法定代理人とは?種類と権限、法定代理人による不動産の売却方法を解説

法定代理人の権限 不動産の売却は可能?

法定代理人とは、本人に代わって法律行為をする代理人です。法定代理人の種類には、未成年者が対象の「親権者」や「未成年後見人」、判断能力が低下した成年が対象の「成年後見人」などがあります。

本記事では、法定代理人の種類と選任方法、任意代理人との違い、法定代理人による不動産の売却方法などについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • 法定代理人の種類と選任方法
  • 法定代理人と任意代理人の違い
  • 法定代理人が本人に代わり、不動産を売却する方法
「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ
  • 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を
  • 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格(※)”を見つけましょう
  • ※依頼する6社の中での最高価格
  • 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます

1.法定代理人とは?種類と選任方法

老夫婦

法定代理人とは、法律で規定された法定代理権を持つ人物のことです。「法定代理権」とは、ある人物に代わって、契約などの法律的な活動を行なう権利のことを指します。

法定代理人には、「親権者」「未成年後見人」「成年後見人」の3種類があります。

法定代理人の種類

ここでは、3種類の法定代理人の詳細について解説します。

1-1.親権者

親権者とは、未成年の子どもの保護者のことです。

18歳未満の子どもに対し、親権者は監護や教育、本人の財産を管理する権限を持ちます。親権者は、子どもの利益を守ることを前提に、これらの権限を行使できます。

両親が婚姻中であれば、本人の父と母が親権者となります。

しかし、両親が離婚する際には、どちらか一方を親権者として指定する必要があります。協議離婚・調停離婚では、話し合いによって親権者を決めますが、裁判離婚では、裁判所の判決によって親権者が決められます。

参考:
“民法第八百十九条”. e-Gov法令検索
“親権者”. 法務省
“18歳から“大人”に!成年年齢引下げで変わること、変わらないこと。”. 政府広報オンライン

1-2.未成年後見人

未成年後見人とは、親権者がいない未成年者の監護や養育、財産管理などを行なう法定代理人のことです。親権者が死亡、または行方不明になった場合や、親権者が悪意を持って権利を放棄したり、子どもの利益を著しく害したりする場合には、未成年後見人が選任されます。

なお、未成年後見人の選任が必要なケースは、主に以下のような場合です。

  • 未成年者に財産があるとき
  • 子どもを第三者の養子にするとき
  • 相続人として遺産分割を行なうとき

そして、未成年後見人を選任するには、以下2つの方法があります。

  • 親権者が遺言で未成年後見人を指定する
  • 遺言の指定がない場合、親族などの利害関係者が家庭裁判所に選任を申し立てる

参考:“民法第八百三十九条”. e-Gov法令検索

なお、状況に応じて、複数人の未成年後見人を選任したり、法人を選任したりすることも可能です。

1-3.成年後見人

成年後見人とは、成年被後見人に代わって、法律行為の支援補助をする法定代理人のことです。

成年被後見人とは、認知症や知的障がいなどで判断力が著しく低下した方や、財産の管理が難しい方が該当し、「精神上の障害により判断能力を欠くとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人」と定義されています(民法第8条)。印鑑や通帳を紛失したり、悪意のある第三者にだまされたりしないよう、成年後見人が財産の管理や生活面を支援します。

成年後見人を選任するには、家庭裁判所への申し立てが必要です。

成年後見人になるために必要な資格に関する定めはなく、親族や地域住民、弁護士や社会福祉士、法人などが成年後見人に選任されるケースもあります。

ただし、以下に該当する方が成年後見人になることはできません。

  1. 未成年者
  2. 成年後見人等を解任されたことがある方
  3. 破産者で復権していない方
  4. 本人に対して訴訟をしている、訴訟をしたことがある方、その配偶者または親子
  5. 行方不明の方

参考:
“後見Q&A”. 裁判所
“民法第八百四十七条”. e-Gov法令検索
“成年後見人等の選任と役割”. 厚生労働省

2.法定代理人と任意代理人の違い

任意代理人とは、任意後見制度に基づき、本人の意思により代理権を与えられた人物のことです。法定代理人以外の代理人は、すべて任意代理人である、と考えることもできます。

