があります。それぞれのメリットとデメリットを関連記事で詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。

なお、マンションの住み替えについて詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご覧ください。

2. 住み替えローンの主な利用シーン

住み替えを検討する夫婦

住み替えに馴染みがない方は、住み替えローンがそもそもどのようなシーンで利用されるのか、イメージしづらいかもしれません。そこで本章では、住み替えローンの主な利用シーンを2つ紹介します。

2-1. 新しく家を購入し、住み替えをするとき

住み替えローンの主な利用シーンとしては、新しく家を購入して住み替えをするときです。以下のようなケースでは、住み替えローンは利用できません。

  • 旧居を売却してローンを完済している場合
  • 賃貸目的の物件を購入する場合
  • 自宅を売却しない場合

住み替えローンを借り入れる際には、新しく購入した家が担保になります。したがって、旧居の売却後に賃貸目的の物件を購入する場合や、実家に住み替える場合などには利用できません。あくまでも新たに購入した家に、住み替えローンの契約者自身が住むことが前提となります。

2-2. 旧居のローンを売却益で完済できないとき

もう一つの利用シーンとして挙げられるのが、旧居の売却益で旧居のローンを完済できないときです。

住み替えローンは、新居購入時のローンに売却した旧居のローン残債を上乗せして借り入れるものです。したがって、旧居の売却益でローンを完済できる場合には、そもそも住み替えローンを利用する必要はありません。

旧居のローンを完済して新居の購入費用を工面したい場合は、通常の住宅ローンを利用しましょう。

住み替えローンは、新しく家を購入し、住み替えをするに適用できます。

住み替えローンを借り入れる際には、新しく購入した家が担保になるため、新しく購入した家に住み替えローン契約者以外が住む場合は利用できないため注意が必要です。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

3.住み替えローンのメリット

住み替えローンのメリット

この章では、住み替えローンの概要と、以下の3つのメリットについて解説します。

  1. 旧居の残債があっても新居を購入できる
  2. 住み替え費用の持ち出しを抑えられる
  3. ダブルローンを組まなくてもよい

以下から、1つずつ説明していきます。

3-1.旧居の残債があっても新居を購入できる

住宅ローン残債が家の売却額を上回る状態を、オーバーローンといいます。

家を売却する際、通常、ローンが残っている状態では売ることができません。住宅には、銀行が住宅ローンを貸し出す際に設定した抵当権(担保権)が設定されており、「抵当権を抹消するには住宅ローンを一括返済しなくてはならない」というルールがあるからです。

オーバーローンの場合、預貯金を返済に充てたり、親族からお金を借りたりして住宅ローンの残債を一括返済し、抵当権を抹消する必要があります。しかし、そのような手段を誰もがとれるわけではありません。

このように、住宅ローンの一括返済が難しく、家を売却してもオーバーローンになりそうな場合は、住み替えローンが有効な手段となります。住み替えローンを利用すれば、残債があっても新しい家を購入することができます。

3-2. 住み替え費用の持ち出しを抑えられる

住み替えローンを利用すれば、貯金からの持ち出しを最低限に抑えられるというメリットもあります。

貯金は不測の事態に備え、ある程度残しておきたいと考える方は多いでしょう。

また、住み替えには引っ越し費用や一時的な仮住まいを確保する費用など、新居の購入費以外にもお金がかかります。その際に住み替えローンを使うことで、そうした諸費用に貯金を回すこともできます。

オーバーローンの場合、貯金で残債を返済できるとしても、貯金を枯渇させるような返済方法はリスクが生じる可能性があります。まずは家計の状況を整理して、住み替えローンの活用を検討するのが賢い方法です。

3-3. ダブルローンを組まなくてもよい

住んでいた家と住み替える新しい家のローンを二重に組むことを、ダブルローンといいます。

ダブルローンは、所有している家に住みながら新たな家を購入する「買い先行」のケースで利用されることが多いものですが、ローンの審査が厳しく、返済額も大きくなるというデメリットがあります。

