更新日:2024.01.30 不動産売却の基礎講座, 不動産売却のノウハウ 夫が死亡したら家は誰が相続する?手続きの流れやよくあるトラブルを紹介 配偶者が亡くなると、「遺された自分は今後どうなるのだろう」と大きな不安を感じるものです。特に、夫(住宅ローン契約者)が死亡した場合、返済中の住宅ローンはどうなるのか、妻子は家に住み続けられるのかなど、不安は尽きないでしょう。 そこでこの記事では、夫が死亡した場合の家の相続について、詳しく解説します。 この記事を読むと分かること 夫(住宅ローン契約者)が死亡した場合、家は誰が相続するのか 返済中の住宅ローンはどうなるのか 相続手続きの流れと、よくあるトラブル 「不動産を売りたい」と悩んでいる方へ 「何から始めたらいいか分からない方」は、まず不動産会社に相談を 「不動産一括査定」で複数社に査定依頼し、”最高価格(※)”を見つけましょう※依頼する6社の中での最高価格 「NTTデータグループ運営」のHOME4Uなら、売却に強い不動産会社に出会えます 完全無料一括査定依頼をスタート Contents1.夫が死亡したら家を相続するのは誰?2.夫が死亡したら、返済中の住宅ローンはどうなる?3.夫の死亡後、家の相続税はどうなる?4.夫の死後の不動産相続|よくあるトラブルと解決法5.夫の死後の不動産相続|手続きの流れまとめ 1.夫が死亡したら家を相続するのは誰? 夫(住宅ローン契約者)が死亡した場合、住宅ローン返済中の自宅はどうなるのでしょうか。また、妻や子どもは、そのまま住み続けられるのでしょうか。まずは、遺族が不安に思う自宅の相続の基礎知識について解説します。 1-1.法定相続人とは? 法定相続人とは、民法で定められた被相続人(故人)の財産を相続できる人のことを指します。法定相続人となるのは、被相続人の配偶者と、被相続人の血族で、血族相続人には以下のように相続順位が定められています。 第1順位:子ども、その代襲相続人(直系卑属) 第2順位:親、祖父母(直系尊属) 第3順位:兄弟姉妹、その代襲相続人(傍系血族) 第1順位の直系卑属とは、被相続人から見て直系の下の世代のことで、子どもや孫、ひ孫などが該当します。もし、被相続人と元配偶者との間に子どもがいた場合は、その子どもも第1順位の法定相続人となります。 子どもが被相続人より先に亡くなっていて孫がいる場合は、孫が代襲相続人(子どもに代わる相続人)です。 次に、第2順位の直系尊属とは、被相続人から見て直系の上の世代のことで、親や祖父母、曽祖父母などが該当します。被相続人に子どもや孫がいない場合は父母が、父母がすでに亡くなっていて祖父母が存命であれば、祖父母が法定相続人となります。 もし、第1順位と第2順位がいない場合は、第3順位の傍系血族が法定相続人です。傍系血族とは、被相続人から見た兄弟姉妹や甥姪、伯父伯母などが該当しますが、伯父伯母などは法定相続人にはなりません。 仮に、被相続人が亡くなる前に兄弟姉妹が亡くなっていた場合、その子ども(甥姪)がいれば甥姪が代襲相続人となります。 また、被相続人の配偶者は、常に法定相続人となりますが、それは法律上婚姻している場合のみであり、事実婚や元配偶者は法定相続人として認められません。 相続人を把握するためには、書類を取り寄せて調べる必要があります。相続のために必要な書類や手続き、流れについては後述します。 1-2.家は配偶者や子どもが相続するのが一般的 夫(住宅ローン契約者)が死亡した場合、妻や子どもは「このままこの家に住み続けられるのだろうか」と不安に思うことでしょう。 しかし、居住している方の平穏な生活の確保や、相続税の特例(小規模宅地等の特例)の適用などの観点から、妻や子どもが相続するのが一般的とされています。 そのため、遺産相続で問題がなければ、これまでと変わらず同じ家に住み続けることは可能です。 ただし、返済中の住宅ローンについて心配される方もいるため、その点については次章で解説します。 不動産の相続相談はどこへすべき?ケース別の6つの相談先を解説 相続する資産のうち、厄介なのが不動産です。 不動産は相続人の間で分割し 2.夫が死亡したら、返済中の住宅ローンはどうなる? 