任意代理人と法定代理人の違いは、当事者の合意によって選任されるか、法律に基づいて選任されるか、という点にあります。

任意後見制度

つまり、任意代理人に誰を選ぶかは、本人が決めることができますが、法定代理人は家庭裁判所が選任するため、希望の方が選ばれるとは限りません。

また、任意後見人は法定代理人とは異なり、法律行為の取消権や同意権は与えられず、本人の生活や税産管理に関する、後見事務の代理権のみが与えられます。法定代理人の権利については、次章で詳しく解説します。

3.法定代理人が持つ権限

丸とバツ

本章では、法定代理人である「親権者」「未成年後見人」「成年後見人」の権限について解説します。

3-1.親権者・未成年後見人の権限

親権者と未成年後見人は、未成年者の身上監護、財産管理の権限を持ちます。未成年者が成年に達し、保護が不要になるまで、その権限は継続されます。

親権者と未成年後見人は、未成年者の法律行為を代理する、または同意を与えることができます。未成年者は成年者と比べて判断能力が劣るため、法律行為を行なうには親権者または未成年後見人の同意が必要なのです。

また、未成年者が同意を得ずに行なった法律行為に関して、親権者と未成年後見人は取消権や追認権を行使できます。

取消権によって、契約の無効化、支払い義務の無効化、返金請求などが可能です。一方の追認権とは、取り消せる契約を取り消さず有効にする権利のことを指します。

参考:
“民法第八百二十四条”. e-Gov法令検索
“民法第八百五十九条”. e-Gov法令検索
“民法第百二十条”. e-Gov法令検索
“民法第百二十二条”. e-Gov法令検索

3-2.成年後見人の権限

成年後見人が持つ権限は、代理権、同意権、取消権です。

さらに、成年後見人の役割は、法定後見制度にもとづき、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類に分類されます。

法定後見制度

後見(後見人) 保佐(保佐人) 補助(補助人)
対象者 多くの手続きや契約をひとりで行なうのが困難な方
(統合失調症など)
重要な契約や手続きをひとりで行なうのが不安な方
(中程度の認知症など)
本人にとって重要な契約や手続きをひとりで行なうのが不安な方
(軽度の認知症など)
権限 代理権
取消権
同意権
取消権
同意権
取消権

後見では、重度の精神障がいなどで判断能力がない成年被後見人の法律行為の代理権、取消権が与えられます。

一方、保佐と補助に関しては、判断能力が不足するものの、日常生活に支障がない方が対象となるため、法律行為の代理権はありませんが、特定の法律行為に関しては、裁判所の審判で代理権が与えられます。(民法876条の4第1項、876条の9第1項)。

また、保佐では同意権と取消権の範囲が限定されており、本人の意思を尊重しながら、重要な契約に関してサポートを行ないます。一方、補助では、本人にとって重要な取引のみに権限が制限されます。

参考:
“民法第八百七十六条の四”. e-Gov法令検索
“民法第八百七十六条の九”. e-Gov法令検索
“法定後見制度とは(手続の流れ、費用)”. 厚生労働省

4.法定代理人が不動産を売却する方法

家庭裁判所

本章では、未成年者の法定代理人、および成年後見人が、本人が所有する不動産を売却するための方法について解説します。

4-1.未成年者が所有する不動産の売却方法

相続や遺贈、贈与により、未成年者であっても不動産を取得するケースがあります。

前述のとおり、未成年者が法律行為をするには、親権者か未成年後見人の同意が必要です。そのため、未成年者が所有する不動産については、法定代理人が代理となって売却を行ないます。

具体的には、以下のような方法で手続きを進めます。

  • 親権者が売主となって売買契約を締結する
  • 親権者の同意を得て、法定代理人が売買契約に署名する
  • 親権者が不在の場合、未成年後見人が売買契約を締結する

