法人が土地売却した時の税金は?使える特例や計算方法を伝授!

会社経営においては、利益が出過ぎた年に簿価の高い土地を売却して損失を出すと、法人税を節税することができます。

また、事業の中で資金繰りが厳しいときは、遊休地を売却することでキャッシュを作り出すことも可能ですが、土地を売却したときに気になるのが税金ですよね?

売却後のキャッシュがいくらくらい確保できるかを把握するためにも、法人税がどれくらいなのか知りたいと考えている財務担当者や経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、「これから法人として土地を売却する予定がある方」に向けて、

  • 法人税の仕組みや法人税に係る税金
  • 土地売却時の法人税シミュレーション
  • 法人が利用できる土地売却の特例

などについて解説していきます。

ぜひ最後までおつきあいただき、上手に売却活動を進めるための一助としてください。

個人の土地売却にかかる税金については『土地売却時の税金はいつ払う?』をご覧ください。

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土地売却を基礎から詳しく知りたい方は『土地売却の流れを7ステップで解説』もご覧ください。

また、不動産売却の基礎や全体像を把握したい方は『不動産売却の入門書』も併せてご覧ください。

1. 法人税の仕組み

まずは「法人税の仕組み」について、以下の3つの基本事項を整理しておきましょう。

  1. 法人税は当期純利益に課税される
  2. 固定資産の売却は特別損益になる
  3. 繰越欠損金の控除期間は10年間

それではひとつずつ見ていきます。

1-1. 法人税は税引き前当期純利益に課税される

会社が土地を売却しても、法人税は最終的に算出される税引き前当期純利益に対して課税されます。

個人が行う土地の売却では、分離課税方式と呼ばれる計算方法を取っており、不動産の売却益に対して給与所得等とは独立して税金が計算されます。

一方で、法人の場合は不動産の売却益を個人のように分離して課税するわけではなく、事業で生じる営業利益等と合算して計算される税引き前当期純利益に対して課税が行われます。

法人では貸借対照表に土地の簿価が記載されていますが、その簿価よりも高く土地が売れれば売却益が発生し、簿価よりも低く土地が売れると売却損が生じます。

例えば、バブル時代に購入した簿価が高い土地を売ると、売却損が発生することが多いです。
このような土地は、本業の営業利益が出過ぎた年に合わせて売却すると、土地の売却損によって当期純利益が圧縮され、法人税を節税することができます。

また、簿価が低い土地を保有しているケースもあります。
このような土地は、本業の営業利益が赤字になってしまった年に合わせて売却すると、最終的に利益を生み出すことができ、売却で生じたキャッシュを借入金の返済等に充てることができます。

簿価が高い土地や低い土地は、本業の経営状態に合わせて上手く売却すると、会社経営の安定化に役立てることができるのです。

1-2. 固定資産の売却は特別損益になる

土地は、通常の会社であれば貸借対照表上では固定資産に分類されます。
不動産ディベロッパーの場合、商品として土地を保有していますので、土地が棚卸資産となっていることもあります。

ここでは、不動産ディベロッパーのケースは除き、多くの会社の貸借対照表で扱われている固定資産を前提に解説します。
損益計算書の基本的な構造を示すと、以下のようになります。

【損益計算書の構造】
売上高
売上原価
売上総利益(粗利)
販売費および一般管理費
営業利益
営業外収益
営業外費用
経常利益
特別利益
特別損失
税引前当期純利益
法人税等
当期純利益

企業の本業で生じる利益は、営業利益に該当します。
営業利益に、受取利息等の営業外収益を加え、支払利息等の営業外費用を差し引くことで経常利益が計算されます。
経常利益までは毎年の通常の企業活動の中で生じる利益です。

土地の売却のような企業にとってイレギュラーな活動による収益は、特別利益または特別損失に該当します。

土地の売却価格が貸借対照表上の簿価よりも高い場合は特別利益、低い場合は特別損失として計上されます。

本業の営業利益が大幅に黒字でも、特別損失を出せば税引き前当期純利益が小さくなるため節税することが可能です。
税金は、税引き前当期純利益に課税され、最終的に税金を控除した当期純利益が生じます。

1-3. 繰越欠損金の控除期間は10年間

法人は、土地売却で大きく損失を出しても、その損失を繰越欠損金として10年間も利用することができます。

例えば、毎年経常利益を1,000万円出すような会社が、土地を売却することで、▲1億円の赤字を計上したとします。

その赤字は、繰越欠損金といって翌期以降10年間繰り越すことができます。
2年目は1,000万円の利益を出しても▲1億円の繰越欠損金と合算してその年は▲9,000万円の赤字とみなされます。

赤字の扱いになるため、2年目の法人税は生じないということです。(ただし、住民税の均等割は生じます。)

