空き家問題とは?3つの要因や将来予測、国の空き家対策を全解説

空き家問題とは 要因や対策を全解説

近年、いわゆる「空き家問題」が全国的に深刻化しています。空き家には、倒壊の危険や衛生面の問題があることから、空き家を発生させず、発生した空き家を劣化させない対策が政府主導で進められています。

本記事では、空き家問題の現状や要因を解説し、国の空き家対策の詳細のほか、個人でできる空き家対策についても紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 空き家問題の現状と将来予測
  • 空き家問題の3つの要因
  • 空き家問題への対策
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1.日本全国で深刻化する空き家問題とは?

空き家問題の現状を見る前に、空き家とは何か、空き家が引き起こしている問題とは何かを見ていきましょう。

1-1.そもそも空き家とは?

空き家とは、日常的に人が住んでいない住宅を指すのが一般的です。このほかに、「空家等対策の推進に関する特別措置法(以降、空き家対策特別措置法)」では、空き家を「おおむね年間を通して居住やその他利用がされていない建築物(住宅に限らない)」と定義しています。

参考:“空家等対策の推進に関する特別措置法”. e-Gov法令検索

また、総務省が行なっている「住宅・土地統計調査」では、空き家を以下の4つに分類して統計をとっています。

分類 定義
賃貸用の住宅 新築・中古に関係なく、賃貸の目的で空き家になっている住宅
売却用の住宅 新築・中古に関係なく、売却の目的で空き家になっている住宅
二次的住宅 別荘や住んでいる住宅とは別にたまに寝泊まりするなど、普段は人が住んでいない住宅
その他の空き家 上記以外に人が住んでいない住宅で、入院・転居などにより長期不在となっている住宅や取り壊し予定の住宅など

出典:“平成30年住宅・土地統計調査用語の解説”. 総務省統計局

空き家問題の多くは、長期間空き家が放置されることによって発生します。空き家のなかでも、活用の見込みがない「その他の空き家」が、空き家問題の中心になっています。

1-2.空き家が引き起こすさまざまな問題

放置された空き家は、適切な管理がされずに劣化し、保安上危険な状態になります。劣化した空き家は倒壊したり、屋根や壁が落下したりする危険性があるだけでなく、雑草が生い茂り、野生生物が棲みついて、衛生面や景観を悪化させ、地域住民の生活環境にも影響を与えます。

生活環境が悪化すれば、地域の防犯性も低下します。また、空き家を放置すると近隣の不動産の資産価値までも低下しかねないため、地域全体に影響を与える問題といえるでしょう。

空き家の屋根材の落下や火災によって他者に損害を与えた場合、空き家の所有者が損害賠償責任を問われることになりかねません。空き家を適切に管理せず放置し続けると、固定資産税の特例措置を受けられず税負担が増加したり、罰則が適用されたりする場合もあります。

したがって、空き家の所有者にとっても、空き家の適切な管理は大きな課題だといえるでしょう。

古い家を売る方法に詳しく知りたい方は、「古い家を売るには?6つの方法と注意点・税金の節税方法とは」もご覧ください。

2.データで見る、日本における空き家問題の現状

空き家

近年、日本全国で空き家が問題視されていますが、実際にどの程度問題が深刻化しているのでしょうか。統計資料をもとに、空き家問題の現状を見ていきましょう。

2-1.空き家数と空き家率の推移

1988年(昭和63年)から2018年(平成30年)の20年間で空き家総数は約1.5倍、「その他の空き家」の数は約1.9倍に増加しています。また、住宅ストック(既存の建物で売りに出されている住宅)の住宅総数に対する空き家率は、9.4%から13.6%に増加しています。

空き家数推移

引用:“空き家政策の現状と課題及び検討の方向性”. 国土交通省. (参照2024-03-29)

そして、全住宅ストックに占めるその他の空き家の割合は、全国平均で5.6%です。高知県・和歌山県などの6県ではその他の空き家の割合が10%を超えており、空き家の増加は地域差があることがわかります。

