旗竿地が売れない5大理由とスムーズに売却するための対策

旗竿地 売れない

旗竿地とは、道路に面した路地が縦に長く、路地の奥の方に敷地があるタイプの特殊な形をした土地です。一般的な四角い形をした土地を「整形地」というのに対し、旗竿地などのように特殊な形をした土地を「不整形地」といい、売りにくいとされています。

売却予定の不動産が、旗竿地だった場合、売れにくいのは本当なのか、どうして売れにくいのか、などが気になりますね。そこで今回は、旗竿地がなかなか売れない理由として、次のようにまとめています。

  1. 旗竿地とは
  2. 旗竿地が売りにくい5大理由
  3. 売りにくい旗竿地をスムーズに売却するための対策
  4. 旗竿地の評価額がわかる3つの計算方法
  5. 旗竿地の売却で注意しておくべき4つのこと

最後までお読みになれば、ご所有の旗竿地がなぜ売れにくいのか、また、売却には何に気を付けるべきなのかがわかり、少しでも早く高く売却するための対策を打つことができます。

土地・不動産売却について基礎から詳しく知りたい方は『土地売却の流れを7ステップで解説』『不動産売却の入門書!売り方の基礎・全体像』もご覧ください。

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1.旗竿地とは

旗竿地(はたざおち)とは、道路に接している路地の部分が長く、路地の奥の方に、まとまった敷地があるタイプの土地です。上から見ると竿に旗をさしたように見えるため、旗竿地と呼ばれています。

旗竿地

建物は、旗の部分である広い土地に建てられ、竿の部分は道路面に出入りするための通路として使う、特殊な土地の構造です。

旗竿地のような地形は、もともとは広い土地であったものを、相続や土地開発によって分割した結果、発生します。

不動産会社は、広い土地を、宅地として売りやすい価格(大きさ)に切り分けて販売しようとしますが、単純に切り分けてしまうと、以下の図のように、道路に出られる通路がどこにもない土地が発生してしまうことがあります。

道路に面していない土地 竿部分を作って旗竿地になる

建築基準法には「土地に建物を建てる際には幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない」という接道義務がありますので、上記のように、2メートル以上の間口のある通路(竿の部分)を作って、道路面まで通れるようにしないとなりません。

その結果、旗竿地のような特殊な形の土地が生まれます。旗竿地は、土地の利用価値が高い、都市部によく見られます。道路面に対して適度な広さがあり四角くて使いやすい土地を「整形地」と呼ぶのに対し、旗竿地や三角形のような、いびつな形の土地を「不整形地」と呼びます。

不整形地ですので、土地としての評価は整形地よりも低くなります。そのため、ご所有の土地が旗竿地である場合は、評価額が低くなってしまうことがあります。

【参照:建築基準法第43条 接道義務

接道義務と道路付け~一戸建て・土地を売買するときの注意点~

2.旗竿地が売りにくい5大理由

旗竿地は、使いやすい整形地に比べると、売りにくいと言われます。しかし、すべての旗竿地が売りにくいわけではなく、以下の5つの理由のような、売りにくい理由がある旗竿地があります。当てはまる理由が多ければ多いほど売りにくくなります。

  • 理由1. 建物を建て替えられないことがある
  • 理由1. 建物を建て替えられないことがある
  • 理由3. 家までに私道がある
  • 理由4. 日当たりが悪い
  • 理由5. 銀行の担保評価が低い

理由1.建物を建て替えられないことがある

現行の法律では、旗竿地には接面道路に対して2メートル以上の間口が必要ですが、昔の法律で建てられた旗竿地の家は、間口が1.8メートルしかありません。現行の建築基準法改正前に旗竿地に建物を建てていた場合は、そのままでは再建築不可となり、家の建て替えができません。(リフォームやリノベーションは可)

