亡くなった親の家を売るには?高く売る手順・節税方法を徹底解説

亡くなった親の家を売る

亡くなった親の家を売る際は、遺産分割を行うなど、事前の準備が必要です。

この記事の1章では、相続から売却までの流れを大まかに紹介しています。
2章以降では、相続不動産の売却に関係するより詳しい情報を解説していますので、ご自身の悩みに応じてご覧ください。

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1.亡くなった親の家を売る流れ

亡くなった親の家を売却する場合、一般的なマイホーム売却と違って、遺産分割や名義変更などの手続きを済ます必要があります。
以下では、売却完了までの流れを8ステップに分けて簡単に紹介します。

亡くなった親の家を売る流れ

1-1.遺産の分割方法を決める

相続が始まったら、まず遺言書を探しましょう。
遺言書に遺産分割の方法が書かれていた場合、原則、その通りに分割するためです。

遺言書による分割方法の指定が無い場合が、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」を決定します。
以下4通りの分割方法で考えるのが一般的です。

分割方法 概要 特徴
現物分割 不動産や預貯金をそのまま取得する 手続きがシンプルで速いが、価値の偏りが出やすい。
代償分割 一人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う 欲しい人が実家を残しやすいが、現金の準備が必要。
換価分割 不動産を売却して現金を分配する 公平に分けやすいが、売却に時間と手間がかかる。
共有分割 不動産を共有名義として共同所有する 手続き開始が容易だが、売却には全員の同意が必要。

相続を機に売却を考える場合は、換価分割がおすすめです。
現金化して公平に遺産分割ができますし、売却にかかる手間や諸費用の負担についても遺産分割協議で決めておけるので、トラブルも少ないでしょう。

換価分割にしない場合は、他の分割方法で不動産を取得しておく必要がありますが、共有分割にはご注意ください。
共有不動産を売却するには、共有者全員の合意が必要になるため、いざ売却しようと考えた時に意見の不一致でトラブルに発展するケースもあります。

1-2.売却前の準備を行う

売却活動に入る前に、以下の準備を行いましょう。それぞれの準備は円滑な手続きと高値売却のために重要です。

準備内容 目的
遺品整理・清掃 綺麗にしておくことで査定精度が上がり、また内覧への備えにもなります。
使わない家財は早めに処分しておきましょう。
書類整理 手続をスムーズにする目的の他、権利関係でのトラブルを回避するためにも必要です。
登記簿謄本、評価証明書、固定資産税納税通知書などを確認し、まとめておきましょう。
相続登記 不動産を売却するには、事前に相続登記と呼ばれる名義変更手続きが必要です。
2024年4月より相続登記が義務化されており、期限内の申請を怠ると10万円以下の過料が課せられる場合があります。
境界確認 境界線が未確定な不動産を売却するのは困難です。
隣地との境界線が確定しているかを登記事項証明書や登記簿謄本などで調べましょう。
場合によっては、土地家屋調査士に依頼して境界確定のため測量を行います。

1-3.不動産会社に査定を依頼する

不動産会社に査定を依頼して、家の価値を知るとともに、売却を依頼する不動産会社を決めます。
査定額は各社異なるため、複数の不動産会社を比較して選ぶと安心です。

どんな不動産会社に査定を依頼したらいいか分からない方は、NTTデータグループ会社が運営する不動産売却 HOME4U(ホームフォーユー)をご活用ください。
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1-4.不動産会社と媒介契約を結ぶ

不動産会社が売却を仲介するためには、媒介契約を結ぶ必要があります。
媒介契約には3つの種類がありますが、基本的な契約期間や、不動産会社への報酬額の決め方は同じです。

  • 専属専任媒介契約:1社だけに依頼。販売活動の進捗報告が早いが自由度は低い
  • 専任媒介契約:1社だけに依頼。レインズ登録義務あり
  • 一般媒介契約:複数社に依頼可。不動産会社の進捗報告やレインズ登録義務は無し

古い家であるほど売却しにくいことが考えられるので、より積極的な売却活動が期待できる「専任」の契約がおすすめです。
ただし、より不動産会社選びが重要になります。

1-5.売却活動を始める

査定価格や相場価格を参考に売り出し価格を決定したら、売却活動を始めます。
一戸建ての売却では、買主が見つかるまでの期間が目安で3~6カ月と言われますが、相続した古い家などでは売り方によって1年以上かかるケースもあります。

