不動産売却でかかる8つの費用めやすと計算方法をやさしく解説

ご所有の戸建て・マンション・土地などの不動産を売却すると、仲介手数料や税金など、売却のための費用が発生します。どのような費用がいくらくらいかかるのかなどを事前に確認しておくことで、不動産売却がスムースに運びます。

この記事を読むとわかること

  • 不動産売却で発生する8種類の費用について
  • 不動産売却の流れについて
  • 不動産売却でかかる費用を抑えるコツ
「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格”を見つけましょう
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます
この記事の監修者
秋山 芳生
家計簿アプリマネーフォワードMEの元事業責任者。
複数のベンチャー企業での上場経験を通じて資産構築をしFIREを達成。現在はFPとして講演・執筆・面談を行う傍らYouTube(チャンネル登録2万人以上)で情報発信するなどマルチに活動をしている。
あなたのよしおさんFP相談室

1.不動産売却でかかる8つの費用を解説

本章では、不動産の売却にともなって発生する、8つの費用とそのうちわけをまとめています。費用の総額は、売却をした不動産の4~6%がめやすです。以下の表は、必要となる費用の一覧表です。

費用 支払いタイミング 各費用のめやす
1 仲介手数料 契約・引渡時に1/2ずつ ( 売却額 × 3% + 6万円 )+ 消費税※400万以上の速算式
2 印紙代 契約書類作成時 1,000から6万円
※売却金額で異なる
3 登記・抵当権抹消費用 契約終了時に清算 登記費用+司法書士への報酬支払い
4 住宅ローン関連費用 金融機関での手続き時 一括返済にかかる金融機関の手数料0から3万円
5 引っ越し代 引っ越し時 規模や住み替えスケジュールによって異なる
6 譲渡所得税ほか 確定申告後 保有期間・適用できる控除・売却額などにより異なる
7 確定申告 売却した翌年度 譲渡利益があった場合
8 その他費用 項目を参照 項目を参照

1-1.仲介手数料

不動産売却の仲介をしてくれた不動産会社に支払う手数料です。営業活動に対する成功報酬なので、不動産の売却が成立したときに支払います。

一般的には、売買契約を結んだ際に半額を支払い、残り半額は買主に不動産を引き渡すときに支払います。不動産売買の仲介手数料の上限は、以下のように法律で決められています。

売買価格 仲介手数料の上限
200万円以下の部分 (売却価格×5%)+消費税10%
200万円から400万円以下 (売却価格×4%+2万円)+消費税10%
400万円を超える金額 (売却価格×3%+6万円)+消費税10%

参考:“宅地建物取引業”. 国土交通省. (参照2024-04-11)をもとに、HOME4Uが独自に作成

上記の計算金額は、実際には不動産会社が計算して提示してくれるため、売主が自分で計算する必要はありません。また、上限は法律で決まっていますが、下限には決まりがなく、不動産会社が自由に設定できます。

不動産売却は大きなが金額が動くため、400万円を超える不動産売買には仲介手数料の速算式があります。売却予定の不動産の相場や査定金額などを以下の計算式に当てはめると、仲介手数料のめやすがわかります。

【速算計算式】
仲介手数料=売買価格×3.3%+6万6000円

例)売却金額が5,000万円の場合は、仲介手数料の金額は以下のようになります。(消費税率10%)
・仲介手数料=5,000万円×3.3%+6万6,000円=171万6,000円

支払い方法は、1回目、2回目とも現金払いのケースが多いものの、仲介手数料が100万円以上になることもあるため、銀行振込が可能なこともあります。

1-2.印紙代

費用 支払いタイミング 各費用のめやす
印紙代 契約書類作成時 1,000から6万円  ※売却金額で異なる

印紙代とは、売買契約書など法的な書類に貼る収入印紙のことです。書類に貼って割り印をすると印紙税を納税したことになります。契約書に書かれている取り扱い金額によって、印紙税額が決められています。

現在、印紙税には軽減税率が設定されています。不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、2014年(平成26年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までの間に作成される軽減措置の対象となる契約書は、以下の表の「軽減税率」欄のとおりになります。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円を超え 50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え 100万円以下のもの 1千円 500円
100万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円
500万円を超え1,000万円以下のもの 1万円 5千円
1千万円を超え5,000万円以下のもの 2万円 1万円
5,000万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円

