共有持分とは?共有の概要や権利・制限、共有の解消方法を解説

共有持分とは 権利・制限・解消方法

1つの不動産を複数人で共同して所有することを「共有」、共有者の所有権割合を「共有持分」といいます。

権利関係が複雑な共有不動産は、活用が難しいケースもあります。不動産の共有を避けたい場合は、不動産の分割や売却、放棄などの方法で共有状態を解消しましょう。

本記事では共有持分の概要やリスク、解消方法を解説します。

この記事を読むと分かること
  • 共有持分の概要
  • 共有持分の権利と制限
  • 共有持分の解消方法
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1.不動産の共有持分とは?

家系図

はじめに、不動産の共有と共有持分の概要を解説します。

1-1.共有・共有持分とは?

1つの不動産を複数人で所有することを「共有」と呼び、共有者の所有権割合を「共有持分」、共有者が持つ権利を「共有持分権」と呼びます。共有や共有持分については民法に規定があるため、その取扱いは民法に従わなければなりません。

共有持分は、特に指定がない限り、共有者間で同率であると推定されます。また、共有者の一人が持分を放棄したり、死亡して相続人がいなかったりする場合、その持分はほかの共有者に帰属します。

(共有持分の割合の推定)
第二百五十条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

引用:“民法 第二百五十条”. e-Gov法令検索

(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

引用:“民法 第二百五十五条”. e-Gov法令検索

共有持分については「共有持ち分とは?買取や売却のトラブルを紹介」「マンションの共同名義とは?種類やメリット・デメリットを全解説」でも紹介しています。

1-2.不動産の共有が発生する原因

不動産の共有が発生するケースには以下のようなものが挙げられます。

  • 住宅を夫婦や親子でペアローンを組んで購入した
  • 私道を複数の隣地所有者が共有して使用している
  • 複数の相続人が1つの不動産を相続した

不動産の共有を避けたい場合は、上記のような状態にならないよう注意しましょう。

2.共有持分の権利と制限

共有持分を有する共有者には、共有物に対しての権利が与えられると同時に、当該権利に対する制限も受けます。本章では、以下の4つの権利と制限について解説します。

  • 共有物の使用(民法第249条)
  • 共有物の変更(民法第251条)
  • 共有物の管理(民法第252条)
  • 共有物の保存(民法第252条)

2-1.共有物の使用(民法第249条)

各共有者は、共有物の全体について、共有持分に応じて使用する権利があります。

また、自己の持分を超えて使用をする場合には、ほかの共有者に対してその対価を償還する義務があります。例えば、共有不動産を共有者Aのみが使用している場合、そのほかの共有者は使用の対価を共有者Aに請求できます。

(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。

引用:“民法 第二百四十九条”. e-Gov法令検索

2-2.共有物の変更(民法第251条)

共有物の変更とは、建物の取り壊しや第三者への売却、共有物全体に抵当権などを設定することなどを指します。

変更には軽微な変更とそれ以外の変更があり、それぞれ取り扱いが異なります。

軽微な変更とは、形状または効用の著しい変更を伴わないものを指し、共有者の持分価格の過半数で決定できます。軽微な変更以外のものの場合、決定には共有者全員の同意が必要です。

なお、裁判所の許可があれば、共有者や共有者の所在が不明である場合でも、その共有者以外の者で変更を決定できます。

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

引用:“民法 第二百五十一条”. e-Gov法令検索

2-3.共有物の管理(民法第252条)

共有物の管理とは、共有物を利用・改良する行為で、共有物の改装や共有する宅地の整地、第三者への共有不動産の賃貸などがこれにあたります。

共有物の管理は、共有者の持分価格の過半数で決定されます。なお、裁判所の許可があれば、共有者や共有者の所在が不明である場合でも、その共有者以外の共有者の持分価格の過半数で管理行為が可能です。

(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。

引用:“民法 第二百五十二条”. e-Gov法令検索

2-4.共有物の保存(民法第252条)

共有物の保存とは、共有物の現状を維持するための行為を指し、共有物の修繕や共有物を不法占有している者への明渡請求などがこれにあたります。

保存行為は、ほかの共有持分権者の利益にもなることから、共有者が単独で行なえます。ただし、保存行為と変更行為の境界線は曖昧であるため、意図せずほかの共有持分権者の利益を侵害してしまわないよう留意しなければなりません。

共有持分権者の利益を侵害した場合、損害賠償請求をされる、原状回復請求をされるといった事態に陥ることもあるため、注意が必要です。

参考:“民法 第二百五十二条”. e-Gov法令検索

3.不動産を共有するリスク

リスク

不動産の共有にはリスクが伴います。不動産を共有しようとする際は、ここで解説するリスクをふまえて、共有すべきか否かを判断しましょう。

なお、土地共有のメリット・デメリットについては「土地を共有名義にするデメリット│解消や売却する方法は?」でより詳しく解説していますので、参考にしてください。

3-1.不動産の利活用が難しい

各共有者には共有不動産の使用が認められていますが、その管理や変更にはほかの共有者の同意が欠かせません。

そのため、売却したり、貸し出したり、リフォームしたりといった不動産の利活用に制限が生まれます。不動産を活用しようと思っても、ほかの共有者の賛同が得られず、活用に至らない場合も珍しくありません。

また、運用の自由度が低いため、共有不動産は買い手がつきにくいというデメリットもあります。

3-2.権利関係が複雑になる

共有者それぞれが共有不動産に対して権利を有するため、共有不動産の権利関係は複雑にならざるを得ません。共有者の一人に相続が発生すると、さらに共有者が増え、権利関係はより複雑化します。

