老後の住み替えに潜む恐ろしい罠

老後の住み替えに潜む恐ろしい罠

定年後は、駅近の高級マンションや自然豊かな田舎、憧れの海外移住など、住み替えに夢を持っていると思います。

しかし、ちょっと待ってください!実は住み替えには思わぬ落とし穴が潜んでいます。

そこで住み替えに潜んでいる7つの落とし穴と、それを知ったうえでも住み替えたい方へ向けて老後の住み替え成功術を解説します。

住み替えに潜む7つの落とし穴

住み替えには以下の7つの落とし穴が潜んでいます。

1つずつ詳しく見ていきましょう。

1.老後資金が不足するリスク

人生100年時代を迎えた今、予想以上に長生きすることで、後年の生活資金が枯渇するケースも少なくありません。

総務省統計局によるデータ(2024年9月15日時点)によると、80歳以上の人口は1,290万人(総人口の10.4%)で、前年比31万人増と、増え続けています。
つまり現在10人に1人が80歳以上生きるということです。

そうなると心配になるのが老後の資金。仮に100歳まで生きるとしたらいくら必要になるのでしょうか?

老後の月額生活費の平均(夫婦2人の場合)は約23万円と言われています。
また、定年退職の年齢は2025年4月1日以降、段階的に満65歳に引き上げられるため、66歳から100歳までの35年です。

すると、以下のとおり、おおよそ1臆近い金額がかかることがわかります。

  • 約23万円(月額生活費)× 35(年) × 12(か月) = 9,660万円

しかし、この金額は住み替えもリフォームもせず、持ち家で健康に100歳まで生きられた場合です。

病気にかかったり、賃貸に住んでいたりする場合は、これにプラスして治療費や家賃が発生するため、長生きすればするほど資金が不足し、赤字に転落するリスクが高まります。

2.要介護リスク

生命保険文化センターによると、要介護認定者の割合は、80~84歳では26%、85歳以上では59.5%です。85歳以上では6割の方が介護認定されていることになります。

また、要介護度別の月額介護費用の平均は以下のとおりです。

要介護度別の月額介護費用の平均

出典:“介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?”. 生命保険文化センター. (参照2024-01-22)

介護を行った場所別の月額介護費用の平均は以下になります。

介護を行った場所別の月額介護費用の平均

出典:“介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?”. 生命保険文化センター. (参照2024-01-22)

仮に住み替え後に、要介護5の状態となり、20年間、介護施設に入居したら住み替え先の住まいにかかる費用とは別に、以下の金額も発生することになります。

  • 約12万2,000円(介護施設に入居した場合/月額)× 20(年) × 12(か月) = 2,928万円

おおよそ3,000万もの費用が追加で発生するのです。

3.ローン審査・返済の壁

60歳以上の方にとって住宅ローンの審査は難易度が高いのが現実です。
多くの金融機関で住宅ローンの申し込みができるのは、18歳以上70歳以下(完済時の年齢は80歳未満)とされているほか、老後は収入が減るため、返済能力が低いと判断されやすいです。

住宅支援機関の調査によると、2024年4月時点の住宅ローン利用者の平均年齢は38.6歳で全体の46.7%を占めています。
一方、60歳以上の住宅ローン利用者は3.3%と、非常に少ないことがわかります。

住宅ローン利用者の平均年齢

出典:“住宅ローン利用者の実態調査 【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】. 住宅支援機関”. 2024-6-28. (参照2025-1-29)

さらに2024年4月時点の住宅ローンの返済期間は「30年超~35年以内」が50.8%と最多です。
一方、「15年超~20年以内」は10.6%となっています。

住宅ローンの返済期間

出典:“住宅ローン利用者の実態調査 【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】. 住宅支援機関”. 2024-6-28. (参照2025-1-29)