控除しきれなかった欠損金の9,000万円は翌期にも繰り越すことができ、また来季に1,000万円の経常利益が出ても法人税は生じないことになります。

このような繰越欠損金は、個人の場合は繰り越せる期間が3年間しかありません。
法人は10年間も欠損金を繰越控除できるため、大きな損失を出すことは個人よりもメリットがあるのです。

2. 法人に係る税金

本章では「法人に係る税金」について、以下の4点を解説します。
(2021年11月1日時点の最新税率情報に基づいています。)

  1. 法人税
  2. 住民税
  3. 事業税
  4. 地方法人税

それではひとつずつ見ていきましょう。

2-1. 法人税

普通法人の法人税は、各事業年度の所得金額に以下の税率を計算して求めます。

資本金1億円以下の法人等 左記以外の普通法人
年800万円以下の部分 年800万円超の部分
右記以外の法人 適用除外事業者
15% 19% 23.2% 23.2%

適用除外事業者とは、2019年4月1日以後に開始する事業年度において、その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人等のことです。

2-2. 住民税

法人にも道府県民税と市町村民税の住民税があります。
東京都の特別区内に事業所等を有する法人は、法人都民税です。

法人の住民税には、均等割と法人税割の2種類があります。
均等割は、法人の所得金額には関係なく、資本金等の額や従業員数によって決められており、最低額は年7万円です。
繰越欠損金によって法人税がかからないときも住民税の均等割の7万円は生じます。

法人税割は、法人税額に以下の税率を乗じて求めます。(主に資本金等の額が1億円以下の法人等)

区分 標準税率 制限税率
道府県民税 1.0% 2.0%
市町村民税 6.0% 8.4%
合計 7.0% 10.4%

税率は法人税額に乗じるものであり、所得金額に乗じるものではない点がポイントです。

2-3. 事業税

法人の事業税は各事業年度の所得金額に以下の税率を乗じて計算します。

所得の区分 標準税率 制限税率
年400万円以下 5.0% 標準税率×1.2
年400万円超800万円以下 7.3%
年800万円超 9.6%

2-4. 地方法人税

地方法人税は、法人税を納める義務がある法人に対して課税され、基準法人税額に以下の税率を乗じて計算します。

課税標準法人税額に対する税率
10.3%

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3. 土地売却時の法人税シミュレーション

この章では土地売却時の法人税のシミュレーションについて解説します。
皆さんも、ぜひ試してみてください。

(前提条件)

  • 資本金:1,000万円(資本金1億円以下の法人に該当)
  • 本業が生み出した利益:1,000万円
  • 土地売却により生み出した譲渡益:1,000万円
  • 課税所得:2,000万円

(計算シミュレーション)

1.法人税を計算します。

  • 年800万円以下の所得
    800万円 × 15% = 120万円
  • 年800万円超の所得
    1,200万円 × 23.2% = 278.4万円
  • 法人税 = イ + ロ
        = 120万円 + 278.4万円
        = 398.4万円
  • 2.地方法人税を計算します。

    地方法人税 = 398.4万円 × 10.3%
    ≒ 41.0万円

    3.住民税を計算します。

    住民税 = 398.4万円 × 7.0%
        ≒ 27.9万円

    4.事業税を計算します。

    • 年400万円以下の所得
      400万円 × 5.0% = 20万円
    • 年400万円超800万円以下の所得
      400万円 × 7.3% = 29.2万円
    • 年800万円超の所得
      1,200万円 × 9.36% = 115.2万円
    • 事業税 = イ + ロ + ハ
          = 20万円 + 29.2万円 + 115.2万円
          = 164.4万円

    5.合計税額を求めます。

    合計税額 = 法人税 + 地方法人税 + 住民税 + 事業税
         = 398.4万円 + 41.0万円 + 27.9万円 + 164.4万円
         = 631.7万円

4. 土地売却法人税の別表3とは

別表3とは、法人の土地譲渡益重課制度が適用されるときに確定申告で必要となる明細書のことです。
法人の土地譲渡益重課制度は、2021年11月1日現在においては適用が停止されています。

【国税庁HP】 別表3

法人が土地を売却した場合には、原則として土地の譲渡益に対して通常の法人税の他に、特別税率による追加課税が行われます。
この制度を「法人の土地譲渡益重課制度」と呼びます。

法人の土地譲渡益重課制度は、1998年1月1日から2023年3月31日までの譲渡については適用停止とされています。
よって、2021年12月1日現在において土地譲渡益に対する税額は生じません。

尚、現時点では適用が停止されていますが、制度としては残っています。
法人の土地譲渡益重課制度の原則的なルールは以下の通りです。

項目 特別税額 適用停止措置
所有期間5年超の長期譲渡所得 土地譲渡益 × 5% 1998年1月1日から2023年3月31日までの譲渡については適用停止
所有期間5年以下の短期譲渡所得 土地譲渡益 × 10%

