更新日:2023.10.04 お悩み相談室, 税金・お金編 相続税路線価と固定資産税路線価の違いとは?調べ方や計算方法を解説 土地の価格の一つに、「路線価」があります。 単に路線価というと「相続税路線価」のことを指すことが多いですが、路線価には「固定資産税路線価」も存在します。 「相続税路線価」と「固定資産税路線価」にはどのような違いがあり、調べ方にはどのようなものがあるのでしょうか。 この記事では「相続税路線価と固定資産税路線価」について解説します。 ぜひ最後までご覧ください。 土地売却の基礎知識から詳しく知りたい方は、『土地売却の流れを7ステップで解説|費用や税金、高く売るコツ』も併せてご覧ください。 「土地を売りたい」と悩んでいる方へ 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格”を見つけましょう 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます 完全無料一括査定依頼をスタート この記事の執筆者 竹内 英二 不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。 (株)グロープロフィット Contents1.「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の違い1-1.相続税路線価とは1-2.固定資産税路線価とは1-3.相続税路線価と固定資産税路線価の関係一覧表2.公示価格(地価公示)や実勢価格との乖離2-1.公示価格または都道府県地価調査とは2-2.実勢価格とは2-3.公的評価額と実勢価格との乖離状況3.「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の割合から互いの価格を求める計算方法4.「相続税路線価」の調べ方5.「固定資産税路線価」の調べ方まとめ 1.「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の違い まずは「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の違いについて、3つの項目を解説します。 相続税路線価とは 固定資産税路線価とは 相続税路線価と固定資産税路線の関係一覧表 それでは、ひとつずつ見ていきましょう。 1-1.相続税路線価とは 相続税路線価とは、土地の相続税評価額を求めるために用いる土地単価です。 相続税評価額は、相続税と贈与税の算出根拠となります。 相続税路線価は、対象地の前の道路(路線)に割り振られている千円単位の平米単価のことです。 道路に「500D」と記載されていたら、相続税路線価は「500,000円/平米」ということです。 相続税路線価には土地単価とともにA~Gまでの記号も付いています。 A~Gは借地権割合と呼ばれ、借地権や底地(借地権の付着した土地のこと)等の相続税評価額を用いる場合に使用します。 土地の相続税評価額を求めるには、相続税路線価に土地面積を乗じて求めるのが基本です。 土地の相続税評価額 = 相続税路線価 × 土地面積 ただし、実際の相続税評価額は単純に相続税路線価に土地面積を乗じたものではなく、「奥行価格補正」や「不整形地の補正」等の微調整を行って求めます。 また、アパート等の敷地であれば、「貸家建付地」として減額修正も行います。 正確な相続税評価額を求めるには専門的な知識を要するため、最終的には税理士に試算してもらうことが必要です。 1-2.固定資産税路線価とは 固定資産税路線価とは、土地の固定資産税評価額を求めるために用いる土地単価です。 固定資産税評価額は、固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の算出根拠となります。 固定資産税評価額も、対象地の前の道路(路線)に割り振られている平米単価のことです。 相続税路線価は千円単位ですが、固定資産税路線価は1円単位となります。 前面道路に「500000」と記載されていたら、固定資産税路線価は「500,000円/平米」ということです。 固定資産税路線価は土地の固定資産税評価額を求めるために利用しますが、土地の所有者は固定資産税の納税通知書を見れば固定資産税評価額が分かるため、利用する機会が少ないといえます。 一方で、所有者以外の第三者は土地の固定資産税評価額が分からないため、固定資産税路線価を利用する機会は多いです。 例えば、土地の購入検討者が固定資産税や登録免許税がいくらになるかを知りたいといったときは固定資産税路線価から推測することになります。 土地の固定資産税評価額の基本的な求め方は以下の通りです。 土地の固定資産税評価額 = 固定資産税路線価 × 土地面積 ただし、実際の固定資産税評価額は上記の式から奥行価格補正等の微修正が行われて求められています。 そのため、単純に固定資産税路線価に土地面積を乗じたものと実際の土地の固定資産税評価額は異なっていることが多いです。 1-3.相続税路線価と固定資産税路線価の関係一覧表 相続税路線価と固定資産税路線価の違いをまとめると、下表の通りです。 