上の2つのグラフを照らし合わせると、60歳から住宅ローンを利用して住み替えるのは、頭金を多めに用意するなどの対策を講じない限り、かなり難しいと言えます。

4.賃貸入居の壁

2023年7月の国土交通省の調査によると、大家など賃貸人の約7割が高齢者の入居に対して拒否感を抱いています。

【高齢者の入居に対する賃貸人(大家など)の意識】

高齢者の入居に対する賃貸人(大家など)の意識

※5年前との比較

出典:“住宅セーフティネット制度の現状について”. 国土交通省 住宅局. 2023-7. (参照2025-1-30)をもとに、HOME4Uが独自に作成

主な理由は以下3つが挙げられます。

  • 孤独死されると部屋が事故物件になってしまう
  • 病気や介護のリスクがあり家賃が支払われなくなる可能性がある
  • ほかの入居者や近隣住人との協調性に対して不安がある

そのため、高齢になって賃貸へ住み替える場合、入居審査に苦戦したり、入居できる物件が限られたりする可能性が高いでしょう。

5.環境の変化で孤立するリスク

住み替え先の環境に馴染めず、孤立してしまうリスクも見逃せません。

例えば、夫婦でこれまで馴染みのない土地に移り住んだものの、移住を望んでいた夫に先立たれ、その土地に妻だけが取り残され、引きこもりとなり、鬱状態に陥ってしまうこともあるでしょう。

性格などにもよっても異なりますが、知らない土地に移り住むことは、大きなストレスになるケースがあるのです。

6.家財処分の壁

住み替えの際に発生する家財道具の処分は、意外に手間とコストがかかる作業です。

専門の会社に依頼して家財道具の処分を行う場合、間取り別にかかる費用の目安は以下のとおりです。

間取り 費用
ワンルーム・1K 2~8万円ほど
1DK 4~12万円ほど
1LDK 6~20万円ほど
2DK 8〜25万円ほど
2LDK 12~30万円ほど
3DK 15〜40万円ほど
3LDK 17〜50万円ほど
4LDK以上 22~60万円ほど

間取りが広くなるほど、一般的に作業員の人数が増え、費用も高くなります。

また、高齢になってから自身で家財道具を処分しようと思っても、体力が衰えているため、想像以上に時間を要する場合もあるでしょう。
家具や思い出の品を手放す心理的な抵抗が大きくなる可能性もあります。

7.相続で禍根を残す可能性

住み替え先の家を売却せず残した場合、現金のように均等に分けることが難しいため、相続人同士でもめる恐れがあります。

遺産相続トラブルの解決を得意とする弁護士・法律事務所を検索できるポータルサイト「ベンナビ相続」による、20代以上の男女5,000人を対象とした遺産相続に関するアンケート調査によると、3人に1人である31.2%が相続を経験。

そのうちの5人に1人である22.9%が相続トラブルの発生を経験していることがわかりました。

不動産相続に関するトラブルは以下のようなものがあります。

  • 親の遺産である家を売却したが、兄弟のうちの一人に売却したお金を独占されてしまっている。(40代女性)
  • 土地の相続人が妻である自分になっているが、旦那の姉からそれはおかしいと言われて今でも争っている。(40代女性)

出典:“相続経験者の5人に1人がトラブルに発展!遺産相続トラブルに関するアンケート調査を実施”. ベンナビ相続. 2023-12-13. (参照2025-1-30)

さて、これらのリスクを回避するためには、どうしたら良いのでしょうか。

“落とし穴”を回避するための成功術

ここまで恐ろしい落とし穴について解説してきましたが、だからといって住み替えをあきらめる必要はありません。
実際に住み替えに成功している方も多くいます。

ここでは、落とし穴を回避し、住み替えに成功するための方法を紹介します。

1.早めに資金計画を立てる

住み替えの第一歩は、以下の金額を確認して早めに資金計画を立てることです。

  • 年金の確認
  • 貯金・退職金の確認
  • 持ち家のローンの確認
  • 持ち家の査定金額の確認 など

上記に加えて、老後の生活費や予備資金も考慮することで、安心感が生まれるでしょう。

なお、持ち家の価値を把握するためには、最大6社に同時に査定を依頼できる不動産一括査定サービス「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご活用ください。

