不動産売却にかかる費用!必要な手数料とかかる税金を徹底解説

最新版!2018年度以降の不動産の売却で発生する費用を徹底解説

この記事では、不動産の売却に要する費用・税金について詳しく解説していきます。

不動産の売却費用には、仲介手数料や抵当権抹消関連費用、印紙税、売却で発生する所得税等があります。また測量費やインスペクション費用がかかるケースもあります。

この記事をお読みいただくことで、思いもしなかった費用が発生するという事態を防ぐことができます。ぜひ最後までお読みいただき、損のない不動産の売却に役立てて頂ければ幸いです。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.不動産の売却に必要な費用

不動産の売却に必要な費用

1-1.不動産売却にかかる費用一覧

不動産売却にかかる費用一覧は以下です。

費用項目 費用 備考
仲介手数料
  • 取引額200万円以下:取引額の5%
  • 取引額200~400万円以下:取引額の4%+2万円
  • 取引額400万円越:取引額の3%+6万円
別途消費税が必要
抵当権抹消関連費用 1筆につき1,000円
(建物にも抵当権が設定されていれば、建物1つにつき1,000円)
 
印紙税 200~5,000円程度 1万円以下は非課税
インスペクション費用 5~20万円程度 任意
測量費 50万円~100万円程度 土地の境界が明示できない場合のみ
税金
  • 短期譲渡所得(5年以下)は所得税率30%、住民税率9%
  • 長期譲渡所得(5年超)は所得税率15%、住民税率5
譲渡所得が発生する場合のみ
買主と精算する費用
  • 固定資産税精算金
  • マンションの管理費・修繕積立金
 
ハウスクリーニング費用 料金はクリーニング会社によって異なります  
解体費用 坪単価3万円~5万円  

ここからは、ひとつひとつの費用の相場や仕組みについて、解説します。

2.仲介手数料

媒介契約(仲介)

不動産の売却費用で一番金額が気になる費用は仲介手数料ではないでしょうか。最初に仲介手数料の仕組みや相場についてご紹介します。

2-1.仲介手数料の仕組み

不動産会社に売却の依頼を行うと、仲介手数料が発生します。仲介とは、宅地建物取引業者が売買に関して、売主と買主の間に立ち、売買契約の成立に向けて尽力する行為のことを指します。

仲介は媒介とも呼ばれており、不動産会社に仲介を依頼するときに締結する契約を媒介契約と呼びます。

仲介手数料は、成功報酬であることが最大の特徴です。着手金や実費精算等は一切なく、売却が決まった時点で発生する費用になります。

仲介手数料は、以下の3つの条件を満たした場合において発生します。

  1. 不動産会社と依頼者との間で媒介契約が成立していること
  2. その契約に基づき不動産会社が行う媒介行為が存在すること
  3. その媒介行為により売買契約等が有効に成立すること

仲介手数料は売買契約時に50%、引渡時に50%を支払うのが一般的です。

2-2.仲介手数料の相場と上限額

仲介手数料は宅地建物取引業法により、不動産会社が受領できる上限額が決まっています。報酬上限額は、売買される不動産の取引額に応じ、以下のように規定されています。

仲介手数料 上限額の算出方法
取引額 仲介手数料
200万円以下 取引額の5%
200万円超から400万円以下 取引額の4%+2万円
400万円超 取引額の3%+6万円

※仲介手数料には、別途、消費税が発生します。

不動産は高額なものがほとんどであるため、取引額としては、400万円超であることが多いはずです。また、仲介手数料は、法定上限額が請求されることが一般的のため、仲介手数料の相場は法定上限額と考えましょう。

例えば、不動産の売却価格が2,000万円の場合には、取引額が400万円超であるため、仲介手数料の上限額・相場は以下のように計算されます。

仲介手数料 = 2,000万円 × 3% + 6万円
  60万円 + 6万円
  66万円

※仲介手数料には、別途、消費税が発生します。

売買価格が大きいほど、仲介手数料も大きくなるため、忘れずに費用として見積もっておきましょう。仲介手数料についてもっと詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご参照ください。

