不動産の相続相談はどこへすべき?ケース別の6つの相談先を解説

相続する資産のうち、厄介なのが不動産です。
不動産は相続人の間で分割しにくいだけでなく、持っているだけで維持費もかかります。
不動産を相続した方やこれから予定のある方の中には、相談したいことを抱えていたり、相談先を探している方もいらっしゃることでしょう。

そこでこの記事では、「不動産を相続した場合の相談先」について解説します。
ぜひ最後までおつきあいいただき、適切な問題の解決にお役立てください。

不動産相続時の手続きについて知りたい方は『マンション相続に必要な手続きの流れを解説』をご覧ください。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.スケジュールと相談するタイミング&相談先

まず、相続の全体スケジュールと相談するタイミングおよび相談先を見ていきましょう。

相続の全体スケジュールと相談するタイミングおよび相談先

大きな市区町村では、各県の弁護士会や税理士会が役所に赴き、定期的に無料相談会を催していることも多いです。
被相続人が他界する前から、遺産を「兄弟でどう分けるか」等の一般的な相談がある場合には、手始めに役所の法律相談や税務相談を利用しても良いでしょう。
説明会の開催予定日は、役所や弁護士会・税理士会のホームページで公表されますので、確認してみてください。

また、昨今では相続税対策のために、生前より「不動産をどうするか」について具体的な策を講じようとする人も増えており、選択肢として節税効果の高い「土地活用」を視野に入れるケースが散見されています。
「どんな活用法があるのか」「本当に収益が出るのか」等、一度見積りをとってみたい場合にはハウスメーカーに相談するのが良いでしょう。(「第3章6 生前の土地活用相談ならハウスメーカー」にて詳しく解説します。)

相続後は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄と限定承認の期限が到来します。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの負債もすべて放棄することです。
限定承認とは、相続するプラスの財産の限度内でマイナスの負債を相続することを指します。

相続放棄や限定承認をするには、被相続人(他界した人)の遺産や負債を把握することが必要です。

相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告の期限が到来します。
準確定申告とは、被相続人が他界した年の1月1日から他界した日までの所得の確定申告のことを指します。
被相続人が、毎年、確定申告を行っていたケースでは、準確定申告を行うことが必要です。

被相続人がアパート経営をしていた場合、アパート経営を引き継ぐ準確定申告あたりのタイミングでアパート経営の相談をしたいことも多いと思います。
アパート経営の相談先は管理会社が一般的です。(「第3章5 アパート経営なら管理会社」にて後述します。)

遺産分割協議に関しては特に期限はありませんが、相続税の納税義務がある人は相続税の申告と納税前に遺産分割協議を終了させることが適切といえます。
遺産分割協議とは、相続後に相続人間で遺産の分割を決める話合いのことです。

遺産分割協議の相談先は、弁護士または司法書士となります。(「第3章3 遺産分割協議なら弁護士または司法書士」にて後述します。)

不動産の売却が必要な場合は、売却前に名義変更を行います。
遺産分割協議によって所有者を決める場合には、遺産分割協議書が名義変更の必要書類となります。
名義変更の相談先は、法務局または司法書士であることが一般的です。(「第3章2 名義変更なら法務局または司法書士」で詳しく解説します。)

相続税は現金納付が原則であるため、納税用の現金が必要な人は相続税の納税と申告の前に不動産を売ることがよくあります。
不動産売却の相談先は、不動産会社が適切です。(「第3章1 売却なら不動産会社」にて後述します。)

相続税の納税義務がある人は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税をすることが必要となります。
相続税の相談先については、税理士が適切です(「第3章4 相続税なら税理士」で詳しく解説します。)。

相続税の納税義務がある人とは、被相続人の全ての財産(不動産や現金、貴金属、有価証券、借金等)の合計額が基礎控除額を上回る人になります。
基礎控除額の求め方は以下の通りです。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、相続人が3人であれば基礎控除額は4,800万円(=3,000万円+600万円×3人)となり、被相続人の財産が4,800万円以上であれば相続税が発生します。

