重要事項説明書(35条書面)とは?記載事項一覧と詳細解説

不動産を購入する際には、売買契約の締結前に宅地建物取引士(宅建士)による重要事項説明を受ける必要があります。しかし、内容をよく理解できないまま契約を締結してしまう方も少なくありません。

そこで本記事では、重要事項説明の目的や、重要事項説明書の内容、重点的にチェックしたいポイントなどについて詳しく解説します。

記載事項一覧だけ確認したい方はここをクリック

項目 売買 賃借
宅地 建物 宅地 建物
1. 登記された権利の種類・内容・所有者名義
2. 法令に基づく制限
3. 私道に関する負担の有無
4. 飲用水・電気・ガス等のインフラ整備状況
5. 工事完了時の構造や形状(※未完成物件の場合)
6. 土砂(津波)災害警戒区域に関する事項
7. 造成宅地防災区域に関する事項
8. 水害ハザードマップにおける物件所在地
9. インスペクション実施の有無や結果概要
10. 石綿(アスベスト)使用有無の調査結果に関する事項
11. 建物状況調査の有無や結果概要(※既存建物の場合)
12. 代金、交換差金、借賃以外で授受される金銭の額と目的
13. 契約の解除・損害賠償予定額・違約金に関する定め
14. 契約不適合責任に関する補償保険契約の締結や措置の有無と概要
15. 手付金等保全措置についての概要
16. 支払い金や預り金の保全措置の有無と概要
17. ローンのあっせんの内容とローン不成立の場合の措置
18. 割賦販売契約の場合の詳細内容
19. 台所・浴室・便所等の整備状況
20. 契約期間や契約更新に関する事項
21. 定期借地権・定期借家権に関する事項
22. 宅地建物の用途や利用の制限
23. 契約終了時に清算される金銭に関する事項
24. 管理委託者の氏名・住所
25. 契約終了時における宅地上の建物の取り壊しに関する事項
26. 敷地に関する権利の種類・内容
27. 共用部分に関する規約の定め
28. 専有部分の用途その他の利用の制限位関する規約の定め
29. 専用使用権に関する規約の定め
30. 維持修繕費用や通常の管理費用等を特定の者にのみ減免する旨の定め
31. 計画修繕積立金の規約に関する定めの内容と積み立てられている額
32. 区分所有者が負担する通常の管理費用の額
33. 建物・敷地の委託管理者の氏名・住所等
34. 維持修繕の実施状況記録の内容

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1.重要事項説明(35条書面)とは?

はじめに、重要事項説明の概要と目的について解説します。

1-1.不動産取引における重要事項説明とは?

重要事項説明(重説)とは、物件に関する重要事項を宅地建物取引士(宅建士)が説明することです。
重要事項の説明を行うには、書面への記載と交付が必要で、この時作成する書類を重要事項説明書(35条書面)と言います。

宅建業法(宅地建物取引業法)に基づき、宅地建物取引業者には、物件の物理的な状況、権利の所在、取引条件などを、不動産の買主や借主に詳しく説明する義務があります。

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なお、重要事項説明を受けるのは不動産の「買主」「借主」であり、「売主」「貸主」は説明を受ける必要はありません。

詳しくは、「“宅地建物取引業法”. e-Gov法令検索」をご覧ください。

1-2.重要事項説明を行なう目的

宅建業法では、不動産の売買や賃貸の契約が成立する前に、重要事項説明をすることが定められています。

重要事項説明を行なう目的は、買主や借主に物件の理解度を深めてもらい、トラブルを防止することです。

特に、不動産売却に関しては、権利関係が複雑で、取引する金額も高額です。そのうえ、買主は不動産の知識に乏しいことが多く、正しい情報を知らないまま契約を結んでしまう可能性があります。

そのため、売買契約前の重要事項説明には、「買主を保護する」という重要な役割があるといえます。

1-3.重要事項説明のタイミングと説明方法

住宅ローンの申し込みから重要事項説明の実施、引き渡しまでの主な流れは、次のとおりです。

  1. 不動産の購入を申し込む
  2. 住宅ローンの事前審査
  3. 重要事項説明の実施
  4. 売買契約の締結、住宅ローンの申請
  5. 住宅ローンの本審査、契約
  6. 住宅ローンの融資実行
  7. 購入代金の決済
  8. 不動産の引き渡し

