買い替え特例とは?適用要件や注意点をわかりやすく解説

マイホームの買い替え特例とは?適用要件や注意点をわかりやすく解説

買い換え特例とは、不動産を買い換える(住み替える)ときに使える、税負担を抑えるための特例です。
本記事を通して、買い換え特例が必要か、また適用ができるのかどうかを判断しましょう。

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この記事の監修者

1.買い換え特例とは

不動産の買い換えを行うには、当然、不動産の売却が必要です。
売却で得た利益のことを譲渡所得といい、所得税・住民税が課税されるのが基本です。

買い換え特例とは、買い換え時の売却で生じた譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べられる特例です。

「将来」とは、買い換えで購入した不動産を売却した時です。
この仕組みにより、買い換え時の税負担を抑えられるため、多くの方が買い換えを検討しやすくなります。

ただし、買い換え特例の適用には、いくつかの条件があります。
詳しくは「4.買い換え特例の適用条件」で解説します。

まずは、買い換え特例の特徴を深く理解するために、メリットとデメリットを確認していきましょう。

不動産売却塾 コラム“譲渡所得を全額繰り延べできない?”

基本、譲渡所得は全額繰り延べされます。
ただし、売却金額が購入金額を下回る場合に限ります。

そもそも買い換え特例は、買い換え時の負担を軽減するための仕組みですから、利用者の多くも売却金額の方が小さい状況にあるでしょう。

反対に購入金額の方が小さい場合は、売却金額を購入資金に当てやすいため、買い換えの負担は比較的小さいと考えられます。
この場合は、その差額分しか繰り延べられないことになっています。

2.買い換え特例のメリット

買い換えと特例のメリットは、買い換えの費用負担を減らせることです。
譲渡所得(売却益)にかかる所得税と住民税の税率は、不動産の所有期間5年以下の場合で39.63%、5年超で20.315%と高い水準です。

買い換え特例を活用すると、買い替え時の税金の負担が減り、必要な資金を確保しやすくなります。

3.買い換え特例のデメリット

買い換え特例のデメリットは、「課税が先延ばしになっただけ」「3,000万円控除などと併用ができない」といった点にあります。

いつか新居を手放すときは、特例適用時に先延ばしにした税金と、新居の売却にかかる税金が必要です。
いつまでも売却しなければ仕組み上税金はかかりませんが、将来的に相続人が売却した際は、先延ばしにした税金支払いが必要になります。

また、売却時の譲渡所得税を抑える3,000万円特別控除の特例と軽減税率の特例とは併用できません。

4.買い換え特例の適用要件

買い換え特例は、マイホームだけでなく事業用不動産でも使える場合があります。
いずれも、以下で解説する適用要件を満たす必要があります。

4-1.マイホーム(居住用財産)の適用要件

売却の条件

  • 売却期限:令和7年12月31日までに売却
  • 対象不動産:日本国内のマイホーム(現住・過去に住んでいた家屋やその敷地)
  • 所有・居住期間:売却年の1月1日時点で、所有期間・居住期間ともに10年超
  • 買換期間:売却年の前年〜翌年までの3年間に取得
  • 面積要件:建物:床面積50平米以上/土地:500平米以下
  • 売却代金:1億円以下(過去5年間の合算で判定)
  • 買手との関係:親子や夫婦、生計をともにする親族など、特別の関係がある人ではないこと
  • 併用の不可:3,000万円控除、軽減税率、ローン控除などを利用していないこと

購入の条件

  • 新築未使用住宅で、令和6年1月1日以降に入居する場合は、省エネ基準(等級4以上)を満たす『特定居住用家屋』である必要があります
  • 中古住宅の場合:
    • 耐火建築物:取得日から25年以内の建築 or 耐震基準適合
    • 非耐火建築物:取得日から25年以内の建築 or 取得期限までに耐震改修
  • 入居期限:
    • 売却年または前年に取得 → 翌年12月31日までに入居
    • 翌年に取得 → その翌年12月31日までに入居

マイホームの買い換え特例を適用するためには、上記のように売却する家や買い換える家において、一定の売却価格以下・一定の坪数以上などといった特定の条件を満たす必要があります。マイホームの買い換え時には、特例の基準を満たしているかをしっかりと調べましょう。