また、ダブルローンになると、旧居で受けていた住宅ローン控除は適用できなくなります。住み替えローンを利用して、旧居と新居のローンをひとつにまとめることができれば、ダブルローンの負担は回避しつつ、新しい住居を購入することができます。

家の売却時、通常はローンが残っている状態で売ることができませんから、旧居のローン残債が残っている状態で新居を購入できる点が住み替えローンのメリットです。こうすることで、貯金からの持ち出しも最低限にすることができます。

また、旧居と新居のローンを1つにまとめられ、審査がきつく負担も大きくなるダブルローンを組まなくて良いのもありがたいですね。

ただし自分の返済余力に無理がないかを考えるは大前提になります。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

4.住み替えローンのデメリット

住み替えローンの注意点

住み替えローンには大きなメリットがある一方、デメリットもあります。

  1. 審査のハードルが高い
  2. 売却と購入の決済を同日にする必要がある
  3. オーバーローンの返済負担が重い

以下より、詳しく解説していきます。

4-1. 審査のハードルが高い

銀行にとっては、新居の担保価値に加えて旧居の残債分にも融資をすることになるため、住み替えローンの審査は厳しいのが一般的です。

住み替えローンでは、銀行は経年で変動する物件や土地の担保価値よりも、主に「人の返済能力」を見て融資を行ないます。

借りる方の収入や職業、勤務先、勤続年数等が前回の住宅ローンより重視され、条件が良くないと融資を受けることは厳しくなります。

4-2. 売却と購入の決済を同日にする必要がある

住み替えローンを実行するうえで注意したい2つ目のポイントは、売却と購入の決済(引き渡)を同日にする必要があるという点です。

売却と購入の流れ

上記の流れのように、旧居の住宅ローンの引渡日と新居の住み替えローンの決済日は、同日になります。

旧居の物件は抵当権を外さないと売却できず、抵当権を外すには、旧居を売却して住宅ローンを完済することが必要です。また、住み替えローンの融資を受けないと、旧居の完済も新居の購入もできません。

つまり、住み替えローンを利用するには、購入物件の融資実行日に売却物件の引渡日を合わせなければいけないということです。住み替えローンを利用する方は、購入と売却の全体スケジュールを計画的に調整することになります。

4-2-1. 決済日に困ったら、売却条件付きの住み替え特約

売却物件と購入物件の決済日(引渡日)を同日に調整するのが難しい場合は、住み替え(買い替え)特約を利用することおすすめします。

住み替え特約とは、住み替えをする買主が、自分の家を期限までに売却できなかった場合に、購入の売買契約を解除できるという売却条件付きの特約です。

住み替え特約を図式化すると以下のようになります。

売却条件付きの住み替え特約

Aさんは、住み替えローンを利用する「本人」です。住み替え特約では、先に購入物件の売買契約を締結します。この時点ではAさんの家は売れていません。

そして、購入物件の売主であるBさんとの売買契約で、「Aの家が○○年○月○日まで売れなかったら契約を解除する」という住み替え特約の条件を付けます。

このように売却条件付きの特約を設定することで、購入物件を先に押さえつつ、Aさんの売却物件の売買契約をCさんと結べた時点で、引渡日を同日にするようBさんと調整できます。

4-2-2. 住み替え特約が適用されやすい物件

住み替え特約は、購入物件に利用しやすい物件と利用しにくい物件があります。

fこの住み替え特約を利用しやすいのは、以下の図のように、家の売主が不動産会社のケースです。

住み替え特約が適用されやすい物件

個人が売主の場合、売主自身も住み替えを前提としているケースが多くあります。そのため、住み替え特約を付けてしまうと、売主自身が購入物件の購入タイミングを計りにくくなってしまうのです。