重要事項説明を実施する場所について、特に制限や決まりはありませんが、説明の前に宅地建物取引士(宅建士)は、資格証を提示する義務があります。

また、2017年(平成29年)からオンラインによる重要事項説明、いわゆる「IT重説」の運用が開始されています。IT重説とは、カメラを搭載したパソコンやスマートフォンを利用し、ビデオ通話で重要事項説明を受けられるものです。

仕事が忙しく時間が取れない方や、何らかの事情で家を出るのが難しい方などには、IT重説の活用がおすすめです。

1-4.買主は重要事項説明をしっかり聞き、理解することが大切

「重要事項説明は、聞き慣れない不動産用語ばかりで難しい」などと感じ、疑問があってもつい聞き流してしまうこともあるかもしれません。なかには、「重要事項説明を省略できないか」と問い合わせる買主もいます。

しかし、重要事項説明は宅建業法に基づく義務であるため、買主の都合で省略することはできません。また、宅地建物取引士(宅建士)の説明を聞き流していると、後々思わぬトラブルに見舞われる可能性も否定できません。

そして、重要事項説明の終了後、買主は重要事項説明書に押印する必要があります。つまり、あとから「知らなかった」「聞いていない」といった言い訳は通用しないので注意が必要です。

契約内容で気になる点があれば、その都度、宅地建物取引士(宅建士)に質問しましょう。


2.重要事項説明書の記載事項を一覧表で確認

重要事項説明は、売買や交換だけでなく、賃借の場合でも必要です。
多くの項目は共通していますが、賃借だけの記載事項もあります。

また、マンション(区分所有建物)についても、追加の記載事項があります。

以下の一覧表で、各取引での必須の記載事項についてざっと確認してみましょう。
次の章からは、それぞれの項目を詳しく解説しています。

物件に関する事項
取引条件等に関する事項
賃借の場合で追加で必要な事項
マンション取引の場合に追加で必要な事項

項目 売買 賃借
宅地 建物 宅地 建物
1. 登記された権利の種類・内容・所有者名義
2. 法令に基づく制限
3. 私道に関する負担の有無
4. 飲用水・電気・ガス等のインフラ整備状況
5. 工事完了時の構造や形状(※未完成物件の場合)
6. 土砂(津波)災害警戒区域に関する事項
7. 造成宅地防災区域に関する事項
8. 水害ハザードマップにおける物件所在地
9. インスペクション実施の有無や結果概要
10. 石綿(アスベスト)使用有無の調査結果に関する事項
11. 建物状況調査の有無や結果概要(※既存建物の場合)
12. 代金、交換差金、借賃以外で授受される金銭の額と目的
13. 契約の解除・損害賠償予定額・違約金に関する定め
14. 契約不適合責任に関する補償保険契約の締結や措置の有無と概要
15. 手付金等保全措置についての概要
16. 支払い金や預り金の保全措置の有無と概要
17. ローンのあっせんの内容とローン不成立の場合の措置
18. 割賦販売契約の場合の詳細内容
19. 台所・浴室・便所等の整備状況
20. 契約期間や契約更新に関する事項
21. 定期借地権・定期借家権に関する事項
22. 宅地建物の用途や利用の制限
23. 契約終了時に清算される金銭に関する事項
24. 管理委託者の氏名・住所
25. 契約終了時における宅地上の建物の取り壊しに関する事項
26. 敷地に関する権利の種類・内容
27. 共用部分に関する規約の定め
28. 専有部分の用途その他の利用の制限位関する規約の定め
29. 専用使用権に関する規約の定め
30. 維持修繕費用や通常の管理費用等を特定の者にのみ減免する旨の定め
31. 計画修繕積立金の規約に関する定めの内容と積み立てられている額
32. 区分所有者が負担する通常の管理費用の額
33. 建物・敷地の委託管理者の氏名・住所等
34. 維持修繕の実施状況記録の内容

