不動産査定書とは?作成方法と査定時に必要な6つの書類を解説

不動産の売却では、最初に不動産会社に査定を依頼します。
「不動産査定書」は、売り出し価格や最低売却価格を決めるにあたって重要な資料となり、フル活用することで売却を成功に導くことができます。

また、高く査定してもらうためには、査定時に用意しておいた方が良い資料があり、依頼の仕方にもコツがあります。

さらに、不動産査定書を有意義に活用するには、受領時にチェックしておきたいポイントも存在します。

そこでこの記事では、「不動産査定書」に関して【知っておくと得をする情報】をわかりやすく簡潔に紹介していきます。

これさえ読めば、不動産査定書の種類や雛形・テンプレート、依頼方法、査定時に用意しておいた方が良い資料、不動産査定書のチェックポイントなどを知ることができます。

「自分の不動産を少しでも高く売りたいな…」と考えている方は、不動産査定書に関するポイントをしっかり押さえて、高額売却への足掛かりとしてください。

不動産の売却について基礎から詳しく知りたい方は『不動産売却の入門書』も合わせてご覧ください。

不動産売却を考えているけど、難しい話をたくさん読むのは苦手という方は不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」の無料一括査定をお試しください。
一度の申し込みで最大6社に査定依頼ができるので査定額の比較も簡単です。納得できる査定額の、お好きな不動産会社をお選びいただけます。
この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.不動産査定書とは

不動産査定書は、その名の通り不動産の査定結果が記された書類ですが、「不動産会社が作成する不動産査定書」と「不動産鑑定事務所が作成する不動産査定書」の2種類があります。
まずは、それぞれの違いについて説明します。

1-1.不動産会社が作成する不動産査定書は無料

不動産会社が作成する不動産査定書とは、売却を目的とした売主が不動産会社に対して依頼する査定書です。
不動産会社が作成する不動産査定書は、必ず無料となります。

無料の不動産査定書は、主に売り出し価格等を決定するために利用します。
利用目的が売却に限られているため、売主以外が利用することはできません。
また、離婚の財産分与や相続の遺産分割で裁判所など公的な場に提出する必要がある場合には、利用できないので注意してください。

1-2.不動産鑑定事務所が作成する不動産査定書は有料

不動産鑑定事務所が有料で作成する不動産査定書というものもあります。
不動産鑑定事務所は、通常、不動産鑑定評価書という名称の評価書を作りますが、鑑定評価書の簡易版として不動産査定書を作成するサービスも行っています。

この不動産査定書は、不動産鑑定評価書の簡易版であるため、鑑定評価書より料金は割安です。
不動産鑑定評価書は不動産鑑定評価基準に則って評価を行いますが、不動産査定書は不動産鑑定評価基準に則らずに査定を行うため、税務署や裁判所への証拠資料としては不十分となります。
公的な場に証拠資料として提出する場合には、「不動産鑑定評価書」を用意してください。

なお、不動産鑑定事務所が作成する不動産査定書は、例えば企業が自社の保有している不動産の資産価値を把握する場合や、M&Aなどで買主企業が相手方の企業の不動産価値を把握するために利用されることが多いです。

いずれにしても、売主が不動産鑑定事務所の不動産査定書を利用することはほとんどありません。

一般の方が不動産鑑定事務所の不動産査定書が利用することはレアケースであるため、次章からは特に「不動産会社が作成する不動産査定書」について解説していきます。

なお、不動産会社と不動産鑑定事務所の違いについては、下記の記事で詳しく解説しています。

不動産売却に有利なのはどっち?「鑑定」と「査定」の違いを解説

不動産の査定そのものについて詳しくは『【完全ガイド】不動産査定とは?』をご覧ください。

2.不動産査定書の雛形・テンプレート

不動産査定書の雛形・テンプレートを示すと以下のとおりです。

不動産査定書の雛形・テンプレート

※「不動産査定書」のサンプルは、上の画像からご覧いただけますので、あわせて参考になさってください。(画像をクリックすると別窓が開きます)

不動産査定書には、特に決まったフォーマットは存在しません。
何かを記載しなければならないというルールもないため、各社が自由な書式で提出してくることが一般的です。

不動産査定書の一番のポイントは「査定価格」になります。
その他、不動産会社によっては土地と建物価格の内訳や、セールスポイント、売り出し価格の提案等が記載されているものがあります。

3.不動産査定書の依頼方法

不動産の売却のために取得する不動産査定書は、あくまでも売却の予想価格を算出しているにすぎず、その査定価格で売れることを保証しているものではありません。

予想ですので、不動産査定書を提出する不動産会社の一つの意見・見方に過ぎないということです。

高く売れると考えている会社の査定価格は高くなりますし、安くなると考えている会社の査定価格は安くなります。
以下のグラフは、都内のあるマンションをA社からD社の不動産会社が査定した際の査定額ですが、最高値のB社と最安値のC社では500万円もの差が出ています。

査定した際の査定額

ですので、不動産査定書を取る際には、1社の意見だけを妄信するではなく、複数の不動産会社の意見を幅広く聞くことが売り出し価格の決定で失敗しないコツといえます。

ちなみに、複数の不動産会社に査定を依頼するなら、「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」がとても便利です。

あなたの不動産いくらで売れる?

