路線価格とは?基本情報や調べ方、計算方法を全解説

路線価格とは 概要・調べ方・計算方法

路線価格(路線価)とは、道路に面する標準的な宅地の1平米当たりの価額のことで、相続税や贈与税を算出する際に使用します。路線価格は、毎年国税庁によって定められます。

本記事では、路線価格の概要や路線価格以外の土地の評価方法や調べ方のほか、路線価格の見方、路線価格を用いた土地評価額の算出方法などについて詳しく解説します。

この記事を読むと分かること
  • 路線価格の概要
  • 路線価格以外の土地評価方法
  • 路線価格を用いた土地評価額の計算方法
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1.路線価格とは?

航空写真

路線価格(路線価)は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平米当たりの価額(千円単位)であり、土地の価格を評価する公的な指標の一つです。

路線価格は、主に相続税や贈与税を算出する際に利用され、相続税評価額とも呼ばれます。課税の公平性を図るため、国税庁により公表されています。

路線価格は毎年1月1日を評価時点として、1年間の地価の変動などを考慮して決定され、毎年7月1日に公表されます(2023年分は7月3日)。

2.路線価格以外の土地の評価

土地の評価額は、評価の目的に応じて異なる評価方法で算出されます。路線価格以外の土地の評価方法には、以下の4つがあります。

路線価格以外の土地の評価

  • 公示価格(地価公示価格)
  • 都道府県地価調査価格(基準地価格)
  • 固定資産税路線価格
  • 実勢価格(時価)

2-1.公示価格(地価公示価格)

公示価格(地価公示価格)は、適正な地価を設定するために、国土交通省土地鑑定委員会が地価公示法に基づいて公示する価格のことです。

参考:“地価公示法”. e-Gov法令検索

国土交通省は、毎年1月1日時点の標準地の正常な価格を、毎年3月(おおむね下旬)に公示します。路線価格は公示価格の80%程度が目安となるため、公示価格がわかれば路線価格を推定できます。

公示価格は一般の土地取引の指標や、不動産鑑定の基準、公共事業用地の取得価格算定の基準などとして利用されており、国土交通省の「標準値・基準値検索システム」または「土地総合情報システム」で誰でも検索可能です。

2-2.都道府県地価調査価格(基準地価格)

都道府県地価調査価格(基準値価格)は、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年7月1日時点における標準価格を判定して、毎年9月(おおむね9月20日)に公表するものです。

参考:“国土利用計画法施行令”. e-Gov法令検索

基準地価格の評価方法は公示価格とほぼ同じですが、公示価格は市街地を中心とした価格であるのに対し、基準地価格は山林も含まれています。また、基準地価格は公示価格と公表が半年ずれているため、公示価格と基準地価格を比較すると、半年間の地価の動向を探れます。

都道府県地価調査価格は、公示価格同様に国土交通省の「標準値・基準値検索システム」または「土地総合情報システム」で調べられます。

都道府県地価調査価格(基準地価格)についてより詳しく知りたい方は、「【2024最新版】「基準地価」とは?近年の傾向と地価変動の背景を解説」も併せてご確認ください。

2-3.固定資産税路線価格

固定資産税路線価格は、固定資産税評価額を算出する際に用いる土地価格です。市町村(東京23区の場合は東京都)が算出し、3年に1度の基準年に、1月1日時点の価格を4月頃に公表します。

固定資産税路線価格の価格水準は、公示価格の70%程度で、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税などの算出に用いられます。

固定資産税路線価格は、資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」で誰でも検索可能です。

路線価格と固定資産税路線価格の違いやそれぞれの調べ方、計算方法については「相続税路線価と固定資産税路線価の違いとは?調べ方や計算方法を解説」を参考にしてください。

2-4.実勢価格(時価)

公示価格や基準地価格が土地取引の目安の価格であるのに対し、実勢価格は実際に土地を売買する際の取引価格を指します。実勢価格は国土交通省が3ヵ月(四半期)ごとに公表しています。

実勢価格は国土交通省の「土地総合情報システム」を利用する、不動産会社に査定を依頼する、公示価格から算出するなどの方法で、目安の価格を調べられます。

3.路線価格の調べ方

住宅イメージ

路線価格は、国税庁が提供するサイトで調べられるほか、全国の国税庁や税務署に設置されているパソコンでも閲覧可能です。

参考:“路線価図・評価倍率表”. 国税庁

また、資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」では、「固定資産税路線価格等」「地価公示価格」「相続税路線価等」「都道府県地価調査価格」の4つの公的土地評価情報を閲覧できます。

