オーバーローンとは?利用前に知っておきたいメリット・デメリット、リスクについて解説

通常、住宅を購入するには多額の資金が必要ですが、「オーバーローン」での借り入れを行なえば、自己資金がゼロでも住宅を購入できます。

本記事では、オーバーローンのメリット・デメリットやリスク、借入時の注意点などについて解説します。「自己資金はないけれど、夢のマイホームを手に入れたい」という方は、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • オーバーローン、アンダーローン、フルローンの違い
  • オーバーローンのメリット・デメリット
  • オーバーローンに潜むリスク
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1.オーバーローンとは?

はじめに、オーバーローンの概要と、「アンダーローン」「フルローン」との違いを解説します。

1-1.そもそもオーバーローンとは?

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オーバーローンとは、住宅や土地の評価額より、ローン借入額やローン残高が上回っている状態のことを指します。具体的には、以下のような状況がオーバーローンに該当します。

  • 3,500万円の住宅を購入するために、諸費用分も含めて4,000万円を借り入れた場合
  • 住宅や土地の売却額が4,000万円、ローン残債が4,500万円の場合

上記の例のように、近年では住宅ローンを組む際に、住宅価格に加え、それ以外にかかる諸費用(住宅ローンの保証料や仲介手数料など)を含めた額を借り入れする方が増えていますが、こういったケースもオーバーローンの状態といえます。

また、住宅や土地の取得費用よりも少額で住宅ローンを組んだ場合にも、返済を開始した後に借り入れの状況が変化したり、住宅価格(評価額)が急落したりすると、オーバーローンになる可能性があります。

1-2.アンダーローン、フルローンとの違い

アンダーローンとは、オーバーローンとは逆に、ローン借入額やローン残高が住宅価格(評価額)を下回っている状態のことです。

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具体的には、以下のような状況がアンダーローンに該当します。

  • 4,000万円の住宅を購入するために3,500万円の借り入れをした場合
  • 住宅ローン残債2,500万円の家が、3,000万円で売却できた場合

一方のフルローンとは、頭金を入れずに住宅価格と同額を借り入れることです。

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例えば、住宅を購入する際にかかる諸費用は自己資金でまかない、住宅価格の4,000万円を借り入れる、といったケースがフルローンに該当します。

2.オーバーローン状態になる主なパターン2選

売り出し中の家

オーバーローン状態に陥る原因としては、主に2つのパターンが考えられます。

2-1.ローン金額が住宅価格を上回るパターン

かつては、住宅価格の80~90%を住宅ローン融資額の上限とする金融機関が大半でしたが、近年では、諸費用等も含めて住宅価格の100%以上の借り入れをすることも、場合によっては可能になりました。

(例)3,000万円のマンションを購入する場合

  • マンション価格:3,000万円
  • 購入時の諸費用:90~150万円(価格の3~5%程度)
  • 借り入れ可能額:3,090万円~3,150万円

このように、住宅価格に諸費用を上乗せした金額を借り入れると、必然的にオーバーローンの状態になります。

なお、住宅価格と併せて借り入れ可能な諸費用には、以下のようなものがあります。

  • 融資手数料
  • 住宅ローンの保証料
  • 不動産会社への仲介手数料
  • 売買契約や住宅ローン契約の際の印紙代
  • 火災保険料
  • 登記費用(登録免許税、司法書士報酬など)
  • マンションの修繕積立金・管理準備金(物件の引き渡し時に発生)
  • 水道負担金
  • 外構工事費用
  • 太陽光発電設備工事費用など

ただし、対象となる費用は金融機関やローン商品によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

2-2.住宅や土地が値下がりし、結果としてオーバーローンになるパターン

住宅は新築後、徐々に資産価値が下がっていくのが一般的です。この資産価値の下落スピードが住宅ローンの返済スピードよりも速いと、結果的にオーバーローンになってしまうこともあります。

この場合に注意が必要なのは、物件価格に占める建物と土地の割合です。

例えば、同じ5,000万円の物件でも、土地と建物、それぞれの資産価値の割合は、以下のように異なります。

  1. 土地価格が1,000万円、建物が4,000万円の場合
  2. 土地価格が3,000万円、建物が2,000万円の場合

建物の資産価値は、年数を重ねるごとに下がり、やがてはゼロになります。しかし、土地の価値がゼロになる可能性はほぼありません。そこで、土地の価値が変動しないと仮定した場合、1のケースでは1,000万円、2の場合では3,000万円の資産価値が維持されることになります。

つまり、1のケースのほうが価格に占める建物の割合が高い分、資産価値の下落スピードが速く、オーバーローンになりやすい傾向にあります。

3.オーバーローンのメリット・デメリット

メリット・デメリット

本章では、オーバーローンのメリット・デメリットについて解説します。

3-1.オーバーローンのメリット

オーバーローンのメリットとしては、以下のようなものが考えられます。

3-1-1.自己資金がなくても不動産を購入できる

住宅ローンを組む際には、住宅価格の1~2割程度の頭金と諸費用を自己資金で用意するのが一般的ですが、オーバーローンなら頭金と諸費用も住宅ローンに組み込むことが可能です。自己資金がなくても住宅ローンを組んで家を購入できるのが、オーバーローンの最大のメリットといえます。

また、気に入った物件を見つけた際に、資金が問題になって購入を諦める、といった機会損失を防ぐこともできるでしょう。

3-1-2.手元に資金を残せる

貯金額のほとんどを頭金や諸費用につぎ込んでしまうと、後々、家計が苦しくなる可能性もあります。

そこで、子どもの学費や老後の資金を手元に残しておくために、あえてオーバーローンを選択する方もいます。手元にある程度まとまった現金があれば、万一の病気やケガなどの際にも安心です。

