【マンションの相続放棄】必要な費用や注意点を詳しく解説!

マンション 相続放棄

マンションの相続」が発生した際、「相続放棄した方が良いかな…」と考える方が一定数存在します。

「住む予定が全くない」
「古すぎて売れそうもない」
「戸建てのように建て替えができない」
「賃貸経営の経験がないので貸し出すのが不安」
など、様々な事情があります。

ただし、相続放棄は他の相続人に迷惑をかけたり後々トラブルになるケースもあるため、制度をよく理解して慎重に選択すべきです。
また、相続放棄の制度は民法改正によって大きく変わる予定となっています。

そこでこの記事では、「これからマンションを相続する可能性がある方」や「マンションを相続放棄すべきか迷っている方」に向けて、以下の内容を解説します。

  • 相続放棄の概要
  • マンションを相続放棄するときの注意点
  • マンションを相続放棄するとその後どうなるか

ぜひ最後までおつきあいいただき、適切な判断を行うための一助としてください。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.マンションを相続すると生じる負担

まずは「マンションを相続するとどのような負担が生じるか」を整理してみましょう。

主に生じる負担は、以下の3点です。

  • 固定資産税および都市計画税が発生する
  • 管理費および修繕積立金が発生する
  • 管理組合の役員や理事が回ってくる可能性がある

固定資産税および都市計画税が発生するのは戸建ても同じです。
ただし、マンションでは管理費および修繕積立金も発生するため、戸建てを引き継ぐよりも経済的な負担は重いといえます。

また、マンションの所有者になれば、管理組合の役員や理事が回ってくる可能性があります。
住んでいない場合は回ってくる可能性は低いですが、それでも可能性はゼロではありません。

マンションを建て替えるには、区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成決議が必要であり、建て替えは極めて難しいとされています。

国土交通省によれば、マンションの建て替え実績は2019年4月時点で累計244件(約19,200戸)となっており、全国のマンションの約655万戸に対しわずか約0.3%という状況です。

マンションは戸建てのように建て替えができる可能性は極めて低く、老朽化し続けるだけの負の遺産となる可能性があります。

2.相続放棄とは

相続を放棄するには、様々な縛りが存在します。
本章では、以下の3点について解説していきます。

  1. マンションだけ相続放棄はできない
  2. 相続放棄には期限がある
  3. 相続放棄に必要な費用

それではひとつずつ見ていきましょう。

2-1.マンションだけ相続放棄はできない

相続放棄は、都合よくマンションだけ相続放棄をすることはできないという制約があります。

相続放棄とは、はじめから相続人ではなかったものとみなされる制度のことです。
相続放棄をすると、そもそも相続人ではないということになるため、全ての財産の相続権利を失うことになります。

例えば、被相続人(他界した人)が現金とマンションを残した場合、相続放棄をするとマンションだけでなく現金も引き継ぐことができないということです。

相続ではプラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産も引き継ぎます。
相続放棄は、被相続人が多額の借金を抱え、明らかにマイナスの財産の方が多いときに利用する制度です。

相続財産が多額の借金であれば、相続放棄をすることで借金を引き継がなくても良いため、非常にメリットがあります。

相続財産がプラスの財産の方が多い場合、相続放棄をするとマンション以外のプラスの財産を引き継げなくなるという点がデメリットです。

尚、親が他界する前に子が他界しているケースでは、孫が相続人となります。
孫やひ孫が相続することを代襲相続と呼びます。

相続放棄をすると、はじめから相続人ではなかったことになるため、子が相続放棄をしても孫に代襲相続されることはありません。

よって、自分が相続放棄をしたら、マンションの権利が子に移ってしまうということはないということになります。

2-2.相続放棄には期限がある

相続放棄には、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述書を提出しなければならないという期限があります。

期限を過ぎてしまうと、単純承認したことになります。
単純承認とは、被相続人(他界した人)の権利義務を承継することです。

相続人が複数人いる場合、被相続人の財産は共有状態で引き継ぐことになります。
相続放棄の期限を過ぎた後は、相続人の誰かに引き継いでもらえば自分は引き継がなくすることは可能です。

被相続人の財産を相続人間で分けること「分割」と呼びます。
遺産分割の方法には、「遺言による分割」と「遺産分割協議による分割」の2種類があります。

まず、被相続人が残した遺言書があれば、遺言書に従って財産を分割することが基本です。
遺言書がない場合は、相続人同士で話し合って、誰が何を引き継ぐかを決めることになります。

