修繕積立金の用途・金額の相場とは?入居後に値上がりする4つの要因

修繕積立金の相場 徴収方法と値上がりの要因

分譲マンションを購入すると、住宅ローンに加えて修繕積立金の支払いが必要です。修繕積立金は値上がりする可能性があるため、物件を購入する前に詳細を把握しておくことが大切です。

本記事では、修繕積立金の基礎知識を踏まえ、修繕積立金の徴収方法、金額の決め方と相場、計算方法、値上がりする理由などについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • 修繕積立金の用途と徴収方法
  • 修繕積立金の相場と計算方法
  • 修繕積立金が値上がりする4つの理由
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1.修繕積立金とは?基礎知識をおさらい

修繕中の共用部分

はじめに、修繕積立金の概要や、管理費との違い、売却時における修繕積立金の扱いについて解説します。

1-1.修繕積立金とは?

修繕積立金とは、建物の状態や共有部分を維持・修繕するために毎月積み立てる資金のことで、マンションの管理組合が徴収します。

修繕積立金の目的は、莫大な費用がかかる「大規模修繕」の資金を積み立てておくことにあります。大規模修繕は10~16年程度の周期で実施しますが、修繕のたびに多額な費用を請求されても住民が払えない可能性があります。

住民の負担を軽減しつつ確実に資金を集めるために、修繕積立金として毎月一定額を積み立てます。ただし、新築マンションの場合、「修繕積立基金」として購入時に数十万円を徴収するケースが一般的です。

1-2.修繕積立金と管理費の違い

分譲マンションの管理費とは、共用部分や設備の維持管理に使用する資金のことです。管理費の用途としては、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 共用部分の清掃や修繕
  • 共用部分の水道光熱費
  • 共用部分の保険料(火災保険や損害保険)
  • ゴミの処理
  • 植栽の剪定や庭の手入れ
  • 管理委託費(マンションの管理会社に委託する場合)
  • 管理組合の運営費

修繕積立金は計画的な大規模修繕に用いられる一方、管理費は「日常的」な管理に使用されます。家計に置き換えた場合、管理費は生活費、修繕積立金は貯金に該当します。

修繕積立金と管理費の違い

なお、管理費は毎月支払う必要があり、修繕積立金と一緒に徴収されるのが一般的です。

1-3.修繕積立金は売却時に返金される?

マンションを売却したとしても、基本的に修繕積立金が返金されることはありません。マンションに住んでいる期間は、共用部分の清掃や修繕といったサービスで利益を受けているためです。

また、大規模修繕の前にマンションを売却し、その後に修繕が実施されたとしても修繕積立金を取り戻すことはできません。一度支払った修繕積立金は管理組合の「財産」となり、返金の必要がないものと扱われるためです。

なお、修繕積立金の支払いは、マンションを購入して入居する条件の一つです。仮に修繕積立金を滞納した場合、支払いの督促や差し押えなどの法的措置を講じられる可能性があります。

修繕積立金を滞納した状態でもマンションを売買することは可能ですが、買主は売主に対し、滞納した修繕積立金の支払いを請求できます。

マンションを購入したら、修繕積立金の支払いは必須であり、売却しても返金されないことを理解しておきましょう。

2.修繕積立金の用途とは?

マンションの外壁の修繕

修繕積立金には、以下のような用途があります。

  • 定期的な大規模修繕
  • 事故や災害時の修繕工事
  • 共用部分の改修
  • 調査費用

2-1.定期的な大規模修繕

一般的な分譲マンションでは、10年~16年に1回の頻度で大規模修繕を実施します。大規模修繕とは、経年劣化などを防ぐために建物本体や設備を修繕することです。

大規模修繕では、主に以下の箇所の修繕工事が実施されます。

工事内容 修繕箇所
下地補修
  • 外壁などに生じる、コンクリートのひび割れを補修
  • タイルの接着剤を注入、またはタイルの貼り替え
塗装工事(外壁・鉄部)
  • 外壁の塗装の塗り替え
  • バルコニーなど、錆びた鉄の塗装
シーリング工事
  • 外壁のタイル、サッシまわりなどのシーリング施工
防水工事
  • 屋上や外階段、バルコニーなどの防水
    (バルコニーなど、共用部分のうち専有部分が対象)
給排水管工事
  • 給水管、排水管の錆びや腐食、詰まりなどを除去