比較項目 相続税路線価 固定資産税路線価 求められる評価額 相続税評価額 固定資産税評価額 単位 千円単位 1円単位 根拠となる税金 相続税、贈与税 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産取得税 評価主体 国税庁 市町村(東京23区は東京都) 評価の頻度 毎年 3年に1回 価格時点 1月1日 基準年(3年ごと)の1月1日 公表時期 毎年7月ごろ 基準年の4月ごろ 価格水準 公示価格の80%程度 公示価格の70%程度 掲載サイト 財産評価基準書 全国地価マップ 評価主体は、相続税路線価が国税庁(国)であり、固定資産税路線価が市町村です。 評価の頻度は、相続税路線価が毎年評価し直されるのに対し、固定資産税路線価は3年に一度しか評価されないことになっています。 また、土地の価格は市況によって変化するため、それぞれの価格はいつの時点の価格を表すかという問題もあります。 いつの時点の価格かを表す言葉を「価格時点」といいます。 価格時点は、相続税路線価が毎年の1月1日であり、固定資産税路線価が3年に一度の基準年の1月1日です。 固定資産税路線価が3年に一度しか評価されないため、タイミングによっては相続税路線価と価格時点がずれることになります。 価格が公表されるタイミングもそれぞれ異なります。 公表時期は、相続税路線価が毎年7月頃であるのに対し、固定資産税路線価が3年に一度の基準年の4月頃です。 相続税路線価は公表されると比較的ニュースになることも多いですが、固定資産税路線価はほとんどニュースにはなりません。 さらに、相続税路線価と固定資産税路線価は公示価格とも関連しています。 公示価格とは、土地の取引指標や公共事業用地の取得価格の算定等を目的に国が毎年評価を行っている土地価格のことです。 相続税路線価は公示価格の80%程度、固定資産税路線価は公示価格の70%程度の水準で価格が決まっています。 相続税路線価と固定資産税路線価は、それぞれ公示価格をベースに評価額が決まっているという点は共通点です。 土地の価格や相場の調べ方│初めてでもわかる画像解説付き 土地の価格相場を把握することは、有利に売却を進めるうえで重要です。 こ 2.公示価格(地価公示)や実勢価格との乖離 すでにご自分で調べたことがある方の中には、「公示価格(地価公示)や実勢価格と乖離があるな」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。 本章では、「公示価格(地価公示)や実勢価格との乖離」について、以下の3点を解説します。 公示価格または都道府県地価調査とは 実勢価格とは 公的評価額と実勢価格との乖離状況 それでは、ひとつずつ見ていきましょう。 2-1.公示価格または都道府県地価調査とは 相続税路線価と固定資産税路線価は別々に決まっているわけではなく、公示価格を踏まえて決まっています。 そのため、公示価格は「相続税路線価と固定資産税路線価の基準となる価格」であり、極めて重要な価格です。 公示価格は、地価公示とも呼ばれます。 公示価格(地価公示)は、土地の取引の指標や、公共事業用地の取得価格の算定の指標、不動産鑑定の規準(のりじゅん)となることを目的に毎年評価が行われています。 規準とはバランスを取るという意味です。 公示価格は、土地の取引の指標となることを目指しているため、建前上は時価となっています。 公示価格の評価主体は国(国土交通省)であり、価格時点は毎年1月1日です。 公示価格は路線価のように道路に全て単価が割り振られているわけではなく、標準地と呼ばれる地価公示ポイントの単価が公表されます。 標準地とは、その地域の中で標準的な利用がなされているものとして選ばれた土地のことです。 標準地は、全国の都市計画区域の中に約26,000ポイント存在します。 都市計画区域とは、一体の都市として総合的に整備し、開発し、および保全する必要があるとして都市計画法により定められた区域のことです。 一方で、公示価格と同様類似のものに都道府県地価調査があります。 都道府県地価調査は土地取引規制の価格審査や公共事業用地の取得価格の算定の指標となることを目的に、毎年評価が行われています。 都道府県地価調査で表される価格も建前上は時価であり、価格水準は公示価格と同じです。 ただし、都道府県地価調査の評価主体は都道府県であり、価格時点は毎年7月1日である点が異なります。 都道府県地価調査の評価ポイントは「基準地」と呼ばれます。 基準地も、その地域の中で標準的な利用がなされていると判断された土地です。 基準地は、全国の都市計画区域および一部都市計画区域外にあり、約21,000ポイント存在します。 基準地は、基本的には公示価格の標準地が手薄になっているところにポイントが設定されており、地価公示制度を補完する役割を担っています。 また、都道府県地価調査には「林地」のポイントもあり、林地の価格を調べたい場合には都道府県地価調査を利用すると便利です。 2-2.実勢価格とは 実勢価格とは、時価のことです。 土地を売ったときに実際に売れた価格のことを指します。 土地の実勢価格は景気の動向によって変化します。 好景気のときは実勢価格が上昇し、不景気のときは実勢価格が下落していくことが通常です。 公示価格や都道府県地価調査は、実勢価格の取引事例を元に評価を行っていきます。 そのため、公示価格等の値動きは実勢価格よりもやや遅れた形となることが通常です。 実際の市場では既に土地価格が下落し始めているのに、公示価格は実際のマーケットよりも半年程度遅れて下がり始めます。 