相続時精算課税制度とは?税制改正による変更点や節税効果が高いケースを解説

相続時精算課税制度 節税効果が高いケースとは

相続される予定の財産の生前贈与を検討している方もいるでしょう。そのために知っておきたいのが、税制改正により活用しやすくなった相続時精算課税制度です。

本記事では、相続時精算課税制度による贈与の概要と、メリット・注意点を解説します。節税になるケースについても併せて説明するので、ぜひ参考にしてください。

この記事を読むと分かること
  • 相続時精算課税制度改正の概要
  • 相続時精算課税制度のメリットと注意点
  • 相続時精算課税制度で節税になるケース
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1.相続時精算課税制度とは?

贈与税の申告書

相続時精算課税制度とは、2,500万円までであれば非課税で受贈者(子や孫)に財産を譲ることができる制度です。贈与者が亡くなった際には、贈与済み財産の贈与時の価額と、相続財産を合算した金額に基づき、相続税を支払います。

相続時精算課税制度とは?

参考:“参考 相続時精算課税制度のあらまし”. 国税庁. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

制度そのものは以前からありましたが、2023年(令和5年)の税制改正によって従来の制度よりも利用の幅が広がりました。

本章では、相続時精算課税制度の概要について解説します。

1-1.相続時精算課税制度の税率は一律

相続時精算課税を選択すると、対象となる年度以降は贈与税の税率が変わります。

<相続時精算課税を選択した場合>

基礎控除・特別控除後の課税価格 税率
区分なし 一律20%

参考:“No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)”. 国税庁. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

<相続時精算課税を選択しなかった場合>

基礎控除後の課税価格 税率
200万円以下 10%
400万円以下 15%
600万円以下 20%
1,000万円以下 30%
1,500万円以下 40%
3,000万円以下 45%
4,500万円以下 50%
4,500万円超 55%

参考:“No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)”. 国税庁. (参照2024-03-29)をもとに、HOME4Uが独自に作成

相続時精算課税を選択した場合の税率は、一律20%です。

一方、相続時精算課税制度を利用しない場合の贈与税は、累進課税です。贈与財産の課税価格が200万円以下であれば、税率は10%と低いですが、課税価格が4,500万円を超えると、税率は55%にもなります。

1-2.贈与税は相続時に精算される

相続時精算課税を選択した後に相続が発生すると、贈与財産が相続財産に加算され、相続税が算出されます。つまり、相続時精算課税は贈与税と相続税を合算する制度だと考えると、理解しやすいでしょう。

なお、相続時にすでに納めた贈与税があれば、相続税から控除されます。したがって、二重に課税されるわけではなく、控除しきれない場合には還付を受けることも可能です。

つまり、相続時精算課税には、相続税を前払いするような効果もあるといえます。

参考:参考 相続時精算課税制度のあらまし”. 国税庁

1-3.税制改正で基礎控除が新設された

税制改正により、2024年(令和6年)からは相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除枠が設けられました。

従来の制度では、生前贈与した財産はすべて相続財産に加算されていました。しかし今後は、年間110万円までの贈与であれば贈与税の対象にならず、相続財産にも加算されません。

つまり、基礎控除に収まる金額に財産を分割して、毎年贈与を繰り返す限り、贈与税はかからないということです。これにより、相続時精算課税制度の活用の幅は大きく広がったといえます。

参考:“令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし”. 国税庁

2.相続時精算課税制度を適用するメリット

家族の団らん

相続時精算課税制度には、以下のようなメリットがあります。

  • 2,500万円までの贈与は非課税になる
  • 財産を確実に継承できる
  • 贈与者ごとに制度を利用できる

2-1.2,500万円までの贈与は非課税になる

相続時精算課税制度には、2,500万円の特別控除が設けられています。税率は一律20%で、贈与財産が累計2,500万円を超えるまでは贈与税がかかりません。

課税価格を計算する際には、1年ごとの贈与額から基礎控除110万円を引き、残った金額を計算します。その累計額から、2,500万円までを控除できます。

つまり、相続時精算課税を選択していれば、生涯において2,500万円までの贈与には贈与税がかからないということになります。

参考:“参考 相続時精算課税制度のあらまし”. 国税庁

不動産を贈与する場合、年間110万円の基礎控除に収まるように分割するのは現実的ではないかもしれません。しかし、2,500万円の特別控除を活用すれば、贈与税を減らせる可能性も十分にあります。

2-2.財産を確実に継承できる

相続の際には、トラブルが発生することも少なくありません。特に不動産については、どのように分割するかで話し合いが難航するケースが考えられます。

一方の生前贈与では、当事者全員が存命中に財産の継承が可能です。当事者不在による争いごとを避け、財産を継承してほしい相手に確実に受け取ってもらえます。

さらに、相続時精算課税制度では2,500万円の特別控除を活用できます。累計2,500万円までの財産は贈与税がかからないため、不動産など価値が高い財産を継承する場合にも、税負担を抑えやすいでしょう。