全住宅ストックに占める「その他の空き家」の割合

引用:“空き家政策の現状と課題及び検討の方向性”. 国土交通省. (参照2024-03-29)

2-2.活用されていない「その他の空き家」の状況

総務省の同調査によると、その他の空き家のうち約7割は一戸建ての木造住宅となっています。腐朽・破損ありの住宅は約101万戸存在しており、放置された空き家の劣化への対策は急務だといえるでしょう。

その他空き家の建て方・構造別戸数・割合

引用:“空き家政策の現状と課題及び検討の方向性”. 国土交通省. (参照2024-03-29)

また、国土交通省の「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」によると、空き家(居住世帯のない住宅)のうち77.5%が1980年(昭和55年)以前、つまり新耐震基準が制定される以前に建設されています。

空き家の建設時期

引用:“空き家政策の現状と課題及び検討の方向性”. 国土交通省. (参照2024-03-29)

地震などの災害が多い日本で耐震性能の低い空き家が多く存在し、そのうちの多くが劣化している現状は、非常時の建物の倒壊といったリスクを拡大させているといえるでしょう。

3.空き家問題が深刻化する3つの要因

空き家問題が深刻化する背景には、主に以下の3つの要因があります。

  • 高齢化・人口減少
  • 相続問題
  • 空き家管理・活用の難しさ

それぞれ詳しく解説します。

3-1.高齢化・人口減少

日本の人口は2008年(平成20年)頃をピークに減少しており、世帯数も2023年(令和5年)以降減少に転じる見込みです。

参考:“日本の世帯数の将来推計(全国推計) 2018(平成 30)年推計”. 国立社会保障・人口問題研究所(厚生労働省)

人口や世帯数が減少すると必要な住宅数も減少し、住宅数が充足します。人口減少によって住宅数が世帯数を上回ると、空き家が増加してしまうのです。

なお、国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査」によると、別の住宅への転居や死亡が空き家の発生原因の8割以上を占めています。今後、人口がさらに減っていくと予想されている昨今、人口減少に伴う空き家の増加は避けられないでしょう。

空き家に人が住まなくなった理由

引用:“令和元年空き家所有者実態調査 報告書”. 国土交通省住宅局. (参照2024-03-29)

3-2.相続問題

国土交通省の「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」によると、空き家の取得経緯の約55%を「相続」が占めています。

空き家の取得経緯

また、空き家の所在地と所有者の居住地の関係を見ると、全体の約3割が「所要時間1時間超」となっています。

空き家の所在地と所有者の居住地の関係

引用:“空き家政策の現状と課題及び検討の方向性”. 国土交通省. (参照2024-03-29)

遠隔地に住む相続人が住宅を相続すると、住宅に住む方がおらずそのまま空き家になってしまうでしょう。相続物件が遠方にあると空き家の手入れが行き届かず、放置された空き家は劣化し、さらに利活用の幅を狭めてしまいます。

また、相続時に親族間でトラブルが発生し、空き家になってしまった住宅の解体や売却をする合意が取れず、空き家が放置されるケースもあります。

3-3.空き家管理・活用の難しさ

空き家を劣化させないためには、定期的な管理作業が欠かせません。しかし、空き家管理には「空き家が遠方にあり管理が困難」「管理作業や管理の費用負担が重い」といった課題があります。このように、管理の難しさにより、空き家が放置されているのです。

また、空き家を活用しようにも、建物の老朽化により相談先が減って買い手・借り手がつかない、不要な空き家を解体する費用が高く、更地にしたとしても使い道がないといった課題もあります。

管理が難しく、活用予定がないため管理しても無駄になってしまう現状が、空き家問題をより深刻化させているといえるでしょう。

4.空き家問題はこれからどうなる?空き家の将来予測

空き家問題は、今後どのように進んでいくのでしょうか。

国土交通省によると、2018年(平成30年)時点で349万戸ある「その他の空き家」の総数は、2030年(令和12年)時点で470万戸にまで増加すると推計されています。

