マンションの大規模修繕とは? 工事の内容や費用、手順、注意点を全解説

マンション大規模修繕 工事内容・費用・手順

マンションの大規模修繕工事は、12~15年ごとに行なわれるケースが一般的で、マンションの住環境や資産価値の維持に欠かせません。

大規模修繕工事をスムーズに行なうためにも、工事内容や必要となる資金を知り、早めに準備に取りかかりましょう。

本記事では、大規模修繕工事の内容や費用、手順、注意点などを解説します。

この記事を読むと分かること
  • マンション大規模修繕の内容
  • マンション大規模修繕にかかる費用
  • マンション大規模修繕の手順
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1.マンションの大規模修繕は、建物の維持管理に欠かせない

マンションの住環境や資産価値、景観、機能を保つためには、適切な維持管理や修繕が欠かせません。そこで、マンションの区分所有者で構成された管理組合は、区分所有者の総意のもと、定期的に修繕工事を実施します。

修繕工事のうち、建物の全体または複数の部位について行なう大規模な計画修繕工事を「大規模修繕工事」と呼びます。大規模修繕工事は、12~15年周期で行なわれることが一般的です。

大規模修繕工事は、マンションの状況や修繕積立金を考慮して作成した修繕計画に基づいて進めなければなりません。大規模修繕工事の実施主体は、管理組合です。ただし工事期間が長く工事内容も専門的であるため、不動産会社やマンション管理士など専門家に協力してもらいながら実施することが大切です。

1 修繕と改修の必要性

出典:“大規模修繕の手引き”. 住宅金融支援機構

参考:“長期修繕計画作成ガイドライン”. 国土交通省. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

2.マンション大規模修繕の内容

大規模修繕

大規模修繕工事の内容は、マンションの現状などを踏まえて決定されます。主な工事内容には、以下のようなものが挙げられます。

  • 屋根防水
  • 床防水(バルコニー床、開放廊下、階段など)
  • 外壁塗装
  • 鉄部塗装
  • 建具・金物など
  • 給水設備・排水設備
  • そのほかの設備(ガス管、空調・換気、電灯、情報・通信、消防用など)
  • 昇降機設備(エレベーター)
  • 外構・附属施設
  • 仮設

それぞれの内容を簡単に見ていきましょう。

参考:“大規模修繕の手引き”. 住宅金融支援機構

2-1.屋根防水

屋根は日常的に日光や風雨にさらされており、劣化が進みやすい箇所です。屋根の防水機能が低下すると雨漏りが発生したり、建物の躯体が劣化したりする恐れがあります。

防水機能を低下させないよう、屋根は12~15年周期で補修するとともに、定期的に防水層を修繕します。

屋上防水にはアスファルト防水、シート防水、塗膜防水などの種類があり、修繕工事にはかぶせ工法や撤去工法などがあります。

2-2.床防水(バルコニー床、開放廊下、階段など)

バルコニーの床や開放廊下、階段なども日射などの影響を受けて劣化しやすい箇所です。劣化するとひび割れが発生したり、床が滑りやすくなったりするため、修繕時には防水機能を回復、向上させるとともに排水対策も行ないます。

床防水は12~15年周期で行ないます。使用頻度の高い開放廊下や階段で発生した不具合は、こまめに補修することが大切です。

2-3.外壁塗装

外壁塗装が劣化してコンクリートの躯体にひび割れや欠損が生じると、建物全体の強度が下がってしまうため、外壁は12~15年周期で補修や塗り替えを行ないます。

ただし、塗料の種類によって耐用年数や価格は異なります。塗料に求める機能性や予算などを踏まえ、最適な塗装方法を選択するのがポイントです。

2-4.鉄部塗装

防火扉やはしご、設備機器の制御盤などの鉄部は、塗装が劣化すると鉄が腐食し、錆びてしまうため、鉄部塗装は5~7年周期で塗り替えを行ないます。

海岸に近いマンションでは海風が運んでくる塩分によって鉄部の劣化が激しくなるため、補修頻度はさらに高いでしょう。錆びの発生が激しい場合は、錆びにくいアルミやステンレス製の製品に取り替えする場合もあります。

2-5.建具・金物など

玄関ドアやサッシ、手すりなどの建具、郵便受け、メーターボックスなどの金物類は、長期の振動や腐食により隙間ができて、開閉に不具合が生じやすい箇所です。こういった不具合は、雨水や風が室内に入り込む、非常時の避難に支障が出る、といった問題につながりかねません。

