相続税の対象となる財産や適用できる控除・特例を紹介

相続税の対象財産 適用できる控除・特例

亡くなった方から財産を相続した場合には、相続税が課されます。スムーズに相続手続きを済ませるためには、相続税の仕組みについての理解が欠かせません。

そこで本記事では、相続税の対象となる財産や、適用できる控除・特例、相続税の計算方法、相続時の注意点などについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 相続税の対象となる財産・対象外の財産
  • 適用できる控除や特例
  • 相続税の計算方法
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1.そもそも相続税とは?

相談

はじめに、相続税の概要を確認しておきましょう。

1-1.相続税は、財産を受け継いだ際にかかる税金

相続税とは、亡くなった方から受け継いだ財産にかかる税金のことです。相続税を課す目的は、主に以下の3点です。

  • 相続した財産は「不労所得」となり、多くの財産を相続しない方との不均衡が生じるため、その不公平感を取り除くため
  • 生まれた家庭の経済状況による差を縮小させ、富を再配分するため
  • 死亡した方の財産や収入のなかには一部所得税がかけられていないものや免除されていたものがあり、所得税を補完するため

参考:“相続税について教えてください。”. 財務省

1-2.基礎控除額を超えなければ課税されない

相続税は、相続した財産の全額に課されるわけではありません。相続財産が基礎控除額を超えない場合には、相続税は発生しません。

基礎控除額は、以下の計算式で算出します。

基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

152_1(基礎控除額)

法定相続人とは、民法の定めによって被相続人の財産を相続できる方を指します。法定相続人の数が多いほど、基礎控除額は大きくなる仕組みです。

参考:“民法第八百八十六条~八百九十五条”. e-Gov法令検索

なお、財務省によると、2021年(令和3年)に実際に相続税が発生した方の割合は、亡くなれられた方のうち約9.3%であることがわかっています。

【相続税の申告事績】
項目 2021年(令和3年)の数値
被相続人数(死亡者数) 1,439,856人
相続税の申告書 の提出に係る被相続人数 134,275
課税割合 9.3%

参考:“令和3年分相続税の申告事績の概要”. 国税庁. 2022-12.(参照2024-03-19)をもとに、HOME4Uが独自に作成

【課税割合の推移】

課税割合の推移

出典:“令和3年分相続税の申告事績の概要”. 国税庁. 2022-12.(参照2024-03-19)

2.相続税の対象となるもの・対象外のもの

相続した財産のうち、金銭的価値があるものは相続税の対象になります。しかし、相続した財産のなかには、課税対象にならないものもあります。

本章では、相続税の課税対象となる財産、対象外の財産、相続財産から控除できるものを紹介します。

2-1.対象となる財産

相続税の対象となる財産としては、以下のものが挙げられます。

相続税の対象となる財産 詳細
土地、建物、有価証券、現金、預貯金など 財産が家族名義でも、被相続人が管理・所有していると判断されたものは課税対象になる。日本国内だけでなく、国外にあるものも含めてすべての財産が対象。
相続人が被相続人から贈与で取得した財産 被相続人が亡くなって相続が開始するときから3年以内に贈与として受け取った財産は、相続税の課税対象となる。財産の贈与を受けた際に贈与税を納めている場合は、納税額分を相続税から控除できる。

なお、税制改正に伴い、生前贈与の加算対象期間は段階的に延長される。2026年(令和8年)12月31日までに相続する場合は現行どおりだが、2031年(令和13年)1月1日以降に相続する場合には、7年前までさかのぼることになる。

みなし相続財産 被相続人が亡くなったときに支払われる死亡退職金や死亡保険金などは「みなし相続財産」として扱われ、課税対象になる。

亡くなった本人から相続したわけではなくても、被相続人の死亡時に受け取った財産は税法上、相続したものとみなされる。

相続時精算課税制度を利用して被相続人から贈与で取得した財産 相続時精算課税制度とは、2,500万円までの生前贈与であれば贈与税が非課税となる制度である。
ただし、贈与した方が亡くなった際には、贈与財産を含めた相続財産に相続税が課される。

なお、2024年(令和6年)1月、年間110万円の基礎控除が創設された。

参考:
“No.4105 相続税がかかる財産”. 国税庁
“令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし”. 国税庁. (参照2024-03-19)をもとに、HOME4Uが独自に作成