一方、不動産会社が売主であれば、売り切って終わりです。不動産会社は、住み替えを目的としていないため、買主の物件が売却するのを待つことができます。

したがって、不動産会社が売主であれば「住み替え特約を付けてほしい」という依頼が通りやすい傾向にあります。

4-3.オーバーローンの返済負担が重い

住み替えローンの最大のデメリットは、過剰な債務を抱えることになるという点です。

住み替えローンでは、購入物件で物件価格以上のローンを借りることになります。つまり、最初からオーバーローン状態ということです。オーバーローンとは、住宅ローンの残債が、家の売却額を上回る状態を指します。

さらに、通常の住宅ローンより金利の相場が高く、総じて毎月の返済額も高額になりがちです。万が一、住宅ローンを返済できず売却するような事態となった場合、残債がさらに増えるリスクがあるということを理解し、返済計画をしっかりと立てて利用しましょう。

住み替えローンは、売却と購入の決済を同日にする必要があるなどの制約がありますから、しっかりとしたスケジュールの計画を立てることが必要になります。

また、オーバーローンの返済負担が重いことにも注意が必要です。返済できない場合、残債が増える場合もあるので、返済計画を立ててから住み替えローンを行いましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

住み替えローンの注意点については、以下の関連記事も参考にしてください。

5.住み替えローンの流れ

住み替えローンを利用したいと考えたら、まずは大まかな流れを押さえておきましょう。住み替えローンの申し込みから融資を受けるまでは、主に以下の5つのステップで進めます。

住み替えローンの流れ

5-1.ローン残債を確認・事前準備をする

まずは、現状を把握することからスタートです。住み替え計画の第一歩として、以下のような洗い出しをしておくとよいでしょう。

  1. 住宅ローンの残債を確認する
  2. 家の売却相場を確認する
  3. 自己資金から、ローン返済や新居の頭金にいくら充てられるか検討する
  4. 前年度の収入がわかる源泉徴収票などを集めておく など

【2】の家の売却相場は、レインズ・マーケット・インフォメーションや中古住宅の不動産サイトを利用して、実際の成約価格や売り出し価格の相場感をつかんでおきましょう。次のステップで不動産会社に査定依頼をした際に、査定額か適正であるかを判断しやすくなります。

住み替えの成功のためには、資金計画が非常に大切です。以下の関連記事も、ぜひあわせて読むと良いでしょう。

5-2. 不動産会社を探す

次に、現在の住居を売却してくれる不動産会社を探します。

住み替えでは家の売却と購入が同時に進行するため、不動産会社選びは重要です。住み替えローンのプランや融資してくれそうな銀行を提案してくれる不動産会社もあります。事前に住み替え希望であることを伝え、ローンも含めたサポートをしてくれる不動産会社か確認してみましょう。

不動産会社選びは、「不動産売却 HOME4U」などの一括査定サービスを介して複数社に依頼し、査定額や各社の対応を比較することが大切です。販売活動の進め方、住み替えローンを組んでも売れない場合にはどうするのか、買取サービスがあるかなどを確認し、各社のレスポンスの速さや回答を比較・検討しましょう。

5-3. 住み替えローンを扱っている金融機関を探す

住み替えローンはメガバンクから地方銀行まで、さまざまな銀行が取り扱っています。

住み替えローンは一般の住宅ローンよりも金利が高く、融資条件も厳しくなりますが、銀行ごとに金利のキャンペーンを実施していたり、審査基準が異なったりするため、条件を比較することが大切です。住み替えの融資額がシミュレーションできるサイトを用意している銀行もあるので、活用してみましょう。

なお、住み替えローンの取り扱い金融機関一覧は「7.住み替えローンを取り扱う主な金融機関」で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

5-4. 住み替えローンを申し込む(事前審査)

利用したい銀行を絞り込んだら、事前審査に申し込みます。事前審査とは、収入・勤務先・頭金の有無・借入希望額などをもとにして、返済能力の有無を判断するための審査です。これには2~3日ほどかかります。