物件の所在地や広さなど簡単な入力をするだけで、無料で最大6社の不動産会社にまとめて査定を依頼することができます。

参画している不動産会社は、サイトの運営元であるNTTデータグループが厳正な審査を行っているため、実績豊富な不動産会社ばかりとなっています。
あらかじめ良い不動産会社が厳選されていることから、不動産会社選びの失敗を防ぐことができます。
売却を目的とした不動産会社の査定を希望している場合には、手間なく優良な不動産会社に依頼できる「不動産売却 HOME4U」をご利用になってみてください。

4.査定時に用意しておいた方が良い資料

この章では査定時に用意しておいた方が良い資料について解説します。
可能な限り事前に準備しておくことをおススメします。

★最低限用意しておきたい資料
(1)登記済証(権利証)または登記識別情報通知書
(2)確定測量図(土地または戸建ての場合のみ)

★あるとベターな資料
(3)リフォームの履歴がわかる資料
(4)既存住宅にかかる建設住宅性能評価書
(5)インスペクション(建物状況調査)の結果報告書
(6)瑕疵担保保険の付保証明書

それぞれ詳しく見ていきましょう。

(1)登記済証(権利証)または登記識別情報通知書
登記済証(権利証)または登記識別情報通知書は、査定時に本人確認のために必要な書類となります。
登記済証(権利証) または登記識別情報通知書は、所有者が登記権利者として権利を取得した際に、登記所(法務局)から渡されている書類です。
平成17年(2005年)3月7日より改正不動産登記法により、権利証は登記識別情報通知書に変わりました。
いずれも本人しか持っていない書類であるため、所有者本人の確認のために不動産会社に提示する書類となります。

(2)確定測量図
土地または戸建てを売る場合には、原則として確定測量図があった方が良いです。
確定測量図は、全ての境界が確定しているときのみに発行される測量図になります。
もし、査定時に確定測量図がない場合には、不動産会社から引渡まで作成することを求められることが一般的です。

確定測量については、こちらの記事で詳しく解説しています。

「確定測量」とは?費用と流れ、失敗しないための注意点を紹介

(3)リフォームの履歴がわかる資料
リフォームの履歴がわかる資料は、不動産の価値を上げるための重要な書類です。
査定価格が上がりますので、リフォームしている場合には、メモ書き等でも構わないのでリフォームの履歴がわかる資料を作成しておいてください。
いつ、何をリフォームしたかわかれば大丈夫です。
直近5年くらいに実施されていれば、価格にプラス要因として反映されます。

(4)既存住宅にかかる建設住宅性能評価書
建設住宅性能評価書とは、「現況検査により認められる劣化等の状況」や「個別性能に関すること」に関し、専門家が評価して作成する書面です。
専門家によって建物に一定の価値があることが評価された書類であるため、査定価格がアップすることになります。
特に、戸建てなら築20年超、マンションなら築25年超の物件の場合、建設住宅性能評価書(耐震等級が等級1、等級2または等級3の場合)があると、買主が住宅ローン控除の適用や登録免許税の軽減措置の適用を受けることができるため、価値が上がります。

(5)インスペクション(建物状況調査)の結果報告書
インスペクション(建物状況調査)とは専門家による建物の目視調査のことです。
インスペクションに合格していると、建物の一定の品質を証明されるため、買主に安心感を与える効果があり、売却しやすくなります。

(6)瑕疵担保保険の付保証明書
瑕疵(かし)担保保険とは、売却後に構造耐力上主要な部分等に問題が発見されたときに修繕費の一部を保険金で賄うことができる保険のことです。
瑕疵担保保険の付保証明書があると、物件が保証書付きのような形になるため、売却しやすくなります。
また、瑕疵担保保険の付保証明書も、建設住宅性能評価書と同様に、書類があることで戸建てなら築20年超、マンションなら築25年超の物件でも買主が住宅ローン控除の適用や登録免許税の軽減措置の適用を受けることができるようになります。

瑕疵担保責任については、こちらの記事で詳しく解説しています。

民法改正前に売るべき?瑕疵担保責任の基本知識をやさしく解説

5.不動産査定書の5つのチェックポイント

不動産査定書の5つのチェックポイント査定を受けて「不動産査定書」を手に入れることができたら、売却を成功させるためにぜひチェックしていただきたいポイントがあります。
この章では、不動産査定書を受領したときの5つのチェックポイントについて解説します。

5-1.総額を比較すること

複数の不動産会社から不動産査定書を受領したら、総額を比較してください。
不動産は精密機械ではないので、価格は概ね「上3桁」または「上2桁」で表現されることが一般的です。