住宅ローンを返済中に夫(住宅ローン契約者)が死亡した場合、ローンの残債は原則として遺された家族に引き継がれることになります。 つまり、夫婦と子ども2人の4人家族で生活していた場合、ローンの残債は原則として妻と子ども2人に引き継がれるということです。 ただし、住宅ローン契約時に、夫が団体信用生命保険(団信)に加入していたかどうかで、残債についての扱いが異なる場合があるため注意が必要です。 2-1.団体信用生命保険に加入していた場合 団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローン返済中に契約者が死亡、または高度障害に陥った場合に、住宅ローンを完済するための保険のことです。 団信に加入していれば、契約者が亡くなった時点でローンの残債がなくなるため、遺された家族に返済義務はありません。一般的に、民間の金融機関で住宅ローンを組んでいた場合、団信への加入は必須条件となっていることが多いので、焦らず、契約時の書類を確認しましょう。 団信に加入していた場合は、以下のような手続きが必要です。 金融機関への連絡 金融機関への必要書類提出 保険会社の審査、金融機関からの書類の受け取り 法務局に登記申請(所有権移転登記、抵当権抹消登記) ただし、住宅ローンの組み方によっては、返済が免除されないケースもあるため注意が必要です。例えば、「住宅ローンの返済を延滞していた」あるいは「夫婦や親子共同で住宅ローンを組んでいた」という2つのケースが考えられます。 2-1-1.返済が免除されないケース(1)返済を延滞していた まず、住宅ローンの返済を延滞した場合、団信の契約が失効する可能性があるため、保険金は支払われず、ローンの返済も免除されません。 これは、金融機関が住宅ローンの利息から保険料を支払っているケースが多いからです。住宅ローンの返済を延滞することで保険料の支払いも滞り、契約の失効につながるのです。 2-1-2.返済が免除されないケース(2)共同で住宅ローンを組んでいた 次に、夫婦や親子共同で住宅ローンを組んでいた場合、その方法は4つあり「連帯保証」「連帯債務」「ペアローン」「親子リレーローン」のいずれかになります。 連帯保証と連帯債務の場合、主債務者が亡くなったときは住宅ローンの返済は免除されますが、連帯保証人や連帯債務者は団信に加入できないため、連帯保証人や連帯債務者が死亡しても、主債務者の返済義務は免除されません。 ただし、連帯債務の場合、住宅ローンの種類によっては、主債務者・連帯債務者ともに団信に加入できるケースもあるため、契約書を確認してみましょう。 また、ペアローンの場合、夫婦や親子それぞれが1つずつ住宅ローンを契約し、団信にもそれぞれ加入します。そのため、例えば夫が亡くなった場合、夫が契約していた分のローン返済は免除されますが、妻の分のローンには引き続き返済義務があります。 さらに、親子リレーローンの場合、子どもが団信に加入し、親は加入しないことがほとんどです。そのため、親が死亡しても住宅ローンの返済は免除されず、子どもが返済義務を負うことになります。 マンションの共同名義とは?種類やメリット・デメリットを全解説 夫婦や家族でマンションを購入する際、共同名義にするケースがあります。共 2-2.団体信用生命保険に未加入だった場合 健康状態などが原因で団信に加入していなかった場合、基本的には遺された家族に返済義務が移るため、ローン残債の返済は免除されません。 なお、住宅ローン残債が支払えない場合の対処法については次節で解説します。 2-3.住宅ローンの残債が支払えない場合 夫(住宅ローン契約者)が死亡しても住宅ローン残債の返済が免除されない場合、遺された家族が返済できれば問題はないのですが、妻の収入や子どもの年齢によっては返済が難しいケースも考えられます。 そのような場合には、一般的には「金融機関に条件変更の相談をする」「借り換えを検討する」「家を売却する」の3つの対処法を検討することになります。 2-3-1.金融機関に条件変更の相談をする 1つ目の方法は、「一時的に返済期限を延長する」という条件を承諾してもらえるよう、金融機関に交渉するというものです。 