出典:“不動産売買契約書の印紙税の軽減措置”. 国税庁. (参照2024-04-11)

例えば、不動産が5,000万円で売れた場合には、軽減税率が適用された1万円が印紙代となります。

この印紙代は、契約書一通ごとに課税されますので、例えば、売主側で保管用にもう一通作成する場合には、2通分の印紙代がかかります。多くの場合、契約書を作成する不動産会社が用意をして、後で清算する形になります。

1-3. 登記・抵当権抹消費用

費用 支払いタイミング 各費用のめやす
登記・抵当権抹消費用 契約終了時に清算 登記費用+司法書士への報酬支払い

不動産を売却すると、不動産の所有権を売り主から買い主に変更する「所有権移転登記」が必要になります。所有権移転登記をするときには、登録免許税が発生し、費用は買主が負担をします。登録免許税の金額は固定資産税評価額に自治体ごとの税率をかけて計算されます。

売却をする不動産に住宅ローンが残っていた場合は、ローンの残債を精算してから「抵当権抹消」の手続きがあり、費用が発生します。売却時にローン完済している不動産であっても、抵当権抹消手続きをしていなければ、抵当権がついたままですので、抹消手続きが必要です。

これらの計算と手続きを司法書士に依頼する場合は、その報酬も発生します。報酬金額は売却した不動産・契約内容・依頼をした司法書士によってケースバイケースです。

1-4.住宅ローン関連の費用

費用 支払いタイミング 各費用のめやす
住宅ローン関連費用 金融機関での手続き時 一括返済にかかる金融機関の手数料 0~3万円

住宅ローン関連の費用とは、住宅ローンの一括返済のために金融機関に支払う事務手数料などのことです。不動産の売却をする際、ローンが残っていると売却ができないので、住宅ローンの残債を一括で支払ってから売却をします。

一般的に、この一括返済には、不動産の売却代金が充当されます。手数料は、金融機関によって違いがありますが、インターネットで手続きすると、無料になるケースもあります

また、住宅ローンの借り入れ時に保証料を一括払いしている場合には、保証料の一部が戻ってきますが、その際も、保証会社の事務手数料が発生することがあります。

詳しくは、住宅ローンを組んだ金融機関ホームページ・住宅ローンの規約資料などを参照の上、融資の担当者に確認してください。

1-5.引っ越し代

費用 支払いタイミング 各費用のめやす
引っ越し代 引っ越し時 規模や住み替えスケジュールによって異なる

マイホームを売却した場合には、引越し費用が発生します。マイホームなど、不動産の買い替えの場合には、住んでいた家(売却する不動産)から新居に引っ越すまでの間、仮住まいが必要になることがあります。その場合には

  • 引っ越し1回目:今まで住んでいた家→仮住まい 
  • 引っ越し2回目:仮住まい→新居

の合計2回分の引越し費用がかかります。

1-6.譲渡所得税

費用 支払いタイミング 各費用のめやす
譲渡所得税ほか 確定申告後 保有期間・適用できる控除・売却額などにより異なる

不動産を売ったときに出た利益を「譲渡所得」といいます。利益が出た場合は、確定申告をし、譲渡所得税という税金(所得税、住民税)を支払います。不動産を売却しても利益が出なかった場合は、税金は発生しません

課税対象になる譲渡所得(利益)は、売却金額そのものではなく、さまざまな費用を差し引いた分に対してかかります。譲渡所得の出し方は、以下のとおりです。

譲渡所得= 不動産の売却価格 – 取得費用(その不動産を入手したときの費用) – 譲渡費用(売ったときの費用)

また、譲渡所得にかかる税率は売却した物件の所有期間によって変わります。

対象期間 税率
短期譲渡所得 所有期間5年以下の土地・建物 39.63%(所得税 30.63% 、住民税 9%)
長期譲渡所得 所有期間5年を超える土地・建物 20.315%(所得税 15.315% 、住民税 5%)