3. 物件に関する記載事項

ここからは、重要事項説明書に記載される項目のうち、取引する「物件そのもの」に関する内容を詳しく見ていきましょう。物件の物理的な状況や法的な制限など、将来の利用や資産価値に直接影響する重要な情報が含まれています。

3-1. 登記された権利の種類・内容・所有者名義

重要事項説明書には、不動産の所有権、および所有権以外の登記が記載されています。所有権の登記を確認する際は、売主以外に権利者がいないか、必ず確認しましょう。

不動産が共有名義なら、共有者も同席するのが基本です。しかし、重要事項説明に同席していない場合は、売買に際して共有者全員の同意を得ているか、その証明(委任状など)を確認する必要があります。

所有権以外の登記で最も重要なのが、金融機関などが設定する「抵当権」や「根抵当権」です。これは売主が住宅ローンなどを利用した際の担保として設定されています。これらの権利は、買主が代金を支払うのと同時に抹消されるのが一般的ですが、抹消の段取りや時期を念のため確認するとよいでしょう。

同様に地上権、借地権、地役権などの権利も抹消されるか、あるいは買主が引き継ぐのかを確認しておく必要があります。特に「仮登記」や「差押登記」といった記載がある場合、最悪のケースでは物件を所有できないことがあるため、特に注意が必要です。

3-2. 法令に基づく制限

法令上の制限とは、その土地にどのような建物を、どのくらいの規模で建てられるかを定めたルールです。主に都市計画法や建築基準法に基づき、土地の用途地域、建ぺい率、容積率などが定められています。

これから家を建てる土地の購入はもちろん、中古戸建てやマンションの将来の建て替えにも関わるため、詳細な情報を確認することが大切です。

例えば、「第一種低層住居専用地域」では高い建物を建てられませんが、静かな住環境が守られます。一方、「商業地域」では様々な施設が建てられますが、日当たりや眺望が変わる可能性もあります。ご自身のライフプランに合った制限内容かを確認しましょう。

3-3. 私道に関する負担の有無

物件に接する道路が「私道」である場合、その維持管理に関する負担について説明があります。私道は国や自治体が所有する「公道」と違い、個人や複数の個人が所有・管理しています。

私道の維持・管理費用(舗装の補修など)の負担割合や、将来建て替えをする際の通行・掘削承諾の要否などを確認しましょう。

特に、私道の所有者が第三者である場合や、複数の所有者で共有している場合は、将来的なトラブルを避けるためにも、取り決め(覚書など)の有無や内容をしっかりチェックすることが重要です。

3-4. 飲用水・電気・ガス等のインフラ整備状況

飲用水、電気、ガスなどのインフラに加え、排水施設(公共下水、浄化槽など)の整備状況を確認しましょう。特に中古の一戸建てや土地では、前面道路まで配管が来ていないなど、インフラの整備が整っていないケースがあるからです。

インフラが整備されていない場合、重要事項説明書には整備の見込み時期や、工事費の負担者などが記載されています。新たに管を引き込む費用を買主が負担するケースもあるため、誰がいくら負担するのかを事前に確認しておきましょう。

3-5. 工事完了時の構造や形状(※未完成物件の場合)

新築マンションや建売住宅などで、建物がまだ完成していない場合は、完成後の建物の構造、階数、床面積、内装・外装の仕上げ、設備の仕様などが図面を元に説明されます。

パンフレットやモデルルームのイメージだけでなく、図面や仕様書と照らし合わせ、どのような建物が完成するのかを正確に把握することが重要です。

万が一、工事の遅延や仕様の変更があった場合の対応についても、この時点で確認しておくと安心です。

3-6. 土砂(津波)災害警戒区域に関する事項

2020年の宅建業法改正により、水害リスクに関する説明が義務化されました。まず、土砂災害防止法に基づく「土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)」や「土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)」に物件が所在するかどうかが説明されます。