相続人同士の話し合いのことを遺産分割協議と呼びます。
遺産分割協議には、特に期限がありません。
遺産分割協議を成立させるには、相続人の全員の同意が必要です。

2-3.相続放棄に必要な費用

相続放棄に必要な費用は以下の通りです。
(相続放棄の申述をする人が配偶者または第一順位の相続人(子またはその代襲相続人のこと)の場合です。)

書類 金額
相続放棄の申述書に貼る収入印紙代 800円
申述人の戸籍謄本 450円
被相続人の戸籍謄本
(申述人と同一の戸籍の場合は不要)
450円
被相続人の住民票除票
(または戸籍附票)
300円
第1順位の相続人が孫の場合は孫の親(被相続人の子)の他界したことがわかる戸籍謄本も必要 戸籍謄本なら450円
除籍謄本なら750円
切手2枚(持参の場合は1枚) 1枚84円

相続放棄には若干の費用が掛かりますが、遺産分割協議と比べると費用が安くなることが一般的です。

遺産分割協議では遺産分割協議書を作成しますが、書類作成は弁護士や司法書士に依頼することが通常となります。
遺産分割協議の場合の書類の作成費用は、遺産総額の0.5~1%程度が目安です。

3.マンションを相続放棄する際の注意点

マンションを相続放棄する際、ぜひ注意していただきたい点が3つあります。

  1. 安易に遺品整理をしないこと
  2. 他の相続人の承認を取ること
  3. 放棄する前に売却できないかも見極めること

ひとつずつ解説していきますので、しっかり理解を深めてください。

3-1.安易に遺品整理をしないこと

相続放棄を検討している場合は、安易に遺品整理をしないことが注意点となります。
具体的には、遺品整理の中で高級時計等の換価価値のあるものを形見分けや処分することが避けるべき行為です。

相続放棄には、相続の開始を知った日から3ヶ月以内という期限がありますが、この間に換価価値のある遺品の形見分けや処分を行うと、相続の単純承認をしたとみなされる可能性が高くなります。

単純承認をしてしまうと、後から相続放棄ができなくなるというのがルールです。
そのため、相続放棄をする人は、基本的に何も触れず、遺品整理には関与しないことが安全といえます。

3-2.他の相続人の承認を取ること

相続放棄をする場合、必ず他の相続人の承認を取ることが注意点です。
法律で定められた相続人(法定相続人)には順位があり、相続放棄をすると相続の権利が下位の順位の人に回ってしまいます。

法定相続人は、配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人です。
配偶者以外の相続人の順位は下表のように定められています。

順位 親族
第1順位 子またはその代襲相続人(孫)
第2順位 直系尊属(父母)
第3順位 兄弟姉妹又はその代襲相続人(甥・姪)

よくあるケースとしては、第1順位の子全員が相続放棄を行い、第3順位である「兄弟姉妹の代襲相続人(甥・姪)」までに相続権が波及してしまうケースです。

第2順位は父母であるため、すでに他界しているケースが多く、第2順位の人たちに波及するケースは少ないといえます。
一方で、親の兄弟や、親の兄弟の子(甥・姪)は存命であることは多いです。

特に、親の兄弟の子が疎遠になっているケースでは、連絡をしないまま第1順位の人が全て相続放棄をしてしまうことがあります。

連絡を受けなかった第3順位の相続人は、相続放棄の期限を過ぎてしまい、押し付けられる形で相続せざるを得ないといったことが起こり得ます。

親族間の争いも生じかねませんので、必ず事前に下位の順位の相続人も含めて事前に承認を得るようにしてください。

もし皆が相続放棄をしたい場合には、波及する可能性のある人も含めて全員で相続放棄をすることが必要です。

3-3.放棄する前に売却できないかも見極めること

放棄する前に売却できないかも見極めることも注意点となります。
マンションは相続放棄よりも売却の方がメリットは多いです。

売却すればお金が入ってきますし、他の相続人が管理費や修繕積立金を請求されることもなくなります。
また、売却であれば3ヶ月以内という制限もないため、慌てずに対応することが可能です。

相続放棄をしなくても良いため、仮に現金等のプラスの財産が残っていれば、その権利を引き継ぐこともできます。
申述書を記載したり、戸籍謄本等を集めたりする手間も不要です。

また、古いマンションで売却が不安であっても、実際に査定を依頼すると値段が付くことも多くあります。
査定価格の値段が付くということは「売れる」という意味であり、もし不動産会社が売れないと考えていれば査定価格はゼロ円となります。

確かに古い戸建ての空き家やリゾートマンションでは査定価格がゼロ円という物件もありますが、一般的なマンションでは古くてもゼロ円というのはレアケースとなっています。

理由としては、マンションは戸建て等と比較すると相対的に立地の良い物件が多いためです。

値段が付くかどうかを確かめるには、不動産一括査定サービスで査定依頼してみるのが良いでしょう。

本当に売れないマンションは少ないことから、相続放棄をする前に一度査定を依頼してから相続放棄か売却かの判断するようにしましょう。

マンションを少しでも高く売りたいなら、「一括査定」で複数の不動産会社から査定額を取り寄せることをおススメします。
なぜなら、査定額は不動産会社により異なり、時には100万円以上の差がつくこともあるからです。

手間をかけずに複数の不動産会社に査定依頼をするなら、「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」が便利です。

マンションの所在地や築年数などを入力するだけで、マンション売却に強い不動産会社をシステムが自動でピックアップしてくれるので、手間なく査定依頼ができます。

あとで後悔しないよう、放棄の手続きを行う前に査定を受けることをおススメします。

4.マンションの相続放棄のその後はどうなる?

相続放棄をしたら、その後マンションはどうなるのでしょうか?
本章では以下の2ケースに分けて解説していきます。

  1. 一部の人しか相続放棄をしていない場合
  2. 全員が相続放棄をしている場合

それではひとつずつ見ていきましょう。

4-1.一部の人しか相続放棄をしていない場合

一部の人が相続放棄を行っても、残って引き継いでしまった相続人には管理費や修繕積立金の支払い義務が生じます。

マンションの所有者が孤独死等で他界した場合でも、マンションの管理組合は弁護士等の協力を得ながら相続人を探索していくことが一般的です。

第1順位の相続人が相続放棄をしていれば、第2順位、第3順位と辿っていき、放棄していない相続人を探し出します。

放棄していない相続人が判明した場合、管理組合はその相続人に対して管理費等の請求をしていくことが一般的な流れです。

もし、相続人が管理費等の支払いを拒否した場合には、管理組合がその相続人に対して訴訟を行うこともあります。

4-2.全員が相続放棄をしている場合

全員が相続放棄をしていることが判明した場合、最終的にマンション管理組合は裁判所に対して相続財産管理人の選任を申述します。

相続財産管理人とは、相続人がいない人が他界したときに被相続人の財産を管理する人のことです。

相続放棄は、はじめから相続人ではなかったこととする行為であるため、全員が相続放棄をした場合は、被相続人(他界した人)には相続人が誰もいなかったということになります。

そのため、全員が相続放棄をした場合は、相続財産管理人が選任される状況になるということです。
相続財産管理人は弁護士が選任されます。
相続財産管理人が選任された後は、マンション等は売却されることが多いです。

不動産売却塾 コラム

“~民法改正で変わる相続放棄後の管理義務~”

2021年4月28日に「民法等の一部を改正する法律」が公布されました。
施行は原則として公布後2年以内の政令で定める日とされており、遅くとも2023年4月に施行される見込みです。

従来、民法により相続放棄をした人でも相続財産管理人が選任されるまでマンションの管理をしなければならないとされていました。

(改正前の民法940条第1項)

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

従来は民法の規定では、相続放棄をした人も管理費の支払義務の可能性があると解されています。

ただし、改正後の民法では、以下のように規定されています。

(改正後の民法940条第1項)

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人(管理人)に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

管理責任を負うのは「放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」だけに限られることになり、占有していない人は管理義務を負わないことに変更される予定です。

まとめ

いかがでしたか。
マンションの相続放棄について解説してきました。

相続放棄はマンションだけをすることはできず、相続を知った日から3ヶ月以内にしなければならないという期限があります。

マンションを相続放棄する際は、「安易に遺品整理をしないこと」や「他の相続人の承認を取ること」、「放棄する前に売却できないかも見極めること」が注意点です。

相続放棄をするのであれば、あとでトラブルにならないよう、相続人となる可能性のある人も含め全員と話し合った上で実施することをおススメします。

この記事の情報が、皆さんのマンション相続の判断のお役に立つことを願っています。

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