参考:“空き家政策の現状と課題及び検討の方向性”. 国土交通省 住宅局

前述のとおり、空き家は全国的な社会問題です。空き家の発生を抑制し、既存の空き家の状態を悪化させないために、政府は空き家の発生抑制や活用促進、管理適正化、除去の促進に取り組んでいます。

政府が行なっている空き家対策と個人でできる空き家対策については、以降で詳しく解説します。

5.「空家等対策の推進に関する特別措置法」で進む国の空き家対策

空き家バンクのチラシ

空き家対策が全国的な課題となるなか、国土交通省は2015年(平成27年)から「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、本格的に空き家対策に取り組んでいます。

参考:“空家等対策の推進に関する特別措置法”. e-Gov法令検索

空家等対策の推進に関する特別措置法の主な内容は、空き家に関する情報収集、適切な管理の促進、活用、税制上の措置などです。2023年(令和5年)には空き家への対策をさらに強化すべく、法律を一部改正して制度を拡充しています。

そこで本章では、国の空き家対策の概要を、3つに分けて紹介します。

5-1.国の空き家対策(1)特別控除で税制支援

空き家の発生を抑制する施策の一つとして、国は空き家の譲渡所得額に対する3,000万円の特別控除による税制支援を行なっています。相続した空き家等を一定期間内(売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に売却した場合に適用されるため、相続した空き家が放置される状況の抑制が可能です。

国の空き家対策(1)

参考:“被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例”. 国税庁

また、専門家と連携して空き家対策への意識を醸成し、セミナーや相談会等を実施して、空き家を発生させない環境づくりに努めています。

5-2.国の空き家対策(2)空き家バンクで活用を促進

発生してしまった空き家を放置させないためには、空き家を活用しやすい環境にする必要があります。そのために提供されているのが「空き家・空き地バンク(以降、空き家バンク)」です。

国の空き家対策(2)

全国の自治体の約7割が、すでに空き家バンクを設置しています。この空き家バンクを活用すれば、空き家の所有者と空き家が必要な方をマッチングできます。

そのほか、政府は空家等活用促進区域の指定により、接道規制や用途規制などを合理化し、空き家の建て替えなどがしやすい環境を整えるとともに、空き家活用のための環境づくりに取り組んでいます。

空家活用への取り組み 内容
接道規制の合理化 前面に接する道が幅員4m未満でも、安全確保策(※1)を前提に、建替え、改築等を特例認定する。
用途規制の合理化 各用途地域で制限された用途でも、指針に定めた用途(※3)への変更を特例許可する。
市街化調整区域の空家の用途変更 用途変更許可の際に、指針に沿った空家活用が進むよう知事が配慮する。

(※1)市区町村と特定行政庁(※2)が協議して指針に規定
(※2)人口25万人以上の市または都道府県等
(※3)市区町村が特定行政庁の同意を得て指針に規定

出典:“空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律”. 国土交通省住宅局. (参照2024-03-29)

また、2017年10月に、高齢者・障害者・子育て世帯などの住宅の確保に配慮が必要な方向けの住宅として、空き家を活用する仕組み(住宅セーフティネット制度)が制定されました。

さらに、空き家の取得・改修を対象に住宅ローン(フラット35地域連携型)の金利の引き下げ期間を当初の5年から10年に延長するなどの施策も行なっており、空き家活用を支援しています。

5-3.国の空き家対策(3)空き家の適切な管理・除却を推進

国は、著しく保安上の危険となる恐れがある空き家を「特定空き家」、放置すると特定空き家になりかねない空き家を「管理不全空き家」と定義し、空き家の劣化を防ぎ、不要な空き家を除去する仕組みを構築しています。