2-3.贈与者ごとに制度を利用できる

相続時精算課税制度を利用するかどうかは、受贈者(財産を受け取る側)が選択します。受贈者から見て贈与者(財産を渡す側)が複数いる場合は、その相手ごとに制度を適用するかどうかを選択可能ということです。このとき、控除額も相手ごとに別々に計算します。

例えば、孫が受贈者、祖父と祖母の2人が贈与者にあたるケースについて考えてみましょう。この場合は、相続時精算課税を祖父のみに適用することも、祖父と祖母の両方に適用することも可能です。

両方に適用した場合は、それぞれで累計2,500万円の特別控除を利用できるため、最大で5,000万円までの財産を贈与税なしで継承できます。

3.相続時精算課税制度の注意点

注意点

相続時精算課税制度には、以下のようなデメリットもあります。

  • 制度の適用には条件がある
  • 相続税がなくなるわけではない
  • 申告後は撤回できない

3-1.制度の適用には条件がある

相続時精算課税制度は、贈与と相続を一体のものとして扱います。したがって、誰に対する贈与でも利用できるものではありません。

贈与者(財産を渡す側)と受贈者(財産を受け取る側)は、それぞれ次のような条件を満たす必要があります。

  • 贈与者:贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母や祖父母
  • 受贈者:贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であり、贈与者の直系卑属にあたる推定相続人か孫

参考:“参考 相続時精算課税制度のあらまし”. 国税庁

推定相続人とは、今すぐに相続が開始したと仮定したときに、第1順位になる相続人のことです。つまり、いずれ財産を相続する子や孫、養子などだけが、相続時精算課税を選択することができます。

制度の対象となる贈与を受けた方は、翌年の贈与税の申告期間(2月1日から3月15日まで)に、納税地の税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を添付して申告する必要があります。

参考:“相続時精算課税選択届出書”. 国税庁

3-2.相続税がなくなるわけではない

相続時精算課税制度の特別控除によって非課税となるのは、あくまで贈与税です。贈与した財産は、相続が発生したときに相続財産に加算され、改めて相続税がかかります。非課税で贈与できたとしても、相続税がなくなるわけではない点に注意しましょう。

では、「何のために特別控除があるのか」という疑問を持つ方もいるかもしれませんが、特別控除を活用すれば、相続を待たずに財産の継承が可能です。このとき、2,500万円までの贈与であれば、納税は相続時まで先送りにできる、と考えると理解しやすいでしょう。

なお、2024年(令和6年)に基礎控除が新設されたことに伴い、贈与税の申告が必要になるのは、贈与が年間110万円を超えた年度のみになりました。

参考:令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし|国税庁

3-3.申告後は撤回できない

相続時精算課税制度による課税方法を「相続時精算課税」と呼ぶのに対して、贈与における通常の課税方法を「暦年課税」と呼びます。

参考:“令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし”. 国税庁

相続時精算課税を選択するのは「今後の贈与税はすべて、暦年課税ではなく相続時精算課税で計算する」と宣言するようなものです。

そのため、ひとたび相続時精算課税を適用したあとは、その選択を撤回できません。より平たくいえば、暦年課税には二度と戻れなくなるということです。

前述したとおり、暦年課税は累進課税となっており、贈与の額によっては相続時精算課税よりも税率が低くなることもあります。相続時精算課税制度の利用に関する判断は、慎重に行なうべきだといえるでしょう。

4.不動産の贈与・相続にかかる税金

税金

相続時精算課税制度は贈与税と相続税にかかわるものですが、不動産の継承に際しては、ほかにも考慮すべき税金があります。ここでは、不動産を贈与・相続するときにかかる以下の2つの税金について説明します。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税

なお、不動産購入時の税金について知りたい方は「不動産を購入するときにかかる税金」をご覧ください。

4-1.不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得したときに都道府県に納める税金です。物件を購入したり、家屋を建設したりした場合に課税されます。

贈与により取得した土地や家屋は、不動産取得税の課税対象ですが、相続したものについては課税対象ではありません。

不動産取得税は、次の計算式で求められます。

不動産取得税=不動産の評価額×税率(4%)

参考:“不動産取得税”. 総務省

ただし、住宅用の土地・家屋については、2024年(令和6年)3月31日まで、税率が3%に軽減されます(2024年1月現在)。また、都道府県によりますが、住宅の広さなどが一定の条件を満たせば、実質非課税になるケースもあります。

4-2.登録免許税

「登録免許税」とは、さまざまな登記や登録を行なう際にかかる税金です。不動産の贈与や相続では「所有権移転登記(=名義変更)」のために必要になります。

登録免許税の税額は、不動産の固定資産評価額に以下の税率をかけて求めます。

  • 贈与の場合:2%
  • 相続の場合:0.4%

参考:“No.7191 登録免許税の税額表”. 国税庁

上記のとおり、贈与の際の登録免許税は、相続の場合の5倍も高いのが特徴です。相続時精算課税制度を活用すれば贈与税と相続税を抑えられる可能性があるものの、登録免許税については1,000万円あたり20万円もかかる計算です。