4.路線価格の見方

路線価図では、地図上に記載されている数字や記号から、路線価格などを把握できます。数字やアルファベット、数字の枠は以下のような内容を表します。

  • 数字:1平米当たりの路線価格を表す(千円単位)
  • アルファベット:借地権割合を表す
  • 枠:ビル街地区、高度商業地区など、地区の種類を表す

路線価図の記号と枠

引用:“路線価図の説明”. 国税庁

路線価図の例として、東京都千代田区の路線価図を見てみましょう。

路線価図例(東京都千代田区)

引用:“路線価図(東京都千代田区)”. 国税庁

地図上の赤丸で囲まれた部分には、「6,240B」と記載されているため、この路線の路線価格は6,240千円(624万円)であり、借地権割合はB(80%)です。また、数字の枠の形から、この路線は高度商業地区に属していることがわかります。

5.路線価格による宅地評価額の計算方法

家の模型と電卓

宅地の評価額は路線価格に地積(土地面積)を乗じることで計算できますが、計算の際は土地の立地や形状に応じて、以下のような調整率を乗じなければなりません。

調整率 概要
奥行価格補正率 土地の奥行距離に応じた調整率
側方路線影響加算率 土地の側方に路線がある場合の調整率
二方路線影響加算率 土地の二方面に路線がある場合の調整率
不整形地補正率 不整形地の場合の調整率
間口狭小補正率 間口距離が狭い場合の補正率
奥行長大補正率 奥行距離が長い場合の補正率
規模格差補正率 地積が大きい場合の補正率
がけ地補正率 がけ地にある場合の補正率
特別警戒区域補正率 特別警戒区域にある場合の補正率

参考:
“土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)”. 国税庁
“路線価図の説明”. 国税庁
“No.4604 路線価方式による宅地の評価”. 国税庁. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

本章では、「1つの路線に面している場合」「2つの路線に面している場合」「借地の場合」について、それぞれ例を示しながら宅地の評価額を計算します。

5-1.1つの道路に面している場合

1つの路線に面している場合の土地の評価額は、路線価格、奥行価格補正率、地積をもとに、以下の計算式で算出できます。

評価額=路線価格×奥行価格補正率×地積(※)

(※)地積=間口距離(道路と接する長さ)×奥行距離(土地の道路に接する部分から、最も遠い部分までの長さ)

例として、路線価格200の路線に面している、間口距離8m、奥行距離15mの普通商業・併用住宅にある土地の評価額を求めてみましょう。

奥行価格補正率表を見ると、普通商業・併用住宅における奥行距離15mの場合の補正率は1.0です。つまり、この土地の評価額は以下のように求められます。

評価額=路線価格×奥行価格補正率×地積
=200千円×1.0×8×15
=24,000千円

奥行価格補正率表
奥行距離 
(m)
地区区分
ビル街 高度
商業
繁華街 普通商業
併用住宅
普通
住宅
中小
工場
大工場
4未満 0.80 0.90 0.90 0.90 0.90 0.85 0.85
4以上6未満 0.92 0.92 0.92 0.92 0.90 0.90
6〃8〃 0.84 0.94 0.95 0.95 0.95 0.93 0.93
8〃10〃 0.88 0.96 0.97 0.97 0.97 0.95 0.95
10〃12〃 0.90 0.98 0.99 0.99 1.00 0.96 0.96
12〃14〃 0.91 0.99 1.00 1.00 0.97 0.97
14〃16〃 0.92 1.00 0.98 0.98
16〃20〃 0.93 0.99 0.99
20〃24〃 0.94 1.00 1.00
24〃28〃 0.95 0.97
28〃32〃 0.96 0.98 0.95
32〃36〃 0.97 0.96 0.97 0.93
36〃40〃 0.98 0.94 0.95 0.92
40〃44〃 0.99 0.92 0.93 0.91
44〃48〃 1.00 0.90 0.91 0.90
48〃52〃 0.99 0.88 0.89 0.89
52〃56〃 0.98 0.87 0.88 0.88
56〃60〃 0.97 0.86 0.87 0.87
60〃64〃 0.96 0.85 0.86 0.86 0.99
64〃68〃 0.95 0.84 0.85 0.85 0.98
68〃72 〃 0.94 0.83 0.84 0.84 0.97
72〃76〃 0.93 0.82 0.83 0.83 0.96
76〃80〃 0.92 0.81 0.82
80〃84〃 0.90 0.80 0.81 0.82 0.93
84〃88〃 0.88 0.80
88〃92〃 0.86 0.81 0.90
92〃96〃 0.99 0.84
96〃100〃 0.97 0.82
100〃 0.95 0.80 0.80

参考:“土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)”. 国税庁. (参照2024-03-11)をもとにHOME4Uが独自に作成