これは、返済スケジュールを緩和して、毎月の返済額を減らすという対策で、滞納にはあたりません。金融機関を納得させられる理由が必要ですが、条件変更をして返済している限りは金融機関側も法的な回収手段は取らずに待ってくれるため、家を手放さずに済むというメリットがあります。 ただし、条件変更が認められる期間は金融機関により異なるうえ、条件変更期間が終了すると、今までの返済額に戻されます。条件変更前よりも総返済額が増えるというデメリットもあり、また、交渉しても認めてもらえないケースが多いともいわれています。 2-3-2.借り換えを検討する 現在の住宅ローンより金利の低い住宅ローンがあれば、借り換えを検討するのも一つの方法です。金利が低くなれば、毎月の返済額を抑えられます。 ただし、借り換えにも手数料などのコストが発生するため、一般的には次の条件のいずれかを満たしている場合にメリットがあるといわれています。 住宅ローン残債が1,000万円以上 住宅ローン残存期間が10年以上 借り換え前後で金利に1%以上の差 なお、借入金額によって異なりますが、借り換えのコストは40万~50万円程度と考えるとよいでしょう。 また、住宅ローンの金利を比較したい場合は、一般社団法人住宅金融普及協会が公開している金利情報で確認できます。 住宅ローンを借り換えるメリット・デメリットとは?今後の金利の動向も考察 住宅ローンの借り換えによって、返済の負担を軽減できる可能性があります。 2-3-3.家を売却する どうしても住宅ローンの返済が難しい場合は、家を売却することも有力な選択肢となります。その際は、信用情報機関にローン延滞などの事故情報が登録される前に売却することが重要です。 事故情報が登録されてしまうと、新たな住宅ローンが組めないため、売却後の住み替え先が賃貸物件に限定されてしまいます。 住み替え先の選択肢を広げるためにも、早めの売却を検討しましょう。住宅ローンの残債より高く売却できれば、住宅ローンを完済できます。できるだけ高く売りたいなら、不動産会社一括査定サービスを利用するのがおすすめです。 【無料】一括査定依頼スタート 自宅の売却期間は平均で3~6か月!早期売却に必要な5つの考え方 ご自宅を売却することが決まると、次に気になるのは、ご自宅がいつ頃売れる 相続した不動産を売却する手順・必要書類・注意点・節税特例は? 一戸建ての家や土地、マンションなど相続した不動産の売却では、分割や名義 3.夫の死亡後、家の相続税はどうなる? 夫(住宅ローン契約者)の死亡後も、そのまま同じ家に住み続けるということは、家を相続するということでもあります。その場合、「相続税はどうなるのだろう?」と気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、家の相続税について解説します。 3-1.相続税の計算方法 相続税を計算するには、まず基礎控除額を求め、次に相続税の課税遺産総額を求めます。計算式は以下のとおりです。 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数 相続税の課税遺産総額=正味の遺産額-基礎控除額 例えば、夫の正味の遺産額2億円を妻と子ども2人、つまり3人で相続する場合、次のように計算します。 基礎控除額:3,000万円+600万円×3=4,800万円 課税遺産総額:2億円-4,800万円=1億5,200万円 なお、正味の遺産額が基礎控除額より少ない場合は、原則、相続税はかかりません。 この課税遺産総額を法定相続分どおりに取得したものと仮定して、相続税の速算表に当てはめたあと、実際の相続割合で按分(あんぶん)することで、相続税額を算出できます。 法定相続分とは、民法で定められている相続割合の基準で、この場合、妻が2分の1、子どもがそれぞれ4分の1ずつです。課税遺産総額1億5,200万円を法定相続分どおりに取得したものとすると、相続人それぞれの取得金額は以下のとおりです。 妻:1億5,200万円×1/2=7,600万円 子ども:1億5,200万円×1/4=3,800万円 子ども:1億5,200万円×1/4=3,800万円 この取得金額を、相続税の速算表に当てはめると、法定相続分の相続税総額が算出できます。 