不動産売却の手数料でダマされない!計算式やポイントを解説

2-3.小額物件の手数料

2018年1月1日以降、取引額が400万円以下の物件に関しては、不動産会社が仲介手数料に加えて、現地調査費等の費用相当額を請求できるようになりました。

これは全国で空き家が増え続ける中、地方の低廉な空き家の売却がなかなか進まないことを受け、法改正された事項です。

400万円以下の不動産の売却では、仲介手数料が以下のようになります。

仲介手数料 + 現地調査費用相当額

但し、仲介手数料と現地調査費等の費用相当額の合計額は18万円(別途消費税)を超えてはならないものとされています。

従来の400万円の物件の仲介手数料は以下のように計算されていました。

法改正前の計算式

200万円の物件

仲介手数料 = 200万円 × 5%
  10万円

300万円の物件

仲介手数料 = 300万円 × 4% + 2万円
  12万円 + 2万円
  14万円

法改正後の計算式

200万円の物件

仲介手数料 = 200万円 × 5% + 現地調査費等の費用相当額
  10万円 + 現地調査費等の費用相当額
  最大18万円

300万円の物件

仲介手数料 = 300万円 × 4% + 2万円 + 現地調査費等の費用相当額
  12万円 + 2万円 + 現地調査費等の費用相当額
  14万円 + 現地調査費等の費用相当額
  最大18万円

上記のように、400万円以下の物件を売却する場合でも、不動産会社へ支払う報酬が最大18万円になる可能性があることを留意しておきましょう。

参考:国土交通省 告示 第1155号「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(最終改正平成29年12月8日)」

3.ローンの抵当権抹消関連費用

住宅ローンが残っている物件を売却する場合に発生する抵当権抹消関連費用について解説します。

3-1.住宅ローン返済中の不動産売却にかかる費用

住宅ローンが返済中の物件は、売却金額によって住宅ローン残債を返済します。この際、住宅ローンを借りる際に設定した抵当権を登記簿謄本から抹消する手続きを行います。

抵当権の抹消には、以下の二つの費用が必要となります。

  • 法務局へ支払う登録免許税
  • 司法書士へ支払う司法書士報酬

手順としては抵当権の抹消は、売却金額が入金される引渡と同時に行います。引渡では住宅ローンを借りている銀行も同席しますので、入金確認次第、銀行から抵当権の抹消書類をもらいます。

抵当権の抹消を司法書士に依頼する場合は、不動産会社に相談してみましょう。不動産会社側から紹介してくれることが多いため、自分で探す必要はない場合が多いでしょう。

3-2.抵当権抹消登記にかかる登録免許税

住宅ローンを借りるために設定した抵当権は、土地と建物の登記簿謄本に記載があります。登記簿謄本から抵当権の記載を消すことを抵当権抹消と呼びます。

実際には、抵当権の記載の部分にアンダーラインが引かれますが、アンダーラインが引いてある部分は抹消されていることを意味します。

登記簿謄本にアンダーラインを引く作業は、法務局が行います。この際、法務局へ手間賃を支払うことになりますが、この手間賃に該当するものが登録免許税になります。具体的な費用は以下の通りです。

抵当権抹消の登録免許税

不動産1個につき1,000円

土地の単位を筆(フデ)と数えますが、複数の筆がある場合には、その筆の数だけ1,000円の登録免許税がかかります。建物にも抵当権が設定されていれば、建物1つにつき1,000円という考え方になります。

3-3.司法書士手数料の相場

日本司法書士連合会では、全国の司法書士から報酬のアンケートをとり、その結果を公表しています。「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」によると、抵当権抹消に要する司法書士手数料は以下の通りとなっています。

  低額者10%の平均 全体の平均値 高額者10%の平均
北海道地区 8,358円 15,532円 30,120円
東北地区 8,307円 13,863円 22,091円
関東地区 9,536円 15,613円 26,001円
中部地区 9,839円 16,638円 35,220円
近畿地区 9,933円 18,795円 32,444円
中国地区 9,471円 15,289円 26,682円
四国地区 9,917円 14,409円 21,562円
九州地区 9,737円 13,821円 22,676円

