更新日:2025.08.12 不動産売却の授業 ゼロから分かる相続ガイド!基礎知識とやるべきことを簡単理解 誰にでも起こりうる「相続」。しかし、いざ直面すると「何から手をつければいいの?」「誰に相談すれば?」と戸惑う方がほとんどです。特に、法律や税金の知識がないと、手続きが複雑に感じられるかもしれません。 この記事では、相続の経験がない40代から60代の方を対象に、相続の基本から手続きの流れ、税金の仕組み、そして生前の準備まで、知っておくべき知識をゼロから分かりやすく解説します。 【1分で分かる】この記事の内容 遺言がなければ法律で相続人が決まる 相続はプラスの財産も借金も引き継ぐ 相続放棄の手続き期限は3か月以内 基礎控除以下なら相続税はかからない 生前の「遺言書」作成が一番の対策 一度の申し込みで 最大6 社に依頼 できる 売却したいけど何から始めたらいいかわからない方は 不動産売却のプロに相談しましょう! 大手から地元密着企業まで約2,500社参画 無料 売却のプロに相談する Contents1. 相続とは何か?基本のキホン2. 誰が相続するのか?相続人の範囲と順位3. 相続対象となる財産と負債4. 遺産の分割と相続分の計算5. 相続の手続きと流れ6. 相続の承認・放棄・限定承認7. 遺言書と遺言相続8. 相続税のしくみと税務手続き9. 生前対策と準備10. 相続トラブルの予防と解決策11. 相続手続きチェックリスト12. 相続に関するよくある質問(FAQ)まとめ 1. 相続とは何か?基本のキホン 相続と聞くと、遺産分割や税金など難しいイメージが先行しがちですが、まずは基本的な定義と仕組みを理解することが大切です。ここでは、相続の「キホンのキ」を解説します。 1-1. 相続の定義と概要 相続とは、ある人(被相続人)が亡くなったときに、その人が持っていた財産や権利、そして義務のすべてを、特定の人(相続人)が法律に基づいて引き継ぐことを指します。 このとき引き継がれる財産には、不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。 相続は、死亡によって開始する。(民法 第八百八十二条) 出典:e-Gov法令検索.”民法”. 2025-06-06(参照2025-08-06) つまり、被相続人が亡くなった瞬間から、自動的に相続は開始されます。 1-2. 相続の仕組み 相続の方法には、大きく分けて「遺言相続」と「法定相続」の2種類があります。 遺言相続: 被相続人が生前に作成した遺言書の内容に基づいて遺産を分ける方法。原則として、法定相続よりも優先されます。 法定相続: 遺言書がない場合、または遺言書が無効な場合に、民法で定められたルールに従って遺産を分ける方法。 どちらの方法で進めるかによって、相続人の範囲や受け取れる遺産の割合(相続分)が変わってきます。遺言書の有無は、相続手続きの第一歩として必ず確認しましょう。 “遺産分割協議後に遺言書がみつかったら?” 遺産分割協議を終えて遺品整理をしている段階で遺言書が見つかるケースもあります。 遺言書は法定相続よりも優先されるべきものですから、遺言書に則った遺産分割へ切り替えるのが基本的な考えと言えます。 ただし、遺言書によって利益、損失を被る人を含めて全員が、「遺産分割協議の内容で分割する」ことに合意できている場合は、協議内容通りに相続しても問題ありません。 遺産分割後に遺言書が見つかった、どうしたらいい? そう蔵先生の回答 遺産分割後に遺言書が見つかった場合、書かれている内 2. 誰が相続するのか?相続人の範囲と順位 遺言書がない場合、民法で定められた「法定相続人」が遺産を相続します。誰が法定相続人になるかは、被相続人との関係によって明確に決められています。 2-1. 法定相続人の範囲と順位 法定相続人には、常に相続人となる「配偶者相続人」と、順位が定められている「血族相続人」がいます。 配偶者相続人: 亡くなった方の夫または妻は、常に相続人となります。 血族相続人: 以下の順位で相続権が移ります。 第1順位: 子(子が亡くなっている場合は孫) 第2順位: 直系尊属(父母、父母が亡くなっている場合は祖父母) 第3順位: 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子である甥・姪) 【法定相続人の順位】 常に相続人 配偶者 第1順位 子・孫 第2順位 父母・祖父母 第3順位 兄弟姉妹・甥姪 ※上位の順位の相続人がいる場合、下位の順位の人は相続人になれません。(例:子がいる場合、父母は相続人にならない) 2-2. 代襲相続など特殊なケース 本来相続人となるはずの子や兄弟姉妹が、被相続人より先に亡くなっている場合があります。その場合、亡くなった相続人の子が代わりに相続人になることができ、これを「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と呼びます。 例: 被相続人Aには長男Bと次男Cがいたが、長男BはAより先に死亡。長男Bには子D(Aの孫)がいる。 この場合、孫Dが亡き長男Bの代わりに相続人となります。 代襲相続は、甥や姪までが対象となりますが、第2順位の直系尊属には適用されません。 3. 相続対象となる財産と負債 相続では、どのようなものが「遺産」として扱われるのでしょうか。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産もすべて洗い出し、正確な「財産目録」を作成することが重要です。 