住み替えローンの審査基準は各金融機関によって異なるため、複数社を候補としておき、住み替えローンに通らない場合に備えておくとよいでしょう。

なお、先に家を売る「売り先行」にすると、ローンをいくら返済できるか、新居にいくらかけられるか、具体的な住み替えローンの計画が立てやすくなります。一方、新居の購入を先にする「買い先行」にすると、新居を担保としてローンを組めるため、借り入れの見通しが立ちやすくなります。

住み替えに関する売り先行・買い先行のメリット・デメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。住み替えローンを決める前の基礎知識として、読んでおくことをおすすめします。

5-5. 融資を受ける

事前審査が通り、新居の購入が決まれば、信用保証会社による本審査が行なわれます。

本審査では、雇用形態や勤続年数、家族構成、新居の担保評価など、事前審査よりさらに厳しく返済能力をチェックされます。審査期間は2~3週間ほどかかるのが一般的です。

こうして、晴れて本審査に通ると、指定の銀行口座に資金が振り込まれます。住み替えの場合、この融資の実行日に、旧居の売却と新居の決済を行なう必要があるので注意しましょう。

しかし、同日に行なうのは大変ハードルが高いため「住み替え特約」を利用するのが得策です。詳しくは「4-2-1.決済日に困ったら、売却条件付きの住み替え特約」をご覧ください。

6. 住み替えローンを利用する際の3つの注意点

家と電球マーク

住み替えローンを利用する際には、次の3つの注意点があります。

  1. ローン完済時の年齢には上限がある
  2. 住宅ローンと住み替えローンは同じ銀行では組めない
  3. 団信へ加入できずローンを組めないことがある

以下より、詳しく解説していきます。

6-1. ローン完済時の年齢には上限がある

住み替えローンの完済時の年齢には、上限が設定されていることが少なくありません。そのため、借り入れ前によく確認することが大切です。

メガバンク3行では以下のように年齢の上限が設定されています。

  • みずほ銀行:満81歳未満
  • りそな銀行:満80歳未満
  • 三井住友銀行:満80歳の誕生日まで

上記のように、80歳を目安として完済時の年齢を設定していることが多くあります。例えば、完済時の年齢を満80歳未満としている住み替えローンで35年のローンを組みたい場合、44歳までに借り入れをすることになります。

借入時の年齢によっては返済期間が短くなり、毎月の返済負担が大きくなる可能性があります。定年退職後もローンの返済が続くと、負担が重くのしかかることになるため、借り入れをする際には完済時の年齢を踏まえ、無理なく返済できるかを検討しましょう。

6-2. 住宅ローンと住み替えローンは同じ銀行では組めない

住み替えローンは、基本的に住宅ローンと同じ銀行では組めません。

これは、住宅ローン借入時よりも金利が下がった場合、借り換えられると銀行側の利息収入が減少してしまうからです。この場合、銀行側にはメリットがないため、住み替えローンに限らず同じ銀行での借り換えは基本的にはできません。

つまり、借り換えは原則として別の銀行で行なう必要があるということです。別の銀行で住み替えローンを組む際には、各銀行のプランの詳細や手続き方法などをよく確認しましょう。住み替えローンの審査は通常の住宅ローンより厳しい傾向にあるため、事前に条件面などを確認して対策しましょう。

6-3. 団信へ加入できずローンを組めないことがある

住み替えローンを組むには、団信(団体信用生命保険)への加入を必須とする銀行が少なくありません。団信とは、住宅ローンの返済期間中にローンの借主にもしものことがあった場合、ローンの返済が免除される保険のことです。団信に加入できれば、借主が亡くなったり働けなくなったりしたとしても、家族が返済義務を負わずに済みます。

しかし、持病などの健康状態によっては団信に加入できず、住み替えローンを借りられないことがあります。団信に加入できなかった場合には、各行が提供する「ワイド団信」や配偶者名義の契約を検討する必要があるでしょう。