また、津波防災地域づくりに関する法律に基づく「津波災害警戒区域」に該当するかどうかも同様に説明の対象です。

これらの区域に指定されている場合、災害リスクがあることを認識し、避難場所や避難経路を事前に確認しておくことが極めて重要です。

3-7. 造成宅地防災区域に関する事項

これは、宅地造成等規制法に基づき、過去に造成された大規模な宅地で、将来的に崖崩れや土砂の流出などの危険性が予測される区域を指します。

物件がこの区域内に存在する場合、都道府県知事から擁壁(ようへき)の設置などの改善命令が出される可能性があり、その際の費用は所有者が負担することになります。

土砂災害警戒区域とは別の法律に基づく制限であり、こちらも安全に関わる重要な項目です。

3-8. 水害ハザードマップにおける物件所在地

市区町村が作成・公表している「水害ハザードマップ」を元に、取引物件がどの位置に所在するかが示されます。これにより、洪水、雨水出水(内水氾濫)、高潮といった水害によって、どの程度浸水する可能性があるのかを視覚的に把握できます。

ハザードマップ上で物件の位置を確認し、想定される浸水の深さや、最寄りの避難所の場所を必ず把握しておきましょう。日本では地震や水害、土砂災害の自然災害が多いため、災害のリスクについて正しく理解しておくことが大切です。

なお、ハザードマップは国土地理院のポータルサイトなどでも確認できます。

3-9. インスペクション実施の有無や結果概要

インスペクションとは、専門家が建物の基礎、壁、屋根などの劣化状況や不具合の有無を調査し、修繕の必要性や費用などを客観的に診断することです。宅地建物取引業法では「建物状況調査」と呼ばれます。

中古物件の取引では、売主・買主の依頼でインスペクションが実施されたかどうか、実施された場合はその結果の概要が説明されます。

インスペクション結果は、物件のコンディションを把握し、購入後のリフォーム計画や資金計画を立てる上で非常に役立つ情報です。

3-10. 石綿(アスベスト)使用有無の調査結果に関する事項

アスベスト(石綿)は、かつて断熱材などとして広く利用されていましたが、健康被害を引き起こすリスクがあるため、現在は製造・使用が禁止されています。

重要事項説明書には、アスベストの使用調査に関する情報が記載されています。調査記録が「あり」の場合はその内容が、「なし」の場合はその旨が説明されます。

特に古い建物を購入する方は、アスベストの使用の有無を必ず確認しましょう。使用が判明した場合、将来の解体やリフォーム時に、除去費用が高額になる可能性があることを理解しておく必要があります。

4. 取引条件に関する記載事項

物件そのものだけでなく、売買契約の「条件」に関する項目も非常に重要です。お金の支払いや契約解除のルールなど、万が一のトラブルを防ぐための取り決めが記載されています。

4-1. 代金、交換差金、借賃以外で授受される金銭の額と目的

重要事項説明書には、物件の代金に加え、契約時に支払う手付金や、固定資産税・都市計画税の清算金など、代金以外に授受される金銭について記載されています。

「何のために、いくら支払うのか」という金銭の目的や具体的な金額を、このタイミングで正確に確認しましょう。

手付金は契約の証拠として、また解約手付として重要な意味を持ちます。固定資産税の清算は、引き渡し日を基準に日割りで計算されるのが一般的です。

4-2. 契約の解除・損害賠償予定額・違約金に関する定め

重要事項説明書には、不動産の売買契約の締結後、どのような場合に契約を解除できるのか、その方法や取り決めが記載されています。

不動産売買は高額な取引のため、一度結んだ契約は簡単には解除できません。契約解除が認められる主なケースには、相手方の契約違反(債務不履行)、手付金の放棄(買主から)・倍額返還(売主から)、後述するローン特約による解除などが挙げられます。

また、当事者のどちらかが契約に違反したときに備え、損害賠償額の予定や違約金の内容についても確認しましょう。一般的に売買代金の10%~20%で設定されることが多く、違反すると大きな金銭的負担が発生するため、内容をしっかり理解し、違反を起こさないよう注意が必要です。