購入希望者の募集は不動産会社が行います。
また、内覧の対応も不動産会社に任せることができるため、遠方にお住まいでも売却を進められます。

1-6.売買契約を結ぶ

買主が決まったら、売買契約を締結します。

紙面での売買契約書作成には印紙税がかかるため、収入印紙の貼付が必要になります。
ただし、売主と買主が合意していれば電子契約が可能で、この場合は印紙税がかかりません。

売買契約時には、買主から、売却代金の5~10%の額の手付金を受領することが一般的です。

また、無事に売買契約が成立した場合は、不動産会社に仲介手数料を支払います。
仲介手数料は、売買契約締結後と、引き渡し後の2回に分けて支払う場合がほとんどです。

1-7.決済と引き渡しを行う

売買契約時に決めた日程通りに決済と引き渡しを行います。
多くの場合で、決済と引き渡しは同日中に行われます。

買主が住宅ローンを利用する場合は、融資をする金融機関に集まって手続きするのが一般的です。
まずは、買主から残代金を受領し、司法書士が所有権移転登記を行います。
その後、鍵や書類を引き渡して完了です。

仲介手数料を2回にわけて支払う場合、引き渡し後に不動産会社へ仲介手数料を支払います。

1-8.確定申告を行う

売却益(譲渡所得)が生じた場合は、譲渡所得に対して住民税と所得税がかかるため、確定申告が必要です。

確定申告は、売却した翌年の2月16日~3月15日(土日祝日の関係で前後する)に行います。
e-Taxでの電子申告の場合は、上述の申告期間より前に手続きすることも可能です。

売却時の税金や特例については5章6章をご覧ください。

2.兄弟の分け方はどうなる?法定相続人と法定相続分

相続には、法定相続人法定相続分というものがあります。
法定相続人とは、法律で定められた相続人のことです。
法定相続分とは、法律で定められた原則的な遺産の分割割合になります。

法定相続人には順位があります。
配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人です。
配偶者以外の相続人の順位は下表のように定められています。

順位 親族
第1順位 子またはその代襲相続人(孫)
第2順位 直系尊属(父母)
第3順位 兄弟姉妹又はその代襲相続人(甥・姪)

また、法定相続人と法定相続分の関係は下表のようになります。

法定相続人 法定相続分
配偶者と子供の場合 配偶者1/2、子供1/2
配偶者と直系尊属 配偶者2/3、直系尊属1/3
配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

兄弟が2人の場合、法定相続分には2つのケースがあります。
配偶者が健在の場合には、子2人の法定相続分は25%ずつです。
一方で、配偶者が既に他界している場合には、子2人の法定相続分は50%ずつとなります。

3.売却までに必要な名義変更

本章では、売却までに必要な名義変更について以下の2点を解説します。

  1. 名義変更の種類
  2. 名義変更に必要な書類

それではひとつずつ見ていきましょう。

3-1.名義変更の種類

名義変更の種類には、主に「法定相続」と「遺言による分割」、「遺産分割協議による分割」の3つがあります。

法定相続とは、法定相続割合で共有のまま名義変更することです。
相続した親の家を売却して、相続人で現金を公平に分けたい場合には法定相続が適しています。
相続人の共有名義となるため、売却には共有者全員の同意が必要です。

遺言による分割とは、遺言書がある場合の名義変更のことです。
遺言書がある場合は、原則として遺言に従って名義変更を行うことから、相続が発生したらまずは遺言書があるかどうかを確認する必要があります。

遺産分割協議とは、相続後に相続人間で遺産の分割方法を決める話し合いのことです。
遺産分割協議は、「遺言書がなく法定相続以外の方法で分割したいとき」や「遺言書があっても遺言書とは異なる方法で分割したいとき」に行います。
遺産分割協議を成立させるには相続人全員の同意が必要です。

3-2.名義変更に必要な書類

名義変更に必要な書類は名義変更の方法によって若干異なります。
それぞれの名義変更方法における必要書類は以下の通りです。

名義変更方法 必要書類
法定相続
  • 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票または戸籍の附票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続関係説明図(任意)
遺言による分割
  • 遺言書
  • 遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
  • 相続人または受遺者の現在の戸籍謄本
  • 遺言により相続または受贈する相続人・受贈者の現在の住民票または戸籍の附票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続関係説明図(任意)
遺産分割協議による分割
  • 遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
  • 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
  • 被相続人の除住民票または戸籍の附票
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 遺産分割により相続する相続人の現在の住民票または戸籍の附票
  • 固定資産税評価証明書
  • 相続関係説明図(任意)