ワイド団信は、団信の加入条件が緩和されて加入しやすくなったものです。ただし、ワイド団信の審査基準は明確に示されておらず、実際に申し込みをしてみないと加入の可否はわかりません。さらに、通常の団信よりも保険料が高くなるなどのデメリットがあります。

住み替えローンは現在借りている銀行で組むことはできません。また、住み替えローン完済時の年齢に上限が設定されていることも多いです。合わせて団信に加入できないと住み替えローンを組めない場合も。このようにさまざまな制約があるので、注意が必要です。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

7. 住み替えローンを取り扱う主な金融機関

メガバンクから住宅ローン専門の金融機関まで、幅広い金融機関が住み替えローンを取り扱っています。

以下は、おすすめの住み替えローンの一覧です。それぞれの特徴を確認して、最適なローンを選びましょう。

各金融機関の住み替えローン 特徴
三井住友銀行 WEB申込専用住み替えローン 共働き夫婦に安心のクロスサポート、8大疾病保障、自然災害時返済一部免除特約など、もしものときの保障が充実
りそな銀行 りそな住みかえローン 前年の税込年収が100万円以上、給与所得者の場合は勤続年数1年以上と、比較的受け入れの幅が広い
みずほ銀行 みずほ買い替えローン 8大疾病補償プラスがんサポートプランなど、希望により4つのプランから選択可能
アルヒ株式会社 ARUHI住み替え実現ローン 売却活動の一定期間内に売却が成立しなかった場合、あらかじめ提示した金額でアルヒ不動産テクノロジーズが買い取りする保証制度がある
中央労働金庫 借換・買替ローン(不動産担保型) 労働組合員や生協の組合員は保証料が安くなり、年収の条件も比較的やさしい。ただし、地域によって利用できないため要事前確認
横浜銀行 住宅ローン(お住み替え) インターネットバンキングを利用すれば、一部の繰り上げ返済と金利種類変更の住宅ローン⼿数料が無料
千葉銀行 住み替えコース 住み替えにともなう火災保険料や事務手数料などの融資も可能。千葉銀行の住宅ローンを利用していれば、乗り換えることもできる
関西みらい銀行 住みかえ住宅ローン 前年の税込年収が100万円以上(年金収入を除く)、現在の住宅ローン借入から3年以上経過していることなどが条件
池田泉州銀行 住み替えローン 住み替えにかかる諸費用にも利用可能。ただし、所在地が本店の営業地域内である家の住み替えにしか利用できないので注意
大垣共立銀行 住宅ローン「住み替え専用プラン」 勤務先の倒産・解雇により失業した場合や、再就職で収入が減少した場合、最長6ヵ月間保険金が支払われるローン生活サポート保険を希望により加入可能
福岡銀行 住み替えローン 借り入れが最長50年可能。連帯債務により親子でのリレー返済や、夫婦・同性パートナーでのペア返済が利用できる
auじぶん銀行 住宅ローン auの各サービス利用により、最大年0.15%の金利引き下げが可能。また、保障内容が充実した団信がある

※2023年12月時点

8. 住み替えローンのシミュレーション│費用・返済比率

住み替えローンのシミュレーション│費用・返済比率

住み替えローンを利用する場合、具体的にどのくらい費用が発生して、いくら借り入れが必要となるのでしょうか。必要となる費用の洗い出しや具体的な条件をもとに、「住み替え資金計画シミュレーション|三井住友銀行」等を利用してイメージをつかみましょう。