4-3. 契約不適合責任に関する補償保険契約の締結や措置の有無と概要

契約不適合責任とは、引き渡された物件が、種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。

例えば、「雨漏りはないと聞いていたのに、雨漏りした」「シロアリ被害はないはずだったのに、被害が見つかった」といったケースが該当します。この責任に基づき、買主は売主に対して以下の権利を主張できます。

  • 履行の追完請求(修理や代替物の引き渡しを請求できる)
  • 代金の減額請求(修理などがされない場合に代金の減額を求められる)
  • 損害賠償の請求(相手に過失があった場合)
  • 売買契約の解除(契約の目的が達成できない場合)

この契約不適合責任をカバーするため、売主が「既存住宅売買瑕疵保険」などの保険に加入している場合があります。重要事項説明では、この保険契約の有無や、加入している場合はその内容(保険期間や補償範囲など)について説明があります。保険に加入していれば、万が一不具合が見つかった際に、保険金で修理費用を賄える可能性があるため、非常に重要なポイントです。

特に、宅建業者が売主の中古物件では、契約不適合責任を免責する特約は消費者保護の観点から無効とされますが、個人間売買では免責とされたり、責任を負う期間が短縮されたりする特約が有効です。その場合、保険の有無が買主のリスクを大きく左右します。

重要事項説明を受けている男女のイラスト

4-4. 手付金等保全措置についての概要

手付金は、契約が成立した証として買主が売主に支払うお金ですが、万が一、物件の引き渡し前に売主が倒産してしまった場合、支払った手付金が戻ってこないリスクがあります。

このリスクから買主を保護するのが「手付金等保全措置」です。宅建業者が売主の場合、一定額を超える手付金等を受け取る際には、この保全措置を講じることが法律で義務付けられています。

保全措置が講じられていれば、売主が倒産しても、保証会社などから手付金が返還されます。措置の有無と、その具体的な内容(保証機関名など)を確認しましょう。

4-5. 支払い金や預り金の保全措置の有無と概要

これは手付金だけでなく、中間金などを含めた、物件の引き渡しまでに支払われる金銭全般に対する保全措置です。考え方は手付金等の保全措置と同様です。

宅建業者が売主で、かつ物件が未完成の場合は代金の5%または1,000万円、完成物件の場合は10%または1,000万円を超える金銭を受け取る際に保全措置が義務付けられています。該当する取引かどうか、措置が適切に講じられているかを確認しましょう。

4-6. ローンのあっせんの内容とローン不成立の場合の措置

多くの買主が住宅ローンを利用して不動産を購入します。その際、不動産会社が金融機関の紹介(ローンのあっせん)を行う場合があります。その場合は、あっせんする金融機関名や金利などの条件が説明されます。

より重要なのが「ローン不成立の場合の措置」、いわゆる「住宅ローン特約」です。これは、万が一、買主の責任ではない理由で住宅ローンの審査に通らなかった場合に、売買契約を白紙に戻し、支払った手付金も全額返還してもらえるという特約です。

この特約がなければ、ローンが借りられなくても契約を解除できず、違約金を支払う事態になりかねません。特約の有無、およびローン承認を得るまでの期間(期日)を必ず確認しましょう。

4-7. 割賦販売契約の場合の詳細内容

割賦販売(かっぷはんばい)とは、代金を一括ではなく、分割で長期間にわたって支払う契約形態です。宅建業者が自ら売主となる割賦販売では、買主を保護するための様々な規制があります。

割賦販売契約に該当する場合、賦払金(分割金の額)や支払時期・方法など、詳細な条件について説明があります。現在は一般的な取引ではありませんが、もし該当する場合は、その条件を十分に理解することが重要です。

5. 賃借の場合で追加必要な記載事項

ここからは、物件を「借りる」場合、つまり賃貸借契約の際に、売買とは別に説明が必要となる項目です。生活のルールや契約期間など、入居後の暮らしに直結する内容が含まれます。

