不動産は生前贈与と相続をどちらにすべきかわかる!メリット比較と手続き、税金控除も解説

不動産を所有していて 相続 に不安を抱えている方に向けて、不動産の生前 贈与 について相続と比較してどちらがよいか、比較して解説しています。
この記事を読むと不動産の生前贈与について必要な情報を把握でき、所有不動産を生前贈与すべきか相続すべきか判断できるようになります。

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1.生前贈与と相続との基本的な違い

贈与と相続の違い

生前贈与とは、財産を持っている人(贈与者)が存命中に任意のタイミングで他人(受贈者)に譲り与えることです。
一方、相続とは、財産を持っている人(被相続人)が亡くなった後に、相続人が受け継ぐことを指します。

不動産を含む無償の財産譲り受けは課税対象です。生前贈与には贈与税の課税対象となる可能性があり、相続では相続税が課される場合があります。

【生前贈与と相続の違い一覧】
項目 生前贈与 相続
課される税金 贈与税 相続税
基礎控除額 受贈者1人当たり110万円/年 相続1件につき3,000万円 + 600万円×法定相続人の数
不動産登記 贈与者・受贈者双方の登記変更手続きが必要 相続発生時に所有権が移転するが相続登記が必要

2.生前贈与と相続のメリット比較

生前贈与と相続にはそれぞれ利点があります。以下に主なメリットを比較してまとめました。

生前贈与のメリット
  • 財産を確実に渡せる
  • 相続税の節税対策になる
  • 早くから財産を活用できる
  • 将来の相続トラブルを防げる可能性
  • 相続のメリット
  • 自分の財産を生涯活用できる
  • 非課税枠が大きい
  • 贈与税より税負担が軽くなりやすい
  • 登記など手続きの費用負担が小さい
  • それぞれのメリットを具体的に紹介します。

    2-1.生前贈与のメリット

    「遺産を渡したい相手に確実に渡せる」「相続トラブル対策になる」など、生前贈与のメリットには相続時に問題となりがちなことを回避する効果がいくつかあります。

    ① 財産を確実に渡せる

    生前贈与を使えば、自分が存命中に希望する相手に確実に財産を渡すことが可能です。法的効力のある遺言書があっても、相続時には遺留分が発生し希望通りに分配できないケースもあります。しかし生前贈与なら、自分が意思が貫けるうちに名義を移してしまえます。名義を移せば受贈者のものとなるため、原則として他の相続人が干渉できません。

    ② 相続税の節税対策になる

    生前贈与は相続税の節税対策として有効です。贈与税には1人当たり年間110万円の基礎控除(非課税枠)があるため、この枠内で毎年コツコツ贈与すれば相続財産が減り、節税につながります。
    相続税の基礎控除を超える資産規模になる場合は、早めから非課税枠を活用した贈与を検討するとよいでしょう。

    ③ 早くから財産を活用できる

    生前贈与を活用すれば、受贈者が必要なときに財産を受け取って活用できます。
    例えば、相続予定の子世代へ土地を生前贈与すれば家を建てることで定住地で子育てができるようになるでしょう。相続では子世代も高齢になっており、本当に資金を必要とするときを過ぎているケースが増えています。

    ④ 将来の相続トラブルを防げる可能性

    生前贈与で財産を分配しておくことで、将来の相続トラブルを未然に防ぐ効果も期待できます。
    遺産分割では、相続人同士で遺産の取り分を巡って争い(いわゆる「争族」)になるケースがあります。特に不動産は分けにくいため揉め事になりやすい財産です。生前に的確に贈与を実行しておけば、遺産分割の段階での不公平感を減らせます。

    また、生前贈与は原則撤回できないため、あとから相続人が異議を唱えて取り戻すことも基本的にはできません。そのため、トラブル防止の観点で専門家に相談しながら進めると安心です。

    2-2.相続のメリット

    「非課税枠が大きい」「費用が安く済む」など相続にもメリットがあります。

    ① 自分の財産を生涯活用できる

    相続まで財産を手元に置いておけば、自分自身の生活資金や介護費用として財産を最期のときまで活用できます。手元にすぐ使える資金があれば、亡くなった時の葬儀代を賄うことができ、葬儀代は相続税で控除されるため、節税にもなるでしょう。