4.少しでも家を高く売る3つのコツ

家はせっかく親が残してくれた財産ですから、誰でも「少しでも高く売りたい」と思います。
本章では、高く売るための3つコツを解説していきます。

  1. スケジュールに余裕を持つ
  2. 複数の不動産会社に査定を依頼する
  3. 場合によっては取り壊しも検討する

それではひとつずつ見ていきましょう。

4-1.スケジュールに余裕を持つ

不動産を高く売るにはスケジュールに余裕を持つことが必要です。
相続税の納税のために売るのでない限り、焦って売る必要はありません。
焦って売ると、安く売ってしまう「売り急ぎ」と呼ばれる現象に繋がります。

全体の売却スケジュールとしては、査定依頼から引渡まで6ヶ月程度を見込んでおくと安全です。

尚、相続物件で節税特例を使うには、売却の期限が設けられています。
節税特例が利用できる期限については、「第6章 親の家の売却で節税する方法」にて紹介します。

4-2.複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産を高く売るには複数の不動産会社に査定を依頼することが不可欠です。

なぜかというと、査定額というものは不動産会社によって異なるのが一般的で、複数の不動産会社を比べないと、どの会社が高く売ってくれそうなのかがわからないからです。

ただ、そうはいっても相続等で様々な手続きに追われる中、さらなる手間はかけたくないですよね?
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あとになって「もっと高く売れたかも…」と後悔しなくて済むように、最初の時点でしっかりと査定額の違いを比べるようにしてください。

4-3.場合によっては取り壊しも検討する

親の家が古い戸建ての場合、場合によっては取り壊しを検討することも高く売る方法の一つです。

利用価値のない戸建ては売却の障害となってしまうため、古い家が残っていることが原因で売れなくなることもあります。
解体費用の相場は以下の通りです。

構造 坪単価 総額※
木造 坪4~5万円 140万円~175万円
鉄骨造 坪6~7万円 210万円~245万円
鉄筋コンクリート造 坪7~8万円 245万円~280万円

※総額は建物を35坪とした場合で計算

一般的な木造戸建て住宅であれば、解体費用は150万円前後が目安です。

昨今は市区町村が解体の補助金を設けているケースもあります。
補助金の要件は自治体によって異なりますが、要件に合致すれば解体費用の負担を和らげることができます。

また、解体すべきかどうかは不動産会社の意見を聞いてから判断することが適切です。
まずは解体前の状態で一度複数の不動産会社に査定を依頼し、各社の意見を聞いてみる方法がおすすめとなります。

解体しないままでも売れる可能性はありますので、無駄な解体費用を使わないためにも、不動産会社の意見を聞いてから解体の判断をするようにしましょう。

5.親の家を売るときに生じる税金

本章では「亡くなった親の家を売るときに生じる税金」について、以下の4点を解説します。

  1. 相続時に発生する税金
  2. 名義変更に必要な税金
  3. 売却時に発生する税金
  4. 売却後に発生する税金

それではひとつずつ見ていきましょう。

5-1.相続時に発生する税金

相続時は相続税が発生する可能性があります。
可能性があると表現しているのは、相続税はほとんどの人には発生しない税金だからです。

国税庁によると、2019年度分における相続税の課税対象者の割合は以下のようになっています。

地域 全国 東京都
相続税の課税対象者の割合 8.3% 13.1%

出典:国税庁「令和元年分相続税の申告事績の概要

全国では約8%の人しか発生しておらず、地価の高い東京でも約13%の人しか生じていない税金です。

相続税は被相続人(他界した人)の全ての資産が課税対象となり、「亡くなった親の家」だけで相続税が決まるものではありません。

相続税の課税対象は、実家だけでなく、現金や貴金属、有価証券、その他の不動産、負債(借金)も含めた全ての金銭的の価値のあるものが対象です。

負債(借金)が残っている場合は、マイナスの財産として被相続人の財産から減額されます。
また、葬儀費用はマイナスされ、過去3年以内に贈与したものはプラスされる等の細かいルールもあります。

実際の課税対象の遺産総額は、被相続人の資産から基礎控除額を控除したものが対象です。

課税対象の遺産総額 = 課税価格 - 基礎控除額

基礎控除額の求め方は以下の計算式を用います。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

相続税の計算方法は難しいため、相続税額早見表を使って概算額を把握するのが一般的です。
課税価格に対する相続額は下表のようになります。

単位(万円)
課税価格※ 配偶者と子供1人 配偶者と子供2人
相続税額 1人あたり納税額 相続税額 1人あたり納税額
6000万円 180 90 120 30
7000万円 320 160 225 56
8000万円 470 235 350 88
9000万円 620 310 480 120
1億円 770 385 630 158
1億5000万円 1840 920 1495 374
2億円 3340 1670 2700 675
2億5000万円 4920 2460 3970 993
3億円 6920 3460 5720 1430
3億5000万円 8920 4460 7470 1866
4億円 1億920 5460 9220 2305
4億5000万円 1億2920 6480 1億985 2746
5億円 1億5210 7605 1億3110 3278
5億5000万円 1億7460 8730 1億5235 3809
6億円 1億9710 9855 1億7360 4340
6億5000万円 2億2000 1億1000 1億9490 4873
7億円 2億4500 1億2250 2億1740 5435