そのため、購入希望者にとっては、土地を購入しても、そこに家を建てることができないことになります。そこで、土地を今の法律に適合させてから工事をすることになります。

しかし、現行の法律に適した間口を確保するためには、地形を変える・建物の規模を小さくして法律に適合させるなどの必要も出てくるため、今建っている建物と同じ大きさ・形のものは建てられなくなることがあります。(土地の形状によります)

将来、建て替えを希望している購入希望者にとっては、想定よりも家が狭くなる可能性がある上に、建築コストも高くなる可能性があるため、売りにくい土地になります。

理由2.壊すのにコストがかかる

竿部分の広さや長さにもよりますが、取り壊し作業に必要な重機や、廃材運び出しのためのトラック類が入れないほど路地が狭い旗竿地があります。

その場合、現場まで機材の一部をバラして運搬してから現場で組み立てをする、道路や近隣の駐車場に停めてから資材を人が運ぶなど、人力でしなければならない作業が増えますので、建て替え・リノベーションなどの建築コストが上がります。

特に、築年が古い建物の場合、現行の法律ではない1.8メートルの間口(またはそれ以下)で、敷地いっぱいに建物を建てている・増改築をしてしまっているケースがあり、粉塵・騒音・事故に関する配慮も、普通の工事よりも慎重に行う必要があり、こちらも解体費用がかさむことが予想されます。

理由3.家までに私道がある

旗竿地の間口と路地になる部分が、私道であるケースがあります。売却の前に、ご所有の旗竿地の路地が私道であるか、私道に対しての権利があるかを確認しておく必要があります。私道を使う方々に共有の権利がある場合には、売却の際にその権利もつけて売ります。

ご所有の旗竿地に私道の権利持ち分がなくても、建築確認には影響しませんので、売却も再建築もできます。しかし、相続などで受け継いだ旗竿地は、親世代の時には問題がなかったとしても、世代や所有者が変わると私道に関した対応も変わってくる可能性がありますので、購入希望者にとっては権利面での不安が残りますので、購入をためらう可能性が高くなります。

また、私道部分にある排水・水道管の配管工事をしたい、道路のコンクリートが劣化したから直したいなどの時にも、その都度、私道の持ち主全員の合意と許可が必要になります。このようなことから、旗竿地で私道があると、売りにくいと言えます。

【参照:法務省複数の者が所有する私道の工事において必要な所有者の同意に関する研究報告書

理由4.日当たりが悪い

旗竿地は広い土地を分割して作っていることが多いため、自分の家の周囲をグルっと、近隣の建物に囲まれていることがあり、日当たりや風通しがあまり良くないことがあります。

そのような住環境は、建て替えやリノベーションによって日当たりの確保はできます。例えば、吹き抜け・天窓・高窓・地窓などを多用することで、太陽光の良く入る、明るくて風通しの良い家にはできます。

しかし、その分、建築コストが高くなるため、購入希望者にとっては、もともと整形地で日当たりの良い場所を選ぶことの方が多いでしょう。

理由5.銀行の担保評価が低い

旗竿地は銀行の担保評価が低い傾向にあるため、購入希望者にとっては、自己資金を多めに用意していないと、購入自体ができない、または希望通りの家が建てられないことがあります。

担保評価が低くなる理由は、旗竿地は竿の部分が宅地として機能しませんので、整形地よりも割り引いた評価になるためです。

特に、古い建築基準法で建てられた間口1.8メートルの旗竿地の家は、築年が古いため、家屋が資産評価の対象になりませんので、土地の評価額のみが融資額の対象になります。

しかし、昔の建築基準の家は、建て替え時に現行のルールである間口2メートルに直さないと建築ができませんので、現在の旗竿地の土地の形が変わり、従前と同じ規模の建物が建てられなく可能性があります。金融機関では、これらの変化をリスクととらえ、はじめから担保評価を低く設定します。

住宅ローンを組む前提の購入希望者にとっては、担保評価の低い旗竿地を買うためには、自己資金を多く用意する必要があり、資金面の理由で、購入を見送るケースもあります。

不動産売却塾 コラム

“売りやすい旗竿地もある。”