3-1. プラスの財産 一般的に相続の対象となるプラスの財産には、以下のようなものがあります。 不動産: 土地、建物(自宅、アパートなど) 金融資産: 預貯金、株式、投資信託、国債など 動産: 自動車、貴金属、骨董品、家財道具など その他: ゴルフ会員権、貸付金、著作権など 一方で、生命保険金や死亡退職金は、受取人固有の財産とみなされるため、原則として遺産分割の対象にはなりません。ただし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれるため注意が必要です。 3-2. マイナスの財産 忘れてはならないのが、借金などのマイナスの財産です。これらもすべて相続の対象となります。 借入金: 住宅ローン、自動車ローン、カードローン、奨学金など 未払金: 未払いの税金(固定資産税、住民税など)、家賃、医療費など その他: 買掛金、損害賠償義務、保証債務など プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、次のセクションで解説する「相続放棄」や「限定承認」を検討する必要があります。 3-3. 相続財産に含まれない財産 被相続人の財産の中には、法律上、遺産分割の対象とならない「相続財産に含まれない財産」があります。これらは特定の人が引き継ぐべきものとされており、相続人全員で分ける遺産とは区別して扱われます。代表的なものは以下の通りです。 祭祀財産(さいしざいさん) お墓、仏壇、仏具、系譜(家系図)など、先祖を祀るための財産です。これらは金銭的な価値とは別に考えられ、遺産分割の対象にはなりません。被相続人が指定した人、あるいは地域の慣習に従って祭祀を主宰する人(祭祀承継者)が単独で引き継ぎます。 受取人固有の財産(生命保険金・死亡退職金など) 生命保険金や死亡退職金で、契約上特定の受取人(例:「妻」「長男」など)が指定されている場合、これらは受取人個人の財産とみなされます。したがって、遺産分割協議で分ける必要はありません。 注意点:遺産分割と相続税は別問題 生命保険金や死亡退職金は遺産分割の対象外ですが、相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象に含まれる点に注意が必要です。ただし、それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。 4. 遺産の分割と相続分の計算 遺産の全容が明らかになったら、次に誰がどの財産をどれだけ相続するかを決めます。これを「遺産分割」といい、その割合を「相続分」といいます。 4-1. 指定相続分と法定相続分 相続分には、遺言による「指定相続分」と、民法で定められた「法定相続分」があります。 指定相続分: 遺言書で指定された相続分。法定相続分より優先されます。 法定相続分: 遺言がない場合に目安となる民法上の相続分。 【法定相続分の例】 相続人の組み合わせ 配偶者 子 直系尊属 兄弟姉妹 配偶者と子 1/2 1/2 – – 配偶者と直系尊属 2/3 – 1/3 – 配偶者と兄弟姉妹 3/4 – – 1/4 子のみ – すべて – – ※子が複数いる場合は、子の相続分(1/2)を人数で均等に分けます。 4-2. 遺産分割協議による相続分の取り決め 法定相続分はあくまで法律が定めた目安です。実際には、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)によって、自由に相続分を決めることができます。 例えば、「長男が家を継ぐ代わりに、次男は預貯金を多くもらう」といった分け方も可能です。全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合で分割しても問題ありません。 話し合いがまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面に残します。この書類は、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約手続きで必要になります。 5. 相続の手続きと流れ 相続が発生してから完了するまでには、さまざまな手続きが必要です。特に期限が設けられているものも多いため、全体の流れを把握しておくことが重要です。 期限 主な手続き 死亡後すみやかに 死亡届・火葬許可申請の提出、年金受給停止、公共料金の名義変更 3か月以内 相続放棄・限定承認の申述、遺言書の検認 4か月以内 被相続人の所得税の準確定申告 10か月以内 相続税の申告・納税 期限なし(推奨は早め) 遺産分割協議、不動産の相続登記、預貯金・株式の名義変更 5-1. 発生直後に行う手続き 被相続人の死亡後、まず7日以内に市区町村役場へ「死亡届」を提出し、「火葬許可申請」を行います。 これらは葬儀社が代行してくれることが多いです。 同時に、金融機関に連絡して口座を凍結してもらいましょう。 これにより、一部の相続人による無断引き出しを防ぐことができます。 5-2. 3か月以内に行う手続き 相続財産を調査した結果、借金などマイナスの財産が多い場合は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で「相続放棄」または「限定承認」の手続きを行う必要があります。 この期間を過ぎると、原則としてすべての財産を相続する「単純承認」をしたとみなされます。 