2-2.対象外の財産

相続税の課税対象外となる財産には、主に以下のようなものがあります。

  • 墓地
  • 仏壇や仏具
  • 神棚など祭祀財産
  • 公益事業に使用するお金
  • 相続税の申告までに特定の法人に寄付した財産 など

また、前述した死亡退職金や死亡保険金には非課税枠があり、一定の金額を控除することが可能です。控除できる金額は、以下の式で算出します。

死亡退職金・死亡保険金の控除金額=法定相続人の人数×500万円

2-3.相続財産から控除できるもの

葬儀やお通夜などを営むために葬儀会社やお寺などへ支払った費用は、相続財産から控除できます。ただし、香典返しや初七日などの法要費用、墓地を購入した費用などは控除できない点に注意が必要です。

また、被相続人に未払いの税金があった場合も、相続財産から控除できます。その場合、相続人が代理で相続が発生した日の翌日から4ヵ月以内に準確定申告(亡くなった方の生前の所得に対して行なう確定申告)をして、未払い分を納税する必要があります。

さらに、金融機関などに借金があった場合、借入金の残高と未払いの利息分を相続財産の総額から差し引くことができます。

参考:“第13条《債務控除》関係”. 国税庁

3.相続税額に関連する税額控除や特例

控除

相続する財産の規模によっては、納めるべき相続税が高額になります。相続税の負担を軽減するには、控除や特例を上手に活用することがポイントです。

ここでは、相続税に適用できる控除や特例を10種類紹介します。

  • 配偶者の税額の軽減
  • 小規模宅地の特例
  • 農地の納税猶予の特例
  • 贈与税額控除
  • 相続税額の2割加算
  • 相次相続控除
  • 障害者控除
  • 外国税額控除
  • 未成年者控除
  • 寄付金控除

適用条件を満たす控除や特例があれば、積極的に活用しましょう。

3-1.配偶者の税額の軽減

「配偶者の税額の軽減」とは、被相続人の配偶者が相続する財産総額が、以下2つのどちらか多い金額以内であれば、配偶者に相続税が発生しない制度です。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

参考:“No.4158 配偶者の税額の軽減”. 国税庁

つまり、相続した財産の総額が1億6,000万円を超えたとしても、法定相続分までは課税されません。法定相続分とは、民法で定められた相続人が2人以上いる場合の、各相続人の相続割合のことです。

152_2(法定相続人)

ただし、相続税の申告を行なわなければ適用できないことに注意が必要です。

また、配偶者の税額の軽減特例が適用されるのは、配偶者が相続する一次相続(夫婦の一方が亡くなったときに発生する相続)までです。相続人となった配偶者が亡くなって発生する二次相続には適用できないことも、注意点として押さえておきましょう。

二次相続では特例を利用できないばかりか、相続人が1人少なくなって基礎控除額が減るので、税負担がより大きくなりかねません。そのため、相続が発生する際は一次相続と二次相続の税負担を、総合的に検討する必要があるでしょう。

3-2.小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が使用していた宅地を相続する際に、一定の面積までの宅地評価額を最大で80%減額できる制度です。対象となる土地は、以下の4つです。

特定居住用宅地等 故人や故人と生計をともにしていた親族が、居住用として使用していた宅地などに対する特例
特定事業用宅地等 故人や故人と生計をともにしていた親族の事業用の宅地に対する特例
貸付事業用宅地等 故人や故人と生計をともにしていた親族が、貸付用としていた宅地などに対する特例
特定同族会社事業用宅地等 故人や親族が50%超の株式を所有する会社で、事業用として使用していた宅地などに対する特例

参考:“No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)”. 国税庁. (参照2024-03-19)をもとに、HOME4Uが独自に作成

小規模宅地等の特例は、土地を相続した方が被相続人の配偶者・同居親族・別居親族のいずれかであれば、適用可能です。

3-3.農地の納税猶予の特例

「農地の納税猶予の特例」とは、農業を営んでいた方から農地を相続して跡を継ぐ場合に適用される特例のことです。

引き継いだ農地の価額のうち、農業投資価格による価額を超える部分の相続税額の納税が猶予されます。猶予された相続税は、被相続人、農業相続人、特例の適用を受ける農地、それぞれに定められた要件を満たすことで免除となります。

ただし、特例の要件を満たさなくなった場合は、猶予された相続税の一部もしくは全部を納付しなければなりません。猶予分の相続税には利子も発生します。農地の納税猶予の特例は、節税の恩恵が大きいものの、利用するかどうかは慎重に判断する必要があるでしょう。