5. 法人が利用できる土地売却の特例

土地売却において、法人が利用できる特例が存在します。
本章では以下の4つの制度を解説します。

  1. 平成21年及び平成22年に土地等を取得した場合の特例制度
  2. 収用等の場合の特別控除
  3. 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除
  4. 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除

それではひとつずつ見ていきましょう。

5-1. 平成21年及び平成22年に土地等を取得した場合の特例制度

法人では、平成21年及び平成22年に土地等を取得した場合の特例制度として、以下の2つがあります。

イ. 平成21年及び平成22年中に取得した土地等の長期譲渡所得の1,000万円特別控除の特例

法人が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得した国内にある土地(棚卸資産を除く)で、その年の1月1日時点において所有期間が5年を超えるものを売却したときに、譲渡益の額と1,000万円とのいずれか少ない金額を損金の額に算入できます。

譲渡益は以下の式で求めます。(以降の特例も同じ)

譲渡益 = 譲渡対価等の額 - 譲渡資産の帳簿価額 - 譲渡経費の額

ロ. 平成21年及び平成22年に土地等の先行取得をした場合の課税の特例

法人が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に国内にある土地(棚卸資産を除く)を取得し、その取得の日を含む事業年度の確定申告書の提出期限までにこの特例の適用を受ける旨の届出書を提出していることが要件となります。

その取得の日を含む事業年度終了の日後10年以内に、その法人の所有する土地等を売却したときは、その先行して取得した土地(先行取得土地等)について、他の土地等の譲渡益の80%相当額を限度として、圧縮記帳をすることが可能です。

ただし、先行取得土地等が平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に取得したものであれば60%相当額が限度となります。

5-2. 収用等の場合の特別控除

法人の有する資産(棚卸資産を除く)について、収容等によって保証金等を取得した場合で、その譲渡が公共事業施行者から最初に買取等の申出があった日から6ヶ月以内に行われている等の一定の要件を満たす場合には、5,000万円とその資産の譲渡益の額とのいずれか少ない金額を損金に算入することができます。

5-3. 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除

法人の有する資産(棚卸資産を除く)について、国や地方公共団体、独立行政法人都市再生機構等が土地区画整理事業として行う公共施設の整備改善や宅地造成事業のために買い取られた場合、一定の要件を満たすときは、2,000万円とその資産の譲渡益の額とのいずれか少ない金額を損金に算入することができます。

5-4. 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除

法人の有する資産(棚卸資産を除く)について、特定住宅地造成事業等のために買い取られた場合、一定の要件を満たすときは、1,500万円とその資産の譲渡益の額とのいずれか少ない金額を損金に算入することができます。

6. 法人は無償譲渡または低廉な価額で譲渡すると税金が生じる

法人が無償で土地を譲渡すると、時価で譲渡したものとして法人税の課税対象となります。
また、著しく低い価額(低廉な価額)で売却したときも、時価で譲渡してものとして法人税の課税対象となります。
ここで、著しくい低い価額とは、時価の概ね50%に満たない額のことです。

個人が売主の場合、個人から個人に無償譲渡すると贈与になるため売主には税金は生じませんが、法人が売主の場合は無償譲渡でも税金が生じる点が個人と異なります。(ただし、個人が法人に無償譲渡した場合には個人の売主にもみなし譲渡所得が生じます。)

例えば、法人が時価5,000万円の土地を無償譲渡(0円)した場合、譲渡対価等の額は5,000万円として計算されます。

また、時価が5,000万円の土地を2,000万円で譲渡して場合、50%に満たない額であるため低廉な価額での売却に相当します。

法人が2,000万円で譲渡した場合には、時価との差額である3,000万円が譲渡対価等の額に加算されて計算されることになります。

中小企業が行う土地の売買では、会社と代表者との間で土地の売買を行うことがあります。
相手が社長であっても課税を避けるには時価で取引をすることが必要です。

会社と代表者との間で土地を売買するときは、事前に不動産鑑定士による鑑定評価書を取得し、その金額に基づいて取引を行えば税務署は時価で売買したものとみなしてくれます。

よって、会社から代表者に土地を売却するときは、あらかじめ不動産鑑定評価書を取得することがポイントです。

まとめ

いかがでしたか。
土地の法人税について解説してきました。

法人税は土地の売却益だけでなく、会社の事業の利益を含めた全体の当期純利益に対して課税が行われます。

法人に係る税金としては、「法人税」や「住民税」、「事業税」等がありました。
2023年3月31日までは法人の土地譲渡益重課制度の適用は停止されています。

法人が利用できる土地売却の特例としては、「平成21年及び平成22年に土地等を取得した場合の特例制度」や「収用等の場合の特別控除」があります。

また、少しでも高く売るには「複数の不動産会社の査定を受ける」ことが不可欠です。
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