単純承認、限定承認、相続放棄は財産の引継ぎ方法です。 次章で詳しく解説します。 5-3. 10か月以内に行う手続き 相続税の申告と納税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。 期限を過ぎると延滞税などのペナルティが課される可能性があるため、計画的に準備を進めることが重要です。 また、不動産を相続した場合は、名義変更(相続登記)が必要です。これは2024年4月1日から、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請することが義務化されています。 6. 相続の承認・放棄・限定承認 相続人は、被相続人の財産をどのように引き継ぐかについて、3つの選択肢から選ぶことができます。選択は一度行うと撤回できないため、慎重な判断が必要です。 単純承認 【内容】 プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ方法。 【メリット】 手続きが不要で最もシンプル。 【デメリット】 予期せぬ多額の借金も背負うリスクがある。 限定承認 【内容】 プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法。 【メリット】 借金が財産を上回っても、超えた分は返済不要。 【デメリット】 手続きが複雑で、相続人全員で申述する必要がある。 相続放棄 【内容】 プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継がない方法。 【メリット】 借金などマイナスの財産を一切引き継がずに済む。 【デメリット】 プラスの財産も一切相続できなくなる。 単純承認は手続き不要で、相続開始を知った日から3か月以内に限定承認や相続放棄の手続きを行わなければ、単純承認したとみなされます。 限定承認を行う場合は、相続人全員が共同で申述しなければいけませんが、相続放棄は一人で申述できます。 コラム:相続放棄したら財産はどうなる? ある相続人が相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったとみなされます。その結果、放棄された相続分は、他の同順位の相続人、または次順位の相続人に引き継がれます。 【例】相続人が配偶者と子2人のケースで、子が2人とも相続放棄した場合 第1順位の相続人(子)が全員いなくなるため、相続権は第2順位である被相続人の父母(直系尊属)に移ります。もし父母もすでに亡くなっている場合は、さらに第3順位の兄弟姉妹へと移っていきます。 借金から逃れるために相続放棄をしたつもりが、意図せず親族に負担をかけてしまう可能性もあるのです。 また、法定相続人全員が相続放棄をした場合は、特別縁故者(法定相続人ではないが特別な関係があった人)が取得するか、国庫に納められます。 7. 遺言書と遺言相続 遺言書は、被相続人の最後の意思を示す重要な書類です。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って相続が進められます。 7-1. 遺言書の種類 主な遺言書には、以下の3種類があります。 自筆証書遺言: 遺言者本人が全文、日付、氏名を自筆で書き、押印するもの。手軽に作成できますが、形式の不備で無効になるリスクや、紛失・改ざんの恐れがあります。 公正証書遺言: 公証役場で公証人に作成してもらう遺言書。原本が公証役場に保管されるため最も確実性が高いですが、費用と手間がかかります。 秘密証書遺言: 内容を秘密にしたまま、遺言書の存在だけを公証役場で証明してもらうもの。内容は保証されませんが、プライバシーを保護できます。 7-2. 勝手な開封はNG!遺言書発見時に必要な検認手続き 自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合、家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。 検認は、遺言書の偽造や変造を防ぐための手続きであり、これを行わずに開封すると5万円以下の過料に処せられる可能性があります。 また、遺言書で「遺言執行者」が指定されている場合は、その人が中心となって預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを進めます。 8. 相続税のしくみと税務手続き 遺産を相続した場合、必ずしも全員が相続税を支払うわけではありません。 相続税には基礎控除があり、遺産総額がこの範囲内であれば申告も納税も不要です。 8-1. 相続税の基礎控除と税率 相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出します。 基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数) 例えば、法定相続人が配偶者と子一人、計二人であれば、「3,000万円+1,200万円=4,200万円」が基礎控除額です。 遺産の総額がこの基礎控除額を超える場合にのみ、超えた部分に対して相続税が課税されます。 税率は、取得する遺産の金額に応じて10%から55%までの累進課税となっています。 