妻:7,600万円×税率30%-控除額700万円=1,580万円 子ども:3,800万円×税率20%-控除額200万円=560万円 子ども:3,800万円×税率20%-控除額200万円=560万円 合計:2,700万円 法定相続分の相続税総額が算出できたら、さらに実際の相続割合で按分します。実際の相続割合が、妻2分の1、子どもそれぞれ4分の1ずつだったとすると、それぞれの相続税額は以下のとおりです。 妻:2,700万円×1/2=1,350万円 子ども:2,700万円×1/4=675万円 子ども:2,700万円×1/4=675万円 ただし、配偶者には税額の軽減措置があるため、実際に納める相続税額は以下のとおりです。 妻:0円 子ども:675万円 子ども:675万円 なお、相続の詳しい手続きについては後述します。 4.夫の死後の不動産相続|よくあるトラブルと解決法 家の相続が発生した際に、スムーズに相続できるケースがある一方、トラブルになるケースもあります。 ここでは、妻と子ども2人が法定相続人の場合を例に、トラブルになるパターンと、その解決方法について解説します。 4-1.自宅を3人で平等に分割して相続したい 遺産のなかで最も高額なものが自宅だった場合、法定相続人3人で平等に分割したいと考える方もいるでしょう。 その場合、主な方法は以下の3つです。 共有分割:財産を3人の共有名義にして相続する方法 代償分割:財産を1人が相続し、ほかの2人に代償金を支払う方法 換価分割:財産の一部または全部を現金化して分割する方法 1つ目の共有分割は、3人の持ち分が3分の1ずつとなるため、希望どおり平等に相続できますが、相続後は土地・建物の売却や建築の際に、所有者全員の同意が必要です。 また、相続人の子どもや孫の世代になると、持ち分のある共有者が増えるため、土地・建物の活用がますます難しくなります。このように、共有分割はデメリットが大きいため、おすすめできません。 2つ目の代償分割は、妻は自宅に住み続けたいと思っているが、子ども2人は自宅を売却して現金化することを望んでいる場合に検討される方法です。 この場合、妻が自宅を相続し、子ども2人には代償金を支払うことで遺産分割ができます。ただし、代償金を支払えない場合はトラブルになることが予想されます。 3つ目の換価分割は、財産を現金化してから分割するため、平等に相続できる点がメリットです。しかし、自宅を売却する場合は、新たに住まいを探さなければいけないというデメリットもあります。 できるだけデメリットの少ない方法で相続したい場合は、代償分割や換価分割がおすすめです。 4-2.不動産の相続人が代償金を払えない 法定相続人である子ども2人がすでに成人して自宅を離れている場合、前述の代償分割を希望することが予想されます。 その場合、不動産を取得した法定相続人(配偶者である妻)は、子ども2人に代償金を支払わなければなりません。 しかし、代償金を一括で支払えない場合もあるでしょう。その際は、代償金の受取人である子どもたちに分割払いを提案します。 分割払いに応じてもらえない場合や、どうしても代償金を支払えない場合は、自宅を売却して現金を分けるしかなく、自宅に住んでいた妻は家を失うというデメリットがあります。 新たな住まいを探すことを考えると、できるだけ高く自宅を売ることが重要です。 【無料】一括査定依頼スタート 4-3.不動産の評価方法で意見が合わない 不動産を代償分割する場合、家の評価額で揉めることがあります。不動産の評価方法は、主に以下の4つです。 実勢価格(取引価格) 地価公示価格 路線価 固定資産税評価額 不動産にはスーパーマーケットの商品のように、明確な「価格」がなく、評価方法によって異なる「価額」がつけられるため、トラブルのもとになりやすいのです。 不動産の評価方法で意見が合わない場合は、お互いが主張する価額の平均値をとるか、不動産鑑定を依頼して、適正価額を算出してもらいましょう。 ただし、不動産鑑定をする際は、「不動産鑑定士」という専門家に依頼するため、10万~50万円程度の費用がかかります。無駄な出費を抑えるためには、「価額」についてある程度妥協することも必要です。 