実家を相続してから売却までの流れを解説!名義変更の3つのパターンとは

実家相続

実家の相続は、売るのか住むのか兄弟間の争い、名義変更、相続税の支払いなど、気力も体力も消耗するものです。
さらに「売却する」となると、相続の手続きに加え、不動産会社とのやりとりや税金の知識も必要になります。

実家の相続をスムーズに行うために、実家相続で抑えておきたいポイントを簡単にわかりやすくご紹介します。

この記事を読むとわかること

  • 実家相続の流れ
  • 名義変更から売却の流れ
  • 実家の相続手続き、相続税の納付期限、など

少ない手間で、相続した実家の手続きや売却を完遂するためにぜひお役立てください。

相続した実家を売ることが決まっていて、不動産会社に相談したい方は「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」を使って一括査定を申し込んでみることをおすすめします。一度の申し込みで複数の不動産会社に査定依頼ができるので、カンタンに価格の比較が可能です。

この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.実家相続の基本的な流れ

実家相続の基本的な流れ

実家相続の基本的な流れは以下の通りです。

  • Step1.遺言書の有無を確認
  • Step2.財産の確認
  • Step3.遺産分割協議
  • Step4.相続税の申告

実家を相続したら、兄弟の誰が相続するのか、住むのか、売るのか、実家をどうするのかという話し合いをしなければなりません。
相続した実家の名義変更を行う前に、遺言書の有無の確認や財産全体の確認が必要です。

遺言書の確認や遺産分割協議など、実家の相続が発生した時の基本的な流れをわかりやすく解説します。

1-1.遺言書の有無を確認

実家を相続したら、まずは遺言書の有無を確認します。
法的に有効な遺言書がある場合と遺言書がない場合では、遺産の分け方が異なるためです。遺言書の改ざんを防ぐために、公証役場や法務省、司法書士に預ける、銀行の貸金庫に原本を保管するケースもあり、遺言書を探す場合は、心当たりのある場所に問い合わせをしてみましょう。
自宅のわかりにくい場所に遺言書を隠している場合は、見つけられないこともあります。

遺言書には公正証書遺言、自筆遺言があり、被相続人が法的に有効な遺言書を残した場合は、遺言書の内容に従って遺産を分けます。
故人が生前自己流で書いた遺言書では有効と認められないこともあるため、注意してください。
法的に有効な遺言書がない場合は、全ての遺産は全ての相続人の共有の状態で引継ぎます。

ただし、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議による話し合いで決めた割合で配分することが可能です。

1-2.財産の確認

財産の内容と、総額がいくらあるのか確認するために、全ての財産を調査します。これは、財産に対して生じる相続税を把握するためです。相続に関する協議を円滑に進めるためにも、財産の確認は慎重に行ってください。

相続の対象になるのは、被相続人が遺した「金銭に変えられる全ての財産」で、実家の物件や土地も含まれます。

また、相続財産には、住宅ローンやその他の金融機関で借りた借金などの債務も含まれます。
そのため、家にローンが残っていた場合、相続人に支払い義務が生じるので注意してください。
もし、家の価値とローンの残債を比較し、残債のほうが多いオーバーローン物件であることがわかった場合は、不利益を被る相続になる可能性があります。

なお、不動産を相続する際には、不動産査定を受けることをおすすめします。ましょう。不動産の価値の明確な根拠なく相続の内容を決めてしまうと、相続後に兄弟間でトラブルになる可能性があるためです。
相続財産に不動産や車などの物品が含まれる場合、遺産の正しい価値を調べてください。

1-3.遺産分割協議

相続財産の内容と相続方法を決めるために、相続権がある人が全員で集まって遺産分割協議を行います。

遺産分割協議とは、相続する全ての財産の分割方法について決めるために、相続人全員で話し合うことです。 遺産分割協議は、1人でも欠席する方がいた場合には無効になります。