5-1. 台所・浴室・便所等の整備状況

賃貸物件の場合、キッチン、浴室、トイレ、給湯器といった生活に必須の設備が、入居開始時点でどのような状態にあるか、整備されているかが説明されます。

設備が未整備の場合、入居までに設置されるのか、それとも入居者が自己負担で設置する必要があるのかを確認しましょう。特に古い物件では、エアコンや給湯器が前の入居者の残置物(所有権は前の入居者にある)というケースもあるため注意が必要です。

5-2. 契約期間や契約更新に関する事項

賃貸借契約の期間(通常は2年間)と、契約の更新に関するルールが説明されます。

契約が「普通借家契約」なのか「定期借家契約」なのかは最も重要なポイントです。「普通借家契約」は、貸主側に正当な事由がない限り更新が原則ですが、「定期借家契約」は期間満了と共に契約が終了し、更新がないのが原則です(再契約できる場合もある)。

更新時には更新料が必要か、その金額はいくらか、といった点も確認しましょう。

5-3. 定期借地権・定期借家権に関する事項

前項とも関連しますが、契約が「定期借家契約」である場合は、その旨が明確に説明されます。

定期借家契約は、契約期間が満了すると確実に契約が終了し、更新されないことを理解しておく必要があります。長く住み続けたいと考えている場合は、この契約形態の物件は避けるべきかもしれません。貸主と借主の合意があれば「再契約」は可能ですが、保証されているわけではありません。

5-4. 宅地建物の用途や利用の制限

物件の用途(居住用、事業用など)や、その他の利用に関する制限について説明があります。

ペットの飼育、楽器の演奏、石油ストーブの使用、事務所としての利用など、禁止または制限されている事項を確認しましょう。これらのルールを守らないと、他の入居者とのトラブルや、契約解除の原因になることもあります。

5-5. 契約終了時に清算される金銭に関する事項

契約が終了し、退去する際に発生する金銭(主に敷金の精算)について説明があります。敷金は、家賃滞納や、借主の故意・過失による損傷の修繕費用に充てられ、残額が返還されます。

いわゆる「原状回復」の範囲について、国土交通省のガイドラインに基づいた説明がされるかを確認しましょう。経年劣化や通常の使用による損耗(通常損耗)の修繕費用は、貸主が負担するのが原則です。特約で借主負担とされている部分がないか、その内容は妥当かを確認することが重要です。

5-6. 管理委託者の氏名・住所

物件の管理(家賃の集金、入居者からの連絡対応、建物の維持管理など)を、大家さん(所有者)自身が行っているのか、不動産管理会社に委託しているのかが説明されます。

管理が委託されている場合は、その管理会社の名称、住所、連絡先を確認します。入居後に水漏れなどのトラブルがあった際、どこに連絡すればよいかを把握しておくために重要です。

5-7. 契約終了時における宅地上の建物の取り壊しに関する事項

これは主に、土地を借りてその上に建物を建てる「事業用定期借地権」などで見られる条項です。

契約終了時に、借主が自己の費用で建物を取り壊し、更地にして土地を返還する義務があるかどうかが定められています。居住用の賃貸ではほとんどありませんが、もし該当する契約であれば、将来的に大きな費用負担が発生するため、極めて重要な確認事項となります。

6. マンション取引の場合に追加で必要な記載事項

マンション(区分所有建物)は、一棟の建物を複数の所有者で共有しているため、戸建てにはない特有のルールが存在します。ここでは、売買・賃貸を問わず、マンションの取引で追加説明される項目を解説します。

6-1. 敷地に関する権利の種類・内容

マンションの建物が建っている敷地(土地)に関する権利の種類と内容が説明されます。この権利は、専有部分(自分の部屋)の所有権と一体化しており、分離して処分することはできません。

敷地権は主に「所有権」と「借地権」に分けられます。

  • 所有権:土地の所有権も持分に応じて所有している状態。
  • 借地権:土地の所有者から土地を借りて、その上にマンションが建っている状態。

土地の権利が「借地権」の場合、地代(土地の賃料)を毎月支払う必要があります。また、その借地権が更新のない「定期借地権」であった場合、期間満了後には建物を取り壊し、更地として返還しなければならないため、特に注意が必要です。