 これらはあくまでも目安であり、土地が数筆ある場合等、事案によって報酬は異なります。

4.印紙税

収入印紙

印紙税とは、不動産の売買契約書に印紙を貼付して納税する税金です。印紙税の金額は不動産の売買金額によって異なります。また、2022年3月31日まで、不動産の売却にかかわる売買契約書の印紙税は軽減措置が適用されています。

印紙税は以下の通りです。

不動産売却の契約書にかかる印紙税一覧
契約書に記載する売買金額 通常の印紙税 軽減措置適用後の印紙税
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円
金額の記載のないもの 200円 200円

マイホームの売却の場合、売買金額は「1,000万円超5,000万円以下」または「5,000万円超1億円以下」であることが多いです。この金額ゾーンを主とすると、印紙税の相場は1万円または3万円ということになります。

参考:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置

5.インスペクション費用

インスペクション

買い手の安心感を高め、売却後のトラブルを減らすために、2018年4月より、売却を仲介する不動産会社がマイホームの売却をする方に対してインスペクションのあっせんを行うことが義務付けられました。

同時に売主でもインスペクションを実施する方が増えますので、インスペクション費用についても理解しておくことがおすすめです。

参考:国土交通省「改正宅地建物取引業法の施行について

5-1.インスペクションとは

インスペクションとは、建物状況調査のことです。この建物状況調査に合格すると、既存住宅瑕疵担保保険(以下、「瑕疵担保保険」と略)に加入することができます。

瑕疵担保保険に加入できるという点はインスペクションの最大のメリットです。保険に加入するための調査のため、人間で言うところの健康診断だと理解しておくとよいでしょう(瑕疵担保保険については5-2にて詳しく解説いたします)。

インスペクションでは、構造上の安全性や日常生活への支障があると考えられる劣化や性能低下の有無について、建物の専門家が目視や計測によって調査を行います。チェック項目の具体例は以下の通りです。

  • 住宅の基礎構造
  • 外壁等のひび割れ
  • 雨漏り
  • シロアリ被害 など

インスペクションは義務ではありませんが、実施するか否かは売主の判断となります。しかし、不動産会社は買主に対してもこの物件がインスペクションを受けているかどうかの説明を行います。

そのため、買主にインスペクションの知識が無くても、買主は購入を通じて「インスペクションとは何か」「この物件はインスペクションを受けているのか」ということを知ることになります。

買主から取ってみると、インスペクションを受けている物件と受けていない物件には、差を感じるということは知っておいた方が良いでしょう。

なお、売主が承諾すれば、購入前に買主がインスペクションを行うケースもあります。インスペクションをしない場合でも、買主からの要望が出たときに対応できるようにしておくとスムーズです。

5-2.瑕疵担保保険とは

インスペクションに合格すると、瑕疵(かし)担保保険に加入できます。瑕疵担保保険に加入すると、住宅に瑕疵が発見されたとき買主が保険で瑕疵を修繕することができます。

保険期間としては、1年間または5年間で、保険の補償額としては1戸当たり最大で1,000万円となります。品質保証的な役割を果たすため、買主にとっては大きな安心感があります。

瑕疵とは通常有すべき品質を欠く状態のことを指します。瑕疵担保保険で対象としている瑕疵は、雨漏りやシロアリによる床の腐食といった建物に関する物理的な瑕疵に限ります。

物理的瑕疵とは、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分に発生する瑕疵のことです。瑕疵には、自殺や過去の忌まわしい事件といった心理的瑕疵も存在しますが、このような物理的瑕疵以外の瑕疵については保険の対象とはなりません。

瑕疵担保保険のメリット

瑕疵担保保険に加入している物件は、以下のメリットが想定されます。

【売主・買主 双方へのメリット】

売却後に欠陥が発覚した際に、トラブルに発展しづらくなる

【売主に対するメリット】

  • 安心できる物件として買い手にアピールすることができる
  • 気づかなかった欠陥に対して契約不適合責任*の負担を軽減できる

【買主に対するメリット】

  • 税金の軽減措置、控除が適用できるようになる可能性がある(不動産取得税や登録免許税の軽減・住宅ローン控除など)
  • 安心して中古不動産を購入することができる

