譲渡所得税の計算方法は?ケースごとのシミュレーションで具体的に解説!

譲渡所得税 計算 シュミレーション

不動産を売却したときは、「譲渡所得」が発生すると税金が生じます。
譲渡所得を計算するには、取得費を求めなければなりません。

取得費は減価償却の計算を伴うことから、結構、複雑な計算が必要です。
取得費や減価償却費の計算方法は、ケースによって様々なパターンが存在します。

そこでこの記事では、ケースごとの譲渡所得税の求め方やシミュレーションを解説していきます。

ぜひ最後までおつきあいいただき、正しく計算するためにお役立てください。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.譲渡所得税とは

譲渡所得税とは、不動産を売却したときに発生する所得税および住民税、復興特別所得税の税金の総称です。

不動産を売却したときは、譲渡所得と呼ばれる売却益が生じると税金が発生します。
譲渡所得とは、以下の計算式で表されるものです。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1譲渡価額とは売却価額です。
※2取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用のことを指します。

譲渡所得は、譲渡価額と取得費・譲渡費用のバランスによってプラスにもマイナスにもなります。

税金は、譲渡所得がプラス(譲渡益)の場合は発生し、譲渡所得がマイナス(譲渡損失)のときは発生しないのがルールです。

譲渡所得は、譲渡価額と取得費・譲渡費用のバランスによってプラスにもマイナスにもなります

税金は譲渡所得に税率を乗じて計算します。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は所有期間によって異なります。
売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」の税率を用います。

譲渡所得税とは

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は下表の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

2.取得費および減価償却の7つのケースのシミュレーション

取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額でした。
取得費を式で表すと以下のようになります。

取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)

取得費を計算するには、まず購入額を土地と建物に分け、建物に関しては減価償却計算を行うことがポイントです

この章では、取得費および減価償却のシミュレーションについて、以下の7つのケースを解説します。

  1. 新築のマイホームの取得費の求め方
  2. 中古のマイホームの取得費の求め方
  3. 古い空き家の取得費の求め方
  4. 新築の投資用マンション等の取得費の求め方
  5. 中古の投資用マンション等の取得費の求め方
  6. 取得費が不明なときの取得費の求め方
  7. 土地だけ取得費が不明なときの取得費の求め方

それではひとつずつ見ていきましょう。

2-1.新築のマイホームの取得費の求め方

マイホーム等の非事業用不動産の減価償却の計算式は以下の通りです。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

経過年数は築年数ではなく、購入の引渡から売却の引渡までの所有期間を表します。
6ヶ月以上の端数が出た場合は1年と計算し、6ヶ月未満の端数が出た場合は切捨てで計算します。

(償却期間の計算例)
1996年3月~2019年6月・・・23年3ヶ月は「23年」として計算
2001年2月~2019年10月・・・18年8ヶ月は「19年」として計算

償却率は建物の構造によって決まっており、以下の数値を用います。

建物構造 非事業用
耐用年数 償却率
木造 33年 0.031
木造モルタル 30年 0.034
鉄骨造
3mm以下 28年 0.036
3mm超4mm以下 40年 0.025
4mm超 51年 0.020
鉄筋コンクリート造 70年 0.015
鉄骨鉄筋コンクリート造 70年 0.015

ここで、新築のマイホームの取得費および譲渡所得のシミュレーションを行います。

(条件)

住宅の種類:マンション(鉄筋コンクリート造)
譲渡価額:4,000万円
譲渡費用:127万円(仲介手数料126万円、印紙税1万円)

購入価額:3,000万円
内訳 土地購入価額:1,000万円
   建物購入価額:2,000万円
経過年数:20年

(シミュレーション)

最初に減価償却費を求めます。
減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 2,000万円 × 0.9 × 0.015 × 20年
      = 540万円

よって取得費は以下のように求められます。
取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)
    = 1,000万円 + (2,000万円 - 540万円)
    = 1,000万円 + 1,460万円
    = 2,460万円

譲渡所得は以下の通りです。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 2,460万円 - 127万円
     = 1,413万円

2-2.中古のマイホームの取得費の求め方

マイホーム等の非事業用不動産は、中古物件であっても新築物件と同じ計算方法を用います。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率は築年数に関わらず、構造に応じて新築物件と同じ償却率を用います。
また、経過年数も築年数ではなく、中古物件として購入した引渡日から売却の引渡日までの所有期間です。