1-7. 確定申告

費用 支払いタイミング 各費用のめやす
確定申告 売却した翌年度 譲渡利益があった場合

前項6で譲渡所得(利益)が出た場合のみ、売買をした翌年度の3月15日にまでに確定申告をして納税をします。不動産を売却した時に使える税金の特例は「節税」と「税金還付」の2種類があります。

不動産を売却した時に使える税金の特例

仮に、今回の不動産売却で利益がなかったとしても、使いたい特例によっては確定申告をする必要があります。詳細に関しては関連記事でご確認ください。

1-8.その他の費用

不動産の売却には、必要に応じて以下のような費用が発生することがあります。

測量
境界が確定していない土地や戸建てを売却する場合、確定測量を行うための測量費が必要です。測量がしてあると、土地の境界と面積を正確に算出できるので、登記簿の面積との相違などによる売買契約・引き渡し後のトラブル防止になります。マンション売却の場合は、測量は不要です。
解体
更地のほうが売りやすい場合や、買い主が建物の解体を希望している場合は、家屋の解体が必要になります。
ごみ処分費用
不動産の家屋と敷地内にある、一般ごみと粗大ごみの処分費用です。一般ごみは無料ですが、量があまりに多い場合は、数回に分けて出さないと事業用ゴミとして料金が発生するケースがあります。
粗大ごみは自治体ごとに設定されている日程で、粗大ごみの料金を支払って処分します。一般ごみと粗大ごみの項目にないものは、次項の「廃棄」に含まれます。捨てる前に、自治体の清掃課などに確認をしてください。
廃棄
不動産の残留物や埋蔵物などがある場合は、廃棄のための費用が発生します。廃棄するものは売却した不動産によって違いがありますが、木くず・石・アスファルト・廃プラスチック・コンクリートガラといった取り壊した時に排出される一般ごみのほか、粗大ごみ以外のものや、地面の中に埋まっていたものなどが主な対象になります。

それぞれにかかる費用は、売却した不動産・地域・売買契約内容によって異なります。必要な作業の見積もりを取り、不動産会社の担当者と相談のうえで、費用やスケジュールを決めていきます。

不動産売却では、上記のようにさまざまな費用がかかります。それぞれの費用は、売却する不動産会社・地域、売却価格や利益などによって異なりますし、支払い時期もバラバラです。見積りを取る際には、トータルでかかる費用を洗い出して事前に準備しておきましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

2.不動産売却の流れを知って、準備をしておこう 

本章では、はじめて不動産売却をする方向けに、全体の流れと、費用準備のタイミングを紹介します。以下のイラストを参考に、売主がすることをカンタンに解説していきますので、しっかりと把握しておきましょう。

基本的に、不動産売却で大きなお金の支払いが発生するのは「売却が成立してから」です。しかし、不動産売却全体の流れを知っておくことで、準備のタイミングなどがわかり、スムースな売却につなげることができます。

不動産売却の流れを知って、準備をしておこう

2-1.複数の不動産会社に物件査定をお願いする

不動産を売却することが決まったら、はじめに、複数の不動産会社に査定依頼をします。これは、これから売る不動産価格がいくらくらいになるのかを知るためと、仲介をお願いする不動産会社を選別するためです。

複数の会社からの査定額を比較し、納得のいく価格のものがあれば、不動産がある場所で訪問査定をしてもらいます。その時に、担当者の対応などを見ながら、仲介をお願いする会社を絞り込んでいき、仲介契約先を決めていきます。

2-2.相場を自分でも調べてみる

複数の不動産会社から査定をしてもらうのと同時に、自分でもできるだけ売却額の相場を調べておきます。自分で相場を把握しておけば、不動産会社が提示してきた金額が、妥当なのか、相場よりも高額なのか判断がつくようになります。

調べ方は、「中古住宅HOME4U」のような中古不動産売却の情報を取り扱う、不動産情報検索のポータルサイトを利用する以外に、以下のような不動産に関するサイトを使って調べることができます。具体的な調べ方は関連記事を参考にしてください。

レインズ・マーケット・インフォメーション
土地総合情報システム

2-3.準備すべき書類をそろえておく

不動産の売却の際は、不動産の仲介を申し込む時や、売買契約時に必要な書類がいくつかあります。これらの書類は、家で保管しているものと、役所などで取得する必要があるものがあり、すべて一度に集めようとすると大変です。