*契約不適合責任:契約に適合しない欠陥や不具合に対して売主が責任を負うこと。また、それに対する買主の権利を保護するもの

参考:国土交通省「住宅業界に関連する民法改正の主要ポイント

買主には節税のメリットもあるため、瑕疵担保保険に加入している物件の方が魅力の増すこととなります。

5-3.インスペクション費用の相場

インスペクションは、まだ普及途上にあるため、費用がそれほど一般化していません。インスペクションの費用としては、概ね5~20万円程度と言われています。

ただし、インスペクションは、瑕疵担保保険に加入できないと意味がありません。インスペクションに不合格となった場合は、修繕するなど合格するための対応が必要となるケースもあることを理解しておきましょう。

また、インスペクション業者の中には、瑕疵担保保険の加入要件を満たさない検査を行う業者も存在するため、インスペクションを依頼するときは、その検査に合格することによって間違いなく瑕疵担保保険に加入できるのかを確認してから依頼することが重要です。

尚、住宅瑕疵担保責任協会に登録されている検査会社であれば、瑕疵担保保険に加入できる検査を行ってくれます。

6.土地又は戸建売却でかかる測量費

メジャー

不動産の売主には土地の境界を明示する義務があります。この章では、境界が未確定の土地を有する方が必要な測量費に関して解説します。

6-1.売主の境界明示義務

不動産の売主には、土地の境界の明示義務があります。以下のような土地の場合は、注意が必要です。

土地の境界が不明確である可能性があるケース

  • 古くから持っている土地
  • 上記の土地に立っている戸建てなどの建物

→ 定まっていない場合は測量が必要となるため、注意が必要。

土地の境界が明確に定まっているケース

  • 分譲マンション
  • ディベロッパーが開発した分譲住宅地の戸建て

→ 基本的に測量は不要。

古くから持っている土地、またはそのような土地の上に建っている戸建を売却する場合、境界が不明瞭のケースがありますので、注意が必要です。

境界では、隣地との境界ラインが定まっていることを「確定している」と表現します。境界には隣地との境界を指す「民々境界」、道路との境界を指す「官民境界」の2種類があります。

境界の明示とは、民々境界および官民境界の確定ラインを明示することになります。

境界が確定している場合、隣地所有者との間で「筆界確認書」と呼ばれる境界を確認しあった覚書が締結されていることが通常です。筆界確認書が存在しなくても、「確定測量図」という測量図があれば境界が間違いなく確定していることになります。

境界確定図には境界杭が記載されていますので、その図面に基づき買主に対して「ここが境界ラインです」という説明をすることになります。尚、実測図があったとしても、その実測図が「確定測量図」という名称になっていない場合、境界が未確定の可能性があります。

測量には費用がかかるため、不動産を売却する前に、境界確定図筆界確認書があるかどうかを確認することが重要です。

6-2.測量費の相場

境界が確定していない場合には、測量会社に「確定測量図」の作成を依頼することになります。確定測量費用の相場は、50万円~100万円程度です。

測量費は隣接する筆の数、土地の形状、広さなどによって異なります。測量が必要だと分かったら、早めに見積を取って金額を確定することをおすすめします。

測量費は、有資格者による定型業務であるため、相見積によって大きく値段が下がる性質のものではありません。ただ、金額に納得がいかない場合には、何社か見積を見比べる必要はあるでしょう。

また、境界確定には隣地所有者の同意を得る必要があり、時間もかかります。そのため、確定測量を行う場合には、早めに依頼することが重要です。

特に、官民の境界を確定するには、道路の反対側の土地所有者の同意も得る必要があり、土地所有者が多い場合には半年以上時間を要することもあります。

7.売却にかかる税金

不動産の売却では、譲渡所得が発生すると、所得税および住民税、復興特別所得税が生じる場合があります。

7-1.譲渡所得とは

不動産の売却に伴う税金は、譲渡所得が発生したときに限り生じます。売却すると必ず発生する税金ではないという点がポイントです。

譲渡所得の計算の結果、譲渡所得がプラスであれば所得税および住民税、復興特別所得税が発生するのが基本です。計算の結果、譲渡所得がマイナスであれば、税金は発生しません。