建具の点検・調整は12~15年、建具の取り替えは34~38年周期で実施します。定期的に玄関ドアやサッシを取り替えれば、各戸の機能性を向上させることができるでしょう。

また、郵便受けは24~28年、メーターボックスは34~38年を目安に取り替えます。

2-6.給水設備・排水設備

給水管が老朽化すると、赤水や漏水が生じます。給水管の取り替えは30~40年周期、配管のクリーニングおよび塗料による配管内側のコーディングは19~23年周期で行ないます。

排水管は床下や天井に隠れており、単独で点検するのが難しいため、大規模修繕時に一斉に点検します。

排水管が耐用年数を超えた場合は、新しい配管に取り替えるのが基本です。機能性の高い排水管に取り替えれば、修繕周期を延ばすこともできます。

2-7.その他の設備(ガス管、空調・換気、電灯、情報・通信、消防用など)

ガス管や空調・換気設備、電灯、電話やインターネットなどの情報・通信設備、消火栓や火災報知器などの消防用設備は、各設備の耐用年数を考慮して交換します。各設備と修繕周期の目安は以下のとおりです。

修繕周期の例
設備 修繕周期
ガス管 取り替え:28~32年
空調・換気 空調設備 取り替え:13~17年
換気設備 取り替え:13~17年
電灯 電灯設備 取り替え:18~22年
配電盤類 取り替え:28~32年
幹線設備 取り替え:28~32年
避雷針設備 取り替え:38~42年
自家発電設備 取り替え:28~32年
情報・通信 電話設備 取り替え:28~32年
テレビ共聴設備 取り替え:15~20年
インターネット設備 取り替え:28~32年
インターホン設備など 取り替え:15~20年
消防用 屋内消火栓設備 取り替え:23~27年
自動火災報知設備 取り替え:18~22年
連結送水管設備 取替:23~27年
立体駐車場 自走式駐車場 補修:8~12年 建替:28~32年
機械式駐車場 補修:5年 取替:18~22年

出典:“大規模修繕の手引き”. 住宅金融支援機構.(参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

2-8.昇降機設備(エレベーター)

昇降機設備(エレベーター)は、建築基準法に基づき1年に1回の定期検査が義務付けられています。

エレベーターの故障は重大な事故につながりかねないため、補修は12~15年周期、取り替えは26~30年周期で行ないます。

参考:“建築基準法 第十二条”. e-Gov法令検索

2-9.外構・附属施設

外構や附属施設には、駐車場や側溝、遊具、ベンチ、自転車置き場、ゴミ集積所、植栽(敷地内の樹木や草花)などがあります。

外構・附属施設の補修や取り替え、整備は24~28年周期で行なわれます。

2-10.仮設

現場事務所や資材置き場、足場、養生シートなどを設置するための仮設工事は、マンション大規模修繕工事には欠かせない項目です。

しかし、仮設工事によって居住者の生活に影響が出る恐れもあります。着工後のトラブルを回避するためにも、こまめに案内板などを確認しましょう。

3.マンション大規模修繕にかかる費用

積立金

大規模修繕工事には多額の費用がかかるため、計画的に修繕費用を積み立てる必要があります。修繕工事にかかる費用について、以下のとおり概要と積み立ての目安を解説します。

  • 工事費用には数千万円~数億円かかる
  • 大規模修繕工事費用の内訳
  • 修繕積立金の目安
  • 修繕積立金が不足した場合の対処法

3-1.工事費用には数千万円~数億円かかる

国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事にかかる費用は2,000万円以下から5億円以上までと幅広くなっています。

マンションの規模や仕様、工事内容、工事回数によってかかる金額が大きく異なるのです。

マンション大規模修繕の工事金額

3-1 マンション大規模修繕工事の工事金額

出典:“令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査”. 国土交通省

また、1戸当たりの工事金額は「100~125万円」の割合が最も高く、200万円を超える場合もあります。1戸当たりの工事費用もマンションの規模や工事内容によって変動しますが、費用負担の目安にするとよいでしょう。

1戸当たりの工事金額

3-1 戸あたり工事金額

出典:“令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査”. 国土交通省

3-2.大規模修繕工事費用の内訳

同じく国土交通省が実施した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、総工事費に対する割合は建築系工事、仮設工事の順に多くなっています。工事回数が多くなると、建築系工事や設備系工事の割合が高くなる点が特徴です。