    ② 非課税枠が大きい

    相続税は贈与税より大きな非課税枠や税優遇制度があります。相続税の基礎控除額は最低でも3,600万円(法定相続人が1人の場合)です。

    相続税の基礎控除額を超えない財産にとどまる場合、節税対策で生前贈与をするメリットはありません。基礎控除内であれば、相続まで何もせずとも税金はゼロです。

    また、財産の種類によっては相続で受け取るほうが税負担が軽くなる特例もあります。例えば、「小規模宅地等の特例」です。これは、宅地評価額を最大80%減額できる(上限面積あり)制度です。これは生前贈与では適用されません。
    また、配偶者の相続では法定相続分相当額または1億6,000万円まで相続税がかからない特例があります。配偶者への贈与税には「配偶者控除(おしどり贈与)」による2,000万円まで非課税の特例がありますが、要件が限られるため注意が必要です。

    ③ 贈与税より税負担が軽くなりやすい

    一般に同じ価値の財産では、贈与税より相続税のほうが税率負担が低く抑えられる傾向にあります。
    贈与税は相続税の補完税の性格上、相続税より高めの税率が設定されているためです。また、相続税の基礎控除額は3,600万円以上あることや、税率計算上も法定相続人の数で按分する仕組みがあることも税負担が軽くなる要因となっています。

    一度に多額の財産を渡す場合は特に相続のほうが税負担は軽くなります。

    ④ 登記など手続きの費用負担が小さい

    不動産に関しては、相続で名義変更(相続登記)する場合の費用負担が生前贈与より小さい点も見逃せません。
    例えば、登録免許税の税率は、生前贈与の場合固定資産評価額の2%ですが、相続による名義変更では0.4%と大幅に低く抑えられています。また、不動産取得税も、相続の場合は課税されません。

    3.生前贈与と相続のデメリット比較

    生前贈与と相続にはデメリット(注意点)もあります。以下に主なデメリットを比較してまとめました。

    生前贈与のデメリット
  • 贈与税率が高く一度に渡すと税負担が大きい
  • 登記費用や不動産取得税などの費用負担が多い
  • 一度贈与すると撤回できない
  • 他の相続人との不公平・トラブル懸念
  • 相続のデメリット
  • 相続税対策をしないと税負担増の恐れ
  • 遺産分割で相続人同士が争うリスク
  • 子や孫が財産を得るのが遅くなる
  • 手続きが煩雑で時間がかかる場合も
  • 以下で、それぞれのデメリットを紹介します。

    3-1.生前贈与のデメリット

    生前贈与の最大の注意点は、相続税に比べ贈与税の税率が高いことでしょう。そのほかにも注意しておきたいデメリットがあります。

    ① 贈与税率が高く、一度に渡すと税負担が大きい

    生前贈与で課税される贈与税は税率が相続税より高く設定されているため、一度に多額の財産を贈与すると税負担が非常に大きくなりがちです。

    国の考えも「相続税の基礎控除額を超えるような富裕層には相続税を課すべき」としており、生前贈与に重い税率を課しています。しかし、場合によっては生前贈与を分割する、もしくは相続時精算課税を利用したり相続まで待ったりするほうが有利なケースもあります。

    ② 登記費用や不動産取得税などの費用負担が多い

    不動産を生前贈与する場合、名義変更(所有権移転登記)が必要となるため、登録免許税や不動産取得税といった税負担が発生します。

    登録免許税は通常、評価額の2%ですが、相続では0.4%です。また、不動産取得税も贈与では課税されますが、相続で取得した場合は課税されません。さらに、贈与契約書を作成して登記申請する際の印紙税(契約書に貼る印紙)や、手続きを司法書士に依頼する場合の報酬など細かな費用も発生します。

    ③ 一度贈与すると撤回できない

    生前贈与は一旦実行すると基本的に撤回(取り消し)ができない点にも注意が必要です。

    不動産の場合、贈与契約書を交わして移転登記が完了すれば法的に所有権が受贈者へ移り、撤回できなくなります。

    どうしても取り戻したい場合、受贈者から贈与者へ改めて贈与し直すか売買で買い戻すしか方法がなく、再度、贈与税や登録免許税、不動産取得税が発生します。民法上、受贈者に背信行為があった場合などに贈与を取り消す制度(※受贈者の背信行為による贈与の撤回)はありますが、例外的なケースです。