譲渡所得は以下の計算式で求められるものになります。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡価額:不動産の売却額
取得費:売却した不動産の購入額。但し、建物に関しては減価償却後の価格が建物の取得費になります。
譲渡費用:仲介手数料、印紙税、測量費等の売却に要した費用

但し、譲渡費用については、抵当権抹消関連費用に関してはあくまでも抵当権を抹消するために要した費用であるとされており、譲渡費用とはみなされません。また、インスペクションに関しては、不動産を売るために直接かかった費用であるかどうかを個別に判断する必要があります。

譲渡費用に含まれるかどうかについては、確定申告の際、税務署に確認するようにして下さい。

7-2.税率

譲渡所得に係る税率は所有期間で異なります。所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、所有期間が5年超であれば長期譲渡所得と呼ばれています。

それぞれの所得税率及び住民税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

※2037年12月31日まで、所得税の2.1%分の復興特別所得税が別途課税されます。

10年を超える期間で所有していたマイホームの売却であった場合、さらにお得な軽減税率が適用されるため、「12-2. 売却時にかかる税金を抑える特例・控除」をご参照ください。

8.買主との間で精算する費用

不動産の売却では、一般的に買主との間で費用の精算を行います。費用の精算は任意ですが、売主としては精算をした方が得となるため、理解しておくとよいでしょう。

8-1.固定資産税精算金

固定資産税および都市計画税(以下、「固定資産税等」と略)については、1月1日時点の所有者が、その年の固定資産税等の納税義務者になります。例えば、7月1日に不動産を売却しても、残りの半年分の固定資産税等は1月1日時点の所有者であった売主が支払います。

売主にはその年の固定資産税等の納税通知書が届いていますが、売却後もその年については売主が引き続き納税手続きを行うことになります。

但し、売主は既に不動産を所有していないのに固定資産税等を支払い続けるのは不合理ですので、通常は買主からその年の残りの固定資産税等をもらう形式をとります。このことを「精算」と呼びます。

売主は、買主から精算金をもらう立場であるため、固定資産税等の精算は行った方が得になります。精算は義務ではなく、あくまでも商習慣ですが、しっかりと主張して損がでないようにしましょう。

8-2.マンションの管理費・修繕積立金

マンションでは管理費および修繕積立金を「翌月分当月末払い」で支払うことがあります。

次月分を前月末に支払っているため、月の中日で売却すると、所有者と支払者にズレが生じます。そのため、管理費および修繕積立金についても精算を行うこともあります。

精算項目には、その他に駐車場代や駐輪場代、町会費といったものもあります。

但し、1ヶ月分の管理費および修繕積立金を日割計算すると金額も少ないことから、精算は行わない方たちも多くいます。数千万円の売買をしているのに、1円単位の精算が入ってくると、「どうでも良い」と感じる当事者は多いかもしれません。

精算というのは、あくまでも売主と買主の話し合いの上で任意で行うものです。何をどこまで精算するかは、仲介する不動産会社によく相談しながら決めるのが良いでしょう。

9.その他の費用

ご紹介してきたもの以外にも、売却する不動産の状況によって発生する費用がいくつかあります。

9-1.ハウスクリーニング費用

不動産を売却するために、事前に家の中(部屋)をキレイにしておきたい方は「ハウスクリーニング」を利用するとよいでしょう。

ハウスクリーニングは部屋の広さでも費用は変わります。

間取り 相場の目安 ※当社調べ
1R・1K 18,000円~30,000円
1DK・1LDK 22,000円~50,000円
2DK・2LDK 30,000円~50,000円
3DK・3LDK 42,000円~70,000円
4LDK・5DK~ 70,000円~100,000円