定期的な大規模修繕は、マンションの資産価値を守るという観点でも重要です。しっかりとした修繕計画と修繕履歴の有無は、買手が購入を判断する重要な要素の一つといえます。

2-2.事故や災害時の修繕工事

事故や災害で建物に被害がおよび、工事が必要になったときにも、修繕積立金から工事費用が捻出されます。

修繕積立金が不十分だと、こういった不測の事態に対処できなくなり、住民も大きな不便を被るリスクがあります。

2-3.共用部分の改修

マンションの共用部分の改善や改修にかかる費用も、修繕積立金から拠出するのが基本です。管理費は日常的なメンテナンスで利用されますが、修繕積立金の改善や修繕は「入居者の生活のクオリティ向上」につながる工事に限られます。

具体的には、耐震改修工事、駐車場の増設、集合ポストの新調、セキュリティーの強化、バリアフリー化の工事などが挙げられます。

2-4.調査費用

分譲マンションにおける調査費用とは、マンションの建て替え、敷地を売却するときの調査費用を指します。

ただし、あくまでも調査費用にとどまり、マンションの建て替え費用に修繕積立金を使うことはありません。建て替えが決定した時点で修繕積立金が残っている場合、残高はマンションの区分所有者に返還されます。

3.修繕積立金を徴収する3つの方法

修繕積立金は、管理費と一緒に毎月請求されるのが基本です。ただし、修繕積立金には3種類の徴収方法があり、これにより金額に差が生じることがあります。

本章では、修繕積立金の3つの徴収方法とその違いについて解説します。

3-1.均等積立方式

均等積立方式とは、毎月一定額を徴収する方法のことです。大規模修繕計画で想定される金額を、長期修繕計画の期間で均等に割ることで毎月の金額を設定します。

築年数に応じた修繕費の増額も想定しているため、工事の開始後に資金が足りない、といったトラブルの回避が可能です。

毎月一定の金額が徴収されることから、家計に負担が少なく、資金計画も立てやすくなります。ただし、突発的な工事が必要になった場合、徴収額を見直す必要があるので注意が必要です。

均等積立方式は資金が不足するリスクが低いため、国土交通省も導入を推奨しています。ただし、比較的新しい方式であり、均等積立方式を採用するマンションはまだ多くないのが実情です。

3-2.段階増額積立方式

段階増額積立方式とは、少額からスタートし、段階的に金額を引き上げていく方法です。
「必要なときに必要な金額を集める」という考え方で、多くのマンションで採用されています。

新築の時点では修繕積立金を少額に抑えることが可能であることから、新築のマンションで採用される傾向にあります。ただし、段階的に修繕積立金が高くなるため、長く住み続けると、支払いが大きな負担になる可能性も否定できません。

また、築年数の経過に応じて、修繕積立金を見直さなければならず、都度総会を開いて住民の同意を求める必要があります。計画的に金額を引き上げないと、当初の金額から2倍以上に増額され、合意形成が困難になるケースも珍しくありません。

3-3.一時金徴収方式

一時金徴収方式とは、修繕が必要になったときに、修繕に必要な費用を戸数で割った金額を一時金として一括徴収する方法です。

必要な工事費用が明確になっているので、資金が不足しにくいメリットがあります。しかし、一括徴収のため、一度に大金を支払うことは入居者にとって大きな負担になります。

このような事情から、一時金徴収方式を採用するマンションは多くありません。

4.修繕積立金の決まり方と金額の相場

電卓を手に悩む女性

ここでは、修繕積立金の設定方法、金額の相場、計算方法について解説します。

4-1.修繕積立金は長期修繕計画をもとに設定する

修繕積立金の金額は、長期修繕計画によって設定されます。毎月の修繕積立金を決める流れは、以下のとおりです。

  1. 新築時に修繕積立基金を徴収する
  2. 大規模修繕に必要な金額を、月額に換算する
  3. 所有する区分の面積に応じ、修繕積立金の金額を割り当てる

なお、長期修繕計画は、これまでの修繕のスパン、各デベロッパーの経験などに基づいて定められます。

4-2.国土交通省のデータに基づく修繕積立金の相場

マンションの大規模修繕では、一戸あたり100万円前後の費用がかかるとされています。

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、2023年(令和5年)4月の専有床面積ごとの修繕積立金の平均額は、以下のとおりです。