マンション大規模修繕工事の回数別工事金額の割合

3-2 総工事費に対する工事内容の内訳

出典:“令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査”. 国土交通省

また建築系工事にかかった金額の内訳を見ると、外壁塗装や床防水の割合が高いことがわかります。

建築系工事の合計金額の内訳

3-2 総建築系工事費に対する各工事費の内訳

出典:“令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査”. 国土交通省

3-3.修繕積立金の目安

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場を除く)は以下の表のとおりです。

計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械式駐車場を除く)
地上階数/建築延床面積 月額の専有面積当たりの修繕積立金額
事例の3分の2が包含される幅 平均額
20階未満 5,000平米未満 235~430円/平米・月 335円/平米・月
5,000平米以上~ 1万平米未満 170~320円/平米・月 252円/平米・月
1万平米以上~ 2万平米未満 200~330円/平米・月 271円/平米・月
2万平米以上 190~325円/平米・月 255円/平米・月
20 階以上 240~410円/平米・月 338円/平米・月

参考:“マンションの修繕積立金に関するガイドライン”. 国土交通省. (参照2024-03–12)をもとに、HOME4Uが独自に作成

ただし上記表の修繕積立金はあくまでも目安であり、実際の工事費用は建物の形状や規模、立地、仕上げ材、設備の仕様、工事単価などによって変動します。「マンション管理費と修繕積立金の相場はいくら?値上がりする4つの理由」で解説しているように、計画期間途中で修繕積立金が値上がりする場合もあるでしょう。

大規模修繕に必要な工事費は、住宅金融支援機構の「マンションライフサイクルシミュレーション~長期修繕ナビ」やマンション管理センターの「長期修繕計画作成・修繕積立金算出サービス」で算出できます。

3-4.修繕積立金が不足した場合の対処法

大規模修繕は多額の資金を要するため、計画的に修繕費を積み立てる必要があります。しかし、予期せぬ工事の発生や工事費の高騰などにより、資金が足りなくなることもあるでしょう。

修繕積立金が不足している場合は、管理組合員からの一時金徴収や管理組合の借入、工事内容・毎月の積立額の見直しなどを行なって対応します。

なお、値上がりによって修繕積立金が払えなくなった場合には、管理会社や管理組合から督促や催告が来る可能性があります。

マンションに住んだら、修繕積立金の値上がりも視野に入れて資金を確保しておくことが大切です。修繕積立金の支払いが厳しい場合は、より負担の少ない物件への住み替えを検討してもよいでしょう。

4.マンション大規模修繕の手順

大規模修繕工事は、以下の手順で行ないます。

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  • 事前準備
  • パートナー選定・工事の発注方式の決定
  • 調査・診断・計画作成
  • 合意形成・施工会社決定
  • 工事着工
  • 工事完了

参考:“大規模修繕の手引き”. 住宅金融支援機構. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

ここでは、事前準備から工事完了まで各工程の内容をそれぞれ見ていきましょう。

4-1.事前準備

大規模修繕工事に関連する業務は多岐にわたり、数年単位の時間を要するものも少なくありません。こういった業務を管理組合が担当するのは難しいため、大規模修繕に関わる業務を専門的に行なう修繕委員会を立ち上げます。

4-1 修繕委員会

出典:“大規模修繕の手引き”. 住宅金融支援機構

4-2.パートナー選定・工事の発注方式の決定

大規模修繕工事には専門知識が必要となるため、信頼できるパートナーを選定し、工事の発注方式を決定します。

大規模修繕工事のパートナーになれる専門家としては、管理会社や設計事務所、施工会社、マンション管理士などが挙げられます。

工事の発注方式にはさまざまな種類がありますが、最も一般的なのは「責任施工方式」と「設計監理方式」です。

発注方式 概要
責任施工方式 施工会社や管理会社に調査診断・設計から施工、工事監理までを一括して依頼する方式。
契約が1社で済むため打ち合わせや事務手続きの負担は軽いものの、工事内容の透明性には欠ける可能性がある。
設計監理方式 「調査・設計・工事監理」などと「施工」を別々に発注する方式。
第三者のチェックにより工事内容や品質が担保される一方で、監理費用や建物診断費用などの諸費用が発生する。