2.相談前に確認しておくべき3つのこと

あわてて何も準備をせずに相談窓口へ行ってしまうと、必要な情報や書類が不足して明確なアドバイスを得られずに帰る羽目になることがあります。
本章では、相談前に確認すべき3つの事柄について解説しますので、必ず事前に準備をしてください。

  1. 遺言書の有無の確認
  2. 財産の把握
  3. 相続人の確定

それではひとつずつ見ていきましょう。

2-1.遺言書の有無の確認

相続の相談をする場合には、事前に遺言書の有無の確認することがポイントです。
遺言とは、遺言者の生前の最終意思を尊重し、死後にその実現を図る制度になります。

遺言書がある場合、財産の分割方法は遺言書に従うことが原則です。
もし遺言書と異なる遺産分割の方法を実行したい場合には、遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議は相続後に相続人間で遺産の分割を決める話合いのことです。

遺言と遺産分割協議の関係性を図示すると、下図のようになります。

遺言と遺産分割協議の関係性

遺産分割協議を成立させるためには、相続人全員の同意が必要です。
1人でも反対者がいれば遺産分割協議は成立しないため、遺言書がある場合は遺言書が優先されます。

遺言書の内容を覆すには相続人全員の同意が必要なことから、遺言書の存在は非常に大きいのです。

名義変更や遺産分割に関して専門家に相談すると、必ず遺言書の有無を聞かれますので、事前に確認するようにしましょう

2-2.財産の把握

相続の相談をするなら、財産の把握も必要です。
相続税は不動産単体で決まるものではないことから、負債も含めて全財産を把握する必要があります。

相続財産の対象は、以下のような資産です。

(プラスの資産)

  • 不動産
  • 現金、預貯金
  • 商品券、プリペイドカード
  • 株、投資信託等の有価証券
  • 貴金属
  • 仮想通貨

(マイナスの資産)

  • 借金
  • 損害賠償
  • 未納の税金

その他として、被相続人が何らかの連帯保証人になっている場合は、連帯保証人の地位も引き継ぐことになりますので、留意してください。

2-3.相続人の確定

相談前に、「相続人を確定すること」もポイントです。
配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人です。
配偶者以外の相続人の順位は下表のように順位が定められています。

順位 親族
第1順位 子またはその代襲相続人(孫)
第2順位 直系尊属(父母)
第3順位 兄弟姉妹又はその代襲相続人(甥・姪)
【第1順位:子】
子がいる場合は、子が第1順位の相続人です。
子がすでに他界している場合には子に変わって孫、孫もすでに他界している場合は孫に替わってひ孫が相続人となります。

子がいる場合は、子が第1順位の相続人です

【第2順位:直系尊属】
被相続人に子や孫などの第1順位の相続人がいない場合、第2順位である被相続人の直系尊属(親・祖父母)が相続人となります。

被相続人に子や孫などの第1順位の相続人がいない場合、第2順位である被相続人の直系尊属(親・祖父母)が相続人となります

【第3順位:兄弟姉妹】
第1順位である子や孫などがおらず、かつ第2順位である直系尊属(親・祖父母)もいない場合、第3順位である被相続人の兄弟姉妹が相続人です。
兄弟姉妹がすでに他界しており、その兄弟姉妹に子(被相続人の甥や姪)がいる場合には、甥や姪が兄弟姉妹に変わって代襲相続(孫やひ孫が相続すること)します。

第1順位である子や孫などがおらず、かつ第2順位である直系尊属(親・祖父母)もいない場合、第3順位である被相続人の兄弟姉妹が相続人です

相続人を確定する場合、被相続人に隠し子がいないかどうかも確認することがポイントです。
隠し子の有無は、被相続人の戸籍を辿ることで確認します。

隠し子は、被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本を取得することで調査します。

3.ケース別に見る相談先

本章では、不動産に関する様々な相談内容をケースに分けて、ケース別に見る相談先を6つ解説します。

  1. 「売却」なら不動産会社
  2. 「名義変更」なら法務局または司法書士
  3. 「遺産分割協議」なら弁護士または司法書士
  4. 「相続税」なら税理士
  5. 「アパート経営」なら管理会社
  6. 「土地活用」ならハウスメーカー

