マンション住み替えはいつする?手順やタイミング、ローン、税金を解説

この記事ではマンションの住み替えを成功させるコツについて解説いたします。住み替えを成功させるためには以下の内容について、把握しておく必要があります。

  • マンションの住み替えを検討するタイミング進め方
  • 住宅ローンの注意点(オーバーローンやつなぎ融資など)
  • マンションの住み替えで適用できる税金の特例
  • マンションの住み替えにかかる費用

マンションの住み替えには、今のマンションを売却し、新たな住宅を購入するという2つのステップがあります。

納得のいく住み替えを実現するには「良い物件を購入できるかどうか」が大きなカギを握ります。同時に、損をしないために、住宅ローンや税金などの費用面についてもきちんと知っておくことがポイントです。

最後までお読みいただき、マンション住み替えの一助にして頂けると幸いです。

マンションの売却について基礎から詳しく知りたい方は『【完全版】マンション売却の注意点』も併せてご覧ください。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.マンションの住み替えをする2つの方法と手順

マンションを住み替えるためには、新たな物件を探し、購入しなければなりません。ここで大切になってくるのが、「売り先行」「買い先行」と呼ばれる2つの方法です。

この章では「売り先行」「買い先行」のそれぞれの手順と、住み替えをスムーズにすすめるために覚えておきたいポイントについて解説します。

1-1.「売り先行」と「買い先行」の特徴とメリット比較

売り先行と買い先行

マンションの住み替えでは、売却と購入という2つの行為を行います。

「売り先行」と「買い先行」にはそれぞれ次のような特徴があります。

1-1-1.売り先行とは

売り先行

新しい物件を購入する前に現在住んでいるマンションの売却を始める

【メリット】

  • マンションの売却金額を新しい家の購入資金に充てられる
  • マンションの売却金額でローン残債を返済できる
  • 売却に時間をかけることができ、値下げリスクがなくなる

「売り先行」は、売却して得た利益を残っているローンの返済や新しい物件の購入費に充てられるため、資金面に余裕を持てるようになるというメリットがあります。新規物件のローンとの重複も回避できれば、経済的負担を大きく軽減できるでしょう。

また、売り先行で売り急ぐ必要がない場合、買い手からの無理な値下げ交渉に妥協しなくてもすみます。希望とする価格を、余裕を持って設定できるのもメリットと言えるかもしれません。

1-1-2.買い先行とは

買い先行

現在住んでいるマンションを売却する前に新しい物件を購入する

【メリット】

  • 時間をかけて新しい物件探しを行うことができる
  • 引っ越しを自分のペースで進めることができる
  • 先に引っ越した場合、内覧のための掃除などの手間が減る

一方、「買い先行」は先に新しい物件を購入するので、あわてることなく、時間をかけて次の物件を選べるというメリットがあります。また、住み替えた後に今の物件を売却する場合は、家具や荷物のないまっさらな状態で内覧してもらうことができます。

現在の物件のローンがすでに完済されているなど、資金に余裕がある場合には、買い先行で住み替えを進めるとスケジュールが立てやすいと言えるでしょう。

1-2.売り先行の手順

売り先行で住み替えをする場合は上記のような手順で行います。現在住んでいるマンションの売買活動を行いながら、新しい物件を探す際の手順です。

現物件を売却、引き渡すタイミングでうまく新しい物件の入居が決まっていれば、仮住まいの手配は必要ありません。

しかし、売買金額を得てから新しい物件を決めたいと考えている場合は、現在の家を引き渡す必要があるため、一時的に生活するアパートやホテルなど仮住まいを確保しなければなりません。追加で費用がかかるため、注意が必要です。

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1-3.買い先行の手順

買い先行で住み替えをする場合の手順は上記の通りです。

新しく住む物件を購入してから現在住んでいるマンションを売る場合、ローンの支払が二重になるなど資金計画がうまくいかなくなる可能性もあります。このような場合には、後述する「3-3.つなぎ融資」を活用する方法もあります。

2.マンションの住み替えをする時期やタイミング

住み替えの時期

この章ではマンションの住み替えの時期について解説します。マンションの住み替え時期を検討するポイントを「築年数によるマンション価格の低下」「マンションの所有期間」「修繕積立金の増額」という3つのポイントから考察していきます。