減価償却を行うには購入額を土地価格と建物価格に分ける必要がありますが、個人から購入した中古マンションでは土地価格と建物価格の内訳が分からないことが通常です。

建物購入額が分からないときは、国税庁が開示している建物の標準的な建築価額表を用いて購入時の建物価格を求めます。

中古のマイホームの取得費の求め方

標準的な建築費から求める方法では、一旦、新築当初の建物の建築費を求め、次にその建物価格を購入時点まで減価償却して購入時の建物価格を算出します。
さらに、購入時から売却時までの2段階の減価償却を行うことがポイントです。

ここで、中古のマイホームの取得費および譲渡所得のシミュレーションを行います。

(条件)

住宅の種類:マンション(鉄筋コンクリート造)
築年:1980年
購入年:2005年(築25年の中古物件として購入)
購入額:2,000万円
面積:80平米

譲渡価額:4,000万円
譲渡費用:127万円(仲介手数料126万円、印紙税1万円)
経過年数:15年

(シミュレーション)

建物の標準的な建築価額によると、1980年(昭和55年)に新築された鉄筋コンクリート造のマンションの建築費単価は129.7千円/平米となっています。
専有面積が80平米の新築当時の建物価格は以下の通りです。

新築時の建物価格 = 建物の標準的な建築価額による建築単価 × 建物面積
         = 129.7千円/平米 × 80平米
         = 10,376,000円

次に購入時の建物価格を求めます。
新築時から購入時までは25年経過しており、減価償却費および購入時の建物価格は以下の通りです。

減価償却費 = 新築時の建物価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 10,376,000円 × 0.9 × 0.015 × 25年
      = 3,501,900円

購入時の建物価格 = 新築時の建物価格 - 減価償却費
         = 10,376,000円 ― 3,501,900円
         = 6,874,100円

よって、購入時の土地価格は以下のようになります。

購入時の土地価格 = 購入額 - 購入時の建物価格
         = 2,000万円 - 687.41万円
         = 1,312.59万円

さらに、売却時点の減価償却費および取得費を計算します。
中古物件を購入してからの経過年数は15年ですので、減価償却費は以下の通りです。

減価償却費 = 中古時の建物価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 687.41万円 × 0.9 × 0.015 × 15年
      ≒ 139.2万円

取得費は以下の通りです。
取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)
    = 1,312.59万円 + (687.41万円 - 139.2万円)
    = 1,860.8万円

以上から、譲渡所得は以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 1,860.8万円 - 127万円
     = 2,012.2万円

2-3.古い空き家の取得費の求め方

減価償却は無限に行われるのではなく、減価償却費が「建物購入価額の95%」となった時点で計算は打ち止めです。
減価償却費が「建物購入価額の95%」に達すると、その後の建物取得費は「建物購入価額の5%」のままとなります。

古い空き家の取得費の求め方

ここで、減価償却計算が打ち止めとなるときの取得費および譲渡所得のシミュレーションを行います。

(条件)

住宅の種類:戸建て(木造)
譲渡価額:4,000万円
譲渡費用:127万円(仲介手数料126万円、印紙税1万円)
購入額:5,000万円(土地購入額:2,000万円、建物購入額:3,000万円)
経過年数:40年

(シミュレーション)

減価償却費および取得費を計算します。
減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 3,000万円 × 0.9 × 0.031 × 40年
      = 3,348万円

減価償却費の最大値は「建物購入価額の95%」です。
減価償却費の最大値 = 建物購入価額 × 95%
          = 3,000万円 × 95%
          = 2,850万円

求めた減価償却費の3,348万円は、建物購入価額の95%である2,850万円を超えています。
よって、当該建物の減価償却費は最大値である2,850万円ということです。

取得費は以下の通りです。
取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)
    = 2,000万円 + (3,000万円 - 2,850万円)
    = 2,150万円

譲渡所得は以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 2,150万円 - 127万円
     = 1,723万円