5-2.2つの道路に面している場合

2つの路線に面している場合は、路線と宅地との関係性によって計算式が異なります。

5-2-1.正面と側方に路線がある場合

まず、正面と側方に路線がある場合を見ていきましょう。

はじめに2つの路線のうち、正面となる路線を決めます。路線価格に奥行価格補正率をかけて計算した価額の高いほうが正面の路線となります。

例えば、路線価格150の路線Aと路線価格120の路線Bがあり、路線Aの奥行価格補正率が1.0、路線Bの奥行価格補正率が1.0とします。この場合、路線Aと路線Bそれぞれの路線価格と奥行価格補正率の積は以下のとおりです。

  • 路線A:路線価格150千円×奥行価格補正率(1.00)=150千円
  • 路線B:路線価格120千円×奥行価格補正率(1.00)=120千円

つまり、路線Aが正面路線、路線Bが側方路線となります。

正面路線と側方路線が決定したら、以下の計算式で土地評価額を算出します。

評価額={(正面路線価格×奥行価格補正率)+(側方路線価格×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)}×地積

側方路線影響加算表

地区区分 加算率
角地の場合 準角地の場合
ビル街 0.07 0.03
高度商業・繁華街 0.10 0.05
普通商業・併用住宅 0.08 0.04
普通住宅・中小工場 0.03 0.02
大工場 0.02 0.01

参考:“土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)”. 国税庁. (参照2024-03-11)をもとにHOME4Uが独自に作成

なお、角地・準角地とは、土地と路線が以下の図のような位置関係になっている土地のことを指します。

角地・準角地

上記を踏まえて、正面と側方に路線がある場合の土地評価額を実際に計算してみましょう。

正面路線価格300、正面路線の奥行価格補正率1.0、側方路線価格200、側方路線の奥行価格補正率1.0、地積400平米である角地に位置する普通商業・併用住宅の土地評価額は、以下のように算出できます。

評価額={(正面路線価格×奥行価格補正率)+(側方路線価格×奥行価格補正率×側方路線影響加算率)}×地積
={(300×1.0)+(200×1.0×0.08)}×400
=(300+16)×400
=126,400千円

5-2-2.正面と裏面に路線がある場合

続いて、正面と裏面に路線がある場合の評価額の算出方法を見ていきましょう。

正面と側面に路線がある場合と同様に、まずは正面となる路線を決めます。路線価格と奥行価格補正率の積が大きいほうが、正面の路線になります。

正面の路線が決まったら、以下の計算式で宅地評価額を算出します。

評価額={(正面路線価格×奥行価格補正率)+(裏面路線価格×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)}×地積

二方路線影響加算表

地区区分 加算率
ビル街 0.03
高度商業・繁華街 0.07
普通商業・併用住宅 0.05
普通住宅・中小工場 0.02
大工場 0.02

参考:“土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)”. 国税庁. (参照2024-03-11)をもとにHOME4Uが独自に作成

上記を踏まえて、正面と裏面に路線がある場合の評価額を実際に計算します。

正面路線価格300、正面路線の奥行価格補正率1.0、裏面路線価格200、裏面路線の奥行価格補正率1.0、地積400平米の普通商業・併用住宅の宅地評価額は、以下のように算出できます。

評価額={(正面路線価格×奥行価格補正率)+(裏面路線価格×奥行価格補正率×二方路線影響加算率)}×地積
={(300×1.0)+(200×1.0×0.05)}×400
=(300+10)×400
=124,000千円

5-3.借地の場合

土地に借地権が設定されている場合、借地権の評価額は以下の計算式で算出されます。

評価額=土地の評価額×借地権割合

借地権割合

記号 借地権割合
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

参考:“路線価図の説明”. 国税庁

例えば、路線価格200、奥行価格補正率1.0、地積120平米、借地権割合B(80%)の普通商業・併用住宅に立地する土地の、借地権の評価額は以下のように計算できます。

評価額=土地の評価額×借地権割合
=200×1.0×120×80%
=19,200千円

6.路線価格のない地域での評価額計算方法

路線価格は、すべての路線に定められているわけではありません。路線価格が定められていない地域では、倍率方式により土地の評価額を決定します。

倍率方式による土地の価額は、その土地の固定資産税評価額にある一定の倍率を乗じることで算出します。評価倍率表は国税庁「路線価図・評価倍率表」で閲覧でき、以下のように表示されます。

評価倍率表掲載例

出典:“評価倍率表(一般の土地等用)の説明”. 国税庁

参考:“No.4602 土地家屋の評価”. 国税庁

まとめ

路線価格は相続税や贈与税の申告や課税にかかる土地の評価額を算出する際に用いられる値で、国税庁が毎年定めています。路線価格は国税庁のサイトなどで調べられるため、気になる方はぜひ検索してみてください。

土地の評価方法には、路線価格のほか、公示価格や都道府県地価調査価格、固定資産税路線価格などがありますが、どれも単独で実際の土地取引の目安として用いるには不十分です。

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