    ④ 他の相続人との不公平・トラブル懸念

    ある特定の相続人(子どもや孫)に生前贈与をすると、他の相続人と受贈者間に不公平感を生む原因となる可能性があります。

    生前贈与を受けた相続人がいる場合、公平感を出すためには贈与分を「特別受益の持ち戻し」として相続財産に加算して遺産分割を考慮するのが得策です。

    一方で被相続人(贈与者)が「持ち戻さなくてよい」という意思表示(持ち戻し免除)をしていた場合は、相続財産として加算されません。こうした場合、生前贈与したことがかえって不公平感を生み、遺産分割協議で揉めるケースもあります。

    生前贈与は他の相続人との関係にも配慮しないと、「争族」の原因になり得る点に注意が必要です。

    3-2.相続のデメリット

    相続財産が高額になる場合、相続だけで遺産を受け継ぐデメリットが発生することがあります。

    ① 相続税対策をしないと税負担増の恐れ

    相続は何もしなければ一度に全財産が相続税の課税対象となるため、資産規模によっては相続税の負担が大きくなる恐れがあります。

    例えば、生前から計画的に贈与しておけば相続財産を減らすことができるため、相続税の節税効果が期待できます。

    したがって、資産が大きい方ほど「早めの生前贈与で相続財産そのものを減らす」という対策を取らないと、相続税額が膨らんでしまうことがあります。

    特に不動産など将来価値が上がる可能性がある財産は、相続時まで持っていると評価額が上昇して相続税がさらに増えるリスクもあるため注意が必要です。

    ② 遺産分割で相続人同士が争うリスク

    相続人が複数いる場合、遺産分割協議においてトラブルが発生するリスクがあります。

    遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。そのとき、財産額や分け方に不満があると感情的な対立に発展することがあります。特に不動産や事業資産など分割しにくい財産があると、このリスクが高まるでしょう。

    生前贈与であれば当事者間(贈与者と受贈者)の合意で完結しますが、相続は法定相続人全員を巻き込むため、話し合いがまとまらず泥沼化する恐れもあります。また、手続きが進まないと相続税の申告期限(10か月)に間に合わなくなってしまいます。

    ③ 子や孫が財産を得るのが遅くなる

    平均寿命が延びている昨今、相続の発生が遅れて子世代が高齢になってからでないと財産を受け取れないケースが増加傾向です。

    若い頃に住宅購入や教育資金として資金が必要だったタイミングに財産を活用できず、「お金や土地が必要な時にはもらえず、十分余裕ができてからようやく相続する」というミスマッチが起こり得ます。

    ④ 手続きが煩雑で時間がかかる場合も

    相続では、被相続人の死亡後に各種手続きを行う必要があり、その煩雑さがデメリットとなることがあります。

    相続税の申告が必要な場合は、遺産評価や分割方法の検討、申告・納税まで、10か月間で慌ただしく進めねばなりません。

    生前贈与であれば、贈与税申告はあるものの自分のタイミングで計画できます。

    4.生前贈与と相続はどちらがお得?

    「不動産を子や孫に渡すなら、生前贈与と相続のどちらが得か?」はケースバイケースです。家族の状況や財産額によって最適解が異なります。以下では、特に気になる税金面の損得比較と、生前贈与が有利なケース、相続が有利なケースについて解説します。

    4-1.贈与税と相続税はどちらが高い?

    結論から言えば、同じ財産を移転する場合、無計画に一度で大量贈与すれば贈与税の方が高くつくことが多いですが、計画的に少額ずつ贈与すれば相続より税負担を抑えられる可能性があります。

    大口の例で比較してみます。

    【財産総額1億円 相続人が子1人の場合】
    生前贈与
  • 基礎控除額:110万円
  • 課税対象額:9,890万円
  • 贈与税率:55%(4,500万円超、特例税率)、控除額は650万円
  • 贈与税額:4,789万5,000円=9,890万円×55%-650万円
  • 相続
  • 基礎控除額:3,600万円
  • 課税対象額:6,400万円
  • 相続税率:30%(5,000万円超から1億円以下)、控除額は700万円
  • 相続税額:1,220万円=6,400万円×30%-700万円
  • このケースでは贈与税のほうが相続税より約3倍も高額になります。しかし、生前贈与の活用を工夫すれば税負担を大きく軽減できます。