具体的には、予め確認しておいた相続内容や相続税の金額を参照しながら、相続するものと権利を放棄するもの、誰が相続するかを決めていきます。

不動産相続の場合、遺産の分割方法は4つです。分割方法を予め確認しておくことで、更に協議がスムーズに進みます。

現物分割 現物をそのまま分与する
換価分割 実家を売却し、売却代金を分割して相続する。
代償分割 相続人の一人が代表して相続する。
他の相続人には、分与した場合の実家の価格相当の代金を支払う、または物を分与する。
共有分割 共有名義として相続する

4つの分割方法の中から財産の価額や税金、相続に対する気持ちなどを話し合った結果を考慮し、適した分割方法を選びます。
相続人は遺産分割協議で決定した内容を「遺産分割協議書」として作成しなければなりません。遺産分割協議が成立したという証明として、相続の手続きに使用されます。

遺産分割協議が難航する場合、家庭裁判所の分割調停を利用するという手段もあります。

遺産分割協議に関するトラブルと対処法は以下の記事で詳しく紹介していますので、参考にしてください。

1-4.相続税の申告

実家や金銭を相続した場合、相続税の支払いが発生します。
相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内の申告期限内に相続税を申告してください。

ただし、相続税の課税対象になるのは、相続財産が一定の金額を超えた場合だけです。
相続財産が、相続税の基礎控除の範囲内であれば相続税はかからず、申告する必要はありませんので、自身が相続した財産が課税対象になるのか確認してください。

相続税の基礎控除は以下のように計算します。

「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」
※2015年以降の適用

申告期限内に協議が整わないと、相続税の軽減措置が受けられなくなる場合があるので注意してください。
相続税の相談は専門的な知識を必要とするため、相続税に詳しい税理士や税務署に相談するのがよいでしょう。

相続税の申告については以下の記事でも詳しく解説していますのであわせてご確認ください。

2.実家の相続から売却までの流れ

相続した実家を売る場合、不動産売却の流れを抑えておくとスムーズに売却できます。相続した実家の売却の流れは以下の通りです。

売却の全体の流れ

売却の流れを順番にわかりやすくご紹介しますので、実家を相続した時の参考にしてください。

2-1.名義変更

相続した物件を売却する場合には、名義変更が必要です。
2022年現在は、登記変更義務はありませんが、2024年4月1日から義務化されます。
登記簿上の所有者と実際の売主が異なる物件は、大金を支払う買主にとってはリスクが高過ぎるため、売却が極めて難しくなることが理由です。
相続のための名義変更には、以下の式で求められる登録免許税が必要となります。

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%

登録免許税は、名義変更の手続きをする際、法務局に支払う手数料のような税金のことです。
また、司法書士に登記を依頼する場合には、別途司法書士手数料が発生します。
司法書士手数料の相場は、5~10万円程度です。

2-2. 価格査定

相続した実家の名義変更が終わったら「実家がいくらで売れるのか」家の査定を行います。

査定とは不動産会社に依頼して「売却予想価格」を出すことですが、適正な売り出し価格を決めるために必ず必要なステップとなります。
共有で実家を売却するには、共有者全員が査定額に納得することが必要です。

実家の査定は1社だけではなく複数の不動産会社の査定結果を横並びにして比較すると、どこの会社が高く売ってくれそうかわかる上に、市場の相場観も把握できるのでおススメです。

また、遠隔地にある実家のような不動産は、自分の住まいの近辺の不動産会社よりも、実家が所在する地域の不動産会社に依頼した方が高く売れます。
ただ、そうは言っても、どこの会社が高く売ってくれそうかなど、普段不動産の取引をしている人でもなければ見当もつきませんよね。
そこでおススメなのが、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」です。

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また、全国約1,800社の不動産会社が登録されており、遠方にある実家の売却でも最適な不動産会社をシステムが自動でピックアップしてくれます。

相続物件の売却には、相続税の納税や税金の節税特例を利用できる期限があるため、早く高く売ってくれる不動産会社を探すことがなんといっても重要です。
不動産売却 HOME4U」なら、早く高く売ってくれる不動産会社を簡単に見つけることができますので、ぜひご利用になってみてください。

