所有権移転登記の費用相場はいくら?シーン別の金額目安を紹介

所有権移転登記 費用の相場はいくら?

売買や相続などにより、土地や建物の所有者に変更があったときは、不動産登記の一つである所有権移転登記が必要です。所有権移転登記は司法書士へ依頼するケースが一般的ですが、自分で手続きすると登記費用を節約できます。

本記事では、所有権移転登記にかかる費用やシーン別の金額目安、費用を抑える方法を紹介します。

この記事を読むと分かること
  • 所有権移転登記が必要なシーン
  • 所有権移転登記の費用相場やシーン別の金額目安
  • 所有権移転登記の費用を安く抑える方法
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1.所有権移転登記とは、不動産登記の一つ

所有権移転登記とは、不動産の所有権が移転したことを証明する不動産登記のことを指します。

なお、不動産登記とは、土地や建物に関する情報(表題、権利関係)を公的に記録・公開する手続きのことで、登記された内容(登記事項)は法務局の帳簿に記録されます。

また、登記された内容は、法務局が発行する登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することで、誰でも閲覧可能です。

登記された内容を確認したい土地や建物があれば、該当の不動産を管轄する法務局から登記事項証明書(登記簿謄本)を取得しましょう。

登記事項証明書(登記簿謄本)には、主に以下の内容が記載されています。

登記事項証明書の見本1

引用:“全部事項証明書(不動産登記)の見本”. 法務省. (参照2024-04-01)

表題部 不動産の所在、地番、地目、面積、登記の状態 など
権利部(甲区) 所有者の情報など、所有権に関する事項
権利部(乙区) 抵当権や担保情報など、所有権以外の権利に関する事項

不動産の所有者に変更があったときは、速やかに所有権移転登記を行ないましょう。所有権移転登記を行なうと、登記事項証明書(登記簿謄本)の権利部(甲区)が変更され、対象となる不動産の所有権を公的に証明できます。

所有権移転登記をしていない土地や建物は所有者の証明ができないため、不動産取引全般において、トラブルのリスクが高まります。

2.不動産の所有権移転登記が必要な主なシーン

売地

不動産の所有権移転登記は、主に以下のようなシーンで必要になります。

2-1.不動産を売買したとき

不動産を売買すると売主から買主へ不動産の所有権が移転するため、所有権移転登記が必要です。

不動産売買による所有権移転登記は、基本的に買主の負担となり、登記申請の手続きは司法書士に依頼するのが一般的です。

登記が行なわれるタイミングは売買契約から約1ヵ月後の「引渡し日と同日」に設定されるケースが多いでしょう。

2-2.不動産を相続したとき

亡くなった方が所有していた不動産などの財産は、遺言書や遺産分割協議の内容に沿って相続されます。

不動産の相続が発生した際は、基本的には相続した方が所有権移転登記を行ないます。

相続によって不動産の所有者が変わった際の所有権移転登記は「相続登記」とも呼ばれ、通常の所有権移転登記とは扱いが異なる点に注意しましょう。

相続登記は2024年(令和6年)4月1日から申請が義務化され、相続により不動産を取得したと知った日から3年以内に手続きを行なう必要があります。

出典:“相続登記の申請義務化に関するQ&A”. 法務省

相続登記の詳しい解説や、申請期限内に登記できなかった場合の罰則などについては、「相続登記の義務化は2024年4月1日から!申請期限と罰則は事前に把握しよう」を参考にしてください。

2-3.不動産を贈与で譲り受けたとき

親族からの生前贈与などで不動産を譲り受けた際も所有権移転登記が必要です。

不動産を譲り受けて所有権移転登記をしないままでいると、対象の不動産で相続が発生した際に所有権の証明ができず、遺産をめぐるトラブルに発展する可能性があります。

2-4.不動産を財産分与したとき

離婚時の財産分与などで名義人に変更がある場合、所有権移転登記が必要です。

例えば、夫が所有していた不動産を、離婚を機に妻の財産とする場合は、所有権移転登記を行ないます。

注意点として、夫婦で共有していた不動産をどちらか一方の名義へ変更する場合は、所有権移転登記ではなく持分移転登記を行なわなければなりません。

3.所有権移転登記の費用相場

家と電卓

所有権移転登記を行なう際には、次の4つの費用が発生します。

  • 登録免許税
  • 司法書士報酬(司法書士へ依頼する場合のみ)
  • 不動産の調査費用
  • 必要書類の取得費用

所有権移転登記の費用は個々のケースにより変動しますが、相場は以下のとおりです。

費用 相場
登録免許税 税率や対象となる不動産の固定資産税評価額(※)によって異なる
司法書士報酬 3~5万円
不動産の調査費用 数千円
必要書類の取得費用 数千円
合計 20~40万円