2-4.新築の投資用マンション等の取得費の求め方

投資用マンション等の事業用不動産の減価償却方法には、「平成19年3月31日以前に取得した資産」と「平成19年4月1日以後に取得した資産」があります。

それぞれの計算式は以下の通りです。

【平成19年3月31日以前に取得した資産】

減価償却費 = (建物購入価額 - 残存価額※1) × 償却率※2 × 業務に供された月数 ÷ 12

※1:残存価額とは、取得価額の10%です。
※2:償却率は旧定額法の償却率を用います。

旧定額法の償却率
耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率
16 0.062 31 0.033 46 0.022
2 0.500 17 0.058 32 0.032 47 0.022
3 0.333 18 0.055 33 0.031 48 0.021
4 0.250 19 0.052 34 0.030 49 0.021
5 0.200 20 0.050 35 0.029 50 0.020
6 0.166 21 0.048 36 0.028 51 0.020
7 0.142 22 0.046 37 0.027 52 0.020
8 0.125 23 0.044 38 0.027 53 0.019
9 0.111 24 0.042 39 0.026 54 0.019
10 0.100 25 0.040 40 0.025 55 0.019
11 0.090 26 0.039 41 0.025 56 0.018
12 0.083 27 0.037 42 0.024 57 0.018
13 0.076 28 0.036 43 0.024 58 0.018
14 0.071 29 0.035 44 0.023 59 0.017
15 0.066 30 0.034 45 0.023 60 0.017

【平成19年4月1日以後に取得した資産】

減価償却費 = 建物購入価額 × 償却率※ × 業務に供された月数 ÷ 12

償却率は下表の償却率を用います。

償却率
耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率
16 0.063 31 0.033 46 0.022
2 0.500 17 0.059 32 0.032 47 0.022
3 0.334 18 0.056 33 0.031 48 0.021
4 0.250 19 0.053 34 0.030 49 0.021
5 0.200 20 0.050 35 0.029 50 0.020
6 0.167 21 0.048 36 0.028 51 0.020
7 0.143 22 0.046 37 0.028 52 0.020
8 0.125 23 0.044 38 0.027 53 0.019
9 0.112 24 0.042 39 0.026 54 0.019
10 0.100 25 0.040 40 0.025 55 0.019
11 0.090 26 0.039 41 0.025 56 0.018
12 0.084 27 0.038 42 0.024 57 0.018
13 0.077 28 0.036 43 0.024 58 0.018
14 0.072 29 0.035 44 0.023 59 0.017
15 0.067 30 0.034 45 0.023 60 0.017

新築で購入した事業用不動産の場合、耐用年数は建物の構造に応じて以下の年数に対応するものを用います。

建物構造 耐用年数
木造 22年
木造モルタル 20年
鉄骨造
3mm以下 19年
3mm超4mm以下 27年
4mm超 34年
鉄筋コンクリート造 47年
鉄骨鉄筋コンクリート造 47年

ここで、新築の投資用マンション等の取得費および譲渡所得のシミュレーションを行います。

(条件)

住宅の種類:マンション(鉄筋コンクリート造:法定耐用年数は47年)
譲渡価額:4,000万円
譲渡費用:127万円(仲介手数料126万円、印紙税1万円)

購入価額:3,000万円(平成19年4月1日以後に取得)
内訳 土地購入価額:1,000万円
   建物購入価額:2,000万円
業務に供された月数:120ヶ月

(シミュレーション)

最初に減価償却費を求めます。
減価償却費 = 建物購入価額 × 償却率 × 業務に供された月数 ÷ 12
      = 2,000万円 × 0.022 × 120ヶ月 ÷ 12
      = 440万円

よって取得費は以下のように求められます。
取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)
    = 1,000万円 + (2,000万円 - 440万円)
    = 1,000万円 + 1,560万円
    = 2,560万円

譲渡所得は以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 2,560万円 - 127万円
     = 1,313万円

2-5.中古の投資用マンション等の取得費の求め方

中古物件の事業用不動産の減価償却計算を行うには、まず残存耐用年数を求めます。
残存耐用年数とは、残っている耐用年数のことです。

残耐用年数は耐用年数を満了しているか否かに応じて、下表のように求めます。

経過年数の状況 求め方
法定耐用年数を満了しているケース 法定耐用年数 × 0.2
法定耐用年数を満了していないケース 法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2

ここで、中古の投資用マンション等の取得費および譲渡所得のシミュレーションを行います。

(条件)

住宅の種類:マンション(鉄筋コンクリート造:法定耐用年数は47年)
譲渡価額:4,000万円
譲渡費用:127万円(仲介手数料126万円、印紙税1万円)

購入価額:3,000万円(平成19年4月1日以後に取得)
購入時の築年数:築40年
内訳 土地購入価額:1,000万円
   建物購入価額:2,000万円
業務に供された月数:60ヶ月

(シミュレーション)

最初に残耐用年数を求めます。
残存耐用年数 = 法定耐用年数 - 経過年数 + 経過年数 × 0.2
       = 47年 - 40年 + 40年 × 0.2
       = 47年 - 40年 + 8年
       = 15年