参考:“No.4147 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例”. 国税庁

3-4.贈与税額控除

「贈与税額控除」とは、贈与を受けた際に納めた贈与税を相続税から控除することです。

前述のように、相続発生前の3年以内(段階的に7年にまで延長)に贈与を受けた財産は相続財産と見なされることから、贈与税ではなく相続税の対象となります。

参考:“令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし”. 国税庁

しかし、贈与を受けた翌年に贈与税を納めているにも関わらず相続税も課されると、二重課税になってしまいます。そこで、すでに納付済みの贈与税額を相続税から控除することで、二重課税を防ぐ意図があるのです。

この控除を受けられるのは、遺贈や相続によって財産を取得し、かつ被相続人が亡くなる前の3年間に贈与を受けて贈与税を納めた方です。

3-5.相続税額の2割加算

「相続税額の2割加算」とは、被相続人との続柄が「配偶者や一親等の親族」以外の方に対する相続税額を2割高くする制度です。

この制度が設置された理由には「財産は遺族の生活の維持に役立てることが重要であり、故人との関係性が深い方とそうではない方とでは差別化が必要である」という考えが関係しています。そのため、故人の配偶者ではない方や一親等ではない親族、故人の養子になった孫などが財産を受け取る場合は、相続税額が2割増しになることを覚えておきましょう。

なお、相続時精算課税適用者が相続開始時には被相続人の一親等の親族ではない場合でも、財産の贈与を受けた時点では一親等の親族に該当するケースがあります。その場合、相続財産における一定の相続税額については加算対象にはなりません。

参考:“No.4157 相続税額の2割加算”. 国税庁

3-6.相次相続控除

「相次相続控除」とは、一次相続後10年以内に二次相続が発生した際の相続税の負担を軽減するために設けられている制度です。

例えば、祖父の財産の一部を子である父が相続したとしましょう。その後、10年以内に父が亡くなり、祖父と父の財産を子が相続することになった場合、短期間で二度も相続税を納めなければならなくなります。そこで、相続が立て続けに発生しても税負担が過重にならないようにする目的で、相次相続控除の制度が設けられました。

なお、この制度により控除できるのは、前回の相続で納めた相続税額のうち、1年あたり10%の割合を減額したあとの金額です。

参考:“No.4168 相次相続控除”. 国税庁

3-7.障害者控除

「障害者控除」とは、85歳未満の障がい者の方が相続人となる際に適用される制度です。相続で財産を取得した際に、法定相続人かつ障がい者であり、日本国内に住所がある方が障害者控除を受けられます。

控除できる金額は、「一般障害者」は85歳に達するまでの年数1年につき10万円、「特別障害者」は1年につき20万円です。

一般障害者と特別障害者の区分は以下のとおりです。

【一般障害者】

  • 身体障害者手帳に身体上の障がいの程度が3~6級との記載がある
  • 精神障害者保健福祉手帳に障害等級2級または3級の記載がある
  • そのほか一定の障がいが認められる

【特別障害者】

  • 身体障害者手帳に身体上の障がいの程度が1級または2級との記載がある
  • 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級との記載がある
  • そのほかに一定の重度の障がいが認められる

参考:“No.4167 障害者控除”. 国税庁

3-8.外国税額控除

「外国税額控除」とは、海外の国に納めた相続税相当の税金を、日本の相続税から一定の金額まで控除できる制度です。

海外にある財産を相続した場合、その国の相続税に相当する税金が課税されるケースがあります。加えて、日本の相続税まで課されると、1つの財産に対して二重に課税される事態になります。

そこで、二重課税を避けるべく、海外の国に納めた相続税に相当する税金について、一定額までは日本の相続税から控除して調整できるようにしているのです。

参考:“相続税法第二十条の二”. e-Gov法令検索

3-9.未成年者控除

「未成年者控除」とは、相続人が18歳未満の未成年者だった場合に、相続税額から一定の金額を控除できる制度です。

相続人が被相続人の法定相続人であり、財産を相続した際の住所が日本国内にあるなど、一定の要件を満たしている場合に適用されます。

具体的な控除額は、以下の計算式で算出できます。1年未満の端数がある場合は、切り上げて1年として計算します。

未成年者控除の控除額=10万円×(18歳-相続時の年齢)