また、公共書類の中には発行してから有効期限があるものあるため、全体の流れをつかんだうえで、段階的に書類をそろえていきます。不動産売却のはじめから必要なのは、以下の5つの書類です。

  1. 身分証明書
    仲介契約をする際に本人確認で使用します。
  2. 登記済み・登記識別情報
    不動産権利書のことです。売却する不動産の真正な所有者が誰であるかを確認します。
  3. 登記簿謄本
    売却する不動産が登記されているものであるかなど、不動産の状態を確認するために使います。
  4. 購入時の売買契約書と重要事項説明書
    不動産がどのような経緯で現所有者のものになったかなどが、確認できます。
  5. ローン残高証明書・返済償還表・抵当権抹消書類
    ローンが残ったままの不動産ではないかを確認します。

その他の書類は、必要に合わせて用意していきます。必要なタイミングで、担当者が声掛けをしてくれます。

2-4.売買契約で必要な書類などを用意する

購入希望の申し込みが入ったら、売買契約に必要な書類を準備し始めます。必要なタイミングは、担当者が知らせてくれますので、それに合わせて用意しておきましょう。比較的まとまった金額は、売買契約時の不動産会社へ支払う仲介手数料の半金です

また、住宅ローンの一括返済をする方は、売買契約で受け取った売却額で一括返済をしますが、その際に、金融機関へ支払う事務手数料などが必要となります。その他の費用は、一般的には不動産会社が書類作成時などに立て替えをしてくれるため、契約の最後に清算をします。

これらは不動産会社によって違いがありますので、仲介をお願いする際に確認をしておきましょう。

不動産売却の流れを知ることで、スムーズな売却が可能となります。特に相場を把握するため、複数の不動産会社に査定依頼しながら、並行して自分で調査することが大切ですね。また、必要な書類を一気に集めるのは大変なので、事前に少しずつ準備を進めていきましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

はじめての不動産売却では、知らないことも多いものですが、本章で紹介したような全体の流れをつかむことで、売却が予定通りに進んでいるかなども確認しやすくなります。特に大切なのは、不動産会社選びです。

大きなお金の動く不動産売却では、仲介をお願いした不動産会社の能力次第で、売却額に大きな差が出ることがあるのです。

一度に複数の不動産会社に査定依頼をする場合は、NTTデータグループが運営する、日本最老舗の不動産情報サービスサイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご活用ください。

お持ちの不動産があるエリアと広さなどを入力するだけで、全国の一流企業や地元の精鋭企業の中から厳選した、相性の良い不動産会社を最大6社までに絞って紹介します。

あなたの不動産いくらで売れる?

気になる金額提示をしてきた不動産会社には訪問査定を依頼し、より具体的な売却額を提示してもらいます。その際も、比較ができるように複数社に訪問査定してもらうことが大切です。

3.不動産売却にかかる費用を抑えるコツ

不動産の売却をした場合、費用を抑えるために知っておいた方が良い情報をまとめています。

3-1.税金の特例を使って費用を抑える

不動産売却をしたときに使える、税金控除の特例があります。自己判断で適用できると思っていても、必要条件を満たせずに適用外になってしまうこともありますので、売却前に、不動産会社の担当者に確認をするか、税務署で相談してから動くようにしましょう。

  1. マイホームの3,000万円控除を適用する
  2. 10年超所有軽減税率を適用する
  3. 特定居住用財産の買い換え特例を適用する
  4. 赤字になった場合の控除を適用する

3-1-1. マイホームの3,000万円控除を適用する

マイホームだった不動産を売却する場合、譲渡所得(利益)が発生しても、最高3,000万円までは非課税になります。そのため、ほとんどの方は、マイホーム売却による税金の発生はありません。

これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいますが、一般的には「マイホームの3,000万控除」と呼ばれています。

この場合の利益とは、本章1で解説した通り、不動産の売却額から、取得費用(その不動産を入手したときの費用)・譲渡費用(売ったときの費用)などの必要経費を差し引いた金額のことです。