5年の償却率は「0.067」です。

償却率
耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率
16 0.063 31 0.033 46 0.022
2 0.500 17 0.059 32 0.032 47 0.022
3 0.334 18 0.056 33 0.031 48 0.021
4 0.250 19 0.053 34 0.030 49 0.021
5 0.200 20 0.050 35 0.029 50 0.020
6 0.167 21 0.048 36 0.028 51 0.020
7 0.143 22 0.046 37 0.028 52 0.020
8 0.125 23 0.044 38 0.027 53 0.019
9 0.112 24 0.042 39 0.026 54 0.019
10 0.100 25 0.040 40 0.025 55 0.019
11 0.090 26 0.039 41 0.025 56 0.018
12 0.084 27 0.038 42 0.024 57 0.018
13 0.077 28 0.036 43 0.024 58 0.018
14 0.072 29 0.035 44 0.023 59 0.017
15 0.067 30 0.034 45 0.023 60 0.017

次に減価償却費を求めます。
減価償却費 = 建物購入価額 × 償却率 × 業務に供された月数 ÷ 12
      = 2,000万円 × 0.067 × 60ヶ月 ÷ 12
      = 670万円

よって取得費は以下のように求められます。
取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)
    = 1,000万円 + (2,000万円 - 670万円)
    = 1,000万円 + 1,330万円
    = 2,330万円

譲渡所得は以下のようになります。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 2,330万円 - 127万円
     = 1,543万円

2-6.取得費が不明なときの取得費の求め方

取得費が不明なときは概算取得費を用います。
概算取得費とは、「譲渡価額の5%」です。

概算取得費 = 譲渡価額 × 5%

ここで、取得費が不明なときの取得費および譲渡所得のシミュレーションを行います。

(条件)

譲渡価額:4,000万円
取得費:不明
譲渡費用:127万円(仲介手数料126万円、印紙税1万円)

(シミュレーション)

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 譲渡価額 - 概算取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 4,000万円×5% - 127万円
     = 4,000万円 - 200万円 - 127万円
     = 3,673万円

2-7.土地だけ取得費が不明なときの取得費の求め方

昔から持っている土地に注文住宅を建てた場合等、土地だけ取得費が不明なときもあります。

土地だけ取得費が不明なときは、譲渡価格から建物取得費を控除したものに5%を乗じたものが土地の取得費です。

土地の取得費 = (譲渡価額 - 建物取得費) × 5%
取得費 = 土地の取得費 + 建物取得費

ここで、土地だけ取得費が不明なときの取得費および譲渡所得のシミュレーションを行います。

(条件)

住宅の種類:戸建て(木造)
譲渡価額:4,000万円
譲渡費用:127万円(仲介手数料126万円、印紙税1万円)
購入額:土地購入額は不明、建物購入額は3,000万円
経過年数:15年

(シミュレーション)

減価償却費および取得費を計算します。
減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 3,000万円 × 0.9 × 0.031 × 15年
      = 1,255.5万円

建物取得費 = 建物購入額 - 減価償却費
      = 3,000万円 - 1,255.5万円
      = 1,744.5万円

土地取得費 = (譲渡価額 - 建物取得費) × 5%
      = (4,000万円 - 1,744.5万円)  × 5%
      ≒ 112.8万円

取得費 = 土地の取得費 + 建物取得費
    = 112.8万円 + 1,744.5万円
    = 1,857.3万円

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 4,000万円 - 1,857.3万円 - 127万円
     = 2,015.7万円

3.譲渡所得税の計算シミュレーション

この章では譲渡所得が計算できた後の税金計算シミュレーションを解説します。

(条件)

譲渡所得:1,000万円
所有期間:5年超(長期譲渡所得)

(税金計算シミュレーション)
所得税 = 譲渡所得 × 税率
    = 1,000万円 × 15%
    = 150万円

復興特別所得税 = 所得税 × 税率
        = 150万円 × 2.1%
        = 3.15万円

住民税 = 譲渡所得 × 税率
    = 1,000万円 × 5%
    = 50万円

税額 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
   = 150万円 + 3.15万円 + 50万円
   = 203.15万円

4.マイホームの売却で使える5つの税金特例

マイホームの売却で使える税金特例について以下の5点を解説します。

  1. 3,000万円特別控除
  2. 所有期間10年超の軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え特例
  4. 譲渡損失の買換え特例
  5. オーバーローンの特例