    【工夫して生前贈与したケース】

    20年間500万円ずつ贈与した場合
    贈与税率:15%(400万円以下)、控除額は10万円

    • 1年当たりの贈与税:
      48万5,000円=(500万円-110万円)×15%-10万円
    • 20年分の贈与税合計:
      970万円=48万5,000円×20年

    先ほど相続した場合の1,220万円より贈与税のほうが250万円少なくなっています。
    「生前贈与と相続はどちらが得か」に関しては、一度に渡すなら相続税の方が有利、時間をかけて渡すなら贈与税を抑えられる可能性がある、というのがポイントです。

    なお、贈与税は2023年度改正で「生前贈与加算期間の延長(いわゆる3年ルール→7年ルール)」が導入されており、贈与から7年を経過しないと相続税対策になりません。そのため、確実に贈与税を節約したいなら、早め早めに贈与を始めるのが理想といえるでしょう。

    4-2.生前贈与が得になるケース

    生前贈与を選択したほうが得(有利)といえるのは、一般的には以下のようなケースが挙げられます。

    相続税の基礎控除を超える資産を持っており、相続税負担が発生しそうな場合

    財産規模が大きい場合、非課税枠110万円を毎年使って贈与することで相続財産を減らすことで、相続税を大幅に節税できます。
    早いうちから長期間にわたり計画的に贈与できるなら、生前贈与による節税メリットは大きくなるでしょう。

    収益性のある不動産や、将来価値が上がりそうな資産を持っている場合

    賃貸アパートなど収入を生む資産を持っていると、被相続人の財産が増え続けるため、相続税が高くなる可能性があります。収益物件は早めに子や孫に贈与してしまえば、その後の収益は受贈者のものとなり、贈与者の相続財産の増加を防げます。また、地価が上昇しそうな土地なども生前に評価額を固定する目的で贈与するのが有効です。

    相続人(子や孫)が早いうちに資金を必要としている場合

    例えば、「子供が住宅購入資金を必要としている」「土地を贈与してそこに家を建てる」「孫に教育資金を援助したい」といった状況では、生前贈与によってタイムリーに資金提供すること自体が家族にとって大きな利益です。
    特に住宅取得資金や教育資金の一括贈与には非課税特例制度(期限付き)もありますので、該当する方は活用を検討するとよいでしょう。

    法定相続人が多く、幅広い世代に分散して贈与できる場合

    例えば子や孫も含め多数の受贈者が見込めるなら、110万円の非課税枠を人数分活用できるメリットがあります。贈与対象者が多いほど非課税枠をフル活用しやすいので、生前贈与を選ぶメリットが高くなります。
    特に子だけでなく孫にも資金を渡したい場合、相続だと一世代飛ばすと(祖父母→孫)相続税が2割加算されるルールがありますが、生前贈与ならそのような加算はありません。

    以上のようなケースでは、生前贈与を上手に使うことで得をする可能性が高いでしょう。

    このほかにも、受贈者となる人が多い場合や、被相続人となる人が若く健康に問題がない場合なども生前贈与の非課税枠をうまく利用することで、得となる可能性があります。
    ただし、「7年以内の生前贈与は相続税で持ち戻し(加算)対象」となることに注意が必要です。

    また、不動産は評価額が大きいので、相続時精算課税の利用や複数年に分けるなどして贈与税を最小限に抑える工夫をするのがおすすめです。

    4-3.相続が得になるケース

    以下のような場合は相続まで待ったほうが有利(相続の方が得)となることが多いケースです。

    遺産総額が相続税の基礎控除内に収まりそうな場合

    相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えないようであれば、生前贈与で節税する必要がありません。むしろ生前贈与すると、110万円を超えた分に贈与税がかかってしまい逆に損になる可能性があります。

    配偶者に財産を残す場合(配偶者控除の恩恵が大きい)

    夫婦間で財産を譲る際は、生前贈与より相続を利用する方が税制上非常に有利です。
    配偶者には1億6,000万円まで相続税非課税という強力な特例があるためです。生前贈与では、「贈与税の配偶者控除」(居住用不動産を2,000万円まで非課税で贈与可能)を使っても2,000万円を超える部分には贈与税が課税されます。