以下の必要な条件を満たせば、所有期間の短期・長期に関わらず、最大3,000万円までの利益に対しては所得税や住民税が発生しません。

マイホーム3,000万円控除を受けるための条件

  • 売主にとってマイホームとして居住用していた不動産であること
  • または、マイホームとして居住しなくなって3年以内であること
  • 売り先が配偶者、直系血族、同族会社ではないこと
  • 前年や前々年にこの控除を使っていないこと

利益が3,000万円を超えている場合は、3,000万円を超えた金額に課税があります。

例1)利益が1,000万円ある場合
最大3,000万円までの控除なので、課税対象なし。
例2)利益が5,000万円ある場合
最大3,000万円の控除なので、
利益5,000万円-控除3,000万円=課税対象2,000万円

利益が5,000万円あった場合は、控除後の2,000万円に対してのみが譲渡所得税(所得税・住民税)の課税対象になります。

ただし、本特例は、次章の「10年超所有軽減税率」との併用はできますが、3項で解説のある「特定居住用財産の買い換え特例」との併用はできません

参考:“No.3302 マイホームを売ったときの特例”. 国税庁. (参照2024-04-11)

3-1-2. 10年超所有軽減税率を適用する

前項のマイホームの3,000万円特例を適用しても、まだ利益がある場合に適用できる特例です。

売却したマイホームの所有期間が10年を超えていれば、軽減税率の特例を使うことによって、譲渡所得(利益)にかかる税率を、通常の長期譲渡所得の税率よりも低くすることができます。

10年超所有軽減税率特例を受けるための条件

  • 売却した年の1月1日時点の所有期間が10年を超えていること
  • マイホームとして居住しなくなって3年以内の売却であること
  • 前年や前々年にこの特例を受けていないこと
  • 親子や夫婦間など生計を一つにする相手への売買ではないこと

などの条件を満たしていれば、譲渡所得3,000万円分の特別控除をした後、以下のように軽減されます。通常の長期譲渡所得は20.315%(所得税 15.315% 、住民税 5%)ですので、税率を押さえることができます。

A 譲渡所得
(3,000万円の特別控除適用後の利益)
所得税 住民税 合計
6,000万円以下の部分 A×10% 10.21% 4% 14.21%
6,000万円超の部分 (A-6,000万円)×15%+600万円 15.315% 5% 20.315%

※2013年(平成25年)から2037年(令和19年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1パーセントを所得税と併せて申告・納付。

先の例を使って計算してみましょう

例)利益が5,000万円の場合

最大3,000万円控除なので、5,000万円-特別控除3,000万円=2,000万円

上記計算の2,000万円に対して、長期譲渡所得の税率がかかり、上記表の上段が適用されます。
2,000万円×10%=200万円

利益が大きい場合には特別控除を併用ことにより、大きく節税ができます。ただし、本特例は、次項で解説のある「特定居住用財産の買い換え特例」との併用はできません。

参考:“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”. 国税庁. (参照2024-04-11)

3-1-3.特定居住用財産の買い換え特例を適用する

マイホームの住み替えのために不動産売却をする場合には、譲渡所得税等は課税されないという特例です。

10年以上所有して住んでいたマイホームを売って、代わりに新しいマイホームを入手するときに使えます。一般的には「買い替え特例」と呼ばれています。

今回売却するマイホームよりも、高い金額の住宅に買換えをして住み替える場合、元のマイホームを売った利益分にかかる譲渡所得課税の先送りができます。適用条件は以下の通りです。

特定居住用財産の買い換え特例

  • 2021年(令和3年)12月31日までの居住用財産の譲渡であること
  • 譲渡対価が1億円までであること

ほか、買い替え先にも条件あり。
参考:“No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例”. 国税庁. (参照2024-04-11)

例)1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合

  • 売却額5,000万円-取得費用1,000万円=4,000万円

旧マイホームの売却による利益が4,000万円あり、本来ならこれに課税がされます。しかし、本特例を適用してマイホームの買い替えをすると、本来ならば利益である4,000万円分への課税がされなくなります