未成年者が売主になるときに限り、法定代理人の同意が必要です。一方、親権者や未成年後見人が売買契約するときは、未成年者から同意を得る必要はありません。

ただし、親権者が未成年者の代わりに不動産を売却する場合、親権者の資格を証明するために住民票や全部事項証明書(戸籍謄本)などの書類が必要になります。

4-2.成年被後見人が所有する不動産の売却方法

成年後見人は、成年被後見人に代わって不動産を売却する権限を持ちます。ただし、売却する不動産の用途(居住用か非居住用か)によって、その方法は異なります。

4-2-1.居住用不動産の売却方法

居住用不動産とは、成年被後見人の現在の住まい、施設に入居する前の住まい、将来居住する可能性がある住まいのことを指します。売却する不動産が居住用不動産の場合、家庭裁判所に申し立てのうえ、許可を得なければなりません。

これは、現在の住まいや将来に住む家を勝手に売るような行為は、本人の生活や精神状態に悪影響をおよぼす可能性があるからです。家庭裁判所に居住用不動産の処分許可を得なければ、売買契約は無効となるので注意が必要です。

参考:
“民法第八百五十九条の三”. e-Gov法令検索
“民法第八百五十八条”. e-Gov法令検索

4-2-2.非居住用不動産の売却方法

非居住用不動産の場合、原則的に家庭裁判所の許可は不要です。通常の不動産と同じ流れで、売却手続きを行ないます。

ただし、成年後見人は本人の意思を尊重し、かつ本人の心身や生活の状況に配慮する必要があります。したがって、非住居用不動産であっても、売却の際は事前に家庭裁判所に相談することをおすすめします。

売却する必要がない不動産を売るなど、正当な理由がない行為は、成年後見人の義務違反と判断される可能性があります。義務違反とみなされた場合、成年後見人を解任されることもあるため、注意が必要です。

参考:“民法第八百五十八条”. e-Gov法令検索

5.法定代理人が関わる不動産売却の注意点

法定代理人が関わる不動産売却の際には、以下の点に注意しましょう。

5-1.未成年者の所有する物件の売買には法定代理人の同意が必須

法定代理人の同意を得ることなく、未成年者が不動産を売買した場合には、法定代理人は事後承認での追認、または契約の取消しが可能です。

法定代理人が取消権を行使すると、売買契約は「なかったこと」にされます。ただし、法定代理人による売買契約の取り消しは、一定期間内に行なう必要があります。

民法第20条では、未成年者と契約した相手方から、その法定代理人に対して、相手方が定めた期間内(1ヵ月以上の期間)に、追認するかどうかを返答するよう催告することができる、と定めています。

期限を過ぎると、売買契約を追認したことになり、以後の取消しはできなくなるため、十分に注意しましょう。

参考:“民法第二十条”. e-Gov法令検索

5-2.成年後見人には後見監督人の許可が必要

成年後見人が本人の不動産を売却する場合、居住用、非居住用を問わず、後見監督人の「同意」が必要です。

後見監督人は、家庭裁判所によって選任され、成年後見人を監督する役割を担います。具体的には、成年後見人が横領などの不正や、不適切な管理をしていないかを監督します。本人の親族などが成年後見人になったときなどには、後見監督人が選任されやすい傾向にあります。

後見監督人が選任されている場合には、後見監督人の同意を得てから、家庭裁判所に売却を申し立てることになるため、手続きに注意しましょう。

参考:“民法第八百六十四条”. e-Gov法令検索

まとめ

法定代理人とは、法律で規定された法定代理権を持つ人物のことで、「親権者」「未成年後見人」「成年後見人」の3種類があります。

法定代理人の種類によって与えられる権限は異なりますが、不動産を売却することは可能です。ただし、居住用不動産か非居住用不動産かによって、手続きが異なる場合もあるため、注意が必要です。

法定代理人として、不動産の売却をお考えの方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご利用ください。

不動産売却 HOME4U」は、23年の実績を誇る老舗の不動産査定サイトで、全国約2,500社の優良不動産会社のなかから、最大6社の査定価格をまとめて取り寄せできます。プライバシーマークを取得しており、個人情報保護も万全です。

不動産の査定価格には、数百万円もの差が生じるケースもあるため、複数社の査定結果や対応を比較検討し、有利な条件で売却できる不動産会社を見つけましょう。