家を売る完全ガイド!不動産売却の注意点と初めにやるべき準備 この記事では、家を売るための一通りの流れについて解説しています。 こ 5.夫の死後の不動産相続|手続きの流れ 故人の財産を相続するためには、さまざまな書類を取り寄せて手続きをする必要があります。ここでは、遺産相続の手続きと、その流れについて解説します。 遺産相続の手続きの流れは以下のとおりです。 夫の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)などを取得する 遺言の有無を確認する 遺産の額や内訳を確認する 法定相続人は誰なのか確認する 法定相続人全員で話し合う 相続に関する遺産分割協議書を作成する 登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する 固定資産評価証明書を取得する 相続登記を申請して名義変更する 相続税の申告・納付をする ワンステップずつ確認していきましょう。 5-1.夫の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)などを取得する まず、自治体の窓口で以下の書類を取得します。 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) 除籍謄本 戸籍の附票の写し 住民票の除票の写し 改製原戸籍謄本 戸籍謄本は、現在は「戸籍全部事項証明書」という名前に変わっていますが、戸籍に記載されている全員の身分事項を証明する書類であることに変わりはありません。 一般的に相続手続きで必要とされるのは、「被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)」と、「相続人全員の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)」です。 そのため、被相続人が転勤などで引越しが多かった場合、全国各地に戸籍が点在していることになり、集めるために苦労することがあります。 除籍謄本とは、属する人が誰もいなくなったことが記載された戸籍の写しのことで、改製原戸籍謄本とは、法改正前の戸籍謄本のことです。住民票の除票の写しは、自治体に住民登録している方が、転出や死亡によって住民登録から除かれたことを証明するものです。 これらの書類は、夫が死亡したことや、誰が法定相続人にあたるのかを証明するために必要です。 5-2.遺言の有無を確かめる 次に、遺言があるかどうか確かめます。故人の部屋や荷物の中などを探していて遺言書を見つけた場合、何が書かれているか気になってすぐに開けたくなるかもしれません。 しかし、自筆証書遺言、または秘密証書遺言が見つかった場合は、開封せずに家庭裁判所に提出します。その後、指定された日に家庭裁判所に行き、検認手続をする必要があります。 遺言書を勝手に開封すると、法律により5万円以下の過料が科されるため、「開封せずに家庭裁判所へ提出」ということを覚えておきましょう。 なお、遺言がある場合は、遺言書に書かれていることが優先されます。また、遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があるため、それぞれ次項で解説します。 5-2-1.自筆証書遺言 自筆証書遺言で記載する内容は、以下のとおりです。 本文の全文 日付 氏名 自筆証書遺言の場合、用紙や筆記具には特別な決まりはないものの、必ず遺言者の自筆であること、捺印してあることが必要です。 自筆証書遺言は無料で作成できるため、最も手軽だと思われがちですが、法律知識のない方が作成すると、形式の不備で無効になる恐れがあります。また、遺言者の死後に家庭裁判所の検認が必要になるため、手続きが煩雑になる点もデメリットです。 さらに、相続人が自筆証書遺言の隠匿、紛失、変造、破棄などをするリスクや、そもそも発見されないリスク、盗難のリスクなどもあります。 5-2-2.公正証書遺言 公正証書遺言とは、公証役場において作成・提出する遺言のことで、ほかの遺言方法と比べて確実な方法といえます。 