慣習上、例えば「4,350万円」とか、「4,500万円」といった表現が一般的であり、「43,521,863円」のような1円単位で表現されるものではありません。

「上2桁」だからいい加減、「1円単位」だから正確というものではなく、「上3桁」や「上2桁」であっても精度は十分に高いと思って頂いて大丈夫です。

複数の会社から不動産査定書を受領すると、価格にばらつきがあり、幅があることがわかります。
高めの価格も重要ですが、実は低めの価格の確認も重要です。

特に住宅ローンが残っている人は、一番低い価格でも住宅ローンが返済できるかどうかを確認しておくことがポイントとなります。

低めの価格は、その価格でしか売れない可能性も含んでいますので、低めの価格でも住宅ローンが返せると確認しておけば安心して売却を進めることができます。

また、価格も極端に高過ぎるものでなければ、高い査定額を提示してくれる不動産会社を選んでも大丈夫です。
せっかくですので、高く売却してくれる不動産会社に依頼するようにしましょう。

5-2.事例を見せてもらうこと

不動産査定書を受領したら事例を見せてもらうこともポイントです。
査定価格の算出にあたっては、不動産会社はある程度事例を参考にしています。

事例は不動産査定書には記載されていないことが多いですが、不動産会社は手持ち資料として参考にした資料を持っていることが一般的です。

「教えてもらえる範囲で構わないので、事例を見せてください」とお願いすれば、ある程度の情報を教えてくれます。
「この物件がいくらで売れた」という事例を見ると、具体的に価格のイメージが湧きます。

5-3.価格アップ要因を反映しているか確認すること

リフォーム済みの物件等、増額要因のある物件は価格アップ要因を査定価格に反映されているか確認することがポイントです。

住宅性能評価書がある物件は、1割くらい高めに査定してくれる会社もあります。
住宅性能評価書等を提示した売主の方は、「通常の物件よりどれくらい高くなっていますか?」と確認すると、しっかり物件の強みを把握してくれている不動産会社を選べるようになれます。

ただし、リフォームに関しては、リフォームに投資した金額がそのまま上乗せされるとは限りません。

例えば、リフォーム費用に600万円くらいかけてきたにもかかわらず、価格アップが300万円程度しかなかったということはよくあります。
リフォーム費用は全額回収しきれないことが多いという点は知っておく必要があります。

価格アップ要因の反映額は不動産会社によって開きがありますので、増額要因のある物件を売る人はしっかりと不動産査定書を比較し、できるだけ高く評価してくれる不動産会社を選ぶようにしましょう。

5-4.下限値を確認すること

不動産査定書は、会社によっては「○○万円~○○万円」のように幅で提示してくることもあります。
不動産査定書は、しっかりと下限値を確認することもポイントです。

中古住宅の売買では、買主からの値引き交渉がよくあります。
マンションは値引き要求を受けても50万円程度で留まることが多いのですが、戸建ては200万円前後の値引き要求となるケースもあり得ます。

大幅な値引きを要求されると、売主としては応諾しても良いものか判断に迷うのが普通です。

値引き要求された際、下限値を把握しておくと法外な要求かどうかを判別することができるようになります。

下限値は、売却の最終局面で役立つ情報なので、売買契約が成立するまで査定書は手元に残しておくことをおススメします。

5-5.売り出し価格の決め方を聞くこと

不動産査定書を受領したら、各社に売り出し価格の決め方を聞くこともポイントです。
売り出し価格は自分の所有物を売るため、本来は売主自身が自由に値段を付けるので構いません。
しかしながら、売り出し価格は安過ぎれば損をしますし、高過ぎれば全く売れないという結果になります。

適正な売り出し価格は、実際に何度も取引を経験している不動産会社でないとわからないため、不動産会社に売り出し価格を提示してもらうことが間違いの少ない決め方といえます。

マンションの場合、あまり値引きが行われないことから、査定額をそのまま売り出し価格にしても大丈夫です。
一方で、戸建ては値引きが大きいことから、不動産会社の各社の意見を十分に聞いた上で決めることをおススメします。

不動産売却は、安過ぎず高過ぎない価格で売ることが成功の秘訣です。
納得のいく売り出し価格を決定するためにも、不動産査定書を十分に活用しましょう。

まとめ

いかがでしたか。
不動産査定書について解説してきました。

不動産査定書には、不動産会社が行う売却のための無料の査定書と、不動産鑑定事務所が行う様々な用途に利用できる有料の査定書の2種類があります。

売却を目的に査定を依頼するには、「不動産売却 HOME4U」を使って、優良な複数の不動産会社に査定を依頼すると、高くてスムーズな売却への一歩が踏み出せます。

複数の不動産会社の不動産査定書が入手できたら、「総額を比較すること」や「事例を見せてもらうこと」ことを励行し、最低額のチェックもぬかりなく行ってください。

不動産査定書は、売り出し価格や最低売却価格の決定にも役立ちますので、フル活用して後悔のない売却に役立ててください。

売却を進めていきたい方は以下の記事も参考にしてください。