(※)固定資産税評価額は、不動産が属する市町村(東京23区は東京都)によって決定されます。

費用総額は、10万円以下で収まる場合もあれば、40万円を超える場合もあるため、正確な金額を知りたいときは登記を依頼する司法書士や、仲介を依頼している不動産会社へ確認しましょう。

3-1.登録免許税

登録免許税とは、不動産登記を行なう際に発生する税金のことです。

登録免許税は、土地と建物それぞれにかかり、固定資産税評価額に所定の税率をかけて算出されます。

税率は所有権移転の原因により異なり、要件を満たすことで軽減措置が適用されます。
所有権移転登記の税率(土地、建物)は以下のとおりです。

所有権移転登記の税率(土地)
所有権移転の原因 税率 軽減措置
売買 2% 2026年(令和8年)3月31日までの登記の場合は1.5%
相続 0.4%
贈与 2%
所有権移転登記の税率(建物)
所有権移転の原因 税率 軽減措置
売買 2% 2024年(令和6年)3月31日までに個人が居住用に取得する場合は0.3%
相続 0.4%
贈与 2%

出典:“No.7191 登録免許税の税額表”. 国税庁. (参照2024-04-01)

3-2.司法書士報酬

司法書士報酬とは、登記手続きを司法書士へ依頼した場合に司法書士へ支払う費用のことです。

依頼先や依頼内容により金額は異なりますが、日本司法書士連合会によると、所有権移転登記にかかる司法書士報酬は、所有権移転の原因やエリアにより以下のように異なります。

売買による所有権移転登記の場合
エリア 相場
北海道 4万2,999円
東北 4万2,585円
関東 5万1,909円
中部 5万1,065円
近畿 6万4,090円
中国 4万8,035円
四国 5万1,369円
九州 4万5,729円
相続による所有権移転登記の場合
エリア 相場
北海道 6万983円
東北 6万667円
関東 6万5,800円
中部 6万3,470円
近畿 7万8,326円
中国 6万5,670円
四国 6万5,578円
九州 6万2,281円
贈与による所有権移転登記の場合
エリア 相場
北海道 4万1,236円
東北 4万1,219円
関東 4万7,806円
中部 4万5,070円
近畿 5万4,505円
中国 4万3,788円
四国 4万4,064円
九州 4万1,798円

出典:“司法書士の報酬アンケート結果(2018年平成30年1月実施)”. 日本司法書士会連合会. (参照2024-04-01)

3-3.不動産の調査費用

所有権移転登記を行なう際は、不動産の正しい情報を得るための調査が必要になります。

不動産の情報は、主に登記事項証明書(登記簿謄本)から確認できます。登記事項証明書(登記簿謄本)の発行にかかる費用は、窓口請求または郵送の場合は、1通につき600円、オンライン請求の場合は、窓口で受け取るのなら1通につき480円、郵送で受け取るのなら1通につき500円です。

上記以外の書類の確認や不動産の現況確認などが必要になる場合は、数千円ほどの調査費用がかかる場合もあります。

3-4.必要書類の取得費用

所有権移転登記を行なう際は、登記の原因を証明するための書類が必要です。

必要書類は原因ごとに異なりますが、なかでも相続は戸籍の収集で費用がかさむ傾向があります。

所有権移転登記で必要になる書類は、以下のとおりです。

売買による所有権移転登記の場合
書類 取得費用
不動産売買契約書
登記識別情報または登記済証
印鑑登録証明書 300~500円
資格証明書 300~500円
固定資産評価証明書 300~500円
相続による所有権移転登記の場合
書類 取得費用
印鑑登録証明書 300~500円
住民票 300~500円
固定資産評価証明書 300~500円
登記原因証明情報 約1万円(司法書士へ作成を依頼した場合)
贈与による所有権移転登記の場合
書類 取得費用
登記識別情報または登記済証
印鑑登録証明書 300~500円
住民票 300~500円
固定資産評価証明書 300~500円
贈与契約証書 1~2万円(司法書士へ作成を依頼した場合)
登記原因証明情報 約1万円(司法書士へ作成を依頼した場合)