また、居住中のクリーニングは空き室の相場より2~3割程度高くなります。居住中のクリーニングは、荷物が汚れないように養生する、荷物や家具などが邪魔になるなど作業時間が増え、さらに作業時間帯にも制約が発生するためです。

また、料金はクリーニング会社によっても変わるため、複数の会社に見積を出すことをおすすめします。

9-2.解体費用

一戸建てを解体し、更地の状態にしてから売却する際には「解体費用」が必要です。

建物の構造が木族建築、軽量鉄骨、鉄筋コンクリートなどによって費用が大幅に変わります。

構造別・大体の相場価格
構造 坪単価 20坪の場合 30坪の場合
木造建築 3万円~5万円 60万円~100万円 90万円~150万円
軽量鉄骨 3.5~7万円程度 70万円~140万円 105万円~210万円
RC造 4万円~8万円 80万円~160万円 120万円~240万円

解体作業は、ただ解体するだけで作業が終わりではありません。廃材の分別作業、産業廃棄物処理を行います。

また、解体作業の費用以外に、法律によって定められているアスベスト調査費用があります。延べ床面積によって費用は変わりますが、2~8万円ほどが目安です。もしアスベストが使用されていた場合は、除去作業が必要なため、さらに費用がかかります。

また、解体費用とは別に付帯工事費用がかかることがあります。たとえば塀、庭石や庭木の撤去などが挙げられます。もしこれらの撤去が必要な場合は、必ず見積を取り、解体費用の一部として準備しておく必要があります。

10.不動産売却後に戻ってくる費用

お金の受け渡し

不動産を売却すると戻ってくるお金もあります。また、税金については数十万円という単位の還付が受けられる可能性もあります。この章では不動産の売却で戻ってくる費用について紹介します。

10-1.火災保険料

マイホームでは、物件の購入時に火災保険に加入していることが一般的です。

火災保険は、長期一括契約で契約すると、金額が安くなるため、一括で支払いをしている方が多いはずです。

保険契約の期中で売却する場合、長期一括で支払いをしている方は、売却時の保険を解約すると保険料が戻ってきます。但し、保険料は保険会社に請求をしないと戻ってこないため注意が必要です。

不動産会社も助言を忘れてしまうケースが多く、自分で気を付けていないと漏れてしまう項目です。金額は小額ですが、きちんと保険会社に解約の手続きをするようにしましょう。

10-2.銀行保証料

住宅ローンを組む際、保証会社に保証料を支払っていた方は、抵当権の抹消に伴い残りの期間分の保証料が戻ってきます。保証料の返還に関しては、抵当権の抹消手続きに伴い、銀行から提示を受けることが通常です。

住宅ローンを組み際に、保証料を支払ったかどうか、今一度確認しておきましょう。

10-3.所得税及び住民税の還付

不動産の中でも居住用財産(7-3.「3,000万円特別控除」内の定義参照)の売却に限り、譲渡損失が発生すると、所得税等の還付を受けることが可能です。

「7-1. 譲渡所得とは」で解説した譲渡所得が、マイナスとなることを「譲渡損失」と呼びます。譲渡損失が発生した場合、以下の特例を適用すると、源泉徴収された所得税の還付を受けることができます。

  1. 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  2. 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

上記の1および2の違いは、1は買い替えを前提とし、2は単純売却を前提としているという点です。

例えば、年収600万円のサラリーマンの方が、居住用財産を売却して▲1,000万円の譲渡損失を発生させてしまったとします。

この場合、確定申告によって、給与所得600万円と譲渡損失▲1,000万円を合算し、その年の所得を▲400万円とすることができます。このような手続きを「損益通算」と呼びます。

給与所得600万円であれば、会社が源泉徴収によって年収600万円であることを前提に所得税および住民税を天引きしています。この手続きは源泉徴収と呼ばれています。

ところが、損益通算によってその年の所得が▲400万円であったならば、会社が年収600万円を前提に源泉徴収していた所得税等は払い過ぎになります。

そこで、確定申告することで、会社が天引きしていた源泉徴収税額を取り戻すことができるというのがこの制度です。

仮に、不動産が高く売れなかったとしても、それだけでがっかりする必要はありません。譲渡損失が発生したら、税金の還付を受けることができるため、お得な側面もあるということになります。

譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けるには、他の要件もしっかりと確認してください。また、特例を適用するためには、確定申告が必要です。お得な特例ですので、忘れずにしっかりと利用しましょう。

11.相続で不動産を売却する際に追加でかかる費用

11-1.相続登記にかかる費用

不動産は、家や土地に関わらず、売却する際は、売主の名義になっていないと売却できません。これは、相続した不動産の元の名義人が無くなってしまった場合でも変わりません。

そのため、売却する際は、元の名義人から売主の名義に変更する「相続登記」を行う必要があります。

「相続登記」を行う際には、以下の費用がかかります。

  • 登録免許税(固定資産税評価額×0.4% ※2022年3月末まで免税措置が適用)
  • 司法書士への報酬
  • 戸籍謄本や住民票などの必要書類の取得費用
  • 遺産分割協議書(遺産総額の0.3-1%程度)の作成

参考:国税庁「相続登記の登録免許税の免税措置について

司法書士への報酬

売却した不動産や家の名義人の変更は、自分でできる場合もありますが、相続人が複数になる場合には、相続登記(名義人変更)の手続きが複雑なこともあります。また、手続きのための時間がなかなか確保できない方もいらっしゃるでしょう。

そのような場合には「司法書士」に相続登記の手続きを依頼できます。依頼にかかる費用は依頼内容によって変わりますが、書類の作成から実際の登記手続きまで含めると、6~7万円以上になる場合もあります。

ちなみに、遺言書の作成にかかる費用(公証人に支払う遺言書の作成費用)は相続財産により変わります。(例:100万円以下は5,000円、100~200万円は7,000円など)

書類発行費用

「相続登記(名義変更)」には、元の名義人の戸籍謄本や住民票の除票、相続する新しい名義人の印鑑証明書など、さまざまな書類が必要になります。

こういった書類は、ご自身で作成するものもありますが、ほとんどは役所の窓口などで発行してもらう書類です。

発行する書類ごとに「発行費用」が必要です。支払う費用は書類ごとに変わります。たとえば戸籍抄本(600円)や住民票(300円)などの費用がかかります。

11-2.相続した不動産の売却で使える税金特例・控除

相続した不動産や家を売却する際に「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」が利用できることもあります。

平成28年4月1日~令和5年12月31日までの間に売却した不動産や家に関して、一定の条件に当てはまる場合、譲渡所得の金額で、最大3,000万円の控除を受けることができます。

相続した居住用財産(空き家)で控除を受けるための条件

  1. 相続により亡くなった方の居住用土地・建物を取得した個人であること
  2. 昭和56年5月31日以前に建築されている物件であること
  3. 相続直前に相続人以外が居住していないことが証明できる
  4. 相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに売却していること
  5. 今までに同控除を利用したことがない
  6. 譲渡先が配偶者・直系血族・同族会社ではないことが証明できる

参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続した不動産の売却における注意点や税制特例について知りたい方は以下の関連記事もご参照ください。

不動産の相続で知っておきたい!売却の注意点とお得な税金特例

12.不動産売却にかかる費用・税金を抑えるコツ

不動産や家を売却した際に発生する費用を安く抑えるために、特例や特別控除を活用する方法をご紹介します。

12-1.不動産売却の費用を抑えるコツ

スムーズな売却が経費節約・利益増につながる

不動産売却にかかる費用の中で一番大切なのは、スムーズに不動産売却を売却することです。売却に時間がかかると、早く売れる物件するためにリフォームや建物の解体を行うなど追加費用が発生します。

費用をかけていない段階で、スムーズに販売することで、マイナスが減り、利益増につながるのです。

また、仲介手数料の安い不動産会社に対しても慎重に検討する必要があります。仲介手数料が安い分、販売活動に注力せず、売却にかかる期間が長期となる恐れがあります。結果として相場より安い売却価格になってしまうケースも多いため、慎重な判断が求められます。