旗竿地だからといって、すべてが売りにくいわけではなく、整形地と同じように、購入希望者の探している条件に合うかどうかで、売れやすさ・売れにくさが決まります。

例えば、旗竿地でも、現行の建築基準法をクリアしている間口2メートル以上があれば、車・重機なども自由に通れますので建て替えの時にも問題がありません。

また、建て替えではなく、リノベーションなどで古い家の雰囲気を大事にしたいと考える購入希望者にとっては、間口が古いルールのままでも全く問題がありません。

日当たりに関しては、家の向きや周辺の家の高さにもよりますので、旗竿地でも日当たりが良い土地もあり、旗竿地=日当たりが悪いというわけではありません。また、購入希望者によっては、収集している美術品や本が傷まない、あまり日当たりが強くない部屋がある家を求めていることもあります。

このように、旗竿地=売れない土地ということではなく、旗竿地の持つ条件が、購入希望者が探している不動産の条件にどの程度マッチするかで、売れやすさ・売りにくさが決まります。

土地が売れない6つの理由とは?確実に売るための対策も徹底解説!

ご所有の旗竿地を売却しようと決めたら、まずは、複数の不動産会社に、旗竿地がいくらで売れるものなのかを査定してもらいます。その際には、一つの会社ではなく、複数の会社に同時に査定申し込みすることをおすすめします。

一つの会社からのみ査定額を出してもらっても、それが妥当な金額なのかがわかりません。しかし、複数の会社に見てもらえば、旗竿地があるエリアの相場も理解でき、より適切な金額で売却することができます。

複数の不動産会社に査定申し込みをするときにはNTTデータグループが運営する「不動産売却 HOME4U」をご活用ください。所在地や広さなどを入力すると、売却予定の旗竿地があるエリアから、不動産売却の信頼と実績のある不動産会社の中から最大6社までご紹介します。

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3.売りにくい旗竿地をスムーズに売却するための5つの対策

本章では、売りにくいとされている旗竿地を、スムーズに売却するために、売却前に、売り主としてできる対策を5つにまとめました。

  1. 建て替えが難しい場合は、近隣の人に購入してもらう方法もある
  2. 道路が狭い場合は、セットバックの要不要を先に確認する
  3. 私道の問題は所有者に交渉をする
  4. 日当たりの悪さは建築プランで解消する
  5. 取り壊しはしないままで売る

3-1.建て替えが難しい場合は、近隣の人に購入してもらう方法もある

間口などの問題で、将来、旗竿地での建て替えが難しい場合は、隣接する土地の方に購入してもらうという解決策もあります。旗竿地は隣接する土地所有者にとっては、入手できればメリットの多い地形であることが多く、前向きに検討してくれることが多いでしょう。

例えば、以下の図のように、旗竿地の接道面にある土地の所有者は、隣接した旗竿地を買うことで、広くきれいな整形地を手に入れることができます。

旗竿地から整形地のイメージ

間口部分を自分の敷地にして無道路の土地ができても、隣地の方にはデメリットが起きません。隣地の方は、従前よりも広い接面道路が確保できます。また、隣地の方が土地を売却する際にも、道路に面した広い整形地であれば、以前お持ちであった土地の条件よりも、高値で売却することもできます。

また、隣地の方の中には、わずか数センチの敷地面積が足りないばかりに、希望通りの建て替えができずに、内心「お隣さん、売ってくれないかな」と思っていることもあります。このように、隣地の人にとっては、隣接する旗竿地が自分の土地のデメリットを解消してくれる条件を持っていると判断していることもあります。

近隣の方が旗竿地を欲しがっているかなどは、打診してみないとわかりませんが、昔から「隣の土地は借金してでも買え」と言いますので、隣地の土地の売買は、得られるメリットが大きいことが多いので、お声掛けをしてみる価値はあります。

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3-2.道路が狭い場合は、セットバックの要・不要を先に確認する