2-3.媒介契約の締結

売却を依頼したい不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。
媒介契約とは、不動産会社に依頼する仲介の契約のことです。
媒介契約の詳細は「媒介契約は3種類!メリット・デメリットと有利な契約について解説」で解説していますので参考にしてください。

2-4.売却活動の開始

媒介契約を締結したら、いよいよ実家の売却活動の開始となります。
売却活動は、基本的に不動産会社に全てお任せで大丈夫です。
住宅の売却活動期間の長さは、一般的には3ヶ月程度となります。
相続税の納税期限が迫っている方は、逆算してスケジュールを組んでおくようにしましょう。

2-5.売買契約の締結

実家を買ってくれる買主が見つかったら、売買契約を締結します。
売買契約では、売主は買主から手付金を受領します。
手付金は、引渡までに解除がなければそのまま売却代金の一部となりますが、引き渡が完了するまで手付金を使わないように注意してください。

2-6.引渡し(残金決済)

不動産の売却では、一般的に売買契約と引渡しを別日で行います。
売買契約と引渡しは、1ヶ月程度時間を空けることが多いので、引っ越しや実家の後片付けが済んでいないなら、この期間に完了させてください。
引渡では、手付金を除く残金が入金されます。

2-7.確定申告

売却によって税金が発生する場合や、節税のための特例を利用する場合には、売却後に確定申告が必要です。
確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日の間までに行います。
税金については「6.相続した実家を売ったときの税金」にて詳しく解説します。

3.実家の相続で知っておくべき4つの期限

最初に実家の相続で知っておくべき4つの期限について解説します。

3-1.相続放棄は3ヶ月以内

相続放棄とは、相続の権利を全て放棄することを指します。
相続放棄は、基本的に親が大きな借金を残しているようなケースで、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が大きい場合に利用する制度ですが、例えば兄に全財産を相続させるために弟が相続放棄を行うといったケースで利用されることもあります。

相続放棄の期限は、相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内です。

3-2.準確定申告は4か月以内

準確定申告とは、被相続人(他界した人)が他界した年の1月1日から他界した日までの所得の確定申告のことです。
被相続人が会社員でなかった場合でも、アパート経営等をしており、不動産所得等の確定申告を行っていた場合には、準確定申告を行う必要があります。

準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

3-3.相続税納税は10ヶ月以内

相続税の納税義務のある人は、期限までに相続税の申告と納税を行う必要があります。
国税庁によると、令和2年分における相続税の課税対象者の割合は8.8%でしたので、相続税は全国の資産家のうち、上位約8.8%以内に入る人が課税させることになります。

相続税納税の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

【参考:相続税の納税義務者の割合】

3-4.売却の節税特例期限は3年

相続した実家の売却で節税の特例を利用する場合、およそ3年の売却期限があります。
節税の特例には「取得費加算の特例」と「相続空き家の3,000万円特別控除」の2種類があります。
税金に関しては、「6.相続した実家を売った時の税金」にて詳しく解説します。

それぞれの特例の期限は下表のとおりです。

税金の特例 期限
取得費加算の特例 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで
相続空き家の3,000万円特別控除 相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで

4.名義変更の3つのパターン

実家の不動産相続

2021年1月時点では、相続した物件について登記の名義変更の法律的な義務はありません。
ただし、売却する場合には、実務上、名義変更が必要となります。
理由としては、登記簿上、売主が不明瞭な物件は買主がリスクを感じ、実質的に売れないからです。

この章では名義変更の3つのパターンについて解説します。

4-1.遺言による名義変更

相続では、遺言(いごん)が残されている場合には遺言に従って名義変更することが原則です。
相続が発生したら、まずは遺言書が残されているかを確認することが必要となります。

遺言書には、公正証書遺言と公正証書遺言以外の遺言(通称「自筆遺言」)の2種類があります。

公正証書遺言は、公証役場に残されています。
自筆遺言は銀行の貸金庫や書斎に残されていることが一般的です。

遺言により名義変更を行う場合には、以下の書類が必要となります。

  • 遺言証書
  • 遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
  • 遺言により相続する相続人の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 受遺者の戸籍謄本
  • 相続関係説明図(任意)