    自宅の土地など「小規模宅地等の特例」を適用した方が節税できる場合

    被相続人の自宅や事業用地を相続する際は、「小規模宅地等の特例」で不動産の評価額を50~80%減額できる場合があります。評価額が減額できれば相続税が大幅に減額されます。生前贈与で不動産を渡してしまうとこの特例は使えません。

    以上のケースでは、生前贈与のメリットがあまり無く、相続でそのまま渡した方が結果的に得になると考えられます。そのほかにも、贈与者(被相続人となる人)が高齢の場合や、相続でトラブルの心配がない場合なども、相続のほうがスムーズといえるでしょう。

    ただし、各家庭の事情によって判断は異なりますので、迷ったら税理士等の専門家に試算してもらうことをおすすめします。

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    5.不動産を生前贈与するための手続き

    不動産の生前贈与の流れはおおむね以下のようになります。

    1.贈与内容の決定と契約書の作成

    親族間であっても贈与契約書を作成することが望ましいです。契約書には「贈与者が○○、受贈者が○○、〇年〇月〇日にこの不動産(所在地・地番・家屋番号など詳細)を無償贈与する」旨を明記し、贈与者・受贈者双方が署名押印します。

    2.登記に必要な書類の準備

    所有権移転登記の申請に必要な書類を揃えます。不動産の生前贈与で一般的に必要となるのは次の書類です。

    • 贈与契約書(贈与の事実を証明)
    • 登記識別情報通知(いわゆる権利証)(贈与者が所持)
    • 固定資産税評価証明書(固定資産課税明細書)(市区町村で取得、不動産の評価額が記載)
    • 贈与者の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
    • 受贈者の住民票(本籍地記載のもの)
    • 委任状(司法書士など代理人に手続きを依頼する場合)
    3.登記申請(所有権移転登記)の手続き

    不動産所在地を管轄する法務局で所有権移転登記の申請を行います。申請時、生前贈与による移転登記では2%の登録免許税を納付します。
    登記申請は本人でも可能ですが、司法書士に依頼して代行してもらうのが一般的です。

    4.不動産取得税の申告・納付

    生前贈与で不動産を取得した受贈者には、後日都道府県から不動産取得税の納税通知書が届きます(贈与から数ヶ月~半年後)。不動産取得税額は固定資産税評価額に税率3%(住宅用の場合。住宅以外は4%)を乗じて計算され、一括で納付します。

    5.贈与税の申告・納付

    贈与額によって税負担が発生する場合、受贈者は翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告・納税をします。不動産の場合、評価額の算出方法は、基本的には相続税評価額(路線価や固定資産評価額)で計算します。贈与税申告書に不動産の評価額や他の贈与財産を記載し、税務署に提出します。納税も同じ期限内に行います。

    6.不動産を生前贈与する際の税金と費用

    ここでは、不動産贈与に関係する主な税金・費用について解説します。

    6-1.贈与税

    贈与税は、生前贈与によって財産を取得した受贈者に課される国税です。1月1日~12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除110万円を引いた残りに対して以下の累進税率で課税されます(特例税率は贈与者が直系尊属で18歳以上の受贈者に対する贈与の場合、一般税率はそれ以外の場合)。
    特例税率は以下の通りです。

    課税価格 税率 控除額
    ~200万円以下 10% 0円
    200万円超~400万円以下 15% 10万円
    400万円超~600万円以下 20% 30万円
    600万円超~1,000万円以下 30% 90万円
    1,000万円超~1,500万円以下 40% 190万円
    1,500万円超~3,000万円以下 45% 265万円
    3,000万円超~4,500万円以下 50% 415万円
    4,500万円超 55% 640万円

    贈与税には、上記の暦年課税とは別に「相続時精算課税制度」という選択肢もあります。この制度を選ぶと、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について累計2,500万円まで贈与税がかかりません。2,500万円を超えた部分については一律20%の税率で贈与税を支払います。

    配偶者に対する贈与税の特例に、「贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)」があります。これは婚姻期間20年以上の配偶者に居住用不動産(またはその購入資金)を贈与する場合、2,000万円まで贈与税非課税とするものです。