参考:“No.4164 未成年者の税額控除”. 国税庁

3-10.寄付金控除

「寄付金控除」とは、特定の団体に寄付または支出した相続財産を課税対象にしない特例です。

例えば、国や地方公共団体、認定非営利活動法人(認定NPO法人)への相続財産の寄付などが該当します。

相続財産の寄付をした翌年に確定申告をすると、所得税や住民税の寄付金控除を受けられるメリットもあります。ただし、寄付先の団体によっては控除の対象にならないため、事前に確認しておくとよいでしょう。

また、相続で受け取った財産はそのまま寄付しなければなりません。そのため、相続した不動産の売却金額を寄付しても、特例は適用されない点に注意が必要です。このほか、相続税の申告期限までに寄付をするなどの注意点を押さえておくことも大切です。

参考:“No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき”. 国税庁

4.相続税の計算方法

財産を相続した際、自身が納める相続税の金額がいくらになるのか気になる方は多いでしょう。実際に納める金額を求めるには、相続税の対象となる財産を明確にし、相続税の総額を算出したあとに税額控除などを行なう必要があります。

ここでは、相続税を計算する3ステップを見ていきましょう。

  1. 相続税の対象となる財産を明確にする
  2. 相続税の総額を算出する
  3. 相続分で按分して税額控除などを行なう

4-1.相続税の対象となる財産を明確にする

はじめに、相続税の対象となる財産を洗い出します。相続財産に見落としがあると最初からやり直しになってしまうので、税理士などの専門家に相談しながら確認すると安心です。

課税財産がすべて明確になったら、課税遺産総額を求めるために基礎控除を差し引きます。以下の計算式に、実際の数字を当てはめて計算してください。

  • 基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
  • 課税遺産総額=相続税の対象となる財産-基礎控除

なお、法定相続人を数える際は以下の点に注意が必要です。

法定相続人のなかに養子がいる場合 被相続人に実子がいる場合は養子1人までを含められる。実子がいない場合は養子2人までを含められる。
相続放棄した方がいる場合 相続放棄をした方も含めて、被相続人の数を数える。

参考:“No.4152 相続税の計算”. 国税庁. (参照2024-03-19)をもとに、HOME4Uが独自に作成

計算した結果、課税遺産総額が0円となった場合は、相続税の申告が不要です。プラスになった場合は、次のステップに進みます。

4-2.相続税の総額を算出する

法定相続分に応じて、算出した課税遺産総額を按分します。

152_2(法定相続人)

【法定相続分の例】
  • 相続人が配偶者と子の場合:配偶者1/2、子1/2
  • 相続人が配偶者と父母の場合:配偶者2/3、父母1/3
  • 相続人が配偶者と兄弟・姉妹の場合:配偶者3/4、父母1/4

参考:“No.4132 相続人の範囲と法定相続分”. 国税庁

法定相続人ごとの課税遺産総額を導き出せたら、取得金額に応じて定められている相続税率をかけて、それぞれの税額を求めます。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

引用:“No.4155 相続税の税率”. 国税庁. (参照2024-03-19)

その後、各法定相続人の相続税額を合計して総額を導き出します。

4-3.相続分で按分して税額控除などを行なう

ステップ2で算出した相続税の総額を実際の相続分で按分したのち、適用できる控除などを行ないます。

例えば、夫が亡くなって妻と子ども2人の計3人が相続するケースの場合、妻には配偶者控除が適用されます。そのため、実際には相続税が0円になることも多いでしょう。

また、子どもが成人していない場合は、未成年者控除を適用することが可能です。

5.相続税の申告と納税期日

確定申告書

相続税の申告および納税の期限は、相続開始を知った日の翌日から数えて10ヵ月以内となっています。申告期限日が土・日・祝日の場合は、休日明けの平日が申告期限日になる点に注意が必要です。

また、相続税は現金での一括納付が原則のため、納税資金をあらかじめ用意しておかなければなりません。相続税は高額になるケースが多く、納税期日までに現金を用意するのが厳しいこともあるでしょう。

相続税を期日までに納付するのが難しい場合は、一定の条件を満たすと、延納や物納を選択することが可能です。延納は相続税を分割して払う方法、物納は相続した不動産などをそのまま納付する方法を指します。

参考:
“No.4205 相続税の申告と納税”. 国税庁
“No.4211 相続税の延納”. 国税庁
“No.4214 相続税の物納”. 国税庁

6.財産を相続する際の4つの注意点

財産を相続する際には、相続の仕組みへの理解を深め、不備のないように手続きを進めることが大切です。次の4つの注意点を理解したうえで、手続きを進めるように心がけましょう。