計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場を除く)
地上階数/建築延床面積 月額の専有面積当たりの修繕積立金額
事例の3分の2が包含される幅 平均値
【20 階未満】 5,000 平米未満 235 円~430 円/平米・月 335 円/平米・月
5,000 平米以上~
10,000 平米未満
170 円~320 円/平米・月 252 円/平米・月
10,000 平米以上~
20,000 平米未満
200 円~330 円/平米・月 271 円/平米・月
20,000 平米以上 190 円~325 円/平米・月 255 円/平米・月
【20 階以上】 240 円~410 円/平米・月 338 円/平米・月

出典:“マンションの修繕積立金に関するガイドライン”. 国土交通省. 2023-04. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

「事例の3分の2が包含される幅」とは、事例によってばらつきがあることを考慮し、平均値に加えて事例の大部分が収まる金額の幅を意味します。

国土交通省のデータは「均等積立方式」で算出していますが、徴収方法によって修繕積立金は変動します。

また、国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、駐車場使用料などの充当額を含む修繕積立金の総額の平均は月12,268円でした。一方、充当額を含まない金額の平均は、11,243 円/月でした。

出典:“平成30年度マンション総合調査結果”. 国土交通省

修繕積立金は、大規模修繕に必要な費用を総戸数で均等に割って算出されます。したがって、総戸数が少ないほど、一世帯あたりの修繕積立金は高くなります。特に、総戸数が10戸~20戸程度の小規模マンションは、修繕積立金が高くなりやすいため注意が必要です。

このほか、機械式駐車場があると月額5,000~6,000円前後、修繕積立金が上乗せになるケースもあります。

4-3.修繕積立金の計算方法

国土交通省のガイドラインにある以下の計算式で、修繕積立金の相場を求めることが可能です。

修繕積立金の計算方法

出典:“「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の概要”. 国土交通省. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

あくまでも目安の数字ではありますが、マンションの購入前に修繕積立金を確認できる有効な手段といえます。

5.修繕積立金が値上がりする理由

家とお金

マンションの修繕積立金は定額ではなく、さまざまな事情によって値上げされます。修繕積立金が値上げされる要因としては、以下のようなものが挙げられます。

5-1.築年数の経過

築年数が経つほど建物の劣化は進み、修繕が必要な個所が増えるため、築年数の古い物件は修繕積立金が高くなりやすい傾向にあります。特に、段階積立方式を採用するマンションでは、築年数と修繕積立金が比例するのが基本です。

値上がりの幅はマンションの財務状況によって異なりますが、あらかじめある程度の値上げに備えておくことが重要です。

5-2.分譲時の金額設定が低い

修繕積立金は、分譲を開始した時点で金額を決めるのが一般的です。当初の修繕費用を低く見積もっていた場合、修繕をする段階で資金が不足し、追加の徴収が発生する可能性があります。

また、マンションによっては、初期費用を抑えることを目的に、あえて修繕積立金を低く設定するケースもあります。このような場合、突然、高額な修繕積立金を徴収される可能性も否定できません。

5-3.物価の上昇を考慮していない

修繕積立金の多くは、物価の上昇まで考慮できていません。したがって、社会情勢の変化などで物価が上昇した場合、値上げせざるを得なくなるケースもあります。

修繕工事に必要な建築材料、建設業の人件費が高くなれば、修繕にかかる費用も上がる、ということを覚えておきましょう。

5-4.長期修繕計画の見直し

長期修繕計画を見直す段階で、工事費の不足が発覚することも少なくありません。現時点の金額で必要な修繕費をまかなえない場合、計画の修正に基づいて修繕積立金が値上げされます。

自然災害による補修やバリアフリー化など、長期修繕計画に含まれない工事も修繕積立金が値上がりする要因の一つです。修繕積立金は、住民が安全かつ快適に暮らすために必要なものであるため、値上がりをネガティブに捉えすぎない意識も大切です。

まとめ

分譲マンションの入居で発生する修繕積立金は、定期的な大規模修繕や突発的な工事の資金として積み立てるものです。修繕積立金は貯金の意味合いがあり、管理費は共用部分の日常的なメンテナンスに使うという点で異なります。

修繕積立金は一定ではなく、徴収方法や築年数の経過、物価の上昇といった要因で値上がりします。現在は段階増額積立方式が主流で、築年数が経過するほど修繕積立金が高くなる傾向にあるため注意が必要です。

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