そして法改正により、特定空き家や管理不全空き家に対して行政が指導や勧告、行政代執行を行なう仕組みを導入しました。

勧告された空き家は固定資産税の住宅用地特例が解除され、減税措置が受けられなくなり、固定資産税が将来的に最大6倍になる可能性があります。空き家の適切な管理にメリットを設けることで、空き家の適正管理を促しているのです。

また、国土交通省の空き家対策総合支援事業では、空き家の活用・除去をする自治体への支援も行なっています。

なお、空き家や不動産にかかる税金について詳しくは、「空き家になると固定資産税は高くなるの?」「固定資産税・都市計画税~家や土地など不動産を所有しているとかかる税金~」もご覧ください。

6.空き家を放置しないために|個人でできる空き家対策

解体される空き家

空き家問題は、誰もが当事者になり得る社会問題です。空き家を所有している場合や、これから空き家を所有する可能性がある場合、空き家による問題を発生させないためにどのような行動をとればよいのでしょうか。

そこで最後に、個人でできる空き家対策を4つ紹介します。

6-1.空き家について早めに外部に相談する

空き家を所有している場合や空き家を相続する可能性がある場合は、自治体や専門家へ相談し、空き家を今後どのように管理・活用するか検討しましょう。早めに相談することで空き家の劣化を防ぎ、より幅広く利活用の方法を模索できます。

自治体によっては空き家に関するセミナーを開催したり、空き家に対する自治体独自の支援制度を設置したりしている場合もあります。

参考:“市町村が行う住宅に係る支援制度(空き家)について”. 千葉県

6-2.空き家を管理・活用するサービスを利用する

民間の空き家管理・活用サービスでは、空き家の見回りや、活用したい方とのマッチングなどを利用できます。費用はかかってしまいますが、少ない手間で空き家を維持管理できるため、空き家の管理が難しい方は利用してみるとよいでしょう。

そのほか、空き家の家財を片付けるサービスを扱う会社もあります。家財が片付けば、空き家を売却したり賃貸物件として貸し出したりしやすくなるため、維持管理以外の目的でもぜひそのような会社を活用してみてください。

6-3.空き家を売る・貸す

放置している空き家の売却や貸し出しができれば、収益を得られる可能性があります。空き家バンクに登録したり、不動産会社へ相談したりして、買い手・借り手がいないか探してみましょう。

売却や賃貸のために空き家をリフォームする場合は、政府の支援事業を活用するのもおすすめです。活用できる事業がないか、自治体に相談してみましょう。

空き家の売却については、「空き家売却の方法と流れ│特例・費用・不動産会社の選び方も解説」「空き家買取は業者選びが重要!依頼先の選び方や買取の特徴を紹介」でも詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

6-4.空き家を解体して土地活用する

空き家の買い手や借り手がつかず、住居としての活用が難しい場合は、空き家を解体して土地として活用するのもよいでしょう。自治体が解体費用を支援している場合もあるので、確認するのがおすすめです。

土地活用法には、駐車場や資材置き場、太陽光発電などさまざまなものがあります。どのように土地を活用するのかは周辺環境から判断し、需要に合った方法を選ぶようにしましょう。

まとめ

空き家問題は全国的な社会問題です。空き家は今後も増加すると予測されており、政府は空家等対策の推進に関する特別措置法を施行して対策に乗り出しています。

放置された空き家は劣化し、周辺地域の環境に悪影響を与えます。空き家の発生を抑制し、発生した空き家を適切に管理・利活用することが、空き家問題解消の第一歩となるでしょう。

空き家を所有していたり、今後、空き家を所有する予定があったりして空き家の活用にお困りの方は、売却を検討するのもおすすめです。

空き家の売却をお考えの方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定依頼サービス「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご利用ください。全国約2,300社の優良不動産会社のなかから、最大6社の査定価格をまとめて取り寄せできます。

特定空き家や管理不全空き家に認定されてしまうと、固定資産税が最大6倍になる可能性もあるため、早めに売却を検討しましょう。