また、買い換え特例は直近2年間に別の特例(「3,000万円の特別控除」など)を適用していると利用できないことがあるので注意が必要です。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

4-2.事業用不動産の特例

主な適用要件

  • 売却期限:令和8年3月31日までに譲渡
  • 対象不動産:事業の用に供していた土地・建物・構築物
  • 所有期間:売却年の1月1日時点で10年超
  • 地域要件:国が定める『集中地域』や『既成市街地等』などの特定区域に所在
  • 面積要件(買換資産の土地):原則300㎡以上、かつ売却資産の5倍以内
  • 買換期間:売却年の前年・当年・翌年に取得
  • 使用期限:取得後1年以内に事業に供すること
  • 譲渡・取得方法:贈与・交換・収用・リースなどは対象外
  • 他の特例と重複不可:例:優良住宅地の造成等の特例

課税繰り延べの仕組み

  • 売却額 ≦ 買換額:収入金額として20%相当を計上
  • 売却額 > 買換額:差額全額+20%部分を足して収入計上

5.【ケース別】マイホーム買い換え時に適用するべき税制特例とは?

ここからは、買い換え時に活用したい税制特例をケース別に解説します。

この記事で紹介する5つの税制
制度の名称 どんなときに利用するか 制度の概要 併用できる制度
(1)3,000万円の特別控除の特例 売却益が出たとき 3,000万円までの利益が非課税になる (2)
(2)マイホームを売ったときの軽減税率の特例 売却益が出たとき 10年を超えて保有していると税率が低くなる (1)
(3)特定の居住用財産の買い換えの特例 売却益が出たとき 売却益に対する課税を先送りできる (1)
(4)マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 売却損が出たとき 売却損が出たら一定の所得税が戻って来る (5)
(5)住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除) 新居について住宅ローンを利用するとき ローンの残高に応じて一定の所得税が戻って来る (4)

5-1.マイホームを買い換えて利益が出る場合

この章では、マイホームを買い換えて利益が出るときに使える税金の特例について解説します。前提として、家を売った利益にかかる税金のしくみをご説明しておきます。

「利益が出る」というのは、簡単に言うと、今まで住んでいたマイホームが「買ったときよりも高く売れたとき」を指します。

売却で利益が出ると、「譲渡所得税」と「住民税」が課税されます。利益が出なければ、これらの税金はかかりません。

正確な売却益は、「売却価格-購入した価格-売買の諸費用-減価償却費」という計算になります。所得税と住民税を合わせた税率は、所有期間が5年以下なら39.63%、5年超なら20.315%です(復興特別所得税を含む)。

場合によっては高額の負担になるので、節税に使える制度はしっかり利用したいものです。

減価償却について

売却益の計算では、「減価償却」といって、所有期間中に建物の価値が減る分を考慮しなければなりません。
減価償却を考慮すると、「10年前に買ったときと同じ値段で売れた」というような場合にも、税金がかかる可能性があります。

売却益が出るとき、使える可能性がある特例は次の3つです。

  1. 3,000万円の特別控除の特例
  2. マイホームを売ったときの軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買い換えの特例

(1)と(2)は併用できますが、(1)と(3)は併用できません。以下、それぞれの制度について見ていきましょう。

(1) 3,000万円の特別控除の特例

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(3,000万円の特別控除)」は、売却益が3,000万円まで非課税になる制度です。

売却益が4,000万円の場合なら、3,000万円まで非課税となり、1,000万円に対して課税されます。「保有期間は何年以上」といった制限はありませんので、一般的なマイホームの売却なら多くの場合で利用できます。

大きな節税が可能なので、「3,000万円の特別控除」を利用できるかは必ず確認してみてください。

適用の主な要件

  • 主として住んでいる自宅を売却したとき(別荘は対象外)
  • 居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること。
  • 建物を解体する場合は、解体から1年以内に土地の売買契約を締結すること。
  • 解体から売買契約を締結した日まで、貸駐車場等として利用していないこと。
  • 前年、前々年にこの特例の適用を受けていないこと。
  • 親子や夫婦など、特別な関係の方との売買でないこと。