8-1. 住み替えにかかる費用

住み替えローンのシミュレーションをする前に、現在の経済状況や住み替えにかかる費用を整理しておきましょう。

旧居の売却時に確認しておきたい資金・費用
項目 内容
ローン残債や預貯金 ローンだけでなく預貯金も調べて、自己資金としていくら捻出できるか確認しておく
旧居の売却見込み価格 レインズ一括査定サービスなどを利用して、いくらで売却できるか見込みを立てる
売却時の諸費用 売却時の諸費用は4~6%。内訳は仲介手数料や印紙税・固定資産税、登記費用、金融機関への事務手数料など
引っ越し代 家族が多い場合やオンシーズンだと、費用が高めになるので必ず確保しておく
仮住まい代 売り先行の場合、必要になる可能性がある
新居の購入時に確認しておきたい資金・費用
項目 内容
新居の購入予定額 新居の購入にいくらかけられるかは、旧居がいくらで売却できるかによるため、一括査定サービス等を利用して見通しを立てておく
購入時の諸費用 新築の場合は5~7%、中古物件の場合は8~10%の諸費用が購入時にかかるとされている。内訳は、売却時と同様に仲介手数料や各種税金など
火災保険・地震保険料 マンション、一戸建てを問わず、住宅購入の際には必ず加入しておきたい保険。

住み替えにかかる費用については、以下の関連記事もご参照ください。費用面については、将来に向けた貯金を含めて、十分に考慮しておきましょう。

8-2. 住み替えローンのシミュレーション

必要な費用を洗い出したところで、以下の条件にそって、シミュレーションをしていきましょう。

住み替え条件
年収(額面) 700万円
年齢 43歳
自己資金 200万円
旧居のローン残債 2,500万円
旧居の売却見込み額 2,100万円
新居(新築)の購入予定額 3,000万円
返却期間 35年
金融機関の金利 2.0%

国土交通省の「令和4年度住宅市場動向調査報告書」によると、住み替え住宅の取得年齢層は、分譲戸建て住宅では40代が多く、マンションや注文住宅への住み替えは60歳以上が多いとされています。

自己資金は購入資金の1割前後であることが望ましいのですが、自己資金ゼロのフルローンを利用できる金融機関は増えています。

以上の条件をもとに、住み替えに必要な費用や融資額をシミュレーションしていきましょう。

住み替えに必要な金額
売却の諸費用(4%で算出) 84万円
購入の諸費用(5%で算出) 150万円
旧居のローン残債 2,500万円
新居の購入予定額 3,000万円
旧居の売却見込み額 2,100万円
新居(新築)の購入予定額 3,000万円
合計 5,734万円

さらに、住み替えに必要な金額から、旧居を売却して得られる金額と自己資金を差し引きます。

5,734万円 - (売却見込み額2,100万円 + 自己資金200万円) = 3,434万円

以上の計算から、必要な資金は、3,434万円と算出されます。

8-3. 住み替えローンは返済比率に注意

各金融機関では、無理のない返済ができるよう、年収に占める住宅ローンの比率に制限を設けています。この割合を返済比率といい、一般的には年収に対して20%以内に収めるとよいとされています。

返済比率は、以下の計算式で求められます。

返済比率 = 年間返済額 ÷ 額面年収

前章の条件とシミュレーションをもとに、

【1】返済総額→【2】年間返済額→【3】返済比率

の順に算出していきます。なお、金融機関の金利は2%固定で元利均等法、端数切捨てとします。

【1】返済総額: 必要資金3,434万円 × 金利2% = 返済総額4,777万円
【2】年間返済額: 返済総額4,777万円 ÷ 返済期間35年 = 年間返済額136万円
【3】返済比率: 年間返済額136万 ÷ 年収700万円 = 返済比率19.42%

住み替えローンでは、旧居と新居両方のローンの合計額を借り入れるため、金額が膨らみがちです。借り過ぎには注意して、インフレによる生活費・教育費・老後に必要となる資金の上昇が起きても、無理なく返済できるようにローンを組みましょう。