4.シーン別|所有権移転登記の金額目安

ここからは、所有権移転登記が必要となる事例をもとに、所有権移転登記にかかる費用をシーン別に紹介します。

4-1.売買による所有権移転登記の費用

118_1(売買による所有権移転登記)

固定資産税評価額が土地1,000万円、建物1,000万円の中古住宅を購入し、所有権移転登記を司法書士へ依頼する場合の費用目安は、以下のとおりです。

項目 金額
登録免許税 土地15万円、建物3万円(※1)(※2)
司法書士報酬 4万8,000円(※3)
不動産の調査費用 2,000円
必要書類の取得費用 8,000円(郵送費含む)
合計 23万8,000円(+消費税)

(※1)いずれも軽減税率適用時
(※2)計算式は、「土地:1,000万円×1.5%=15万円」「建物:1,000万円×0.3%=3万円」
(※3)所有権移転登記のみの場合

4-2.相続による所有権移転登記の費用

118_2(相続による所有権移転登記)

不動産評価額が土地1,000万円、建物1,000万円の実家を相続し、所有権移転登記を司法書士へ依頼する場合の費用目安は以下のとおりです。

項目 金額
登録免許税 土地4万円、建物4万円(※1)
司法書士報酬 12万5,000円(※2)
不動産の調査費用 2,000円
必要書類の取得費用 1万5,000円(郵送費含む)
合計 22万2,000円(+消費税)

(※1)計算式は、「土地:1,000万円×0.4%=4万円」「建物:1,000万円×0.4%=4万円」
(※2)戸籍収集費用2万2,000円、遺産分割協議証明書の作成費用4万8,000円を含む金額

4-3.贈与による所有権移転登記の費用

118_3(贈与による所有権移転登記)

不動産評価額が土地1,000万円、建物1,000万円の中古住宅を贈与し、所有権移転登記を司法書士へ依頼する場合の費用目安は以下のとおりです。

項目 金額
登録免許税 土地20万円、建物20万円(※1)
司法書士報酬 10万円(※2)
不動産の調査費用 2,000円
必要書類の取得費用 7,000円(郵送費含む)
合計 50万9,000円(+消費税)

(※1)計算式は、「土地:1,000万円×2%=20万円」「建物:1,000万円×2%=20万円」
(※2)贈与契約書の作成費用2万円を含む金額

5.所有権移転登記の費用を安く抑える方法

夫婦と住宅

不動産を購入したり、相続や贈与で譲り受けたりする際、少しでも諸費用を安く抑えたいと考える方もいるでしょう。

所有権移転登記の費用を安くするには、以下のような方法があります。

5-1.自分で手続きする

所有権移転登記を自分で手続きできれば司法書士報酬がかからないため、費用の節約が可能です。

ただし、住宅ローンの借入れを伴う不動産売買においては、登記手続きを司法書士へ依頼するよう金融機関から求められるケースが一般的です。司法書士による登記手続きをしないと、金融機関から融資を受けられない場合もあるため注意しましょう。

一方、相続や贈与による所有権移転登記では、自分で登記手続きを行なうことで、5万円~10万円程度の司法書士報酬を節約できる可能性があります。

5-2.複数の司法書士事務所から見積もりを取る

司法書士報酬は司法書士事務所ごとに自由に設定できるため、依頼先により金額が異なります。

所有権移転登記を司法書士へ依頼する際は、複数の司法書士事務所から見積もりを取り、報酬金額を比較することで高額な料金設定の司法書士事務所を避けられるでしょう。

なお、「自分で問題なく登記申請できるか心配」「どのような司法書士を選べばいいかわからない」といった場合は、不動産会社に相談するのもおすすめです。

不動産会社では登記手続きの代行はできませんが、不動産の専門知識を持つ担当者に相談することで、個々のケースに適したアドバイスを受けられます。

まとめ

所有権移転登記は、不動産の所有者を証明するために欠かせない不動産登記の一つです。

所有権移転登記の費用は、登記が必要となる原因や不動産の固定資産税評価額などにより差がありますが、相場としては20~40万円が目安です。

所有権移転登記の費用を抑えつつ、不動産取引をできるだけスムーズに済ませたいと考えている方は、専門家のアドバイスを受けられる不動産会社に一度相談してみることをおすすめします。

「相続した不動産を有効活用したい」「住む予定がない実家をできるだけ高く売りたい」などの理由で売却や賃貸を検討している方は、NTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」の一括査定サービスをぜひご利用ください。