遺言者は、公証人と事前に打ち合わせを行ない、公正証書遺言の案を作成します。遺言内容が確定したら公証役場に出向き、遺言者が公証人にあらためて遺言内容を口頭で告げます。その際、2名以上の証人が必要です。 遺言内容に間違いがなければ、遺言者と2名以上の証人が、公正証書遺言の原本に署名捺印し、公証人も署名、職印を押捺して完成となります。 公正証書遺言は、家庭裁判所の検認手続が不要です。また、公証役場に遺言書の原本が保管され、オンライン検索ができます。故人が公正証書遺言を作成したかどうかわからない場合は、オンライン検索で探してみるとよいでしょう。 なお、言葉や耳が不自由な方も、本人の意思を伝達できる通訳を介して、公正証書遺言を作成できます。 5-2-3.秘密証書遺言 秘密証書遺言は公証役場で作成しますが、遺言書を密封するため、公証人も内容を確認できません。そのため、自筆証書遺言と同様に、法律で決められた形式になっていないとして、無効になる恐れもあります。 また、遺言内容は遺言者以外知ることができないため、プライバシーは守れますが、遺言者の死後は家庭裁判所での検認手続きが必要です。 相続した不動産を売却する手順・必要書類・注意点・節税特例は? 一戸建ての家や土地、マンションなど相続した不動産の売却では、分割や名義 5-3.遺産の額や内訳を確かめる 遺言の有無を確認したあとは、遺産の額や内訳を確かめます。遺言書に記載されていない財産が見つかるケースもあるため、どこに、どのような財産が、どれだけあるか、正確に把握することが重要です。 代表的な財産の例は、以下のとおりです。 不動産 預貯金、現金 貴金属 生命保険積立金 株式や投資信託 自動車 住宅ローン残債やクレジットカードの未払金 財産と聞くとプラスのものばかり想像するかもしれませんが、住宅ローン残債やクレジットカードの未払金など、マイナスの財産も相続することになるため、漏れのないように調べましょう。 5-4.法定相続人は誰なのか確かめる 夫が死亡したあとの相続では、基本的に妻や子どもなどの相続人で財産を分けます。遺産相続によるトラブルを防ぐには、誰が相続人で、相続人それぞれがどれだけ相続できるのかを、はっきりさせることが大切です。 誰が相続人かは、被相続人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)で確認できます。 5-5.法定相続人全員で話し合う 遺産の額や内訳および、法定相続人が確認できたら、次に行なうのは、法定相続人全員が集まり、「誰が、どの財産を相続するか」を話し合うことです。これを遺産分割協議といいます。 遺産分割協議の実施方法に決まりはないため、対面のほか、電話やオンライン会議ツールを利用しても構いません。 また、遺産分割協議の期限は決められていないものの、相続放棄をしたい場合は、相続発生から3ヵ月以内に家庭裁判所への申し立てが必要です。そのため、夫が亡くなってから1~3ヵ月以内には、協議の結果を出すことが望ましいでしょう。 5-6.相続に関する遺産分割協議書を作る 遺産分割協議がまとまったら、相続に関する「遺産分割協議書」を作成します。 遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意に至った内容を記録した書類のことで、相続する家の名義変更(相続登記)をする際に、法務局へ提出する書類のうちの一つです。 遺産分割協議書の様式などに決まりはないため、作成は手書きでもパソコンでも構いません。ただし、以下の項目が書かれている必要があります。 被相続人の氏名、死亡日時、本籍地、最後に住んでいた場所の住所 誰が、どの財産を取得するのか(預金の場合、銀行名や支店名、口座番号なども記載) 後日発見された財産の取り扱い 相続人全員の住所、署名捺印 これらを記載した遺産分割協議書を、相続人の人数分用意します。 なお、一度合意に至った内容は原則変更できません。内容を変更したい場合は、相続人全員が再度合意する必要があります。 5-7.法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する 遺産分割協議書の作成後、相続する家の登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得します。 