“令和4年度住宅市場動向調査報告書”. 国土交通省. 2023-03. (参照2024-01-19)をもとに、HOME4Uが独自に作成

9. 住み替え時にお得な税金特例

家と税金

住宅の住み替えの際にはさまざまな税金がかかりますが、特別控除などをはじめとする制度を利用すれば、税金の負担を減らせることがあります。

9-1.利益が生じた場合:3,000万円特別控除

現在所有しているマイホームが、買ったとき(実際には経年による減価償却費を差し引いたもの)よりも高い価格で売却されると、売却利益が発生します。

発生した利益に対しては「譲渡所得税」が課税されますが、「3,000万円特別控除」の適用条件を満たすと、最高3,000万円までが非課税になります。

主な適用条件は以下のとおりです。

3,000万円特別控除を受けるための主な条件

  1. 控除を受ける方が実際に住んでいる(住んでいた)マイホームであること
  2. 住み替える前の家に住まなくなってから、3年以内に売却すること
  3. その家を売却するまでに、ほかの土地を活用して利益を得ていない
  4. 家を売ってから3年前までにこの特例を受けていない
  5. 家の売主と買主が、「親子や肉親」「生活をともにしている親族や内縁関係」などといった特別な関係ではない

詳細の条件については、国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」を参考にしてみてください。

9-2. 利益が生じた場合:買い替え特例

旧居を売却して利益が出た場合は、譲渡所得税を納める必要があります。買い替え特例は、譲渡所得税の納付を先送りできる制度です。

買い替え特例の適用により、売却した年には課税されず、新しく買い替えた家を売却したときに初めて課税されます。逆にいうと、売却をしなければ課税されないということです。

この特例の条件は以下となります。詳細の条件については、参考URLと関連記事をご確認ください。

売却した住宅の要件

  1. 売却した年の1月1日の時点での所有期間が10年を超える居住用財産であること
  2. 売却価格が1億円以下であること
  3. 居住期間が10年を超えていること

買い替えた(住み替えた)住宅の要件

  1. 住宅の床面積が50平米以上で、専有面積が500平米であること。マンションの場合は、登記された専有部分の面積で判定される
  2. 中古マンション購入の場合には、築年数が25年以内であること

参考:“No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例”. 国税庁. (参照2024-01-19)をもとに、HOME4Uが独自に作成

この特例については、以下の記事でより詳しく解説しています。ぜひ、こちらも併せてご覧ください。

9-3. 損失が生じた場合の税金特例

損失が出た際にも適用される特例として「譲渡損失の損益通算」があります。住宅を売却して損失が発生した場合、一定の条件を満たすと、その損失をその年のほかの所得と相殺できるというものです。

オーバーローンで売却をして住み替えを行なう場合、以下2つの税金特例を利用できる可能性があります。

  1. 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  2. 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

これらの特例では、払い過ぎていた源泉徴収税の還付を受けられます。

まとめ

住み替えローンは、旧居の残債と新しい住宅の購入資金をまとめて借り入れできる、住宅ローンの一種です。

旧居のローン完済を待たずに住み替えできる点は魅力的ですが、審査のハードルが高い、オーバーローンのリスクがある、といったデメリットもあります。したがって、メリット・デメリットの両面を踏まえて、利用の可否や借入額を検討しましょう。

また、住み替えローン完済時の年齢上限がある点や、住宅ローン同じ銀行で基本は借り入れができない点にも注意が必要です。

住み替えローンの借入条件やサービス内容は、金融機関ごとに異なるため、ぜひ本記事を参考にそれぞれの特徴を比較してみてください。

不動産の売却をお考えの方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サービス「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご利用ください。

住み替えローンは、旧家のローンが残っていても新しい住宅を買うことができる魅力的な制度です。

ダブルローンを組む必要がなくなったり、住み替え費用の持ち出しを抑えられたりと様々なメリットがあります。

しかし一方で購入と売却の全体スケジュールを計画的に調整する必要があったり、オーバーローンで返済負担が重くなってしまうというデメリットも。住居の買い替えの際はこうした点を注意して、住み替えローンを賢く使いましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生