2-1.築年数とマンション価格の関係

一般的に、マンション価格は築年数が経過するほど、価格が下がります。

実際に、公益財団法人東日本不動産流通機構から公表されている「PDF築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2020年)」では、築年数を5年ごと分けた中古マンションの成約価格(坪単価)の分布を以下のように報告しています。

公益財団法人東日本不動産流通機構.“築年数から見た
首都圏の不動産流通市場(2020年)”.REINS TOWER
」をもとに、HOME4Uが独自に作成

マンション価格は、築26~30年までは下がり続ける傾向にありますが、その後は価格が下げ止まることが主な要因です。

マンション価格は土地と建物の合計額で構成されていますが、築31年以上のマンションは建物価格はゼロになり、「ほぼ土地価格」で取引されます。そのため、ある程度の築年数を超すと、マンション価格もこれ以上値下がりしない価格に落ち着きます。

マンションを売る時期の指標としては、築30年くらいまでは価格が下がる傾向にある一方で、築30年を超えると価格はあまり下がらないと言うことができます。

2-2.「5年超10年以内」が1つの目安

一般的に、マンションは築年数が浅いほど、高く売れることは間違いありません。ただ、損をしない売却時期のタイミングとして、マンションの所有期間は5年超10年以内という目安があります。

目安の根拠としては、まず税金に関する理由があります。マンションを売却した際、譲渡所得が発生すると所得税および住民税、復興特別所得税の税金が発生します。

所得税及び住民税の税率は、マンションを所有していた期間によって異なり、その税率は以下のように定められています。

所得の種類 短期譲渡所得 長期譲渡所得
所有期間 5年以下 5年超
所得税率 30.63% 15.315%
住民税率 9% 5%

※所得税には2.1%の復興特別所得税が含まれています(2037年まで)

マンションが高く売却できたとき、「5年以下」と「5年超」ではかかる税金が倍近く異なるため、少なくとも5年超は所有しておいた方が良いのです。

また、2000年4月1日以降に新築マンションを購入した人は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、「品確法」と略)」により、新築マンションの売主から10年間の保証を受けています。

つまり、新築マンションを購入した人は、10年間はマンションの性能に著しく問題がある場合や、生活に支障をきたす重大な欠陥があった場合には売主に対し修繕請求権を有していることになります。

築10年を過ぎてしまうと、品確法の権利を失うため、所有者としては旨味が薄れるという側面があります。つまり、品確法の権利を失う10年目までに売却することで、欠陥に対する自己負担が増えるリスクを軽減することにつながるのです。

5年超10年以内の売却であれば、税金と品確法の観点から、損は少ないタイミングであるとも言えます。売却をするかどうかの判断に困ったときの材料として覚えておくとよいでしょう。

2-3.修繕積立金の増額タイミングを確認

マンションには、管理費および修繕積立金があります。修繕積立金に関しては、以下の二つの手法が主です。

均等積立方式

長期にわたって一定の金額を徴収し続ける仕組み。金額がほぼ固定されているため、徴収される金額は大きな変動しません。

段階増額積立方式

将来の負担増が前提となっており、一般的に5年ごとに修繕積立金が上がっていきます。

段階増額積立方式が採用されているマンションでは、10年ごろから修繕積立金額が大きくなる傾向があるため、それより前に売却するというのも一つの考えです。

5年刻み、つまり10年目、15年目、20年目という様な節目でマンションの住み替えを考えてみるのも良いでしょう。

尚、均等積立方式のマンションでも長期修繕計画の見直しによって修繕積立金が増額されることがあります。そのため、均等積立方式のマンションで住み替えを検討している人も、修繕積立金の動向については、常にチェックをしておくことをおすすめします。

住み替えを成功させるためのタイミングについて詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。

住み替えを成功させるコツ~売却と購入のタイミング

2-4.「住み替えたい理由」は最優先事項

マンションは、価格に関しては築30年くらいまでは下がり続けていくことが一般的です。

所有期間によって、売却時の税率や品確法の保証、修繕積立金等の状況が変わるため、若干の損得はあるものの、下がり続ける以上は「いつ売ったら得する」というベストタイミングは存在しません。

結論からすると、売主が住み替える必要があるときに売るというのが一番良い住み替え時期になります。

マンションの住み替え理由には、転勤や転職、家族構成の変化、子供の進学、子供部屋の確保などさまざまな理由があります。多くの方々は経済的な理由以外の理由で、マンションの住み替えを行っているのです。