道路幅が狭い場合は、セットバックの必要性を先に確認してから、売却活動に入るようにします。

旗竿地の間口に面した公道を含む道路は、原則として幅4メートル以上が必要ですが、築年の古い旗竿地の場合、前面道路が4メートルに満たない、車がやっと通れるような道や、狭い路地のような道路幅に家が建っていることがあります。

このような旗竿地で建て替えをする際には、現行の法規に従って道路幅の修正などをする必要がありますが、狭い道路幅はすぐには変更できないため、敷地の一部を「セットバック」することにより建物を建てられるようになります。

セットバックとは道路後退のことで、道路幅が4メートル未満の場合には、道路の中心線から、敷地と道路の境界線を2メートルまで旗竿地側(敷地側)に後退させれば、残りの敷地に建物を建てられる、というルールです。セットバックには、道路と宅地の関係性によっていろいろな方法がありますが、例えば、以下のようにして、所有地の一部を道路として後退させます。

セットバック例)道路の反対側が宅地の場合:道路の中心線から2mずつ境界線をセットバックする

例えば、道路を挟んで向かい合っている土地が宅地の場合は、両側の土地それぞれが道路の中心線から水平線2メートルずつセットバックをします。

下図のように幅員3メートルの道路の場合は、両側の土地が、それぞれ道路の境界線線から50cmずつ境界線を下げることで道路幅を確保します。

セットバック

また、上記のケース以外では、片側が宅地ではなく川・崖・線路などで、セットバックすることができないような土地の場合には、旗竿地の入り口に接している道路から1メートル後退させることで、合計4メートル(元の道路幅1マメートル+セットバック1メートル)の道路幅となり、旗竿地で建築ができる様になります。

どのようなケースであっても、セットバックをすると土地の一部を後退させる必要があります。セットバックした部分は公道となりますので、例えば、駐車場や自転車置き場としても使うことができなくなります。

ただでさえ使える面積に制限のある旗竿地の土地を削ることになるため、購入者にとっては大きなデメリットとなり、買い手のつきにくい土地になってしまいます。

しかし、中には、このようなセットバックをしなくてもよい土地もあります。もともと、この道路幅の問題は、消防車や救急車といった緊急車両が無理なく入れ、消火活動や救助活動がスムーズに出来るようにするのが目的です。

そのため、道路幅が狭いエリアでも、一定基準を満たし、安全が確保できていれば、再建築できるという特例を適用できる土地もあります。以下の条件を満たす必要があります。

  • 近隣に公園や広場などの大きな土地があること
    • 火災などが起きた場合でも車両が通れ、速やかに消火活動ができるような場所が周囲にあること
  • 特定行政庁(自治体)が交通面・安全面・防火上・衛生上に支障がないと認めた場合
    • 建物の敷地が空地などと2メートル以上接していること
    • 地域の消防署長より消火活動に障害はないとの意見が得られていること
    • 雨水や排水を処理できる側溝などのインフラが備わっていること
  • 建築審査会にて審査を受け、許可を得ていること

この特例を使う場合、自治体や土地の形状によって若干条件が異なることがあるのでご注意が必要です。

売却予定地の前の道路が狭く、セットバックの必要があるのか迷ったら、自己判断をせず、売却を担当してくれる不動産会社の担当者に相談・確認をしておきましょう。条件が合えば建築審査会に申請をし、許可が下りれば、セットバックなしで建て替えができる条件を明記して売却できます。

【参照:43条 但し書き許可の特例

【参照:国土交通省 建築基準法制度概要集

3-3.私道の問題は所有者に交渉をする

私道の使用方法は、その所有の仕方によって違いがあります。多くのケースでは、地主などが個人所有しているか、その私道を使う人たちでそれぞれ持ち分を購入して、全員で均等に使える様にしています。

購入希望者が気にするのは、私道を一人が所有しているケースです。例えば、私道所有者との関係性が悪くなることにより、将来、往来に必要な私道の利用ができなくなるなどの、トラブルに発展する可能性です。