共有者が増加すれば不動産の利活用はさらに難しくなり、共有者間でトラブルが発生する可能性も高まるでしょう。

4.不動産の共有を解消する方法

家を渡す

不動産の共有は、以下のような方法で解消できます。

  • 共有物を分割する
  • 共有持分を放棄する
  • 共有持分を売却する

なお、不動産相続時に共有状態となるのを回避する方法については、「兄弟争い勃発!土地を相続した時に上手に分ける5つの方法」で解説していますので、併せてご覧ください。

4-1.共有物を分割する

共有者は、民法第256条に基づき、いつでも共有物の分割(共有状態の解消)を請求できます。

共有物の分割方法には全面的価格賠償(代償分割)、現物分割、換価分割(代金分割)の三種類があり、共有者間での話し合いなどにより分割方法を決定します。

(共有物の分割請求)
第二百五十六条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

引用:“民法 第二百五十六条”. e-Gov法令検索

また、共有物の分割について共有者間で合意が得られなかった場合や、共有者に行方不明者がいる場合、共有者と連絡が取れない場合などには、分割を裁判所に請求できます。

(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。

引用:“民法 第二百五十八条”. e-Gov法令検索

以降では、三種類の共有物分割方法について詳しく解説します。

4-1-1.全面的価格賠償(代償分割)

全面的価格賠償(代償分割)は、共有者の一人が単独で共有持分すべてを取得し、代わりにほかの共有者に対して代償金(対価)を支払う分割方法です。

全面的価格賠償(代償分割)

不動産を一括で取得したい共有者と、不動産を手放して現金を手に入れたい共有者が存在する場合に適した方法です。ただし、不動産を取得する者が不動産の価値に見合う代償金をほかの共有者に支払えない場合、全面的価格賠償(代償分割)は成立しづらくなります。

また、特定の共有者が取得する正当な理由があり、適正な買取価格の提示がなされ、支払い能力がある、といった条件を満たしていなければ全面的価格賠償は認められません。

4-1-2.現物分割

現物分割は、不動産を物理的に分ける分割方法で、建築物が建っていない土地に適用されます。ただし、分割によって土地の価値が著しく減少してしまう場合など、現物分割が適用できないケースも珍しくありません。

現物分割

4-1-3.換価分割(代金分割)

換価分割(代金分割)は、対象物を売却することで金銭に換価し、その金銭を共有持分に応じてそれぞれに分配する方法です。金銭に換価することで共有者間の不平等感を軽減できるため、共有不動産が不要な場合は換価分割を検討してみてもよいでしょう。

換価方法には、共同売却と形式的競売があります。

共同売却は、不動産会社などを通じて第三者に不動産を売却する方法です。売却には共有者全員の合意が必要であるため、合意形成に難がある場合は、共同売却は選択できません。

形式的競売は裁判所による売却です。形式的競売であれば、売却に反対する共有者がいたとしても強制的に手続きを進められますが、売却額は共同売却時より低くなる傾向にあります。

換価分割(代金分割)

4-2.共有持分を放棄する

共有持分の放棄は共有者単独で自由に行なうことができ、放棄された持分はそのほかの共有者に帰属します。

共有持分を放棄する際は、ほかの共有者に対して放棄の意思を表明するとともに、対象不動産の管轄法務局でほかの共有者に対して登記(持分移転登記)を行ないましょう。ただし、登記申請の際にはほかの共有者の協力が必要となる点に注意してください。

参考:“民法 第二百五十五条”. e-Gov法令検索

4-3.共有持分を売却する

共有している不動産全体を売却する際には、共有者全員の同意が必要になりますが、共有持分のみであれば単独で売却できます。

しかし、共有された不動産の所有にはリスクが伴うため、第三者への売却は難しいケースが多いです。そのため、共有者間で共有持分を売買するのが現実的だといえるでしょう。共有持分の売買により不動産が単独名義になれば、共有状態を解消できます。

共有者全員で相談し、共有不動産をまとめて第三者へ売却するのもおすすめです。共有不動産を専門的に取り扱う不動産会社もあるため、探してみましょう。

5.共有持分に関するよくあるQ&A

最後に、共有持分についてよくある質問とその回答を2つ紹介します。

5-1.共有者が認知症になった場合の対処法は?

共有者が認知症になった場合、成年後見制度を利用して、成年後見人が本人に代わって法律行為を行なうのが一般的です。制度の利用にあたっては家庭裁判所に申し立てを行ない、審問や調査、鑑定を経て成年後見人が選任されます。

参考:“成年後見制度とは”. 厚生労働省

5-2.共有者間で離婚した場合、持分はどうなる?

共有者間で離婚した場合、離婚後も共有状態が続きます。共有するリスクを回避したいなら、夫婦どちらかの単独名義にする・不動産を売却するなどして共有状態を解消するのがおすすめです。

離婚時マンション売却に関する5つの注意点と売却以外の方法」も参考にして、離婚後に不動産をどのように取り扱うべきかを検討しておきましょう。

また、住宅ローンを夫婦の共有名義で契約している場合、離婚後も住宅ローンの名義は共有状態のままとなります。「妻と共同名義の住宅ローン、離婚したらどうなるの?」を参考に共有名義の解消について話し合い、トラブルを避けましょう。

まとめ

1つの不動産を複数人で所有する「共有」は、不動産の活用を困難にし、権利関係を複雑にするというリスクがあります。共有によるリスクを回避するには、可能な限り共有状態を発生させないようにし、分割や売却などの方法で共有状態を解消させるのがおすすめです。

共有不動産を売却して共有状態を解消したい方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご利用ください。

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