家族が増えた、または子供部屋が必要となった等の理由で今のマンションが手狭になるというタイミングは、修繕積立金の増額等のタイミングとは無関係に訪れます。

そのため、住み替えの時期に関しては、「築何年目だからそろそろ住み替える」という決め方をするのではなく、「必要性が生じたから住み替える」と決めるのが一番自然です。

ただし、築年数や品確法の保証期間、修繕積立金の増額のタイミングは、迷ったときの判断を助け、また売却で損をしないためにも必要な知識です。

ライフスタイルの変化など住み替えたい理由を最優先に考えつつ、そのほかの角度からも、適切な売却時期を検討しましょう

3.マンション住み替え時の住宅ローンの注意点

マンション住み替えと住宅ローンの注意点

マンションの住み替えでは住宅ローンと深く関わりがあります。この章では住み替えにおける住宅ローンの注意点についてご紹介します。

3-1.早過ぎる住み替え:オーバーローンに注意

新築マンションをフルローンに近い形で住宅ローンを組んでいる人は、購入後、すぐに住み替えを行うと、売却額で住宅ローンを返済できないことが起こり得ます。
住宅ローン残債が売却額を上回ることを、オーバーローンと呼びます。

元利均等返済方式

住宅ローンは、通常、上記のような「元利均等返済方式」による返済が行われます。

元利均等返済方式とは、利息と元金の合計額が、毎月一定額となる返済方法です。この方式の特徴として、返済当初から一定期間は利息の支払いが中心となるため、元金返済がなかなか進まない点にあります。

つまり、住宅ローンの元金の減少よりも、マンション価格の下落幅の方が大きくなってしまうため、早すぎるタイミングで住み替えしようとすると、オーバーローンになる危険性があるため、注意が必要です。

オーバーローンの場合、売却額で返済しきれない残額については、貯金の取り崩しや住み替えローンにより、返済することになります。

オーバーローンでの売却は、経済的負担が重くなりますので、住み替えは売却額で住宅ローン残債が返済できる状態まで延期することが望ましいでしょう。

3-2.住み替えローン:借り過ぎに注意

オーバーローンの場合、利用できるのが住み替えローンです。

住み替えローンとは、次に購入する物件の住宅ローンに、売却で返済しきれなかった住宅ローン残債の部分も加えて借りることのできる住宅ローンです。

住み替えローンは、一見すると、オーバーローンの人にとってはとても便利な住宅ローンです。

しかしながら、次に購入する物件の担保価値以上のローンを組むことになるため、最初から「借り過ぎ」の状態になっている可能性があることを理解する必要があります。

万が一、住宅ローンを返済できなくなり、マンション売却で返済しようとしても、その売却額だけでは住宅ローンが全額返済できない可能性が極めて高いというのが住み替えローンのリスクです。そのため、住み替えローンは審査も厳しく、十分に返済能力のある人しか利用できません。

ただ、たとえ審査に通ったとしても、借り過ぎである事実には変わりはなく、住み替えローンを利用すべきかどうかは慎重に判断する必要があります。

オーバーローンの人は、住み替えを取り止めや延期も含めて見直すことも重要です。安易に住み替えローンを利用することは避けるようにしましょう。

3-3.つなぎ融資

住み替えでは、売却と購入のタイミングが上手く合うことは、実際にはほとんどありません。売り先行を予定していたとしても、気に入った物件が先に見つかれば、結果的に買い先行となることは十分に考えられます。

予定外に買い先行となってしまった場合、次の物件の購入のための頭金等の資金が必要となることがあります。このような場合、つなぎ融資を利用するのが便利です。

つなぎ融資とは、住宅ローンの融資が実行されるまでに一時的に融資を得ることができるローンのことです。金利は住宅ローンよりも高く、融資の事務手数料も発生します。

しかしながら、つなぎ融資を上手く利用すれば、頭金の支払いがハードルとなり物件を諦めるという事態は避けることができます。

マンションの売却や新居の購入が予定通りに進まなかったとしても、つなぎ融資の存在を知っていると、柔軟な判断をすることが可能になります。

住み替えで急遽、購入の頭金が必要となってしまった場合には、つなぎ融資という選択肢もあるということを知っておきましょう。

4.マンションの住み替えで失敗しないための対策

マンションから新しい住居に住み替えるなら、無理のない支払いで、満足度の高い住宅選びをしたいものです。マンションの住み替えで失敗しないための、対策や注目ポイントについてご紹介します。