自筆遺言の場合には、名義変更を行う前に家庭裁判所による検認の手続きが必要です。
封印されている自筆遺言は、家庭裁判所で開封します。
家庭裁判所以外で開封すると過料の制裁があるため、ご注意ください。

4-2.遺産分割協議による名義変更

遺言書がない場合で特定の誰かに実家を引き継がせるなら、遺産分割協議による名義変更を行います。

また、遺言書があっても、遺言書とは異なる分割を行いたい場合には、遺産分割協議によって遺言の内容を変更することもできます。

遺産分割協議とは、相続後に相続人同士で遺産の分け方を決める話し合いのことです。
遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の同意を要します。

遺産分割協議によって名義変更をするする場合、「遺産分割協議書」という書類を作ることが必要です。
遺産分割協議書には、相続人全員が署名と実印の押印を行います。

【遺産分割協議による名義変更の必要書類】

  • 遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
  • 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続関係説明図(任意)

4-3.共有のままの名義変更

相続した実家は、特定の人に引き継ぐことなく、相続人全員で共有のまま名義変更して売却することも可能です。
特に分割をせず、そのまま法定相続分で共有することを法定相続と呼びます。

法定相続で名義変更する場合の必要書類は以下の通りです。

【法定相続による名義変更の必要書類】

  • 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続関係説明図(任意)

5.実家を共有名義で売る場合のポイント

実家を共有名義で売る場合には、以下の3点がポイントです。

  • 共有者全員の同意を得る
  • 最低売却価格を決める
  • 窓口担当者を決める

1つ目は、共有者全員の同意を得るという点です。
共有物の売却には、共有者全員の同意が必要となり、1人でも反対者がいると売却できなくなります。
また、全員で売却する意思があったとしても、価格で同意が得られないことがあります。
価格でも同意を得るには、複数の不動産会社に査定を依頼して、売却予想価格をしっかりと調べることが重要です。

2つ目は、最低売却価格を決めるという点です。
中古住宅の売却では、値引き交渉等によって実際に売れる成約価格が売り出し価格よりも低くなることがあります。
共有物の売却は、共有者全員の同意が必要であることから、値引きに関してもどこまで許容するか全員の同意が必要です。

あらかじめ全員で「いくら以上なら売る」と下限値を決めておけば、値引きを要求されたときに意思決定がしやすくなりますので、最低売却価格は必ず決めておくようにしてください。

3つ目は、窓口担当者を決めるという点です。
不動産の売却では、不動産会社や司法書士、買主等の第三者とのやり取りが発生します。
共有物件の場合、窓口を一本化しておかないと、第三者とのやり取りがスムーズにいかなくなります。
窓口担当者を決め、第三者とのやり取りを行う体制を整えてから売却活動をスタートさせましょう。

6.相続した実家を売ったときの税金

相続した実家を売ったときの税金 家模型この章では相続した実家を売ったときの税金について解説します。

6-1.識譲渡所得と税率

実家に限らず、個人が不動産を売却した場合、譲渡所得が生じると税金が発生します。
譲渡所得は売却額のことではなく、以下の計算式で求められる売却益のようなものとなります。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1譲渡価額とは売却価額です。
※2取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用のことを指します。

上記の計算式の結果、譲渡所得がプラスだと税金が発生し、譲渡所得がマイナスだと税金は発生しないことになります。

税金が発生する場合、税金は譲渡所得に税率を乗じることで求めます。

税率は、売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」という2種類に分かれます。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

相続物件の所有期間は、「親の所有期間を引き継ぐ」というのがポイントです。
親の所有期間が5年超であれば、相続人が相続してから5年以下で売却したとしても長期譲渡所得の税率が適用されることになります。

6-2.取得費の求め方

ここで、改めて譲渡所得の計算式を示します。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

譲渡所得を計算するにあたっては、「取得費」を求めることがポイントです。
取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額でした。
取得費を計算式で表すと、以下のようになります。

取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)

実家のような居住用(非業務用)の不動産の減価償却は以下の計算式で求めます。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