3-1-3.住宅ローン控除額が増える

住宅ローン控除とは、所定の要件を満たした場合に、年末時点でのローン残高に応じた金額を、一定の年数にわたって所得税や住民税から控除する制度のことです。新築住宅を購入するか、中古住宅を購入するかによって、適用要件は異なります。

オーバーローンでは、諸費用を加えた額を借り入れることから、ローン残高が大きくなる傾向にあります。したがって、より高額の控除を受けやすくなるというメリットもあります。

3-1-4.諸費用分の利息負担を軽減できる

住宅ローンはほかの融資と比較して金利が低いため、諸費用分を別のローンでまかなうより、住宅ローンに含めて借りたほうが利息の負担を軽減できる可能性があります。

利息を抑えられれば総支払額を減額できるため、大きなメリットといえるでしょう。

3-2.オーバーローンのデメリット

オーバーローンのデメリットは主に以下の3つです。

3-2-1.毎月の負担が大きくなりやすい

一般的な住宅ローンでは、住宅価格のみを借り入れますが、オーバーローンでは、諸費用を上乗せした額を借り入れるため、月々の返済額も大きくなります。

借り入れ額を無理なく返済できる金額に留めるためにも、事前に返済シミュレーションを行ない、綿密な返済計画を立てることが重要です。オーバーローンでの借り入れをするか否かも含めて、十分に検討しましょう。

3-2-2.金利が高くなるケースがある

オーバーローンになると、金利が高く設定されるケースもあります。

住宅価格に加え諸費用まで融資するとなると、金融機関としては貸し倒れを懸念します。そのリスクに備えるために高い金利を設定し、それでも返済が見込める方に対してのみ、融資を実施するケースもあります。

例えば、住宅金融支援機構が提供する住宅ローン「フラット35」では、借入額が住宅価格の9割を超えた場合、金利が高くなる仕組みになっています。

3-2-3.売却後にもローン残債が残る可能性がある

ローンの返済中に住宅を手放さざるを得なくなるケースもあるでしょう。その場合、通常の住宅ローンであれば、その売却益でローンを完済します。

しかし、住宅価格以上の金額を借り入れるオーバーローンでは、たとえ物件を売却しても、ローンを完済できない可能性が高いでしょう。こうなった場合、残りのローンの返済は自己資金で行なう必要がありますが、返済が困難になり自己破産にいたるリスクもあります。

したがって、「諸費用も併せた金額を借りられるから」と、安易にオーバーローンの借り入れをすべきではありません。

4.知っておきたい、オーバーローンに潜むリスク3選

リスク

オーバーローンのデメリットと関連して、オーバーローンに潜むリスクについて深掘りします。

4-1.返済が困難になり、家を失うリスク

住宅を購入した当初は無理のない返済プランを立てていたとしても、子どもの教育費が予想以上にかかったり、病気やケガで思いがけず収入が減ったりして、毎月の返済が困難になる可能性もあります。

そのような場合に、やむを得ず家を手放したとしても、オーバーローンの状態ではローン残債が完済できません。その結果、「家を失い、借金のみが残る」という最悪の事態にもなりかねません。

4-2.売却したくてもできないリスク

住宅ローンの返済が苦しくなり、いざ物件を手放そうと思っても、ローン残債が売却価格を上回っているオーバーローン状態では、スムーズに売却もできません。

住宅ローンを完済するには、自己資金で不足分を補う必要があります。しかし、自己資金が用意できないうちは金融機関が売却を認めないケースが多いため、売りたくても売れないという事態に陥るケースもあるのです。

返済も売却もできない場合には、任意売却あるいは競売を選択することになります。

4-3.離婚による財産分与のリスク

オーバーローンの不動産は財産として扱いづらく、財産分与の対象外になる可能性もあります。また、売却益を財産分与に充てることも、現実的には難しいでしょう。

夫婦共有名義でそれぞれが住宅ローンを抱えている場合には、離婚後もお互いにローンの返済をしなければなりません。そのようなケースでは、家を出る方が不満を持つ可能性が高く、対立の原因になり得ます。

5.オーバーローンで借り入れを行なう際の注意点

最後に、オーバーローンで借り入れを行なう際の注意点について解説します。

5-1.オーバーローンでの借り入れが可能か、金融機関に確認する

金融機関によっては、オーバーローンでの借り入れ自体ができないところもあります。

そこでまずは、検討している金融機関でオーバーローンの借り入れが可能かどうか、可能な場合には借り入れの条件などについて、しっかりと確認しておくことが重要です。

5-2.住宅購入以外の目的では利用できない

住宅ローンで得た資金を住宅購入に関する費用以外に使うと、契約違反になります。

例えば、住宅とともに車や新しい家具が買えるように金額を設定するといった行為は、詐欺罪に問われたり、脱税の疑いをかけられたりする恐れもあるため、注意が必要です。

5-3.将来的な売却を検討しているなら、資産価値の下がりにくい物件を選ぶ

オーバーローンでは、諸費用を含めて住宅価格よりも高い金額の借り入れをしているため、ローン残債より高い金額で物件を売却できなければ、ローンを完済できません。

したがって、将来的に売却をする可能性がある場合には、少しでも資産価値の下がりにくい、人気エリアの物件などを選ぶことが重要です。

まとめ

従来、住宅ローンを組む際には住宅価格の頭金は自己資金で工面し、不足分を借り入れるのが一般的でしたが、近年では、頭金や諸費用の分まで借り入れる「オーバーローン」という選択肢もあります。

オーバーローンでは、自己資金を用意する必要がないというメリットがある一方で、見逃せないデメリットやリスクもあります。したがって、安易に上限額まで借り入れをするのは避けるようにしましょう。

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