その他の要件については以下の国税庁ホームページをご覧ください。

なお、「3,000万円の特別控除」は、次にご説明する「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」と併用することができます。

(2)マイホームを売ったときの軽減税率の特例

この特例は、売却した家の所有期間が10年を超える場合に使えます。所得税・住民税を合わせた税率は通常は20.315%ですが、この特例を利用すると税率が14.21%に下がります※(利益のうち6,000万円まで)。

「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」は、「3,000万円の特別控除」と併用することが可能です。
例えば利益が3,500万円の場合に2つの特例を併用すると、3,500万円-3,000万円=500万円に対して14.21%で課税されます。

要件もほぼ共通なので、10年を超える家の売却で「3,000万円の特別控除」を使うときには、セットで使う場合が多いです。

※税率には2037年末まで上乗せされる復興特別所得税も含まれています。

適用の主な要件

  • 売った年の1月1日時点で、売った家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
  • 主として住んでいる自宅を売却したとき(別荘は対象外)
  • 居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること。
  • 建物を解体する場合は、解体から1年以内に土地の売買契約を締結すること。
  • 解体から売買契約を締結した日まで、貸駐車場等として利用していないこと。
  • 前年、前々年にこの特例の適用を受けていないこと。
  • 親子や夫婦など、特別な関係の方との売買でないこと。

その他の要件については、「“No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例”. 国税庁」をご覧ください。

(3)特定の居住用財産の買い換えの特例

「特定の居住用財産の買い換えの特例(以下、買い換え特例)」を使うと、売却益に対する課税を将来に繰り延べすることができます1章でも申し上げた通り、「繰り延べ」というのは、課税するタイミングを将来に先送りするということです。非課税になるわけではないのでご注意ください。

「買い換え特例」を使うと、今すぐは課税されず、買い換え後の新居を将来売った時にまとめて課税されることになります。

例えば、2,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、6,000万円のマイホームに買い換えたとします。その他の税金の特例を使わない場合には、3,000万円の譲渡益が課税対象になります。そこで「買い換え特例」を使うと、今は課税されず、将来新居を売ったときに課税されます。

買い換え後の新居を将来7,000万円で売ったとすると、新居の売却益1,000万円に繰り延べた3,000万円を加えた4,000万円に対して課税されます。(ここではわかりやすく説明するため、諸費用や減価償却費を除外しています)

また、「買い換え特例」は適用するための要件が多いので、利用を考える場合は慎重に検討してください。

適用の主な要件

  • 2023年12月31日までに売ること。
  • 売った年の1月1日時点で、売った家屋と敷地の所有期間がともに10年を超えていること。かつ、居住期間が10年以上であること。
  • 主として住んでいる自宅を売却したとき(別荘は対象外)
  • 居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること。
  • 建物を解体する場合は、解体から1年以内に土地の売買契約を締結すること。
  • 解体から売買契約を締結した日まで、貸駐車場等として利用していないこと。
  • 親子や夫婦など、特別な関係の方との売買でないこと。
  • 新しく購入したマイホームは、建物50平米以上、土地500平米以下であること。
  • 売却代金は1億円以下であること。
  • 2年以内に以下の特例を利用していないこと
    (3,000万円の特別控除、マイホームを売ったときの軽減税率の特例、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例

その他の要件については、「“No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例”. 国税庁」をご覧ください。

5-2.マイホームの買い換えで損失が出たとき

(4) マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

買い換えで売却損が出た場合には、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」が使える場合があります。

この特例を使うと、家を売却したマイナス分と、給与所得などのプラス分を相殺できるため、給与所得などに課税されるはずだった税金が戻ってきます

1年で相殺しきれなかった分は、3年にわたって繰り越しできます。この制度は、「住宅ローン控除」と併用可能なので、買い換え後の住宅についてローン控除も受けられます。

適用の主な要件

  • 売った年の1月1日時点で、売った家の所有期間が5年を超えていること。
  • 主として住んでいる自宅を売却したとき(別荘は対象外)
  • 居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の年末までに売却すること。
  • 建物を解体する場合は、解体から1年以内に土地の売買契約を締結すること。
  • 解体から売買契約を締結した日まで、貸駐車場等として利用していないこと。
  • 親子や夫婦など、特別な関係の方との売買でないこと。
  • 新しく購入したマイホームは、建物が50平米以上であること。
  • 新しく購入したマイホームについて、買った年の年末時点で期間10年以上の住宅ローンがあること。