4-1.ローン残高を把握してオーバーローンを防ぐ

マンションの住み替えを検討したら、正確なローン残高を確認しましょう。ローン残高は、銀行から送られてくる残高証明書や、住宅ローン契約時の書類で確認できます。

住み替えのための十分な費用がない場合、安易に買い先行を選ばないことがオーバーローンを防ぐコツです。

住宅ローンが残っている状態では、買主に物件を引き渡すことができません。引き渡し前に、貯金やマンションを売ったお金で住宅ローンを完済し、抵当権を抹消します。

住み替えのためのローンもありますが、新しい物件の費用と二重ローンになるため月々の支払額に注意が必要です。

4-2. 住み替えのための費用を準備する

マンションの住み替えには、ローンの返済以外にも費用が掛かります。仲介手数料や司法書士に払う報酬、引っ越し代などです。

マンションの住み替えで失敗しないために、前もって費用を準備しましょう。
必要な費用の目安は、以下の表を参考にしてください。

費用項目 手数料の相場
仲介手数料 400万円超なら「売買金額の3%+6万円」
200万円超400万円以下なら「売買金額の4%+2万円」
200万円以下なら「売買金額の5%」
印紙税 売買金額が1,000万円超5,000万円以下なら1万円
5,000万円超1億円以下なら3万円
登録免許税 抵当権抹消の登録免許税は、不動産1個につき1千円
司法書士費用 抵当権抹消登記:1.5万円前後
繰上返済手数料 都市銀行なら1万円程度
引っ越し代 3人家族で500km未満の引っ越しであれば15万円、2月~4月の繁忙期は20万円程度

費用は購入する物件によっても変わります。物件別の費用の目安は以下の通りです。

  • 新築マンション・新築戸建て→約4%
  • 中古マンション・中古戸建て→約7~8%
  • 注文住宅→約10%

6.マンションの住み替えに必要な費用と注意点」では、それぞれの費用について詳しく紹介しています。併せてご覧ください。

4-3.住み替え先のマンション選びは管理費にも注目

マンションに住む場合は、月々の管理費や修繕積立金をローンに上乗せした額を支払います。月々の支払いが多くなりすぎないように注意が必要です。

管理費や修繕積立金を少なくしたい場合は、50戸~150戸のマンションがおすすめです。タワーマンションは修繕積立金が高くなる傾向にあるので、気を付けましょう。

また、納得の物件を手に入れるためには、バルコニーの向きや、収納、駐車場などの設備にもこだわりたいところです。
マンション選びのポイントをまとめましたので、参考にしてください。

住み替え先のマンション選びのポイント

  • 管理費および修繕積立金
  • マンションの総戸数
  • 日当たり
  • バルコニーの向き
  • 階数
  • 駐車場のタイプ
  • 部屋の収納やトランクルーム

4-4.戸建てに住み替えるなら将来性に注目

住み替え先に戸建てを選ぶときは、将来性に注目しましょう。特に、中古物件を購入する場合は、将来建て替えが可能か建築条件をチェックすることも大切です。また、段差や坂道が多い街や、災害が多い地域を選ぶと、歳をとってから苦労することもあります。

戸建てに住み替えるなら、生活スタイルにあう物件、安心して暮らせる街を選ぶことが大切です。

住み替え先の戸建てを選ぶポイン

  • 接面道路の向き
  • 建築条件
  • 段差や坂道
  • ガスの種類や下水に関する情報
  • 隣地との距離
  • 車庫入れしやすい駐車場
  • 居住地の気候
  • スーパーや学校などの周辺施設
  • 災害や防犯に関する情報

失敗しない住み替えのポイントについてもっと詳しく知りたい方は、関連記事もご覧ください。

マンションの住み替えのメリット・デメリット!失敗しない住み替え手順とは

5.マンションの住み替えで使えるお得な税金控除

マンションの住み替えでは、「得」または「損」が出たとしても、それぞれの場合に使えるお得な税金の特例があります。

この章では、マンションの住み替えで活用できるお得な税制特例についてご紹介します。

尚、住み替えは税法上、「買換え」という言葉で表現されます。この章で登場する買換えと住み替えについては、同じ意味となることをご留意ください。

住宅ローン減税など、住み替えをするときに利用できる減税制度とは?