【相続税の速算表】 法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額 1,000万円以下 10% – 3,000万円以下 15% 50万円 5,000万円以下 20% 200万円 1億円以下 30% 700万円 2億円以下 40% 1,700万円 3億円以下 45% 2,700万円 6億円以下 50% 4,200万円 6億円超 55% 7,200万円 出典:国税庁:No.4155 相続税の税率. 2024-04-01.(参照2025-08-06) 8-2. 相続税申告と納税の期限 相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に行う必要があります。 納税は原則として現金一括払いです。 8-3. 税負担を軽減する制度 相続税には、税負担を軽減するための様々な特例や控除があります。これらを適用するには相続税の申告が必要ですが、納税額を大幅に抑えられる可能性があります。代表的な制度は以下の通りです。 制度名 概要 リンク 配偶者の税額の軽減 配偶者が取得した遺産が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分」のいずれか多い金額までであれば、相続税がかからない制度。 国税庁:No.4158 配偶者の税額の軽減 小規模宅地等の特例 被相続人が居住用や事業用に使っていた土地を相続した場合、一定の要件を満たせば土地の評価額を最大80%減額できる制度。 国税庁:No.4124 小規模宅地等の特例 未成年者控除 相続人が18歳未満の場合、満18歳になるまでの年数1年につき10万円が相続税額から控除される制度。 国税庁:No.4164 未成年者の税額控除 障害者控除 相続人が85歳未満の障害者の場合、満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が控除される制度。 国税庁:No.4167 障害者の税額控除 9. 生前対策と準備 相続が「争続」になるのを防ぎ、円滑に進めるためには、生前の準備が非常に重要です。 ここでは、相続発生前に考えておきたい、以下3つの生前対策について紹介します。 遺言・家族信託の活用 生前贈与と節税対策 デジタル遺産の対策 9-1. 遺言・家族信託の活用 自分の財産を誰にどのように残したいか、明確な意思がある場合は「遺言書」を作成しておくことが最も有効なトラブル防止策です。 また、認知症などによる将来の資産凍結リスクに備える方法として「家族信託」があります。元気なうちに信頼できる家族に財産管理を託す契約を結ぶことで、本人の意思能力が低下した後も柔軟な財産管理が可能になります。 コラム:争いを抑止する「付言事項」 遺言書には、法的な効力を持つ本文とは別に、家族へのメッセージなどを書き残す「付言事項(ふげんじこう)」という項目を設けることができます。これには法的な拘束力はありませんが、遺産分割の理由や家族への感謝の気持ちを伝えることで、相続人間の感情的な対立を和らげ、円満な相続を後押しする効果が期待できます。 書いてよいことの例 「長年にわたり介護してくれた長男の妻〇〇に感謝しています」 「不動産を長男に相続させるのは、先祖代々の墓を守っていってほしいからです」 「残された家族がこれからも仲良く暮らしてくれることを願っています」 書くべきでないこと 法的な効力を持たせたい内容(例:「〇〇に△△を相続させる」)は、付言事項ではなく、遺言の本文に記載する必要があります。また、特定の相続人を非難するような内容は、かえって争いの火種になるため避けるべきです。 9-2. 生前贈与と節税対策 生前に財産を少しずつ贈与していくことで、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができます。 暦年贈与: 年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない制度。 相続時精算課税制度: 2,500万円まで贈与税が非課税になる制度ですが、贈与者が亡くなった際にその贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。 制度が複雑化しているため、活用する際は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。 9-3. デジタル遺産の対策 近年問題になっているのが、SNSアカウントやネット銀行の口座、暗号資産といった「デジタル遺産」です。IDやパスワードが分からないと、家族がその存在に気づけなかったり、手続きができなかったりします。重要なデジタル資産については、アカウント情報やパスワードをリスト化し、信頼できる家族に保管場所を伝えておくなどの対策が必要です。 10. 相続トラブルの予防と解決策 残念ながら、相続をきっかけに家族関係が悪化するケースは少なくありません。トラブルを未然に防ぎ、円満な解決を目指すため、以下3つについて把握しておきましょう。 よくあるトラブル事例 家族で話し合うポイント 専門家への相談方法 10-1. よくあるトラブル事例 起こりやすい相続トラブルを知っておけば、それらを回避するための行動もとりやすくなります。 相続でよくあるトラブル事例 遺産分割での対立: 特定の相続人が遺産を独り占めしようとする、不動産の分け方で意見が合わないなど。 遺産の使い込み: 被相続人の生前に、特定の相続人が預貯金などを勝手に引き出していたことが発覚する。 