複数社に査定を依頼することで、おおよその相場を把握できるだけでなく、高く売却してくれる相性の良い不動産会社に出会える可能性を高めることもできます。

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2.時間と体力がある50代のうちに計画的に動く

住み替えは、予想以上に体力と時間を要する大仕事。60歳以上での住み替えを検討している場合、時間と体力がある50代のうちから計画的に動くことが大切です。

住み替えまでの時間的な余裕が生まれることで、計画に見落としがないかを確認できるほか、計画そのものの見直し・修正も可能です。

3.住み替え先を慎重に選ぶ

下見はマスト!交通の便、医療施設、地域の雰囲気など、現地で確認すべきポイントは多々あります。
住み替え後の生活を具体的にシミュレーションすることで、失敗を防ぎましょう。

4.早めに相続対策を行う

住み替え先の家も、いずれ相続財産になります。
そのため、将来的に“負動産”にならないよう、資金価値を維持できる家を住み替え先として選ぶことが重要です。

そして認知症のリスクに備え、早めに住み替え先の家を処分するのか、誰が住むのか、もしくは誰に託すのかを決めておくことが大切でしょう。生前贈与を行うのも1つです。

とはいえ、生前贈与には贈与税などがかかります。生前贈与に関して詳しく知りたい場合は、以下の記事をぜひご一読ください。

5.専門家に相談

老後の住み替えでは、資産管理や金銭面からの生活設計などを行う必要がありますが、自身で最適な判断をするのは難しい場合もあるでしょう。

住み替えについては、不動産会社に、資産管理や生活設計はファイナンシャルプランナーなどに相談することで、安心して計画を進めることができます。

迷ったときは専門家の知識に頼りましょう。

家族に不動産を遺産として遺す際の注意点については以下の記事で詳しく解説しています。

老後の住み替え 実は3大落とし穴!田舎暮らし・海外移住・シニア向け分譲マンション

老後の住み替え先として夢見がちな3つの事例ですが、想像以上に多くの恐ろしい罠が潜んでいます。

田舎暮らし

自然豊かな田舎での暮らしは、都会の喧騒から離れる理想的な選択肢に思えるかもしれません。

しかし、田舎では医療施設が充実していない地域が多いため、急病時に救急車の到着に時間がかかったり、専門医が不在で適切な治療が受けられなかったりすることがあります。

また、車を運転できなくなると駅やバス停が遠く、日用品や食料品の買い物が難しくなることも。
さらに、田舎は人口密度が低く、町内会や自治体行事に参加しなければ、孤立するリスクもあります。

そして子どもが相続した際に売却が難しく、資産価値が大きく下がるケースもあるため慎重な検討が必要です。

海外移住

新たな文化やライフスタイルを楽しみたい方に人気の海外移住ですが、医療、物価の変動、文化の違いなど多くのリスクが潜んでいます。

医療については、言葉の壁により病状を正確に伝えられず、適切な治療が受けられなかったり、国や地域によっては医療費が高額になったりすることがあります。

また、物価の変動や予期せぬ税制改正によって生活費が増加し、貯蓄が枯渇するリスクもあります。
昨今のような円安が続いた場合、年金や預金が目減りしてしまうことも。

それだけでなく、日本と異なる宗教観や風習、治安の悪さ、食文化に馴染めず、精神的に疲弊するなど、なかなかハードルが高いのが現実です。

シニア向け分譲マンション

シニア向けマンションは、高齢者のニーズに応じた設計やサービスが魅力ですが、その分価格が高めに設定されていることが一般的。
分譲価格に加えて管理費や修繕積立金、サービス利用料などがかかり、予想以上の出費となる可能性があります。

また、高齢者をターゲットにした物件であるため、買い手が限られ、需要が減少した地域では買い手が見つからないケースも。

加えて、同じ年代の住民が多い環境では、住民間の交流が活発になる反面、意見の対立やトラブルが生じることもあります。
例えば、共用部の利用方法やイベント運営に関する意見の相違が原因で居心地が悪くなることもあるでしょう。

まとめ

老後の住み替えには、さまざまなリスクが伴います。

しかし、資金計画や住み替え先の選定、相続対策などをしっかり行うことで、これらのリスクを最小限に抑え、理想の老後生活を実現することができます。

そのためには、NTTデータグループ会社が運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U」を活用して、持ち家の相場を確認することから始めましょう。