5-1.譲渡所得とは

まず、マンションのような不動産を売却したときの税金の基本について解説します。

個人がマンションを売却したときの所得のことを譲渡所得と呼びます。譲渡所得とは、以下の式で計算されるものです。

譲渡所得 = 譲渡価格 - 所得税 - 譲渡費用

マンションの売却の場合、以下のようになります。

譲渡価額 :マンションの売却価格

取得費 :売却したマンションの購入額(建物に関しては減価償却後の価格)

譲渡費用 :売却に要した費用(マンション売却時の仲介手数料など)

譲渡所得がプラスのときは、取得費(建物は減価償却後の価額)よりも高く売却できたことになるため、「得」をしたことになります。一方で、譲渡所得がマイナスのときは、取得費よりも安い売却となってしまったため、「損」をしたことになります。

所得税は原則として、譲渡所得がプラスのときのみ、所得税及び住民税、復興特別所得税が発生します。但し、居住用財産(マイホーム)に売却や住み替え時に適用できる税制の特例を使うと、税金を軽減するにすることもできます。詳細は「5-3.住み替えで「得」したときの特例」をご参照ください。

損をして譲渡所得がマイナスのときは税金が発生しません。しかし、税金の特例を適用することで、税金の還付を受けることができる場合もあります。詳細は「5-4.住み替えで損したときの特例」をご参照ください。

5-2.居住用財産(マイホーム)と認められる条件

居住用財産(マイホーム)の条件として、以下に示す要件のいずれか1つを満たす必要があります。投資用の賃貸マンションや賃貸アパートには適用することはできないため、注意しておきましょう。

  1. 現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
  2. 転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
  3. 災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合
  4. 転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

但し、居住用財産税金の特例は、3年に1度しか適用できないというルールがあります。例えば、2年前に住み替えをした際に、居住用財産に関わる税金特例を使っていた場合、今回は特例の適用はできません。

尚、居住用財産を売却したときの特例は、以下のような特定の親族等への売却には使うことができないため、注意しましょう。

  • 配偶者、直系血族(親、子、孫など)生計を一にする親族、譲渡後にその家屋に居住する親族
  • 本人、配偶者、直系血族や生計を一にする親族が主催している同族会社

また、居住用財産の売却で、税金の特例を受けようとする場合、確定申告が必要になります。確定申告は忘れずに行うようにして下さい。

5-3.住み替えで「得」したときの特例

5-3-1. (1) 3,000万円特別控除(譲渡所得が3,000万円以下の場合)

譲渡所得 = 譲渡価格 - 取得税 - 譲渡費用 - 3,000万円

3,000万円特別控除とは、上記のように、住んでいたマンションの売却で得た譲渡所得から、最高3,000万円まで控除ができるという特例です。そのため、譲渡所得が3,000万円以下であった場合、この3,000万円特別控除を適用することで、課税対象となる譲渡所得がゼロとなり、税金がかからなくなります。

参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例

5-3-2.(2) 10年超所有軽減税率の特例

5年・10年を超えて所有したマイホームを売却する場合、以下のように軽減税率が適用されます。この軽減税率は、(1) 3,000万円特別控除と併用することができます。

【所有期間別 マイホームを売却した場合の軽減税率】
5年以下の所有 10年以下の所有 10年超の所有
所得税:30.63%
住民税:9%
所得税:15.315%
住民税:5%
所得税:10.21%
住民税:4%
(譲渡所得が6,000万円を超える場合、
所得税:15.315%
住民税:5%)

参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

5-3-3.(3) 特定の居住用財産の買換え特例(譲渡所得が3,000万円超の場合)

譲渡所得がプラスで3,000万円を超える場合、「特定の居住用財産の買換え特例」の利用も検討する必要があります。「(1) 3,000万円特別控除+(2) 10年超所有軽減税率の特例」を利用した際に軽減される税金の金額と比較して検討しましょう。

「特定の居住用財産の買換え特例」は、売ったマンションの金額よりも、買った家の金額の方が高ければ、所得税及び住民税、復興特別所得税が課税されないという特例です。課税の有無の関係を表すと以下の通りです。

買換え資産の関係
売却するマンションの価格(譲渡価額)が購入するマンションの価格(取得価額)を上回る
課税される
譲渡価額(売却するマンションの価格)が取得価額(購入するマンションの価格)と同等、もしくは下回る
課税されない