このような理由で売りにくくなる場合は、売り出し前に、私道所有者に私道の負担分を購入させてもらえないか、または、通行使役権の発行ができないかを交渉してみましょう。

自分たちが使う部分の私道も旗竿地と一緒に購入できれば、私道を買った人は全員、私道を自由に使えるようになります。私道の所有者が売却を拒否した場合は、私道を使う・通るなどの権利を法的に証明してもらう「通行地役権」を発行してもらえるようにお願いしてみます。

通行地役権は、私道所有者と私道を使う人との合意契約ですので、双方の合意があった内容のみ、登記をして法的に権利を守ってもらえます。地役権には時効があり約20年で消滅します。

【参照:民法第280条 地役権

3-4.日当たりの悪さは建築プランで解消する

日当たりの悪い旗竿地は、不動産会社から建築プラン付きの売却を提案してもらうことで、購入希望者の心理的なハードルを下げることができます。

例えば、天窓・高窓・地窓を多用して、四方八方から太陽光が入ってくる、明るい家を建てることもできます。また、広めのベランダやウッドデッキ、屋上デッキなど、周辺を家に取り囲まれていても、明るくて解放感を感じられる家を建てることは可能です。

「建築プラン付き」と題して売却活動をしてもらえば、興味を持つ購入希望者も増え、売りにくさを軽減することができます。建築プランは、可能な限り、具体的な図面と画像イラストなどを使ってもらい、購入希望者にとってわかりやすいものにしてもらいましょう。ほとんどのハウスメーカーや不動産会社では、このような作業は無料でしてもらえます。

このように、建築プラン付きで売却すれば、購入希望者は、自分が気になっていることを解消してくれる方法も具体的にイメージできますので、旗竿地の日当たりの悪さという条件をカバーできます。

3-5.取り壊しはしないままで売る

基本的に、旗竿地は家の取り壊しをしないで売却します。古くても住居があれば、固定資産税の住宅用地の特例が適用されますが、家を取り壊してしまうと特例の適用ができなくなるため、固定資産税が約6倍近くはね上がります。旗竿地は売れるまでに時間がかかる可能性がありますので、売却中も、この制度が適用されるように、家は残したままにします。

また、購入希望者が、今ある家のレトロな雰囲気を残したままで、リノベーションすることを前提に探していることがあります。リノベーションのような修繕であれば、セットバックなどの現行の法規に合わせなくても、現状の家の大きさや広さのままで住むことができます。

しかし、一旦、家を取り壊してしまうと、現行の建築基準に沿ったもので建てることになるため、多くの場合、従前の家よりも小さい家になってしまいます。そのため、購入希望者に選択肢をより多く残すという点においても、取り壊しはしない状態で売りましょう。

4.旗竿地の評価額がわかる3つの計算方法

本章では、旗竿地の評価額についてまとめています。旗竿地は、竿の部分は実質的には利用できないので、その分、割り引いて評価されます。

旗竿地を評価する方法はいくつかあり、どのような方法をとるかは、旗竿地を評価する理由(贈与・相続など)、または売却をお願いした不動産会社によります。どの計算方法であっても、整形地での評価額から、デメリットになる部分を割り引いて計算します。

今回は、最も一般的な、路線価を使った3つの方法を解説します。路線価とは、国税庁が毎年発表する、1平米あたりの土地価格のことです。※路線価は市場にある価格の8割くらいといわれていますので、路線価で出した評価額に20%増しをすれば、実売価格と近くなります。

整形地の場合の評価額の計算方法は、以下の式になります。

評価額 = 路線価 × 面積

上記の整形地であった場合の計算から、旗竿地の持つ条件を割り引いていきます。

旗竿地にもさまざまな形状がありますので、複数の計算方法で試算をし、売り主にとって最もメリットが大きくなる評価方法から選択するようにします。

実際の計算は、敷地や前面道路などの正確な数値と、計算時の市場価格などが必要となるため、不動産会社の担当者に計算をしてもらうようにします。

  1. 道路からの奥行分を割り引く方法
  2. 狭い間口と長い奥行分を割り引く方法
  3. 不整形地として割り引く方法

4-1.道路からの奥行分を割り引く方法

一般的な旗竿地は、道路からの奥行きがある土地のことです。奥行が極端に短いまたは長い場合は、土地の利用がしにくく、用途も限られてくるため「奥行価格補正率」が大きくなります。