その他の要件については、「“No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)”. 国税庁」をご覧ください。

5-3.新居の購入に住宅ロ-ンを使う場合

(5) 住宅ローン控除

住宅ローンを利用して新居を購入する場合に使える有利な税制が、「住宅借入金等特別控除」(通称:住宅ローン控除・住宅ローン減税)です。

「住宅ローン控除」とは、返済期間10年以上の住宅ローンを使ってマイホームを購入等した場合に、年末のローン残高に応じて所得税が還付される(戻ってくる)制度です。

年末のローン残高の0.7%が所得税から(一部、住民税から)最大13年間控除されます。2019年10月の消費税増税に伴い、住宅の買い控えを抑えるため、住宅ローン控除制度の充実化が図られています。

適用の主な要件

  • 新築、取得した日から6カ月以内に入居すること
  • 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
  • ローンの返済期間が10年以上であること
  • 住宅の登記上の床面積が50平米以上であること
    ※所得1,000万円以下の場合に限り、40平米以上50平米未満の物件も対象
  • 床面積の2分の1以上が居住用であること
  • 入居した年とその前後2年間(計5年間)に、「居住用財産の3,000万円特別控除」「居住用財産の長期譲渡所得の軽減税率の特例」などの特例を受けていないこと

その他の要件については、「“No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合”. 国税庁」をご覧ください。

買い換え時に適用するべき税制特例は、利益が出た場合と損失が出た場合の2つのパターンによって変わってきます。利益が出た場合は売却益が3,000万円まで非課税になる特別控除の特例や軽減税率の特例、損失がでた場合は繰越控除の特例があります。

また新居の購入に住宅ローンを使う場合は住宅ローン控除が利用できます。状況に合わせて使い分けていきましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

6.家の買い換えで税金の特例を併用できるパターン

ここまでご紹介した5つの制度のうち、併用できる組み合わせについて見ていきましょう。冒頭の表を再掲します。

基本的に併用可能なのは、以下の組み合わせです。

6-1.「3,000万円の特別控除」と「買い換え特例」どちらを選べばいい?

10年を超えて保有しているマイホームを買い換えるときには、(1)3,000万円の特別控除(3)買い換え特例、いずれの条件も満たすケースがあります。ところが(1)と(3)は原則として併用できません。

正確に言うと、売った年、その前年及び前々年に(1)と(3)のどちらかの適用を受けていると、使うことができません

一般的には、「3,000万円の特別控除」を利用する方が多いのですが、それぞれのメリットとデメリットを考えて選びましょう。

「3,000万円の特別控除」のメリット

昨今の不動産市場で3,000万円以上の利益が出ることは稀なので、この特例を使えばほぼ非課税になり、節税効果が大きいです。
夫婦2人の共有名義となっている家などを売った場合は、それぞれ特例を使って6,000万円まで控除することができるのも大きなメリットです。

「3,000万円の特別控除」のデメリット

売却の翌年の国民健康保険料は、3,000万円が控除される前の所得を基礎として算出されるので、保険料が値上がりしてしまう場合があります(1年のみ)
自営業の方など、国民健康保険に加入している場合はご注意ください。サラリーマンなどの社会保険料は、給与をもとにして決まるので、不動産を売却しても影響はありません。

「買い換え特例」のメリット

買い換えた不動産をずっと売らなければ、課税される機会が来ません。また、売却益が3,000万円を超える場合でも課税を回避できます。
なお、課税を繰り延べるので、国民健康保険は値上がりしません。

「買い換え特例」のデメリット

課税のタイミングを先送りにするだけで、非課税になるわけではないので、買い換えたマイホームを売ったときに課税されます。
長期的に考えれば節税にならない可能性があります。

これらのメリット・デメリットから、「買い換え特例」の利用を検討したいケースは、売却益が3,000万円を超える場合で、買い換えた不動産をずっと売らないつもりのときなどが考えられます。

6-2.「住宅ローン控除」はほとんど併用できないので要注意!