古いマンションを売って、新しいマンションを購入すると、割と「譲渡価額≦取得価額」の関係になることが多いため、特定の居住用財産の買換え特例を使えるケースも多いでしょう。

但し、売却する居住用財産と購入する居住用財産には、以下のような要件があります。

売却する居住用財産の要件

以下に示す居住用財産で、その譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えているもので、譲渡にかかる対価が1憶円以下のもの。

  1. 現に自分が住んでいる住宅で、居住期間が10年以上であるもの 以前に自分が住んでいた(1)の住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡されるもの
  2. 1.や2.の住宅及びその敷地
  3. 災害によって(1)の住宅が滅失した場合において、その住宅を引き続き所有していたとしたならば、その年の1月1日における所有期間が10年を超えるその住宅の敷地
購入する居住用財産の要件

  1. 譲渡資産を譲渡した年の前年の1月1日から譲渡した年の12月31日までの間に居住用の住宅やその敷地を取得すること
  2. 譲渡資産を譲渡した年の翌年12月31日までの間に、取得した住宅を居住の用に供すること、または供する見込みであること 取得する住宅は、床面積が50平方メートル以上であること
  3. 買換え資産が中古の耐火建築物である場合には、その中古耐火建築物が新築後25年以内であるか、または新耐震基準に適合することが証明されたものであるか、もしくは既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入していること
  4. 買換え資産が非耐火既存建築物の場合には、新築後25年以内であるかまたは、地震に対する安全基準をみたすものであること
  5. 取得する敷地は、その面積が500平方メートル以下であること

一方で、「譲渡価額>取得価額」となった場合には、譲渡価額のうち、取得価格に充てた部分については譲渡が無かったものとして税金はかかりませんが、取得価額を上回る部分についてだけ、譲渡があったものとして課税されます。

課税される場合の計算式は以下のようになります。

課税される場合の譲渡所得の計算式

「譲渡価額>取得価額」の場合でも、(1) 3,000万円特別控除を適用したら譲渡所得がゼロ以下となる場合には、所得税等の税金は発生しません。

特定の居住用財産の買換え特例」と「(1)3,000万円特別控除」を比較して、有利な方を選択するようにしてください。

尚、所有期間が10年を超えていないマンションを売却する場合、「特定の居住用財産の買換え特例」は使えませんので、必然的に「3,000万円特別控除」だけを選択することになります。

5-4.住み替えで損したときの特例

譲渡所得がマイナスとなった場合には、「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を使うと一部税金の還付を受けることが可能です。

マイナスとなった譲渡所得は「譲渡損失」と呼ばれます。居住用財産を売却して、譲渡損失が発生した場合、その損失を他の給与所得等に合算することができます。これを損益通算と呼びます。

例えば、給与所得が800万円の人が、売却により譲渡損失▲1,000万円を発生させたとします。すると、損益通算によりその人の所得は▲200万円(=800万円―1,000万円)となります。

給与所得者は、会社が所得800万円を前提に所得税等を天引きしていますが、最終的にその人の所得は▲200万円と確定したため、800万円を前提として支払っていた所得税等が払い過ぎていたということになり、還付を受けることができるという仕組みです。

さらに、この▲200万円は翌年も繰り越すことができ、これを繰越控除と呼びます。次の年も年収800万円であれば、損益通算によって所得が600万円(=800万円―200万円)となります。

この場合も、800万円を前提にしていた所得が600万円となったため、支払い過ぎていた税金の部分が戻ってきます。損益通算によって控除しきれなかった残額があるときは、その残額をその翌年から3年間に繰り越して控除できます。

この特例は、「損益通算」と「繰越控除」の2つが利用できるため、「居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と呼ばれています。

この特例では、売却資産(売却したマンション)と買換え資産(購入した新しい物件)について、以下の要件を満たす必要があります。

売却したマンションに関する条件

  1. 売却した年の1月1日において所有期間が5年を超える
  2. 自分が住んでいる、または住んでいた住宅である
  3. 以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡されるもの
  4. 災害によって滅失した1の住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地であること。ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限る。
新居に関する条件

  1. 買換資産(新居)を取得した年の翌年12月31日までの間に居住を始めること
  2. 買換資産(新居)の居住部分の床面積が50平方メートル以上であること
  3. 繰越控除を受けようとする年の12月31日において、買換え資産に係る住宅借入金等(返済期間10年以上のローン契約等によるもの)の金額を有していること