しかし、課税義務が消えたわけではなく、次の売却までの先送りをしているだけですので、次回売る時には課税されます。

また、マイホームの買い替えをして、新マイホームの値段が旧マイホームの値段よりも低い場合は、その差額分が利益となり、今回の売却に対して課税されます。

参考:“No.3358 売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき”. 国税庁. (参照2024-04-11)

3-1-4.赤字になった場合の控除を適用する

売却する不動産がマイホームで、住宅ローンが残っていると、売却額がローン残債を下回ってしまい、赤字になることがあります。また、不動産がとても高い時代に購入した場合、売却額から経費を差し引いたら赤字になることもあります。

このような場合は、条件を満たせば、その赤字分をほかの所得(給与所得や事業所得など)から差し引く(控除)することができます。これを損益通算と言います。

損益通算をすることで、確定申告をしている方の所得の総額が低くなれば、その分、税金が少なくなるので節税となります。また、会社員の方は、すでに給与年収から計算した源泉徴収をされていますので、損益通算によって課税対象額が下がることにより、税金還付されることもあります。

また、損益通算をしてもその年だけではカバーしきれなかった赤字は、譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除することができます。どちらも、以下のような要件があります。

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を受けられる条件

  • 居住用の不動産であること
  • 居住しなくなってから3年以内であること
  • 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
  • 売却した年の12月31日時点で、新たに購入したマイホームの住宅ローンが10年以上残っていること
  • 災害によって滅失した家屋の場合は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること   と
  • 取得した年の翌年12月31日までの間に居住していた・居住する見込みであること
  • 売主と買主が親子や夫婦など生計を一つにする関係にないこと
  • マイホームの譲渡価額が住宅ローンの残高を下回っていること

上記以外にも適用条件が細かくありますので、売却活動を始める前に、よく調べておく必要があります。

特に、本特例は「赤字であること」が大前提となるため、住宅ローン残高を確認したうえで、特例の適用を視野に入れて、売却額の決定および、値引き交渉があった場合の限度額も合わせて金額設定をする必要があります。

実際に売却をする金額によっては、適用外になることも十分考えられますので、ご自身で試算したうえで、自己判断をせず、税務署の無料相談などで確認をしてから動きましょう。

参考:“No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)”. 国税庁. (参照2024-04-11)

3-2.良質な不動産会社に仲介をお願いする

不動産売却では大きな金額が動くため、なるべく高く売却し、余計な費用を発生させないようにしたいものです。また、大きな金額が動く分、仲介料も高額になりますので、その金額に見合った働きをしてほしいですね。

そのためには、適切な売却活動をしてくれる、良質な不動産会社に仲介をお願いする必要があります。本章では、良い不動産会社を選ぶ基準として4つの特徴をまとめています。

特徴1 不動産業歴が長い
特徴2 相場に合った査定価格
特徴3 売却力がある
特徴4 得意分野の不動産がある

3-2-1. 特徴1 不動産業歴が長い

不動産売買の経験をたくさん積んでいる、不動産業歴の長い会社を選びます。業歴が浅い会社が悪いというわけではありませんが、長く続いている会社には、長年、信頼されている理由があるはずです。

業歴の長さは、宅地建物取引業の免許番号を見ればわかります。不動産を仲介するには、免許が必要で、不動産会社は必ずこの免許を持っています。ホームページ・チラシ・看板などには必ず「〇〇県知事免許(10)XXXXXXX号」という記載があり、()の数字が大きいほど、長い営業経歴がある会社です。

3-2-2. 特徴2 相場に合った査定価格

複数の不動産会社に査定依頼をすると、中には、びっくりするほどの高額査定をしてくる会社もあります。しかし、高い査定額を出してきた会社に依頼をすれば、必ず高く売ってくれるとは限りません。

相場とかけ離れた売却額は、購入希望者にとっては割高感があるため、なかなか売れないこともあります。長く売れない状態が続けば、値下げをして対応するしかありません。あまりにも長期間売れない場合は、当初の査定比較の中で一番低い金額よりも、さらに低い金額でしか売れなくなることもあります。

査定価格は、価格そのものよりも、その価格が適正であるかどうかを見極める必要があります。そのため、相場よりも高い金額を提示してきた会社には、その査定額の根拠を聞いてみましょう。