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なお、国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、設計監理方式を採用するケースが大多数であることがわかります。

管理組合からの大規模修繕工事の発注方法

4-2 管理組合からの発注方法

出典:“令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査”. 国土交通省

4-3.調査・診断・計画作成

新築時から、設計や工事に関する資料や計算書などをまとめた竣工図書や工事の記録、建物の状況を確認し、専門家に調査・診断を依頼します。

その後、診断結果や必要な工事内容が組合員に周知され、診断結果をもとに工事の基本計画・資金計画が作成されます。また、修繕委員会や理事会で工事費と工事内容が適正かどうか審議されます。

4-4.合意形成・施工会社決定

基本計画と資金計画をもとに実施計画を作成し、理事会で内容を決定します。組合員の了承を得られたら、施工会社をリストアップして見積もりを依頼します。

施工会社の選定方法には、競争入札方式、見積合わせ方式、匿名随意契約方式などがあります。

なお、国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、発注先の選定方法として最も多く採用されているのは見積合わせ方式(条件提示型)です。

施工会社の選定方法

4-4 施工会社の選定方法

出典:“令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査”. 国土交通省

施工会社を選定したら、大規模修繕工事の内容などを総会で決議し、工事請負契約を結びます。また、組合員や居住者を対象に、工事内容や期間、注意事項を説明する説明会が開催されます。

4-5.工事着工

工事中は管理組合や工事監理者、施工会社などによる定例会議によって、工事工程や施工状況などが定期的にチェックされます。

工事が終了したら竣工検査を経て、竣工図書が発行されます。竣工検査で不具合箇所が見つかった場合には、施工会社による補修が行なわれます。

4-6.工事完了

工事完了後は、竣工図書を参考に長期修繕計画の見直しが行われます。また、工事の保証期間が切れる前に点検を行ない、不具合があれば適宜補修工事が実施されます。

5.マンション大規模修繕の注意点

注意点

大規模修繕工事にあたって、居住者は以下の3つの点に注意しましょう。

  • 住環境の変化によるストレスに注意する
  • 防犯対策を万全にする
  • 修繕積立金は値上げされる可能性もある

5-1.住環境の変化によるストレスに注意する

大規模修繕工事中は騒音や振動、においが発生したり、足場の設置でバルコニーの利用が制限されたりするなど、日常生活に不便が生じる可能性があります。

工事に伴う住環境の変化でストレスを溜め込まないようにするには、外出するなどこまめな気分転換を心がけるのがおすすめです。

5-2.防犯対策を万全にする

大規模修繕工事中は、マンションに組まれた足場からベランダへの侵入が容易になる恐れがあります。また、人の出入りが増えるため、不審者が侵入するといった事態にもなりかねません。

空き巣被害を防ぐため、防犯カメラやサーチライト設置のほか、作業員のユニフォーム着用などが徹底される場合もあります。住民としても、こまめな挨拶、声かけなどによって、犯罪者を遠ざける雰囲気づくりを行なうことが大切です。

5-3.修繕積立金は値上げされる可能性もある

マンションの大規模修繕工事を行なうための修繕積立金の徴収方式には、一定額を徴収していく「均等積立方式」と、段階的に増額していく「段階増額積立方式」があります。

マンションの築年数が古いほど、段階増額積立方式による修繕積立金の徴収額が増えるのが一般的です。また、均等積立方式の場合でも工事費用が値上がりしたり、予期せぬ工事が発生したりして、期間途中に修繕積立金が値上がりする場合があります。

修繕積立金の負担が重い場合には、現在の住居を売却して住み替えを検討するのも一案です。より早く、高く旧居を売却して、新居の購入資金を確保したいなら、複数の不動産会社に一括で査定を申し込める不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご利用ください。

まとめ

大規模修繕工事はマンションの住環境や機能、景観、資産価値を維持するために欠かせないものです。しかし、大規模修繕工事は多額の費用を要し、準備から工事完了までには長い時間がかかります。

マンションの修繕積立金を支払うのが厳しい場合は、より費用負担の少ないマンションや一戸建て住宅への住み替えがおすすめです。既存の住宅の売却には、ぜひNTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をご利用ください。

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また、「HOME4U」では、強固なセキュリティ対策により個人情報を保護するため、安心してご利用いただけます。査定は無料で、簡単な情報の入力のみで行なえるため、ぜひお気軽にご活用ください。