居住用財産の売却では、譲渡損失が発生することが多いです。

損が出たら税金を取り戻すことができるかもしれません。還付が発生するかどうかを確認し、条件に当てはまる場合は確定申告を行って特例を活用しましょう。

参考・引用:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

6.マンションの住み替えに必要な費用と注意点

住み替えに必要な費用は、「売却時の費用」と「購入時の費用」とに大きく分けられます。この2つをそれぞれまとめていきます。

6-1.マンション売却時にかかる諸費用

まずはマンションを売却する際にかかる費用についてです。物件売却の際は、売主側にも諸費用がかかることを忘れてはいけません。主なものは以下の4つです。

6-1-1.印紙税

契約書をはじめとした課税文書作成時に必要なのが印紙税です。取引金額に応じた税額を支払ったことを証明する収入印紙を契約書に貼り付けることで、この義務を果たします。

参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

6-1-2.仲介手数料

買主と結びつけてくれた不動産仲介会社へ支払う手数料です。宅地建物取引業法で定められた金額内で設定されます。速算法を用いると以下のように簡単に算出することができます。

(売買額×3%+6万円) × 消費税10% = 売却の仲介手数料(税込)

※売買額が400万円を超える場合

この金額は上限となるため、実際の金額は売却額や仲介会社によって変わります。

また、新しい住居の購入に不動産会社に仲介を依頼する場合には、別途仲介手数料が発生するため、注意しましょう。

6-1-3.住宅ローンの一括繰り上げ返済手数料

一般的に、ローン返済途中の物件売却が成立したら、売却金で一括清算を考えます。

住宅ローンの「一括繰り上げ返済」を行うためには手数料がかかります。実際の金額は金融機関によって変わりますが、1,000円から2万円程度が目安です。

6-1-4.登録免許税・司法書士報酬

物件の売買時には様々な手続きがあります。住宅ローンを組んだ際に物件自体を担保とする「抵当権」は、ローン返済時に取り消さなければなりません。

また売買によって持ち主が変わるときには、所有権移転登記が必要です。

これらの手続きを行う際には登録免許税がかかります。手続きは自分でもできますが、司法書士に依頼すれば報酬(代行手数料)が必要になります。

参考:財務省「登録免許税に関する資料

6-2.新居購入時にかかる諸費用

物件の購入時の費用は、売却時の費用で紹介した4つのほかに以下の5種類があります。

6-2-1.手付金

慣例として、新規物件の売買契約時に、売主に支払うものです。金額は売主によって変動しますが、物件価格の1割前後が一般的な目安です。売買契約時に支払い、残金は引き渡し時に支払います。

6-2-2.住宅ローン借入費用

多くの住宅ローンの場合、団体信用生命保険が付随しています。また別途、自身で返済できなくなってしまった場合に備えて、ローン保証会社と契約する場合もあるでしょう。

一般的には、これらの保証料・保険料を含んだ額を、住宅ローンの返済金として支払っていくことになります。ただしこうした諸費用については金融機関によって扱いが異なるため、ローン契約前に確認してください。

6-2-3.修繕積立基金(新築マンションのみ)

こちらは、新築マンションを購入した場合のみかかる費用で、基本的には引き渡し時に支払います。マンションでは10~15年で大規模なメンテナンスを行うことが一般的です。高い場合は、40万円ほど請求される場合もあります。

なお、この積立基金も組み込んだ金額を、住宅ローンとして借り入れられるケースも多いです。

6-2-4.火災保険料

通常の引っ越しと同様、火災保険や地震保険にも加入する必要があります。各保険会社やプランによって保険料は変動するので、パンフレットや公式サイトなどで確認してください。

6-2-5.固定資産税や管理費などの精算金

マンションを購入すれば、市町村への固定資産税支払い義務が生じます。固定資産税は、所有者に対して毎年1月1日にまとめて課税されます。

物件を売買した場合は、1年分の固定資産税額を買主と売主とで分割する必要が生じるでしょう。こうした場合は「引き渡し時期を基準にして、買主が支払うべき固定資産税額を算出し、それを売主へ渡す」という手段が取られます。

また、中古マンションを購入した場合では、上記に加えて管理費や修繕積立金についても負担額を算出し、売主へ渡します。これらの費用に関しては、引き渡し日から日割り計算することで、買主の負担額を算出することが一般的です。