    6-2.不動産取得税

    不動産取得税は、不動産を取得したときに課される地方税です。生前贈与で不動産を受け取った場合、受贈者に納税義務があります。不動産取得税の計算方法は「不動産の固定資産税評価額 × 税率」で、税率は原則4%です(2025年度まで3%に軽減)。また、宅地評価については課税標準を評価額の1/2にする特例もあり、実質的な税率は住宅用宅地で1.5%相当になります。

    なお、不動産取得税は相続で取得した場合は非課税です。

    6-3.登録免許税など名義変更のための費用

    不動産の名義変更(所有権移転登記)時には、登録免許税や、登記手続きを行う際の諸費用がかかります。

    • 登録免許税:所有権移転登記の際、不動産の固定資産評価額に所定の税率を乗じた額を納めます。税率は生前贈与や売買の場合は2%、相続の場合は0.4%です。
    • 司法書士への依頼費用:登記申請を司法書士に依頼する場合、報酬(手数料)が発生します。報酬額は不動産1件当たり5万~10万円程度が目安です。
    • その他の費用:贈与契約書を作成する際には印紙税がかかります。不動産の評価額を記載した場合はその額に応じた印紙税が必要です(1,000万円超~5,000万円以下なら1万円など)。また登記のための戸籍・住民票・印鑑証明書の取得手数料(各数百円~数千円)などもかかります。

    7.不動産の生前贈与でよくある質問

    不動産の生前贈与に関して皆さんが疑問に思いやすいポイントをQ&A形式で解説します。

    • Q 不動産を生前贈与した後に所有権を元に戻すことは可能?
      A 基本的にできません。 一度生前贈与で不動産の所有権を移してしまうと、法律上その不動産は受贈者のものになります。つまり、贈与を取り消すのではなく、受贈者から贈与者に改めて所有権を移転し直す手続きが必要になり、これは新たな贈与(または売買)とみなされるため再度贈与税や登録免許税・取得税が発生します。
    • Q 生前贈与の「3年ルール」とは何ですか?
      A いわゆる「3年ルール」とは、被相続人が亡くなる前3年以内に行った生前贈与財産は相続財産に加算して相続税を計算するという仕組みのことです。正式には「生前贈与加算」と呼ばれます。
      この加算対象となる期間(持ち戻し期間)が、2023年度税制改正で「死亡前3年以内」から「死亡前7年以内」へと延長されました。これが「3年ルールが7年ルールに変わった」という話の内容です。ただし新ルールでは、死亡の4~7年前に行われた贈与については合計100万円まで加算しなくてよいという調整措置も設けられました。
      加算対象の生前贈与については、その贈与時に支払った贈与税額を相続税額から控除するため、贈与税が二重に取られるわけではありません。
    • Q 生前贈与するときの不動産の評価額はどう決まる?
      A 不動産を贈与する場合、評価額は相続税評価と同様の方法で算出します。土地であれば「路線価方式」または「倍率方式」、建物「固定資産税評価額」を用いての算出です。
      不動産の贈与税は算出された評価額をもとに計算します。路線価は公示地価の8割程度が目安となっていますので、市場価格より低い評価額で贈与税計算できるケースがほとんどです。
    • Q 生前贈与で利用できる「相続時精算課税制度」とは?
      A 相続時精算課税制度とは、親から子・孫への贈与など特定の条件の関係性において累計2,500万円まで贈与税を非課税にする代わりに、将来相続時にまとめて精算(課税)できる制度です。
      この制度のメリットは、大きな贈与をしても当初の贈与税負担を抑えられる点です。2,500万円は非課税、残りに税率をかけるため、本来の贈与税よりも大幅に節税できます。その代わり、110万円非課税は受けられなくなることに注意が必要です。

    まとめ

    「生前贈与」と「相続」は、不動産を次世代に承継する2つの方法ですが、それぞれにメリット・デメリットがあり、向き不向きのケースがあります。

    どちらがお得かはケースバイケースですが、一般的には

    • 財産規模が大きく、贈与者がまだ元気で時間に余裕がある場合は、非課税枠の活用や計画的贈与によって生前贈与のメリットが出やすい
    • 財産規模が小さい、または贈与者が高齢で近く相続が起こりそうな場合は、無理に贈与せず相続に任せたほうが安全で有利

    といえるでしょう。

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