それではひとつずつ見ていきましょう。

4-1.3,000万円特別控除

3,000万円特別控除とは、マイホームを売却したときに譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。
3,000万円特別控除を適用したときの譲渡所得は以下のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

3,000万円特別控除の効果は非常に大きく、譲渡所得がゼロ円(マイナスの場合もゼロ円)になることもよくあります。

譲渡所得がゼロ円となれば税金は発生しませんが、3,000万円特別控除の特例を利用するために確定申告は必要です。

3,000万円特別控除を適用するには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

【3,000万円特別控除を適用できる不動産】

  1. 現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
  2. 転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡するする敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
  3. 災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合
  4. 転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取り壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取り壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

詳しい要件については、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

4-2.所有期間10年超の軽減税率の特例

3,000万円特別控除の特例を適用しても譲渡所得がプラスになるときは、一定の要件を満たすと所有期間10年超の軽減税率の特例(以下、「軽減税率の特例」と略)を適用できます。
軽減税率の特例の主な要件としては、所有期間が「10年超」という点があります。

軽減税率の特例を利用した場合の税率は以下の通りです。

課税譲渡所得金額 所得税 住民税
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円以下の部分 10% 4%
3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち6,000万円超の部分 15% 5%

譲渡所得が6,000万円以下の部分は、長期譲渡所得よりも税率が低くなる点がポイントです。

詳しい要件については、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

4-3.特定の居住用財産の買換え特例

特定の居住用財産の買換え特例とは、買い替えで譲渡益が発生したときに、一定の要件を満たすと課税を繰り延べ(先送り)できるという特例です。
売却する不動産の「譲渡価額」と購入する不動産の「取得価額」で課税の有無が決まります。

金額の関係 課税の有無
譲渡価額>取得価額 課税される
譲渡価額≦取得価額 課税されない(繰延される)

特定の居住用財産の買換え特例は、課税が繰延されるという特例であり、税金が無くなるわけではないという点がポイントです。
先送り(繰り延べ)された税金は、将来、購入物件を売却するときに課税されます。

3,000万円特別控除なら売却時点で税金を無くせるため、基本的には3,000万円特別控除を使った方が有利です。

詳しい要件については、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

4-4.譲渡損失の買換え特例

譲渡損失の買換え特例(居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の略)とは、買い替えで譲渡損失が生じたときに適用できる特例になります。

損益通算という手続きにより、売却物件で発生した譲渡損失と他の所得と合算して税金の還付を受けられる特例です。

例えば、譲渡損失が▲900万円、給与所得が800万円とすると、損益通算によってその年の所得は▲100万円とすることができます。

給与所得が800万円を前提に会社が源泉税として60万円を徴収していたら、その年は60万円全額の還付を受けることができるという特例です。

譲渡損失の買換え特例を使うには、主な要件として売却物件の所有期間が「5年超」や、購入物件で組む住宅ローンが「10年以上」等の要件を満たす必要があります。

詳しい要件については、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

4-5.オーバーローンの特例

オーバーローンの特例(居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の略)とは、買い替えを要件としない譲渡損失が生じたときに利用できる特例です。
オーバーローンとは住宅ローン残債が売却額を上回っている状態のことを指します。

オーバーローンの特例も、譲渡損失の買換え特例と同様に損益通算によって税金の還付を受けることができる特例です。

ただし、譲渡損失の買換え特例とは「繰越控除限度額」が異なります。
オーバーローンの特例はオーバーローンの額が繰越控除限度額となるのに対し、譲渡損失の買換え特例は譲渡損失そのものが繰越控除限度額です。

オーバーローンの特例

一般的には、オーバーローンの額よりも譲渡損失の方が大きくなるため、譲渡損失の買換え特例も使える場合には譲渡損失の買換え特例を使った方が節税効果は大きくなります。

詳しい要件については、以下の国税庁のホームページをご参照ください。

まとめ

いかがでしたか。
譲渡所得税の計算シミュレーションについて解説してきました。

譲渡所得税とは、譲渡益が生じたときに発生する所得税および住民税、復興特別所得税の税金の総称です。

取得費および減価償却の求め方は、「新築のマイホーム」や「新築の投資用マンション等」等で異なります。

マイホームの売却では、「3,000万円特別控除」や「譲渡損失の買換え特例」等の特例が利用できます。
本記事を、不動産を売却したときの税金計算の参考にして頂けると幸いです。