「登記」とは、不動産の物理的な現況や所有者などの権利関係を、法務局の登記簿に記録することです。登記簿の内容を記載した書類を登記事項証明書(登記簿謄本)といい、相続した家の名義変更(相続登記)をする際に必要になります。 登記事項証明書(登記簿謄本)は全国の法務局の窓口、郵送、インターネットで請求可能です。 5-8.役所で固定資産評価証明書を取得する 次に、最新の固定資産評価証明書を取得します。 固定資産評価証明書とは、固定資産税の課税対象となる資産(土地や建物など)の評価額を証明する書類のことです。これは、相続した家の名義変更(相続登記)の際に、法務局に提出する必要があります。 固定資産評価証明書を取得できるのは、相続人やその代理人に限られ、申請者の本人確認書類や手数料、相続関係がわかる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、被相続人の死亡が確認できる住民票の除票の写しなどが必要です。 なお、固定資産評価証明書は、相続する家の所在地の役所窓口や郵送で取得できます。 5-9.法務局で相続登記を申請して名義変更する 法務局で相続登記を申請して家の名義を変更します。必要なものは以下のとおりです。 被相続人の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、住民票の除票の写し 遺言書または作成した遺産分割協議書 登記事項証明書(登記簿謄本) 固定資産評価証明書 所有権移転登記申請書 家を相続する人の住民票の写し 相続人全員の現在の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、印鑑証明書 登録免許税(収入印紙) 手続きは法務局の窓口のほか、オンラインや郵送でも可能です。ただし、オンラインの場合は、マイナンバーカードおよびICカードリーダライタが必要になります。 なお、相続登記をせずに放置していると、家を売却できない、ほかの相続人が勝手に登記を変更する恐れがある、相続人の子や孫の世代が売却・管理するのが難しくなるなど、トラブルが発生するリスクがあるため注意が必要です。 5-10.相続税の申告・納付をする いよいよ相続の最終段階である、相続税の申告・納付をする段階です。先述の計算式で、相続税の課税遺産総額や、相続人それぞれの相続税額を確認しましょう。正味の遺産額が基礎控除額よりも少ない場合は、原則、相続税はかかりません。 相続税の申告・納付では、相続税申告書に以下の書類を添付して、居住地を管轄する税務署に提出しましょう。 被相続人の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、戸籍の附票の写し、住民票の除票の写し 遺言書または作成した遺産分割協議書 登記簿謄本(登記事項証明書) 固定資産評価証明書 相続人全員の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)、戸籍の附票の写し、住民票の写し、印鑑証明書、本人確認書類 地積測量図または公図の写し 相続税の申告期限は、通常、夫が亡くなった日の翌日から10ヵ月目の日です。相続税の納付は、申告した際に現金での一括納付が原則です。 【無料】一括査定依頼スタート まとめ 夫(住宅ローン契約者)が死亡した場合、夫が団信に加入していれば、妻や子どもにローン残債の返済義務はなく、そのまま自宅に住み続けることができます。 夫が団信に加入しておらず返済義務が発生する、あるいは住宅ローンの組み方によって返済義務が発生し、住宅ローン残債の返済が困難な場合は、金融機関に条件変更の相談をしたり、家を売却したりするなどの方法を検討しましょう。 家を相続する場合は、さまざまなトラブルが発生する可能性があるため、今回紹介した手続きの流れをぜひ参考にしてください。 不動産の売却をお考えの方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご利用ください。