(4)マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例」と「(5)住宅ローン控除」は、併用可能です。

ところが、「(5)住宅ローン控除」は原則として「(1)3,000万円の特別控除」「(2)マイホームを売ったときの軽減税率の特例」「(3)買い換え特例」との併用はできません。正確に言うと、居住した年とその前2年、後3年に「3000万円特別控除」「買い換えの特例」など等の特例を利用していると住宅ローン控除は使えません(令和2年3月31日までに売却した場合は居住の前後2年間)。

どちらを利用すれば得になるかは、ケースバイケースです。売却益が少ない場合は「3,000万円の特別控除」や「買い換え特例」は使わずに、「住宅ローン控除」を使う方がいいかもしれません。2019年10月から消費税が10%になるのに伴い、「住宅ローン控除」が13年間に拡大されています。

例えば、所有期間12年で売却益が500万円ならば、「3,000万円の特別控除」を利用したときに非課税となる金額は500万円×20.315%=約101万円となります。

「住宅ローン控除」を使った場合に、10年間(または13年間)の合計で101万円以上の還付が受けられるなら、住宅ローン控除を使ったほうがよいということになります。

損をしないためには、それぞれの節税効果を比較して、利用する特例を決めるとよいでしょう。

なお、「3,000万円の特別控除」と「住宅ローン控除」をどうしても両方使いたい場合、以前は併用できるケースがありましたが、2020年(令和2年)4月以降の売却からは併用する方法はなくなりました。

家の買い換えで税金の特例を併用できない組み合わせは上記の通りで、特に3,000万円の特別控除と買い換え特例は併用できないことに留意しましょう。また、住宅ローン控除も原則として多くの特例と併用できませんから注意が必要です。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生

7.税金の特例を利用する際の確定申告と相談方法

自ら事業を行っている方なら、毎年確定申告をしているはずです。一方、会社勤めの方は確定申告の必要がないため、馴染みがないかもしれません。

確定申告は、不動産売却時にも必要であり、上記のような税金の特例を適用するためにも行う必要があります。

7-1.買い換えで確定申告するタイミング

確定申告のタイミングは、物件を売却した次の年です。確定申告の手続きができる期間は、例年2月16日~3月15日ごろと決まっています。売却したからといってすぐに申告しなければならないわけではありません。

(5)住宅ローン控除は、家を購入した翌年に確定申告します。初年度は確定申告が必要ですが、2年目以降は、勤務先に書類を提出すれば年末調整で住宅ローン控除を受けられます。

(3)特定の居住用財産の買い換えの特例を使うときには売却翌年に課税されるわけではありませんが、課税のタイミングを繰り延べするために、売却の翌年の確定申告が必要です。

7-2.確定申告に必要な書類

確定申告は、専用の書類に必要な事項を記入し、税務署へ提出するだけです。ただ、初めてなら何から手をつければよいのかわからない方もいるはずです。そのような方を対象に、税務署では無料の相談会も開催しています。書類の書き方がわからない、どのような流れで進めればよいのかわからない、といった方は一度相談に訪れるとよいでしょう。

なお、(3)特定の居住用財産の買い換えの特例について、確定申告する際には以下のような書類も必要となります。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 耐震基準適合証明書
  • 売却物件が条件を満たしていることを証明する資料
  • 売却物件の登記事項証明書および売買契約書
  • 購入物件の登記事項証明書および売買契約書の写し

税金の優遇制度や特例を活用する場合は、必ず必要書類を確認しておきましょう。

7-3.確定申告を提出する方法

税務署の窓口へ直接提出する方法のほか、郵送やオンラインでも可能です。初めて行う方なら、書類の不備などを指摘してもらえる窓口への提出がおすすめです。しかし、時期によっては税務署が大変混雑するため注意が必要です。

税務署が近くにないのなら、郵送が便利ですが、書類に不備があると二度手間になるおそれがあります。自信がない方や慣れていない方にはおすすめできません。

e-TAXを利用したオンライン提出は自宅から提出でき、青色申告特別控除が受けられるメリットがあります。e-TAXを利用するにはマイナンバーカードやネット環境、ICカードリーダーライターなどが必要です。利用者クライアントソフトの導入も必要なため、初心者には少々ハードルが高いかもしれません。