※課税価格は基礎控除額控除前の遺産の総額を表す

5-2.名義変更に必要な税金

相続した物件を売るには名義変更(相続登記ともいう)が必要となり、名義変更には登録免許税が発生します。
相続を原因とする名義変更の登録免許税の計算式は以下の通りです。

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%

尚、司法書士に相続登記を依頼する場合、6~7万円程度の司法書士手数料がかかります。

5-3.売却時に発生する税金

売却時は売買契約書に貼り付ける印紙税が生じます。
印紙税は、売買契約書に記載する金額に応じて税額が決まっており、下表の通りです。

契約書に記載する売買金額 本則 軽減税率※
1万円未満 200円 非課税
1万円以上10万円以下 200円 200円
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円
金額の記載のないもの 200円 200円

※軽減税率は2022年3月31日までの売買契約書で適用

尚、売却する不動産に抵当権が設定されている場合、売却時に抵当権を抹消する登録免許税も生じます。

抵当権抹消に必要な登録免許税は不動産1個あたり1,000円で、司法書士手数料は1.5万円程度です。

5-4.売却後に発生する税金

売却によって譲渡所得が発生する場合には、所得税および住民税、復興特別所得税が生じます。
譲渡所得とは、以下の計算式で求められる売却益のことです。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1譲渡価額とは売却価額です。
※2取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。
※3譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費、取り壊し費用など、売却に要した費用のことです。

譲渡所得がプラスだと税金が発生し、譲渡所得がマイナスだと税金は発生しないことになります。

取得費は、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除したものであることから、以下のような式で求めます。

取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)

ここで、居住用財産と呼ばれるマイホームを売る場合、減価償却費の計算式は以下の通りです。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

経過年数とは購入の引渡から売却の引渡までの「所有期間」のことです。
償却率は建物の構造によって以下のように数値を採用します。

構造 非事業用の償却率
木造 0.031
木造モルタル 0.034
鉄骨造(3mm以下) 0.036
鉄骨造(3mm超4mm以下) 0.025
鉄骨造(4mm超) 0.020
鉄筋コンクリート造 0.015
鉄骨鉄筋コンクリート造 0.015

譲渡益が発生した場合は、譲渡所得に税率を乗じて税金を求めます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は、所有期間によって異なる値を用います。
売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」です。

税率は、所有期間によって異なる値を用います

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

尚、所有期間は親の所有期間を引き継ぎますので、例えば親が既に5年超の所有期間を有していれば、相続後、すぐに売却しても長期譲渡所得の税率が適用されることになります。

6.親の家の売却で節税する方法

売却によって税金が生じた場合でも、節税できる可能性はあります。
本章では、親の家の売却で所得税や住民税を節税する方法について、以下の5点を解説します。

  1. 取得費の分かる資料を探す
  2. 譲渡費用を漏れなく計上する
  3. 取得費加算の特例
  4. 相続空き家の3,000万円特別控除
  5. 低未利用土地等を売却したときの100万円特別控除

それではひとつずつ見ていきましょう。

6-1.取得費の分かる資料を探す

所得税や住民税を節税するには、取得費の分かる資料を探すことが最大のポイントです。
取得費の分かる主な資料には以下のものがあります。

【取得費の分かる資料】

  • 売買契約書
  • 建物の請負契約書

取得費がわからない場合、譲渡所得は概算取得費を用いて計算します。
概算取得費とは、譲渡価額の5%です。

概算取得費 = 譲渡価額 × 5%

概算取得費を用いてしまうと譲渡所得が大きくなってしまうため、税金も多く生じます。

また、土地の取得費がわからなくても、「建物の請負契約書」が分かっていれば建物取得費だけでも計算できるため、概算取得費を用いるよりも節税効果があります。

土地の取得費がわからない場合の取得費の計算方法は以下の通りです。

【土地だけ取得費がわからないときの取得費】

土地の取得費 = (譲渡価額 - 建物取得費) × 5%
取得費 = 土地の取得費 + 建物取得費

尚、古い建物の取得費求める場合、減価償却費の限度額は建物購入額の95%までである点がポイントです。

建物の取得費は、減価償却計算によってゼロ円になってしまうのではなく、建物購入額の5%まで下がった時点で打ち止めとなり、どんなに古くても5%の残価が残ります。
よって、古い建物であっても「建物の請負契約書」があると若干節税できます。