相続税路線価や固定資産税路線価は、実勢価格よりも遅れて動く公示価格をベースにしているため、もっと値動きが遅れます。 2-3.公的評価額と実勢価格との乖離状況 公的評価額と実勢価格との乖離状況をイメージ化すると下図の通りです。 相続税路線価は公示価格の80%程度、固定資産税路線価は公示価格の70%程度というバランスは全国どこでも同じです。 一方で、実勢価格と公示価格は都市部と地方で乖離の状況が異なります。 都市部は実勢価格の値動きが激しく、公示価格との乖離が大きいです。 都市部では実勢価格が公示価格の1.5~2倍程度となることもあります。 それに対して、地方は実勢価格の値動きが緩く、公示価格との乖離は少ないです。 地方では実勢価格が公示価格の0.9~1.0倍程度となっています。 公示価格は、表向きは時価ということになっていますが、若干の調整が入って評価額が決定されているのが実際のところです。 公示価格は様々な税金の基礎となることから、急激に上げると納税者からの不満が生じます。 また、急に下げると税収も不安定になってしまいます。 税金に絡む公示価格は、むやみに上下させにくいことから、どうしても実勢価格とは乖離が生じやすいのです。 3.「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の割合から互いの価格を求める計算方法 相続税路線価と固定資産税路線価の割合から、互いの価格を求める計算方法について解説します。 相続税路線価は公示価格の80%程度、固定資産税路線価は公示価格の70%程度という関係があるため、一方が分かれば他方の路線価を求めることが可能です。 相続税路線価を0.8で割り戻せば公示価格水準になりますし、固定資産税路線価を0.7で割り戻しても公示価格水準になります。 公示価格 = 相続税路線価 ÷ 0.8 = 固定資産税路線価 ÷ 0.7 公示価格水準が分かれば、それを0.8倍すれば相続税路線価、0.7倍すれば固定資産税路線価になるということです。 それぞれ他方の路線価を求める方法は以下のようになります。 【計算式】 固定資産税路線価 = 相続税路線価 ÷ 0.8 × 0.7 相続税路線価 = 固定資産税路線価 ÷ 0.7 × 0.8 ただし、相続税路線価は1年に1度、固定資産税路線価は3年に1度の評価となるため、上記の計算式で求めても値が少しずれることが多いです。 同水準の価格を求めているだけであり、あくまでも目安と理解しておくことがポイントです。 4.「相続税路線価」の調べ方 相続税路線価は、国税庁のホームページである「財産評価基準書」で調べることができます。 また、次章で紹介する「全国地価マップ」でも調べることが可能です。 財産評価基準書では、該当する地域を絞り込んでいくと、下図のような路線価図が出てきます。 対象地の前の数値が相続税路線価(千円/平米)です。 角地のような2つの道路に接している土地は、基本的に単価が高い方の道路の値を相続税路線価とすることが一般的となっています。 また、相続税路線価では路線価が振られていない地域もあります。 路線価がない地域は「倍率地域」と呼ばれます。 倍率地域は、土地の固定資産税評価額に倍率表の倍率を乗じたものが相続税評価額です。 【倍率地域の相続税路線価額】 倍率地域の相続税路線価額 = 固定資産税評価額 × 倍率 倍率は財産評価基準書で調べることができ、該当する場所の倍率を乗じます。 5.「固定資産税路線価」の調べ方 固定資産税路線価は、一般財団法人資産評価システム研究センターの全国地価マップで調べることができます。 全国地価マップは固定資産税路線価だけでなく、相続税路線価や地価公示・都道府県地価調査といった全ての公的評価額を調べることが可能です。 操作性も国税庁の財産評価基準書よりも高いため、相続税路線価も全国地価マップで調べることをおススメします。 全国地価マップでは、「固定資産税路線価等」で地域を絞り込んでいくと、以下のような固定資産税路線価図が表示されます。 対象地の前の数値が固定資産税路線価(円/平米)です。 また、固定資産税路線価も路線価が振られていない地域が存在します。 路線価が振られていない地域は類似地域のチェックボックスをチェックし、対象地を含む類似地域の中にある標準宅地の単価を用いることが一般的です。 類似地域は、ピンクで表示される区域のうち、同じ標準宅地の単価が採用されている地域が薄い線で区切られて表示されます。 類似地域の中の標準宅地の単価が、概ねその地域の固定資産税路線価です。 あくまでも概算になりますが、標準宅地の単価に対象地の面積を乗じると、対象地の固定資産税評価額に近い価格を算出できます。 まとめ いかがでしたか。 「相続税路線価」と「固定資産税路線価」について解説してきました。 相続税路線価とは、土地の相続税評価額を求めるために用いる土地単価です。 それに対して、固定資産税路線価とは、土地の固定資産税評価額を求めるために用いる土地単価となります。 公示価格との関係は、相続税路線価が公示価格の80%程度、固定資産税路線価が公示価格の70%程度です。 相続税路線価は国税庁の財産評価基準書、固定資産税路線価は全国地価マップで調べることが可能です。 この記事で得た情報を活かして、正しい情報にアクセスしていただければと思います。 Facebook twitter feedly