信頼できる不動産会社を選ぶ

不動産売却をスムーズに進めるのは、信頼できる不動産会社と出会うことが一番の近道です。以下のポイントで不動産会社の査定や対応を比較しましょう。

  • 不動産査定で根拠のある査定価格を提示してくれる
  • 具体的な販売計画を想定している
  • 疑問や質問に対して、親身に答えてくれる

複数の不動産会社に査定依頼する方法として、おすすめなのが「不動産売却 HOME4U」です。大手から地元密着型まで、全国2,100社の不動産会社と提携しています。

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不動産売却の不動産会社選びには、ぜひHOME4Uをご活用してみてください。

12-2.売却時にかかる税金を抑える特例・控除

3000万円特別控除

不動産の中で、戸建住宅やマンションのマイホームを売却した場合、譲渡所得の計算上、3,000万円を控除してくれる特例があります。

この特例は「3,000万円特別控除」と呼ばれています。3,000万円特別控除を適用した場合の譲渡所得の計算式は、以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

譲渡価額:不動産の売却額
取得費:売却した不動産の購入額。但し、建物に関しては減価償却後の価格が建物の取得費になります。
譲渡費用:仲介手数料、印紙税、測量費等の売却に要した費用

3,000万円特別控除を適用した結果、譲渡所得がゼロ以下となれば、所得税および住民税、復興特別所得税は発生しません。

通常の規模の住宅では、取得費から3,000万円以上値上がりして売却できるようなことは、ほぼありません。よって、マイホームは、多少高く売れたとしても税金が発生する心配はほとんどないといえるでしょう。

尚、3,000万円特別控除を適用できる不動産は、居住用財産と呼ばれています。

居住用財産とは、基本的にマイホームのことを指します。具体的な定義は以下の通りです。

居住用財産の定義

  1. 現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
  2. 転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
  3. 災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合
  4. 転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

アパートや投資用ワンルームマンションは居住用財産に該当しません。また、昔から保有している更地も居住用財産ではないため、ご注意ください。適用条件については、十分に確認しておきましょう。

参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例

10年超のマイホームを売却する際の軽減税率の特例

売却した不動産が「マイホーム」の場合、不動産の所有期間が10年を経過すると所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%、合計14.21%の軽減税率の適用を受けられます。

さらに詳しい内容は国税庁のホームページでご確認ください。

国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例

長期保有している不動産売却の控除

法人(個人ではない会社などの組織)が長期に渡り保有していた土地などを売却した際に、1,000万円の特別控除を受けられます。この特別控除を「長期保有土地の特別控除」と言います。

控除の対象は、2009年に取得した土地だと2015年以降の売却、2010年に取得した土地だと2016年以降に売却する場合が対象です。

さらに詳しい内容は国税庁のホームページをご確認ください。

参考:国税庁「No.5451 平成21年及び平成22年に取得した長期所有土地等の1,000万円特別控除

不動産売却時の税金負担を軽減する特例・控除について、詳しく知りたい方は以下の関連記事をご参照ください。

不動産売却時にかかる税金と計算方法|税金対策の方法も解説

まとめ

いかがでしたか?この記事では、不動産の売却に要する費用について解説してきました。

不動産の売却では、仲介手数料や抵当権抹消費用、印紙税が発生します。インスペクションを実施する方は、インスペクション費用も見込んでおきましょう。

また土地や戸建を売却する場合において、土地の境界が明示できない場合には、測量費が必要です。

さらに、2018年度以降は、売却前にインスペクション(建物状況調査)を行う方も増えていますので、インスペクションについても知っておくことが望ましいでしょう。

さらに、譲渡所得が発生する場合には、所得税等の税金もかかります。マイホームの売却の場合には、特例を利用すると税金が発生しない確率がかなり高いため、しっかりと要件を確認することが大切です。

最後に、費用の中には固定資産税のように買主と精算するもの、または火災保険料のように戻ってくるものもあります。また、マイホームの売却で譲渡損失が発生した場合にも税金も戻ってきます。

不動産の売却に要する費用は、物件によっては発生するものや、発生しないものがあります。

1つ1つ要件を確認しながら、手続きを進めるようにしましょう。