計算式は以下の通りです。

評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 面積

【参照:奥行価格補正率表 国税庁

4-2.狭い間口と長い奥行分を割り引く方法

同じ旗竿の形をしている土地でも、道路に対して間口がとても狭い土地、または奥行がとても長い土地など、旗竿地にもいろいろな形状があります。主に、住宅が密集した下町エリアに多い傾向があります。

Aウナギの寝床タイプ 道路に面した間口と奥行の比率がアンバランスな形をした土地
B袋地タイプ 家の周囲を他の土地に囲まれており、狭い接道路地のみで公道とつながる土地
Cその他 道路のカーブ部分や行き止まりに土地があり、道路と土地の接面が狭い土地

旗竿地いろいろな形状

このような土地には、以下の計算式を使い、間口と奥行の両方を割り引いてもらいます。

評価額 = 路線価 ×間口狭小補正率 × 奥行長大補正率 × 面積

【参照:奥行価格補正率表 国税庁

4-3.不整形地として割り引く方法

旗竿地を、一般的な不整形地(三角地・いびつな形・段差のある土地など)として割り引く方法です。不整形地補正率表というものを使い、補正率を出してから、計算します。

評価額 = 路線価 × 不整形地補正率 ×面積

【参照:奥行価格補正率表 国税庁

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5.旗竿地の売却で注意しておくべき4つのこと

本章では、旗竿地の売却で注意しておくべきことを、以下の4つにまとめています。

  1. 中古一戸建てとして売りだす
  2. 買取も検討しておく
  3. 売る前に、賃貸の可能性も考えてみる
  4. 不動産会社選びを慎重にする

5-1.中古一戸建てとして売りだす

旗竿地は、中古の一戸建てとして売り出し、解体などは買い主の意向に合わせて対応するようにします。前述しましたが、更地にしてしまうと、固定資産税の住宅用地の特例が受けられなくなり、住宅用地の約6倍近い金額が固定資産税で課税されることになります。

旗竿地は売りにくい土地であるため、売却期間が長引く可能性があります。もし、解体して更地にしてから売却活動を始めた場合、家が売れても売れなくても、1年間の固定資産税として高額の税金が課されることになってしまいます。住宅があるままであれば、今まで通りの金額で良いため、家は残したままで売却をします。

また、旗竿地に家が建っていることで、購入希望者はリノベーションにするか、建て替えるかなど、資金計画を含めた選択肢が増えることになり、購入希望者の分母を広くすることができます。

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【参照:東京都主税局 住宅用地の特例

5-2.買取も検討しておく

旗竿地の売却には、買取も検討に入れておくことをおすすめします。特に、まとまった資金調達が必要なケースや、期日のある支払いに旗竿地の売却額を充当する予定の場合には、買取は積極的に検討しておきます。

「買取」とは、不動産会社に直接、不動産を買い取ってもらう方法です。買取には、即時買取と買取保証という二つの方法があり、売り主の自由に選択できます。

即時買取は、不動産会社に直接買取を申し込み、不動産会社が買い取りを決めれば、その場で売却が成立します。買取保証は、一定期間の媒介契約による売却活動をしたうえで、買い手が見つからなかった場合には、あらかじめ決めておいた金額で不動産会社が買取ります、という保証を付けてくれるものです。

どちらも売り先は不動産会社ですので、必ず買い取ってもらえます。また、仲介をしていませんので、仲介手数料が発生しません。ただし、不動産会社は、買い取った不動産に手を入れてから再販することを前提にしますので、コストやリスクなどを鑑みて、一般流通金額の8割くらいの値段になってしまうというデメリットがあります。