他社が気づかなかった物件の長所を理解したうえで高く売れると判断したケースもありえるからです。明確な理由があり、納得がいけば、相場よりも高くてもチャレンジしてみる価値はあります。

3-2-3. 特徴3 売却力がある

売却力とは、販売戦略がしっかりしていることです。不動産は、きちんとした戦略を立てて販売活動を適切に行えば、高く早く売れる可能性が高くなります。

しかし、中には、不動産情報サイトやレインズなどの不動産業界の情報ネットに登録するだけで、あとは問い合わせがくるのを待っているだけという受け身な姿勢の会社もあります。売却力がある会社は、こちらが聞くよりも前に、販売戦略についていろいろと提案をしてくる傾向があります。

例えば、売り出し期間と価格についての提案、ターゲット層への訴求方法など、自社の売却力に明確な方針と戦略があれば、担当者は事前に必ずアピールをしてきます。

何もない場合は、こちらから「販売戦略はありますか」と聞いてみましょう。そして、スラスラと答えられないようなら、候補の上位からは外しても良いでしょう。

3-2-4. 特徴4 得意分野の不動産がある

不動産会社にも個性があり、得意不得意の分野があります。例えば、戸建てに強い、マンションに強い、ワンルームが得意等です。また、リノベーションをかけた物件が得意などもあるため、今回の売却の目的に合った不動産会社を選ぶようにします

不動産会社の得意分野は、担当者に直接聞いても良いですし、その会社のホームページに、たくさん情報を載せているものが得意分野です。さらに大企業、中小企業ともに、それぞれエリアの得意不得意もあるため、合わせて聞いてみましょう。

そしてできれば、売却が得意で、なおかつ、ご自身が持つ不動産があるエリアに強い不動産会社を選ぶようにします。

不動産を売却することが決まったら、まずは複数の不動産会社に査定をしてもらい、いくらで売れるものなのかを確認してみましょう。その際には、NTTデータグループが運営する老舗の不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご活用ください。

たった一回の入力で、全国2,300社もの大手企業から地元の精鋭企業の中から、不動産売却に信頼と実績のある会社を、最大6社にまで絞ってご紹介します。入力内容は不動産のエリアと広さなどのカンタンな質問のみ、1分ほどで、ご自身がチェックを入れた会社からのみ連絡が来ます。

複数の査定額を比較して、納得のいく金額であれば、次は訪問査定を申し込みます。不動産のプロフェッショナルが現場を見て判断していきますので、より具体的な査定額がわかります。

訪問査定も、複数の不動産会社に来てもらい、現場での質問などをしながら、担当者と会社の考え方なども比較をして、「これは!」と思う会社と仲介契約をします。

不動産売却にかかる費用を抑えるためには、まず特例を使うことを第一に考えましょう!また、信頼できる不動産会社に仲介を依頼することも大切。しっかり査定をしてくれて売却力もある不動産会社であれば、売却活動がスムーズに進みます。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

まとめ

いかがでしたか。不動産売却の費用に関してまとめました。売却でかかる主な費用には仲介手数料をはじめ、印紙代、登記・抵当権抹消費用、住宅ローン関連費用、引っ越し代、譲渡所得税、確定申告、その他費用を含めた8つの費用がありました。

はじめての不動産売却の方は、売却の流れ全体を理解することで、どのタイミングでどのような書類と費用を用意しておけばよいのも理解できたと思います。

不動産売却で扱うまとまった金額は、基本的には売買契約が成立してからですので、間に合うように準備をしていきます。各タイミングで必要な書類などは、不動産会社の担当者が教えてくれます。

不動産売却にかかる費用をあらかじめ理解し、賢く売却しましょう。

不動産売却には、売却額や譲渡利益などに応じてさまざまな費用や税金がかかりますが、特例を活用することで一部の費用を抑えることができます。売却のプロセスをしっかりと理解して、スムーズに売却できるようにしましょう。

また、不動産会社の選定も重要。信頼できる不動産会社は、売却プロセス全体を丁寧にサポートし、費用を最小限に抑える提案をしてくれます。実績や口コミ、信頼性などを考慮しながら、信頼できるパートナーを見つけることが大切ですね!

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生