寄与分の主張: 特定の相続人が被相続人の介護を長年行ってきたとして、法定相続分以上の遺産を要求する。 行方不明の相続人: 相続人の一部と連絡が取れず、遺産分割協議が進められない。 遺言相続でなければ、遺産分割協議での全員の合意が必要です。 ただ、トラブルが生じている状況では、いつまでも合意に至らないこともあります。 そうした場合は、裁判所を介した話し合い(調停)を行い、それでも合意できない場合は、最終的に裁判所の審判により解決に至ります。 遺産分割協議 →合意できず… 遺産分割調停(家庭裁判所での話し合い) →合意できず… 遺産分割審判(家庭裁判所が判断) →遺産分割方法が決定する 10-2. 家族で話し合うポイント 相続トラブルを防ぐ最も効果的な方法は、生前のうちに家族でオープンに話し合うことです。被相続人となる親は、どのような財産があるのかをまとめた財産目録を作成し、どのように財産を分けたいと考えているのかを遺言書などで示しておくことが重要です。子世代も、親の意思を尊重し、お互いの状況を理解し合う姿勢が求められます。 10-3. 専門家への相談方法 当事者間での解決が難しい場合は、第三者である専門家への相談を検討しましょう。 弁護士: 遺産分割協議の代理や調停・審判など、法的な紛争解決の専門家。 税理士: 相続税の申告や節税対策など、税務の専門家。 司法書士: 不動産の名義変更(相続登記)や遺言書作成支援の専門家。 専門家への依頼には費用がかかりますが、初回相談無料の事業者も多く存在します。 専門家を介さないことで遺産分割協議が長引けば、各人の時間的損失が生まれますし、相続税の納期限も近づいてきます。 その点も考慮して、まずは前向きに検討してみましょう。 11. 相続手続きチェックリスト 相続が発生したら、以下のリストを参考に手続きを進めましょう。 【発生直後】 項目 備考 死亡届の提出 死亡を知った日から7日以内に役所に提出 火葬許可申請 死亡届と同時に役所に提出することが一般的 金融機関への連絡 故人の口座凍結のため、なるべく早く連絡 年金受給停止の手続き 厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内が目安 公共料金・携帯電話などの名義変更・解約 発生直後から随時進める 【3か月以内】 項目 備考 遺言書の有無の確認・検認 公正証書遺言以外は家庭裁判所で検認が必要 相続人の調査・確定 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得し、法定相続人を確定 相続財産の調査・財産目録の作成 借金などのマイナス財産も含め、すべての財産を調査 相続放棄・限定承認の検討・申述 「自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内」に家庭裁判所で手続き 【10か月以内】 項目 備考 被相続人の準確定申告 「相続の開始を知った日の翌日から4か月以内」に申告 遺産分割協議 相続人全員で遺産の分け方を話し合う 遺産分割協議書の作成 協議がまとまったら、全員の署名と実印を押した書類を作成 相続税の申告・納税 「相続の開始を知った日の翌日から10か月以内」に申告・納税 【期限あり(随時)】 不動産の相続登記 2024年4月1日から「相続による所有権の取得を知った日から3年以内」に義務化 預貯金・有価証券の名義変更・解約 金融機関で手続きを行う 自動車の名義変更 運輸支局などで手続きを行う 各種保険金の請求 契約している保険会社に連絡して手続きを行う 12. 相続に関するよくある質問(FAQ) Q 借金しか残されていない場合、どうすればよいですか? A 相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行えば、借金を返済する義務はなくなります。ただし、預貯金などのプラスの財産も一切相続できなくなります。 Q 相続人の中に連絡が取れない人がいます。 A 遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。連絡が取れない相続人がいる場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立て、その管理人が本人に代わって遺産分割協議に参加します。 Q 遺言書の内容に納得できません。 A 兄弟姉妹以外の法定相続人には、最低限の遺産を取得できる権利「遺留分」が保障されています。遺言によって遺留分が侵害されている場合は、遺留分侵害額請求を行うことができます。 Q 相続放棄したら形見をもらえない? A 相続放棄をすると、被相続人の財産は一切受け取ることができなくなります。形見分けは法律上の相続財産ではありませんが、金銭的な価値のあるもの(骨董品や高価な宝飾品など)は相続財産とみなされる可能性があるため、注意が必要です。 まとめ 相続は、法律や税金が絡む複雑な手続きですが、一つひとつ手順を踏んでいけば、必ず乗り越えることができます。最も大切なのは、早めに準備を始め、家族間でしっかりとコミュニケーションを取ることです。 この記事で解説した基本的な知識を土台として、ご自身の状況に合わせて必要な手続きや対策を進めていきましょう。もし手続きに不安を感じたり、家族間での話し合いが難航したりした場合は、決して一人で抱え込まず、弁護士や税理士といった専門家の力を借りることも検討してください。 円満な相続の実現に向けて、この記事がその第一歩となれば幸いです。