しかし、売りにくい旗竿地という不動産を、必ず売却できるという点では、計画の中に組み込んでおいても良い方法と言えます。

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5-3.賃貸の可能性も考えてみる

売却前に、旗竿地の不動産に、賃貸としての需要がないかも検討しておきます。特に、旗竿地のある場所が人気エリアや、駅や商店街に近い立地条件の良い場所である場合は、賃貸需要も期待できます。

賃貸物件として住む場合、旗竿地の持つさまざまなデメリットは、入居者にとって、不動産購入のときほどは気にならなくなります。それよりも、人気のあるスポットに違いことや、駅や便利な商店街に違いなどのメリットの部分に対して魅力を感じて、入居申し込みをします。

仮に、立地条件などが揃っていなくても、子供部屋を複数確保できる、ペットが複数頭飼える、駐車場の心配をしなくてもよいなど、戸建て賃貸だからこそのメリットを活かせば、借り手がつく可能性が高いでしょう。

売却をして得られる金額と、賃貸で長期間借り手がついたときの収益を試算し、よりメリットのある方を選ぶこともできます。また、賃貸需要があることがわかったうえで売却に踏み切れば、万が一、買い手がつかない期間が長引いた場合にも、賃貸に切り替えるという選択肢が残っていますので、大きく値下げをする必要もありません。

売却予定の旗竿地があるエリアで、戸建て賃貸の需要がどのくらいあるかは、売買を担当してもらっている不動産会社、または地元の賃貸に強い不動産会社に相談をしてみることをおすすめします。

5-4.不動産会社選びを慎重にする

旗竿地を売却する場合に、最も気を付けるべきは、旗竿地のような不整形地の売却に実績がある不動産会社に売却活動をお願いすることです。整形地と違い、旗竿地は売却に工夫が必要なタイプの不動産です。

そのため、不動産会社にも、担当者にもある程度の経験と実績があるほうが、売却活動のパートナーとしては頼りになります。

不動産会社には、会社ごとに個性や得意分野があります。マンション売買が得意な会社、戸建ての新築が得意な会社、分譲宅地が得意な会社など、さまざまです。今回の場合は、中古一戸建てに強く、さらに不整形地の経験がある不動産会社が最適と言えます。

あなたの土地いくらで売れる?

しかし、そのような会社を一つひとつ探していくのでは時間がかかりますので、旗竿地の売却が決まったら、NTTデータグループが運営する不動産情報サイト「不動産売却 HOME4U」をご活用ください。

売却予定の旗竿地があるエリアと広さなどのカンタンな質問に答えていくだけで、およそ1分で、全国の大企業から地元の精鋭企業の中から、最大6社まで、相性の良い不動産会社をご紹介します。

ご自身がチェックを入れた会社からのみ連絡が来ますので、査定額や担当者の対応をじっくりと比較できます。納得のいく査定額があれば、現地に訪問査定に来てもらい、より精密な査定額を出してもらいます。この時に、賃貸需要なども合わせてきくことができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。旗竿地の売却に関してまとめました。旗竿地の持つ土地条件を理解したことで、どうして売れにくいと言われているかがお分かりいただけたと思います。しかし、実は、旗竿地にも、いろいろな種類があり、旗竿地だからといって売れにくいというわけではありませんでした。

家の向き・周辺の建物状況によってはスムーズに売却することもできますし、それ以外にも、はじめから日当たりや見晴らしの良い建築プランをつけて売るなどで、売りにくいと言われる旗竿地を上手に売り出す方法は数多くありましたね。

また、家は建てたままで売り、所有者に固定資産税負担が大きくかからないようにする、隣地の方に打診をしてみるなど、売る前に気を付けておくこともご理解いただけたと思います。

そして、中古一戸建てに強い、不整形地の販売経験のある不動産会社との出会いが、旗竿地を出来る限り早く高く売却できる重要なポイントです。不動産会社探しには、「不動産売却 HOME4U」をお役立てください。

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