6-2. 共用部分に関する規約の定め

マンションには、個人の所有物である「専有部分」(住戸内)と、区分所有者全員で共有する「共用部分」(廊下、エレベーター、エントランスなど)があります。この共用部分に関するルール(規約)について説明があります。

共用部分の範囲や、その利用方法についてのルールを確認しましょう。例えば、廊下に私物を置くことの禁止などが定められています。

6-3. 専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定め

自分の部屋である専有部分であっても、マンション全体の資産価値や住環境を維持するため、一定の利用制限が規約で定められている場合があります。

ペット飼育の可否・条件、楽器演奏の時間帯、リフォーム時の制約(フローリングの遮音等級など)、事務所利用の可否などを確認しましょう。希望するライフスタイルが実現できるか、事前にチェックすることが重要です。

6-4. 専用使用権に関する規約の定め

専用使用権とは、バルコニー、専用庭、駐車場、トランクルームなど、共用部分の一部を特定の区分所有者だけが専用で使える権利のことです。

どの部分に専用使用権が設定されているか、また、その使用料(駐車場代など)が別途必要なのか、金額はいくらかを確認しましょう。

6-5. 維持修繕費用や通常の管理費用等を特定の者にのみ減免する旨の定め

通常、管理費や修繕積立金は、専有部分の床面積割合に応じて全戸が負担しますが、規約によって特定の区分所有者だけが減額・免除されるケースがあります。

例えば、1階の住戸はエレベーターの維持管理費が減免される、といった定めがないかを確認します。このような定めがある場合、他の区分所有者の負担が相対的に重くなる可能性があります。

6-6. 計画修繕積立金の規約に関する定めの内容と積み立てられている額

マンションの資産価値を長期的に維持するため、外壁塗装や屋上防水、給排水管の更新といった大規模修繕工事が計画的に行われます。その費用を賄うために、区分所有者から毎月徴収するのが「修繕積立金」です。

修繕積立金に関する規約の内容(金額の算定方法など)と、マンション全体でこれまでに積み立てられている総額がいくらかを確認しましょう。

積立金の総額が、長期修繕計画に対して著しく不足している場合、将来的に修繕積立金が大幅に値上げされたり、一時金としてまとまった金額を徴収されたりするリスクがあります。

6-7. 区分所有者が負担する通常の管理費用の額

管理費は、日常的な清掃、共用部分の光熱費、エレベーターの保守点検、管理会社への委託費用など、マンションの日常的な維持管理に使われる費用です。

購入(入居)後に毎月支払うことになる管理費の具体的な金額を確認しましょう。中古マンションの場合は、前の所有者に管理費の滞納がないかも重要なチェックポイントです。滞納がある場合、その債務は新しい区分所有者(買主)に引き継がれてしまうためです。

6-8. 建物・敷地の委託管理者の氏名・住所等

マンションの管理業務を管理会社に委託している場合、その管理会社の商号(名称)、住所、連絡先が説明されます。

どのような管理会社が、どのような業務内容で管理を行っているかを確認します。管理会社の評判や実績も、マンションの管理品質を測る一つの指標になります。

6-9. 維持修繕の実施状況記録の内容

中古マンションの場合、これまでにどのような維持修繕(特に大規模修繕工事)が行われてきたかが記録されていれば、その内容が説明されます。

過去の修繕履歴を確認することで、マンションが計画的に維持管理されてきたかを判断できます。修繕が適切に行われていれば、建物のコンディションが良い可能性が高まります。


まとめ

不動産取引における重要事項説明書は、物件の物理的・法的状況から取引条件、マンション特有のルールまで、多岐にわたる重要な情報が網羅されています。登記された権利、法令上の制限、インフラ整備状況、災害リスク、そしてマンションなら共用部分の規約や修繕積立金など、一つ一つの項目が将来の安心した暮らしや資産価値に直結します。内容をしっかり理解し、不明な点は必ず質問することで、後悔のない不動産選びを実現しましょう。

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