経過年数は親が購入したときから売却の引渡までの所有期間を表し、築年数ではないという点がポイントです。
経過年数は、6ヶ月以上の端数が出た場合は1年と計算し、6ヶ月未満の端数が出た場合は切捨てで計算します。

(償却期間の計算例)

1996年3月~2019年6月・・・23年3ヶ月は「23年」として計算
2001年2月~2019年10月・・・18年8ヶ月は「19年」として計算

償却率は建物の構造によって以下の数値を採用します。

構造 非事業用の償却率
木造 0.031
木造モルタル 0.034
鉄骨造(3mm以下) 0.036
鉄骨造(3mm超4mm以下) 0.025
鉄骨造(4mm超) 0.020
鉄筋コンクリート造 0.015
鉄骨鉄筋コンクリート造 0.015

 

建物の減価償却は、永久に行われるわけではなく、建物購入額の95%に達した時点で終了します。
つまり、建物取得費は建物購入額の5%まで小さくなったらそれ以上の減価償却は打ち止めということです。

相続した実家は、経過年数が長期であることが一般的なことから、建物取得費が下限値である建物購入額の5%に達していることが良くあります。

また、実家の売却の場合、購入時の売買契約書を紛失していることも多く、購入額がわからないケースもあります。

購入額がわからない場合には、「概算取得費」というものを用います。
概算取得費とは「譲渡価額の5%」です。

【概算取得費】

取得費 = 譲渡価額の5%

さらに、実家の売却では、建物の購入額はわかっていても、土地だけ購入額がわからないケースもあります。

土地だけ購入価額が不明の場合、まずは建物取得費を求め、その後、以下の計算式で土地取得費を求めます。

土地取得費 = (譲渡価額 - 建物取得費) × 5%

6-3.取得費加算の特例

相続税を納税した方は一定の要件を満たしていると、相続した不動産を売却した際、「取得費加算の特例」という節税特例を利用することができます。

取得費加算の特例を利用すると、譲渡所得は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 取得費に加算する相続税額 - 譲渡費用

取得費に加算する相続税額の計算式は以下の通りです。

その者の相続税額= その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額
その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額

取得費加算の特例を適用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
  2. その財産を取得した方に相続税が課税されていること。
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

【国税庁HP】

6-4.相続空き家の3,000万円特別控除

相続で引き継いだ実家で一定の要件を満たすものは、相続空き家の3,000万円特別控除を利用することができます。

6-4-1.計算式

相続空き家の3,000万円特別控除を適用した場合の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

6-4-2.要件

相続空き家の3,000万円特別控除は、非常に細かく要件が定められているという点が特徴です。
主な要件だけ列挙すると、以下のものがあります。

  • 相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • マンション以外の建物であること
  • 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家であること
  • 家屋を取り壊さずに売る場合、売却時において、その家屋が現行の耐震基準を満たしていること

「相続空き家の3,000万円特別控除」のポイントは、売却する実家がマンションだった場合、特例を利用できないことです。
次に、戸建てでも利用できるものは昭和56年5月31日以前に建築された家に限られます。
さらに、その家が売却時に現行の耐震基準を満たしていることが必要です。

昭和56年5月31日以前に建築された家屋は、旧耐震基準と呼ばれる時期の建物であり、一般的には現行の耐震基準を満たしていない物件が多いです。

現行の耐震基準を満たしていない物件を売る場合は、売却前に耐震リフォームが必要となります。
よって、相続空き家の3,000万円特別控除が利用できる物件は相当に絞られます。

6-4-3.取り壊して売却すれば適用できるケース

昭和56年5月31日以前に建築された建物であり、かつ、現行の耐震基準を満たしていなくても、取り壊して売却すれば相続空き家の3,000万円特別控除を利用できることになっています。