  • 相続税が0円でも申告しなければならないケースがある
  • 適切に申告しなければ加算税がかかる
  • 税金を誤って多く支払ってしまった場合には、返金請求をする
  • 相続する財産が不動産の場合、評価や分割が難しい

6-1.相続税が0円でも申告しなければならないケースがある

課税遺産総額が基礎控除額を超えていなければ、通常、相続税の申告義務はありません。

ただし、前述した配偶者の税額の軽減や小規模宅地等の特例といった、相続税の特例などを適用して納税額が0円になる場合は申告が必要です。

また、特例の適用には、申告時に遺産分割協議書の写しの提出を求められることがあります。そのため、申告期限までに遺産分割協議も終わらせなければなりません。

参考:
“No.4158 配偶者の税額の軽減”. 国税庁
“No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)”. 国税庁

6-2.適切に申告しなければ加算税がかかる

前述のとおり、相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から数えて10ヵ月以内です。申告漏れや申告内容の偽装を行なった場合には、加算税が課される点に注意しましょう。

加算税とは、申告期限を超過した場合や、申告内容に不備が発覚した際に課される税です。また、納付期限を過ぎている場合は、併せて延滞税がかかる可能性もあるため注意が必要です。

加算税は納税に関する不備があった場合の罰則、延滞税は納付期限から超過日数に応じて課される罰則という違いがあります。それぞれの違いを理解しておくと、万が一のことがあっても迅速に対応できるでしょう。

6-3.税金を誤って多く支払ってしまった場合には、返金請求をする

固定資産税などの地方税は、市町村(東京23区は東京都)からの請求に応じて税金を納めますが、相続税などの国税は計算から申告、納税まで自身で行なう必要があります。

参考:“税金には、どういった種類のものがありますか”. 財務省

万が一、誤って多く納税してしまっても、税務署から連絡が来ることはありません。そのため、自身で返金請求を行なう必要があります。

ただし、納税額が少ない場合は不足分の請求や過少申告のペナルティが課される恐れがあるため、注意が必要です。

6-4.相続する財産が不動産の場合、評価や分割が難しい

相続した財産が不動産の場合、相続税を正しく計算するには財産評価を適正に行なわなければなりません。自身でも評価できないわけではありませんが、専門家に依頼すれば適正な価格を算出してもらえるでしょう。

土地は路線価格と呼ばれる財産評価基準、建物は固定資産税評価額を用いて評価します。不動産のより正確な価格を知りたいなら、国家資格を持つ不動産鑑定士に評価を依頼するのが安心です。

参考:
“令和5年分財産評価基準を見る”. 財産評価基準書路線価図・評価倍率表
“固定資産税の概要”. 総務省

また、不動産は平等に分割するのが難しい財産であり、遺産分割の際には揉める可能性があります。分割方法として挙げられるのは、以下の4つです。

現物分割 遺産をそのまま相続する方法。
土地は分筆(1つの土地を複数の土地に分けて登記すること)をすると現物分割が可能となるが、建物は現実的には難しい。また、手続きは比較的簡単なものの、不動産を相続する方とそのほかの財産を相続する方とで不公平が生じるケースもある。
代償分割 1人の相続人が不動産を取得して、ほかの相続人に代償金を支払う方法。公平に分割するには不動産の適正な評価が必要。
共有分割 不動産を複数の相続人で共有する方法。
相続人の法定相続分に応じて不動産の持分を所有するかたちになるため、公平な遺産分割方法ではあるが、自由に売却できなくなるなどのデメリットがある。
換価分割 不動産の売却金額を分割する方法。
評価方法や共有不動産の扱いなどを巡って揉めるリスクを回避できる。

参考:
“No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算”. 国税庁
“遺産の換価分割のための相続登記と贈与税”. 国税庁. (参照2024-04-01)をもとに、HOME4Uが独自に作成

不動産の4つの分割方法には、それぞれメリット・デメリットがありますが、不動産を平等に分割できて相続人全員が納得する可能性が高いのは、換価分割だといえます。

まとめ

本記事では、相続税の対象となる財産や適用できる控除・特例、税額の計算方法などを紹介しました。

相続を発生させるよりも、若いうちから計画的に贈与することにより、最終的な税負担を減らすのもおすすめです。分けづらい資産である不動産を所有している方は、はじめに一括査定で現在の売却価格の目安を確認してみましょう。

不動産会社によって、家の査定価格には数百万円もの差が生じることもあります。したがって、不動産をより高く・早く売るには、複数の不動産会社の査定結果を比較検討することが大切です。

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