6-2-6.不動産取得税

上記の市町村へ支払う固定資産税とは別に、都道府県へ支払う不動産所得税も発生します。この金額は、市町村がその不動産に関して登録している固定資産税評価額に基づいて確定します。基本的には、この固定資産税評価額の4%が、不動産取得税の金額です。

現在は、住宅取得の負担を軽減するため、不動産取得税の軽減措置(4%→3%)が取られています。(適用期限:令和6年3月31日)

参考:国土交通省「不動産取得税に係る特例措置

住み替えをすると決めたら、実際に査定の依頼をしてみましょう。

信頼できる不動産会社を探すなら、NTTデータグループが運営する一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をおすすめします。

HOME4Uマンションプライスの売却査定

「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」はカンタンな情報を入力するだけで、全国の優良な不動産会社2,300社のなかから、最大6社を選んでまとめて査定依頼ができます。

信頼できる優良な不動産会社を探すなら、「不動産売却 HOME4U」をぜひご活用ください。

まとめ

いかがでしたか?マンションの住み替えについて解説してきました。

満足できるマンションの住み替えは、いかに良い物件を購入できるかが鍵を握ります。

住み替えの時期は、築年数が5年超10年以内、また修繕積立金の増額タイミングなどが1つの目安にはなります。但し、家族の事情に合わせて住み替えるのが一番ですので、経済の合理性だけでなく、自分たちの住み替える理由を重視して決めましょう。

また、住宅ローンに関しては、早すぎる住み替えや、住み替えローンの利用には十分注意してください。将来的に自分の首を絞めないためにも、資金的に余裕を持った状態で住み替えることが重要です。

また、税金の対策として、税金の特例をぜひ活用することをおすすめします。住み替えで得したときは節税できますし、住み替えで損したときは税金還付を受けることもできます。

いずれにしても住み替え後も気を抜かず、特例の利用のためにしっかり確定申告を行うことを忘れないようにして下さい。

また、新居の購入に意識を集中させるためには、売却に関しては「不動産売却 HOME4U」を使って、効率的かつ楽に売却活動をすることがおすすめです。

この記事の内容を参考にして、「住み替え」に成功し、新しい生活をスタートさせてください。

この記事のポイント まとめ

「売り先行」と「買い先行」の特徴とメリットは?

売り先行の特徴とメリットは以下の通りです。
売り先行とは、新しい物件を購入する前に現在住んでいるマンションの売却を始めること。

【売り先行のメリット】

  • マンションの売却金額を新しい家の購入資金に充てられる
  • マンションの売却金額でローン残債を返済できる
  • 売却に時間をかけることができ、値下げリスクがなくなる

買い先行の特徴とメリットは以下の通りです。
買い先行とは、現在住んでいるマンションを売却する前に新しい物件を購入すること。

【買い先行のメリット】

  • 時間をかけて新しい物件探しを行うことができる
  • 引っ越しを自分のペースで進めることができる
  • 先に引っ越した場合、内覧のための掃除などの手間が減る

それぞれのメリットの詳細は「1.マンションの住み替えをする2つの方法と手順」をご一読ください。

マンションの住み替えをする時期やタイミングは?

所得税とマンション価格のバランスを考慮し、マンションを所有してから5~10年を目安として売却、住み替えをするのがおすすめです。

マンション価格は年数とともに下がっていきますので、築10年を超えている場合は、なるべく早く手放すことが損をしない住み替えにつながります。

詳しくは「2.マンションの住み替えをする時期やタイミング」をご一読ください。

マンションの住み替えで失敗しないための対策は?

マンションの住み替えに失敗しないために、4つのポイントに気を付けましょう。

  1. ローン残高を把握してオーバーローンを防ぐ
  2. 住み替え費用の準備をする
  3. 住み替え先のマンション選びでは管理費に注目する
  4. 戸建てに住み替えるなら将来性に注目する

詳しくは「4. マンションの住み替えで失敗しないための対策」をご覧ください。

マンションの住み替えで使えるお得な税金控除とは?

マンションの住み替えをしたときは、確定申告を行い、税金の控除を受けましょう。マンションを売った時の譲渡所得や、物件の所有年数により、受けられる控除は異なります。

  1. 3,000万円特別控除(譲渡所得が3,000万円以下の場合)
  2. 10年超所有軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え特例(譲渡所得が3,000万円超の場合)

それぞれの特例の詳細は「5.マンションの住み替えで使えるお得な税金控除」をご覧ください。