相続した空き家で利用できる3,000万円特別控除

一般的に、木造戸建て住宅の耐震リフォームの相場は500万円程度、取り壊し費用の相場は150万円程度ですので、取り壊して売却した方が有利です。

6-4-4.他人に貸すと利用できない

相続空き家の3,000万円特別控除では、相続してから空き家を一度でも他人に貸してしまうと利用できないといった要件も存在します。

相続空き家の3,000万円特別控除は、適用要件を満たすことがかなり難しいので、しっかりと要件を確認したうえで適用するようにしてください。

【国税庁HP】

なお、「相続空き家の3,000万円特別控除」と「取得費加算の特例」は選択適用となるため、両方とも適用できる場合には、いずれか一方の節税効果の高い方を採用することになります。

6-5.低未利用土地等の100万円特別控除

売却額が500万円以下となる不動産を売却した場合、一定の要件を満たすと低未利用土地等の100万円特別控除という特例が利用できます。

「低未利用土地等」という名称になっていますが、「等」ですので実家のような空き家にも適用することが可能です。

低未利用土地等の100万円特別控除を適用した場合の譲渡所得は以下のようになります。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 100万円

低未利用土地等の100万円特別控除を適用するには、以下の要件を満たしていることが必要です。

  1. 譲渡した者が個人であること。
  2. 譲渡の年の1月1日において、所有期間が5年を超えること。
  3. 譲渡価額の合計が500万円以内であること。
  4. 譲渡した物件が都市計画区域内にあること。
  5. 譲渡した物件が「低未利用土地等であること」および「譲渡後の土地等の利用」について市区町村長の確認がなされたものであること。

主な要件としては、「譲渡価額の合計が500万円以内であること」と「物件が都市計画区域内にあること」の2点です。

都市計画区域とはある程度人の住んでいる市街地であれば、基本的に都市計画区域に指定されています。
よって、戸建て住宅街にあるような500万円以下の物件であれば、低未利用土地等の100万円特別控除が利用できるイメージです。

低未利用土地等の100万円特別控除は、相続空き家の3,000万円特別控除と比べると、かなり要件が緩い点が特徴となっています。

売却価格が500万円以下となるようなケースでは、ぜひ利用を検討してみましょう。

まとめ

実家を相続した場合、さまざまな手続きを行いますが、守らなければならない期限があります。

  • 相続放棄が3ヶ月以内
  • 準確定申告が4ヶ月以内
  • 相続税納税が10ヶ月以内
  • 売却の節税特例期限は3年、等

相続が発生した直後は気持ちの整理がつかないこともあり、なかなか行動が難しいかもしれませんが期限内に対処できるよう注意してください。

さらに、実家を相続してから売却するまでの全体の手順をご紹介しました。
スムーズに相続を進めるためには、まず、遺産の分割方針を決めることがポイントです。相続人全員で遺産の分割方針を決めなければ、先の手順に進めませんし、勝手に進めればトラブルの元になります。

相続人が複数いる場合には、全員の合意を得た上で取り掛かるようにしてください。

不動産売却 HOME4U」で複数の不動産会社から査定額を提示してもらうことで、相続人全員が金額に対して共通意識を持ちやすくなり、結果として早く高く売るコツにもなります。

また、相続した実家を売ったときは、譲渡所得が生じると税金が発生します。要件が合致していれば相続空き家の3,000万円特別控除が利用できるかもしれませんので、要件をしっかり確認してから売却することをおすすめします。

この記事のポイント

1.実家を相続してから売却までの流れは?

実家を相続してから売却までの流れは以下の通りです。

  1. 遺言書の有無を確認
  2. 財産の確認
  3. 遺産分割協議
  4. 相続税の申告

詳しくは「1.実家相続の流れ」で解説しています。

2.相続した不動産を売却する際の流れは?

相続した不動産を売却する際の流れは以下の通りです。

  1. 名義変更
  2. 価格査定
  3. 媒介契約の締結
  4. 売却活動の開始
  5. 売買契約の締結
  6. 引渡し(残金決済)
  7. 確定申告

詳しくは「2.実家を相続してから売却までの流れ」で解説しています。

3.実家を共有名義のまま売る場合のポイントは?

実家を共有で売る場合のポイントは以下の通りです。

  • 共有者全員の同意を得る
  • 最低売却価格を決める
  • 窓口担当者を決める

詳しくは「5.実家を共有で売る場合のポイント」で解説しています。