7-4.税務相談と売却の進め方

家の買い換えでは様々な特例があるため、「どの特例を使うのが一番有利なんだろう」と迷ってしまう方も多いことと思います。法律上、具体的な税務相談は税理士でないと行うことができないため、特例の利用について相談したいときには税理士か税務署に相談しましょう。

相談するタイミングとしては、不動産会社に査定を依頼して、売却予想額を把握してから税理士等に相談するとスムーズです。場合によっては、居住年数と税制を考慮の上、売却のタイミングをずらしたほうが有利になる可能性もあります。

不動産会社と税理士等にそれぞれ相談しながら売却を進めれば、「半年後に売れば特例が使えたのに!」といった失敗をする恐れがなくなります。

なお、不動産会社によっては、社内税理士と連携しながら売却手続きを進められる場合もあります。税制をしっかり考慮しながら売ってくれる不動産会社を見つけたい場合には、「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」」の一括査定サービスが便利です。

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家の買い換えは大きな金額が動くので、不動産のプロと税金のプロにしっかり相談し、後悔のないように進めていきましょう。

老後の住み替えを考えている方は以下の記事もご覧ください。

まとめ

それではおさらいです。マイホームの買い換えで使える特例はたくさんあります。
利用できる可能性があるのは、次の5つの制度です。

  1. 3,000万円の特別控除の特例
  2. マイホームを売ったときの軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買い換えの特例
  4. マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例
  5. 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

基本的に併用できるのは、(1)と(2)の組み合わせと(4)と(5)の組み合わせです。

これらの税制は、条件を満たしていても自動的に適用されたり、通知が来るわけではなく、自分で選んで確定申告する必要があります。

自分一人で判断するのは難しい場合は、不動産会社と税理士等によく相談してから決めましょう。ぜひお得な税金制度をもれなく活用して、損をしない買い換えを実現させてください。

また、マイホームの買い換え(住み替え)をご検討の方は、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」の一括査定がおすすめです。一度の入力で、複数の不動産会社から査定結果を得られます。賢くマイホームを売却するためにご活用ください。

マイホームを買い換える際に利用できる特例は、3,000万円の特別控除の特例やマイホーム売却時の軽減税率の特例など、いくつかあります。ご自身のケースで特例が利用できないかしっかりと確認しましょう。

ただし特例には、併用できるものとできないものがあるため事前にどちらが得かシミュレーションすることが大切です。また不動産売却時の特例の適用には確定申告が必要であるため、余裕をもって書類を準備しておきましょう。

ファイナンシャルプランナー 秋山 芳生
  • Q
    買い換え特例とは何ですか?
    A
    不動産を買い換える際、売却益にかかる譲渡所得税の支払いを、次に売るときまで先延ばしできる制度です。
  • Q
    買い換え特例を使うメリット・デメリットは何ですか?
    A

    【メリット】買い換え時の税負担を一時的に支払わずに済むため、資金計画が立てやすい。
    【デメリット】課税は先送りになるだけで、最終的に支払う必要がある。また、「3,000万円控除」など他の特例と併用できない場合があります。
  • Q
    他に検討したい特例はありますか?
    A

    1. 3,000万円の特別控除(一定額まで売却益が非課税)
    2. 軽減税率の特例(所有期間10年超で税率が低くなる)
    3. 譲渡損失の損益通算・繰越控除(売却損が出たときの税負担を軽減)
    4. 住宅ローン控除(新居のローン残高に応じて税金が戻る)
  • Q
    特例を利用するには何が必要ですか?
    A

    売却した翌年の確定申告が必要です。売買契約書や登記事項証明書などを準備し、不動産会社や税理士に相談して手続きを進めましょう。
この記事の監修者
秋山 芳生
家計簿アプリマネーフォワードMEの元事業責任者。
複数のベンチャー企業での上場経験を通じて資産構築をしFIREを達成。現在はFPとして講演・執筆・面談を行う傍らYouTube(チャンネル登録2万人以上)で情報発信するなどマルチに活動をしている。
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