参考:“No.7190 登録免許税のあらまし”. 国税庁

5.相続時精算課税制度で節税になるケース

お金について考える女性

ここでは、どのような場合に相続時精算課税制度の利用が節税につながりやすいのかを解説します。

  • 相続税がかからなそうな場合
  • 不動産の評価額が上がりそうな場合
  • 不動産に収益性がある場合
  • 不動産相続の負担を減らしたい場合

5-1.相続税がかからなそうな場合

相続税にも基礎控除があり、次の式で計算できます。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

出典:“No.4152 相続税の計算”. 国税庁

例えば、相続財産が2,000万円であれば、課税価格が基礎控除額を下回るため、相続税はかかりません。

暦年課税には年間110万円の基礎控除があるため、財産を分割して毎年贈与を繰り返すことで税額を抑える計画も立てられますが、2,000万円の財産を非課税で贈与するには、19年もの時間がかかります。

このような場合には、相続時精算課税がおすすめです。相続時精算課税を選択することで2,500万円までは特別控除が受けられるため、財産が2,000万円であれば、一括で贈与しても非課税になります。

5-2.不動産の評価額が上がりそうな場合

前述のとおり、相続時精算課税では生前贈与した額が相続財産に加算されますが、加算されるのは贈与した時点の価額です。

一方で不動産の評価額は、経年や物価水準などによって変動します。相続時の評価額が高くなりそうな土地や家屋がある場合は、早期の贈与を検討するとよいでしょう。相続時には値上がりする前の評価額が加算されるため、相続税を軽減できます。

特に、以下のようなケースでは、相続時精算課税制度を利用した早めの贈与を検討しましょう。

  • 今後の値上がりが見込める財産がある
  • 一時的に値下がりしている財産がある

5-3.不動産に収益性がある場合

相続時精算課税では、収益性のある財産は早期に継承するほど節税になる可能性があります。

例えば、親が賃貸マンションを所有しており、子に贈与すべきかどうかを検討しているケースについて考えてみましょう。賃貸マンションは、入居者が支払う家賃収入によって収益を得られる物件(収益物件)です。

生前贈与をしない場合、物件から得られる収益は親の財産となります。収益性があるほど相続時点までに財産が増えていくため、相続税もその分だけ高くなってしまうでしょう。

しかし、物件を贈与すれば、その分だけ相続財産を減らすことができます。さらに、物件から得られる収益は子の財産となるため、家賃収入によって相続財産が増えることはありません。

物件の収益性が高いほど、また早期に贈与を済ませるほど、節税につながる可能性が高いといえます。

5-4.不動産相続の負担を減らしたい場合

不動産の相続が発生すると、親族間の話し合いが難航するケースも多く見られます。トラブルを避けるために生前贈与をしようにも、受贈者の贈与税の負担が気になり、躊躇している方もいるでしょう。

そのような場合には、思い切って売却を検討するのも一つの方法です。不動産を売却してお金に換えれば、分割して贈与できるようになります。

そのうえで、年間の贈与額を110万円の基礎控除以内に抑えれば、贈与税も相続税もかかりません。ほかに贈与がなかった年は贈与税の申告も不要です。

また、相続時精算課税では特別控除を併用できます。2,500万円までであれば一括で贈与しても贈与税がかからないため、相続の際に生じるトラブルや金銭的な負担を計画的に減らせるでしょう。

なお、土地の相続問題について詳しくは「土地を子どもに譲渡するか、売却するか、どっちがいい?」も参考にしてください。

6.不動産売却では不動産会社の選び方が重要

不動産を売却する際は、相談する不動産会社によって査定結果に数百万円もの差が出ることがあります。「少しでも高く売りたい」と考えるなら、不動産会社選びは慎重に行ないましょう。

不動産会社には、それぞれに得意とする分野があるため、必ずしも大手を選ぶのが良いとは限りません。地域密着型の小規模な不動産会社でも、「その地域の実績が多く、知名度が高い」「マンション売却に定評がある」といった独自の強みにより、高額での売却を実現できるケースもあります。

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まとめ

相続時精算課税制度は、贈与税を相続税で精算するしくみです。制度を利用して贈与した額は相続財産に加算され、相続税の対象となります。税制改正で基礎控除が新設されたことにより、従来の制度よりも利用シーンが広がりました。

贈与税を軽減しながら、受け継いでほしい相手に確実に財産を残せるというメリットがある一方で、制度の利用を開始したあとの撤回ができない、といった注意点もあります。

とはいえ、相続時精算課税制度の計画的な利用により節税につながるケースは少なくありません。特に金額が大きくなりがちな不動産は、思い切って売却して現金化することで、贈与を進めやすくなる場合もあります。売却の際には、複数の不動産会社を比較検討して、最適な1社を選ぶことが大切です。

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