6-2.譲渡費用を漏れなく計上する

節税をするには、譲渡費用を漏れなく計上することがポイントです。
譲渡費用に計上できるものは以下のような一定の項目に限られます。

  • 売却時の仲介手数料
  • 売買契約書の印紙代
  • 売却のために広告した場合の広告料
  • 売却のために測量した測量費
  • 売却のために鑑定をした場合の鑑定料
  • 売却のために借家人を立退かせるために支払った立ち退き料
  • 買主の登記費用を負担した場合はその負担額
  • 土地を売るために、その土地の上の建物を取り壊した場合、建物の取得費と取り壊し費用
  • すでに売買契約を締結していたが、さらに有利な条件で他に売却するため、その契約を解除した場合の違約金
  • 売却のために行った建物の補修費
  • 買主との交渉のために要した交通費、通信費等

ただし、譲渡費用は何でも計上できるわけではなく、例えば以下の費用は譲渡費用として計上することができません。

【譲渡費用として認められない支出】

  • 抵当権抹消費用
  • 遺産分割のために要した支出
  • 移転先家屋の購入費、修繕費、移転費用等
  • 譲渡資産の維持管理費等
  • 引越代

尚、相続の名義変更に要した登録免許税は、譲渡費用ではなく取得費に算入できます。

6-3.取得費加算の特例

相続税を納税した人は、取得費加算の特例を利用できます。
取得費加算の特例を利用した場合の譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 取得費に加算する相続税額 - 譲渡費用

取得費に加算する相続税額は以下の計算式で求めます。

その者の相続税額×その者の相続税の課税価格の計算の基礎とされたその譲渡した財産の価額÷その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額

取得費加算の特例を利用するには、以下の要件を満たすことが必要です。

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
  2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。

取得費加算の特例は、売却に期限がある点がポイントとなります。

【国税庁HP】

6-4.相続空き家の3,000万円特別控除

一定の要件を満たす親の家は相続空き家の3,000万円特別控除を利用できます。
相続空き家の3,000万円特別控除を利用したときの譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

相続空き家の3,000万円特別控除の主な要件は以下の通りです。

  1. 相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋であること
  2. 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  3. 区分所有建築物(マンション等)以外の家屋であること
  4. 相続の開始直前においてその被相続人以外に居住していた者がいなかったこと
  5. 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと
  6. 家屋を取り壊さずに売る場合、売却時において、その家屋が現行の耐震基準を満たしていること
  7. 相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること

相続空き家の3,000万円特別控除は要件が厳しく、使いにくい特例といえます。
適用可能性がある場合には、他の要件もしっかりと確認したうえで、利用することがポイントです。

【国税庁HP】

6-5.低未利用土地等を売却したときの100万円特別控除

一定の要件を満たす不動産の売却価格が500万円以下であれば、低未利用土地等の100万円特別控除が利用できます。

金額が500万円以下という縛りがありますが、その他の要件は緩いため、相続空き家の3,000万円特別控除よりは使いやすい特例です。

低未利用土地等の100万円特別控除を適用した場合の譲渡所得の計算式は以下のようになります。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 100万円

低未利用土地等の100万円特別控除の主な要件は以下の通りです。

  1. 譲渡した者が個人であること。
  2. 譲渡の年の1月1日において、所有期間が5年を超えること。
  3. 譲渡価額の合計が500万円以内であること。
  4. 譲渡した物件が都市計画区域内にあること。
  5. 譲渡した物件が「低未利用土地等であること」および「譲渡後の土地等の利用」について市区町村長の確認がなされたものであること。

査定を依頼して価格が500万円以下であれば、ぜひ検討することをおすすめします。

【国税庁HP】

まとめ

いかがでしたか。
亡くなった親の家を売ることについて解説してきました。

少しでも家を高く売るコツとしては、何と言っても「複数の不動産会社に査定を依頼し、査定額を比較する」という事が不可欠です。
上手に「不動産売却 HOME4U」を活用して、あとで後悔しないようしっかり査定額を比較することから始めてください。

皆さんの売却活動が、スムーズに進み、高額売却に繋がることを願っています。

この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット