遺言書の効力をシンプルに解説|発生・効力の範囲・無効リスクが丸わかり!

遺言書の効力をシンプルに解説|発生・効力の範囲・無効リスクが丸わかり!

遺言書は「人生の最終メッセージ」といわれます。財産の分け方だけでなく、家族への想いや安心を形にする大切な書面です。

特に相続においては、遺言書の有無が家族間の負担やトラブルを大きく左右します。

また、せっかく遺言書を書いても、法律で定められた方式を守らなかったり、内容が曖昧だったりすると無効になってしまうリスクも。

そこで、この記事では、遺言書の効力が発生するタイミングから、遺言でできること・できないこと、そして無効にならないための書き方まで、初心者にもわかりやすく解説します。

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1.遺言書の効力は死亡時から発生する

遺言書の効力は、遺言者が亡くなったときに初めて発生します。
作成した瞬間に効力が出るわけではなく、生前は何度でも書き直せるのが大きな特徴です。

たとえば、結婚・離婚、子どもの誕生や独立、再婚や事業承継といったライフイベントのたびに内容を見直せば、常に最新の状況に合った遺言書を残すことができます。

この柔軟さは、家族にとっても大きな安心につながります。
古い遺言書が残っていると「どれが有効なのか?」で混乱が起きやすいですが、新しい遺言書が優先されるため、最後に書き直したものが効力を持つのです。

つまり「書いて終わり」ではなく「人生に合わせて更新できる仕組み」こそが、遺言制度の強みと言えるでしょう。

遺言書の種類と特徴、メリット・デメリット
自筆証書遺言 特徴
本人が全文・日付・署名を自筆で書き、押印する形式。財産目録はパソコン作成可(署名押印要)。
メリット

  • 費用がかからない
  • 思い立ったときにすぐ作れる
  • 内容を他人に知られずに済む
  • デメリット

  • 方式不備で無効になりやすい
  • 紛失・改ざんのリスクがある
  • 家庭裁判所の検認が必要
  • 公正証書遺言 特徴
    公証役場で公証人が遺言者の口述をもとに作成し、原本は公証役場に保管。
    メリット

  • 方式不備の心配がない
  • 紛失・改ざんのリスクなし
  • 家庭裁判所の検認不要で手続きがスムーズ
  • デメリット

  • 公証人手数料が必要
  • 証人2人の立会いが必要
  • 内容を証人に知られる
  • 秘密証書遺言 特徴
    本人が署名押印した遺言書を封印し、公証役場で「存在」を証明してもらう形式。内容は秘密にできる。
    メリット
    内容を秘密にできる
    デメリット

  • 家庭裁判所の検認が必要
  • 内容に公証人が関与せず、方式不備の無効リスクは高い
  • 実務では利用が少なく、取り扱いに慣れた専門家が少ない
  • 2.遺言書でできること8つ

    遺言書でできるのは、法律で認められた範囲に限られます。
    ここを押さえることで、書いても無効になるリスクを避けられます。

    代表的な8つは次のとおりです。

    遺言書でできること8つ

    (1)相続人への分け方(相続分・財産の指定)

    誰にどの財産をどれくらい渡すかを自由に決められます。

    たとえば「自宅の土地は長男へ、預金の半分は次女へ」というように、具体的な財産を相続人ごとに割り当てられます。
    割合で指定することも可能なので、「全体の3分の1を妻に、残りを子ども2人で分ける」といった指定も可能です。

    ただし、遺言書でも遺留分を侵害することはできません。
    詳しくは(1)遺留分の侵害をご覧ください。

    (2)相続人以外の方や団体に財産を寄付(遺贈)

    相続人以外にも財産を残せるのが遺言書の大きな特徴です。

    たとえば、長年お世話になった友人に現金を贈ったり、慈善団体へ寄付したりできます。これを法律では「遺贈」と呼びます。

    とはいえ、こちらも遺留分を侵害することはできないため、注意しましょう。

    (3)遺産分割の指定や禁止

    遺産の分け方を細かく指定したり、一時的に分割を禁止できます。
    「この不動産は長男に相続させる」といった形で具体的に書くことができるのです。

    さらに「この土地は当分の間、分けないでほしい」と禁止することも可能で、その効力は最長5年間続きます。

    (4)非嫡出子(婚外子)の認知

    子どもを法律上の子として認められます。
    遺言書で「この子を自分の子として認知する」と意思表示すれば、遺言者が亡くなったときに効力が発生し、子は正式に法律上の地位を得られます。

    対象となるのは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子ども(非嫡出子)です。
    2013年9月5日以降に開始した相続については、嫡出子と非嫡出子は完全に平等な相続分を持つことになっています。

    そのため、生まれた経緯に関わらず、認知さえされれば他の子と同じように相続権を得られる、ということです。

    (5)未成年後見人の指定

    親が亡くなったときに子どもを守る後見人を決められます。
    たとえば子どもがまだ未成年のうちに親が亡くなった場合、生活や財産の管理を託せる人物をあらかじめ遺言書で指定できるのです。

    未成年とは、2022年の民法改正により18歳未満のことを指します。
    したがって、17歳までの子どもについては、遺言書で「未成年後見人」を決めておくことで、親亡き後も生活・教育・財産管理を安心して任せられます。

    (6)生命保険を受け取る方の指定・変更

    生命保険の受取人を遺言書で変更できます。

    たとえば「これまでは妻にしていたけれど、子どもに変更したい」といった場合に活用できます。
    死亡後に効力が発生し、遺言執行者や家族が保険会社へ通知してはじめて新しい受取人に支払われます

    とはいえ、通知がなければ保険会社は元の受取人に支払ってしまう可能性があるため、手続き面に注意が必要です。

    (7)推定相続人の廃除

    相続させたくない方を相続人から外せます。

    暴力や著しい非行など、特別な事情がある場合に遺言書で「廃除」を申し立てられるのです。
    家庭裁判所の判断を経て、その相続人の権利を失わせることが可能です。

    (8)遺言執行者の指定・指定委託

    遺言書の内容を実際に実行してくれる方を「遺言執行者」として指名できます。

    信頼できる親族や専門家を遺言執行者に選んでおけば、遺言書に従って預貯金の解約や払い戻し、不動産や自動車などの名義変更、株式や有価証券の管理・売却といった手続きを一任できるのです。

    これにより、相続人の一部が勝手に財産を引き出したり、売却したりすることを防ぐことができます。

    そのため、遺言書の内容を確実に実現するうえで遺言執行者を決めておくことは重要です。

    不動産売却塾 コラム

    “指定者通知の対象拡大とは?”

    2023年10月2日からは、通知先を属性で限定せず、最大3名まで指定できるようになりました。
    これにより、遺言書の存在が埋もれるリスクが減少したのです。

    指定者通知とは、遺言書の保管官(法務局)が遺言者の死亡を確認した時点で、あらかじめ遺言者が指定した方(最大3名)に「遺言書を保管している旨」を知らせてくれる仕組みです。

    通知を受けた方が閲覧などを行えば、その後は相続人や受遺者など関係者全員にも保管事実の通知が広がり、手続きが進みやすくなります。

    なお、以前は受遺者・遺言執行者・推定相続人などに事実上限定されていましたが、現在は属性を問わず指定可能です。

    また、相続予定の財産に不動産が含まれている方は、まずはその価値を正しく把握することが大切です。
    不動産は現金や預貯金と違い、相続人同士で分けにくく、評価額によっては遺産分割や遺留分の計算にも影響します。

    そこでおすすめなのが不動産の一括査定サービスです。
    複数の不動産会社から同時に査定を受けられるため、手間をかけずに相場を知ることができ、公平な分割方法や遺言書の内容を検討するうえで大いに役立ちます。
    相続準備の一歩として活用してみてはいかがでしょうか。

    不動産売却の豆知識 不動産会社によって「査定価格」は違う? 不動産会社によって「査定価格」は違う?

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    3.遺言書の効力が及ばないこと4つ

    遺言書に書いたからといって、必ずしもその通りに実現できるわけではありません。
    法律で効力が及ばないと決まっているケースもあり、ここを理解しておかないと「せっかく書いたのに実行できない」遺言書になってしまいます。

    代表的な4つを紹介します。

    (1)遺留分の侵害

    相続人には法律で最低限の取り分(遺留分)が保障されています。
    たとえば「全財産を長男に相続させる」と遺言書に書いたとしても、配偶者や他の子どもには遺留分が認められており、請求があればその分は必ず取り戻せます。

    遺留分を無視した遺言書は、形式上有効でも実際には修正されてしまう点に注意が必要です。

    遺留分について詳しくは以下の記事で解説しています。

    (2)養子縁組・離縁・結婚・離婚などの身分行為

    遺言書でできる身分行為は「子の認知」に限られます。
    結婚や離婚、養子縁組、養子縁組の解消(離縁)といった重要な身分関係の変動は、生前にしか手続きできません。

    遺言書に書いても効力はなく、実現させたい場合は必ず生前に正しい手続きを取る必要があります。

    (3)相続人全員の合意

    遺言書は基本的に相続において最優先されますが、「絶対」ではありません。
    相続人全員が同意すれば、遺言書とは違う分け方を選ぶことができます。

    たとえば「不動産は長男に」と遺言書にあっても、相続人全員が「売却して現金で分けたい」と合意すれば、そのように分割することが可能です。

    ただし、「分割を禁止する」と書かれた遺言書がある場合には、最長5年間はその効力が優先されます。

    (4)付言事項(想い・希望)は法的拘束力なし

    遺言書には「ありがとう」「財産は仲良く使ってほしい」といった想いを自由に書き添えることができます。
    これを「付言事項」と言いますが、法的な拘束力はありません。

    ただし、家族が遺言書を読んだときに「なぜこう分けたのか」が理解でき、争いを防ただし、遺言書でも遺留分を侵害することはできません。

    4.無効にならないための遺言書の書き方(7つのポイント)

    遺言書サンプル

    出典:“自筆証書遺言書の文例集(付言事項付き)”. 函館地方法務局(参照2025-09-24)

    遺言書は、法律で定められた方式を欠くと無効になってしまいます。

    せっかく残した想いが無駄にならないよう、次のポイントを必ず守りましょう。

    ポイント1:法律で定められた方式を守る

    遺言書には大きく分けて 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。
    それぞれにルールがあり、たとえば自筆証書遺言は全文を自分で書く必要がある、公正証書遺言は公証人と証人2人が立ち会う必要があるなど、形式を守らないと無効です。

    まずは「自分がどの方式で作るのか」を選ぶところから始めましょう。

    遺言書の種類や特徴、それぞれのメリット・デメリットについては、1.遺言書の効力は死亡時から発生するで詳しく解説しています。

    ポイント2:公正証書遺言を選択する

    もっとも安全で確実なのは公正証書遺言です。
    公証人が法律に沿って作成してくれるため、無効リスクがほとんどありません。

    さらに、原本は公証役場に保管されるので紛失や改ざんの心配がなく、相続開始後に必要な「検認」も不要。
    費用はかかりますが、家族が迷わず手続きできる安心感は大きなメリットです。

    ポイント3:全文自筆で書く

    自筆証書遺言を選ぶ場合は、本文をすべて自筆で書く必要があります。
    2019年の法改正により、財産目録だけはパソコン作成や通帳コピーの添付が可能になりました。

    ただし、その場合でも各ページに署名押印が必要です。

    ポイント4:日付と氏名を自筆で書き、押印する

    日付・署名・押印のいずれかが欠けると、それだけで無効になります。
    日付は「2025年9月22日」のように特定できる形で書く必要があります。

    「令和7年9月吉日」など曖昧な記載は避けましょう。

    ポイント5:「誰に」「何を」「どのくらい」渡すかを明確に記す

    曖昧な表現は相続人同士の争いにつながります。
    たとえば「長男に土地を相続させる」とだけ書くのではなく、「所在:〇〇市△△町〇丁目〇番地の宅地(地番:〇〇番)」といった形で具体的に財産を特定しましょう。

    ポイント6:遺留分を侵害しないように注意する

    遺留分は、配偶者や子どもなどの相続人に保障された最低限の取り分です。
    全財産を特定の人に渡すと書いた場合でも、他の相続人が遺留分を請求すれば修正されます。

    争いを防ぐためには、あらかじめ遺留分を考慮した内容にしておくことが大切です。

    ポイント7:発見・保管に配慮する

    どんなに正しく書いても、相続開始時に見つからなければ意味がありません。

    自筆証書遺言は自宅で保管すると紛失や改ざんのリスクがあるため、法務局の保管制度を利用するのがおすすめです。
    これを使えば検認も不要になります。

    もちろん、公正証書遺言なら公証役場での保管により安心です。

    5.「遺言書の効力」でよくある質問

    • Q 自筆と公正証書はどちらが安全?
      A 公正証書遺言が最も安全です。公証人が法律に基づいて作成してくれるため、形式不備で無効になるリスクがほとんどありません。

      また、原本は公証役場に保管されるので紛失や改ざんの心配もなく、家庭裁判所での「検認」手続きも不要です。
      費用は数万円かかりますが、その分確実性が高く、相続人がスムーズに手続きを進められるのが大きなメリットです。

      一方、自筆証書遺言は費用がかからない反面、書き方を一つ間違えるだけで無効になってしまうリスクがあるので注意が必要です。

    • Q 遺言書の効力は絶対で、全財産を一人に相続できますか?
      A 形式上は可能ですが、他の相続人が遺留分を請求すれば修正されます。

      そのため、相続トラブルを避けたい場合は、遺留分を侵害しないように配分を考えることが重要です。
      遺留分に配慮したうえで遺言書を作れば、家族が余計な争いをせずに済む可能性が高まります。

    • Q 遺言書は何回でも作り直せる?
      A はい。新しい遺言書が常に優先されます。
      遺言書は一度書いたら終わりではなく、人生の節目ごとに見直すのがおすすめです。

      結婚・出産・離婚・相続人の死亡や誕生など、大きな出来事があれば内容を更新することで、常に「今の自分の意思」を反映できます。古い遺言書が残っていても、最終的には最新の日付のものが有効となるので安心です。

    • Q 遺言書を書いたあとに財産を処分したらどうなる?
      A 処分済みの財産については遺言書の効力を失います。

      「この土地を長男に相続させる」と書いていても、生前にその土地を売却してしまえば、その部分の効力はなくなります。

      ただし、残りの財産については遺言書の効力が生きています。つまり、遺言書は「相続開始時に残っている財産」に対して効力を持つということです。

    遺言書の効力を無駄にしないために今からできること

    遺言書は「まだ早い」と思っているうちに準備ておくことが、家族にとって最大の安心につながります。

    • どの方式で作るかを決める(自筆か、公正か)
    • 遺留分に配慮した分け方を考える(相続トラブルを防ぐため)
    • 保管制度や公正証書を利用する(発見・紛失・改ざんを防ぐため)

    この3つを意識するだけで、遺言書の効力は確実に発揮されます。準備を先送りすると、万一のときに家族へ大きな負担を残しかねません。思い立った今こそが最も良いタイミングなのです。

    また、不動産の評価は遺産分割や遺留分にも大きく関わります。
    そのため、NTTデータ・ウィズが運営する一括査定サービス「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」で、最新の価値を確認しておくのがおすすめです。

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