それではひとつずつ見ていきましょう。

3-1.「売却」なら不動産会社

売却を相談するなら不動産会社です。
いくらで売れるかを把握する必要がありますので、売却相談は最初に査定を依頼します。

不動産会社に依頼する査定は、必ず無料となります。
また、査定額に納得いかなければそのまま断ってもらっても大丈夫です

古い不動産の売却では「建物は取り壊した方が良いのか」や、「リフォームすべきか」といった点も、不動産会社に相談したいケースもあるでしょう。

また、相続税の納税のために売る人は、例えば「1ヶ月以内売れるか」といったことも相談したい内容です。

査定を依頼すれば、不動産会社はこのような相談に対応してくれます
実際に物件を見た上で判断してくれますので、取り壊しやリフォームをする前に相談することがポイントです。

ただし、不動産会社の回答は技能や実績によって偏るため、複数の不動産会社に相談し、アドバイスの内容はもとよりアドバイスが丁寧かどうかもしっかり比べて、一番親身になってくれる会社を見極めることが必要です。

とはいえ、どのような会社に査定依頼をすれば良いのかは、不動産の専門家でもなければなかなかわからないですよね。
そんな時に便利なのが、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)」です。

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マンションや戸建て、土地、アパート、ビルといったあらゆる不動産種別に対応しており、全国の2,300社の中から最適な不動産会社が選ばれて査定に対応してくれます。

相続物件への対応力が高く、様々な相談内容に応じてくれる実力のある不動産会社が見つかりますので、ぜひ上手に活用してみてください。

3-2.「名義変更」なら法務局または司法書士

名義変更なら、法務局または司法書士に相談することが適切です。
名義変更登記は、司法書士の力を借りなくても頑張れば自分で行うことができます。

法務局に相談に行くと、登記官が無料で親切に教えてくれますので、司法書士費用を節約したい人は、直接法務局に行くことをおススメします。

相続した不動産を売却するには、所有者を明らかにするために名義変更が必要です。
また、名義変更は2022年4月時点では義務化されていませんが、2024年4月を目途に義務化がスタートする予定となっています。

義務化がスタートすると、義務化以前に相続したものも名義変更の義務の対象となります。
義務化されれば売却するか否かに関わらず、全ての不動産を名義変更することが必要です。

いずれにしても、近い将来、名義変更は義務化されますので、相続が発生したら速やかに名義変更を行いましょう

3-3.「遺産分割協議」なら弁護士または司法書士

遺産分割協議なら、弁護士または司法書士が適切な相談先です。

遺産分割協議をすると、法定相続分以外の割合で遺産を分割することができます。
法定相続分とは、法律で定められた原則的な遺産の分割割合のことです。

法定相続人と法定相続分の関係を示すと下表の通りとなります。

法定相続人 法定相続分
配偶者と子供の場合 配偶者1/2、子供1/2
配偶者と直系尊属 配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

不動産は現金と異なり1円単位で分けることができないため、遺産の中に不動産が存在すると法定相続分で分けることができないのが通常です。

ある不動産を相続人の誰かの単独所有とするには、遺産分割協議を行って遺産を割り振る必要があります。

遺産分割協議では取り決めた内容を最終的に遺産分割協議書という書面にまとめます。
有効な遺産分割協議書とするには記載要件を満たす必要があることから、遺産分割協議書は弁護士や司法書士に依頼して作成することが通常です。
弁護士や司法書士への手数料は、遺産総額の0.5~1%が相場となっています。

3-4.「相続税」なら税理士

相続税の相談なら、税理士です。
ただし、相続税の相談は相続を専門とする税理士に相談することが適切となります。

税理士の世界は、多くの税理士が法人や個人事業主を顧客としており、毎月の顧問料や決算料を主な収益源とするビジネスモデルとなっています。

個人の相続税のように、突発に発生し、かつ、1回きりで継続性がない業務はビジネスとして成立しにくいため、相続税を扱っている税理士は少ないのが実態です。

多くの税理士は、相続税に関して不慣れなことが多く、相談しても適切な回答が得られないことがよくあります。

整形外科の医者に耳鼻科の内容を聞いているような状態になるため、相続税はどの税理士に相談しても良いとはいえません。

相続税の相談をするのであれば、まずは相続を専門的に扱っている税理士を探すことがポイントです。

また、不動産の相続後に売却を行う場合は、売却益に対しても税金が発生します。
詳しくは、『相続した土地の売却で税金はいくらかかる?知っておくべき節税対策5つ

3-5.「アパート経営」なら管理会社

不動産の相続では、「引き継いだアパート経営の相談をしたい」といったケースもあります。
アパート経営は管理会社が肝を握りますので、相続をきっかけに管理会社を切り替えることは多いです。

先代からの管理会社を引き継ぐと、少し何かを注文するだけでも「お父様なそのような依頼されませんでした」という感じで無下に扱われてしまうこともあります。

アパート経営を行いやすくするには、自分で発掘した新しい管理会社に切り替えてしまった方が良いケースも多いです。

もしアパート経営で新たな管理会社を探してみたい方がいらしたら、「賃貸経営HOME4U」を活用してみてください。

賃貸経営HOME4U

複数の管理会社より、今のアパートに適した最適な管理メニューの提案を無料で受けることができるサービスです。

管理会社を切り替えると、空室も改善することがよくあります
より良いアパート経営ができるようになりますので、提案を受けてみることをおススメします。

3-6.「土地活用」ならハウスメーカー

もし「土地活用」を検討するなら、まずはハウスメーカーに相談することが適切です。
土地活用はアパート経営から太陽光発電まで幅広い種類がありますが、収益物件を建てると、不動産の相続税評価額が下がり、相続税を節税することができるので、「アパートやマンションなどを建てた場合、どの程度利益が出るのか」を一度確認してみることをおススメします。

また、大手のハウスメーカーなら、アパート経営以外の土地活用についても提案や見積りをしてくれる企業もありますので、あちこち問い合わせずとも手間なく情報が集められます。

ただ、土地活用を行うかどうか判断するには、「建築費・初期費」だけでなく、「将来の収益」「どのくらい節税できるのか」といった情報も確認が必要ですよね?
大手のハウスメーカーであれば、これらの情報を「プラン」としてまとめあげ、無料で提案してくれます。

手間をかけずにハウスメーカーに土地活用の相談をするなら、便利なのがNTTデータグループが運営する「HOME4U土地活用」です。

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提案力のある国内の大手ハウスメーカーが揃っており、その土地に合った最適なプランを提案してくれます。
先述したように、収益や節税効果まで見積もってくれるので、複数の企業のプランを比較することで、「どの会社のプランが一番収益性が高いのか」も客観的に判断できる点がメリットです。

相続税対策を目的とした最適な土地活用の提案が受けられますので、ぜひ上手に活用してみてください。

まとめ

いかがでしたか。
不動産相続の相談について解説してきました。

相続が発生した後は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄と限定承認の期限があり、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税の期限があります。

相談先で的確なアドバイスを得るために、事前に必ず「遺言書の有無の確認」、「財産の把握」、「相続人の確定」の3つの情報をまとめておいてください。

相続する不動産の売却が決まっている場合は、「いくらで売れるのか」を知るために売却額の査定をする必要があります。

その際、査定依頼先は、複数の不動産会社に同時に査定を申し込み、内容を比較してから決めることをおすすめします。

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この記事の情報が、皆さんの悩みや心配の解決に繋がることを願っています。