【土地の個人売買】リスクやトラブルを回避し安全に取引するには?

土地の取引は高額なことから、仲介を通さない個人間での売買は、買主も売主もリスクが大きいです。

土地を個人売買するのであれば、取引を個人売買に適したものに限定し、事前にリスクや起こりうるトラブルを知った上で着手することが望ましいといえます。

そこでこの記事では、個人間での土地の売買を検討している方に向けて、専門家の立場から以下のような事柄について解説していきます。

  • できるだけ安全に取引するための注意点
  • 個人売買のメリットとデメリット
  • 個人売買の流れ、売買契約書の種類、必要書類、トラブル

ぜひ最後までおつきあいいただき、後悔しない土地売買のための足固めをしてください。

土地売却や不動産売却について基礎から詳しく知りたい方は『土地売却の流れを7ステップで解説』『不動産売却の入門書』もご覧ください。

また、兄弟で土地を相続した際の対処法を把握しておきたい方は『土地を相続した時に上手に分ける5つの方法』もご覧ください。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.土地の個人売買は知り合い等に限定した方が良い理由

皆さんが売買を検討している相手は、お知り合いですか?それとも面識のない方ですか?

土地の個人売買はリスクが大きいですが、個人売買そのものが絶対にNGというものではなく、一部の取引では昔から行われているのも事実です。

ただ、専門家の立場からアドバイスさせていただくとしたら、土地の個人売買、特に売却については以下のようなケースに限定した方が良いと考えます。

  • 隣地所有者に隣地を売る場合
  • 借地人に底地(借地権が設定されている土地のこと)を売る場合
  • 買主が親族または親しい間柄の知り合いである場合
  • 関連会社間または、法人とその代表者個人が取引を行う場合

その他、土地に限らず「戸建て賃貸」や「区分の賃貸マンション」を現に借りている借主に売るようなケースの個人売買も大きな問題はないといえます。

これらの取引が個人売買でも良いとする理由は、「売主に対して敵対的な責任追及をしてくる可能性が低いこと」と「買主が物件のことを熟知していること」の2点があるためです。

不動産の売却では、売主に契約不適合責任と呼ばれる売主責任が課されます。
契約不適合責任とは、「契約の内容に適合しない場合の売主の責任」のことです。

契約内容とは異なるものを売ると、売主は売却後に買い主から追完請求(修補請求)や契約解除、損害賠償といった責任を追及される可能性があります。

買主が親しい間柄の知り合い等である場合、売却後に敵対的な売主責任を追及してくる可能性は低いといえます。

また、隣地所有者や借地人も元々物件のことをよく知っているため、売却後の敵対的な責任追及の可能性は低くなります。

このように、「知り合い」や「物件ことをよく知っている買主」への売却は、売主が敵対的な契約不適合責任を問われる可能性が低いことから、個人売買でも構わないと考えられます。

2.個人売買のメリット

「個人売買が良さそう」と小耳に挟んだ方の中には、どのようなメリットがあるのかをまだ具体的に把握していない方もいらっしゃるかと思います。
本章では個人売買のメリットについて、以下の2点を解説します。

  1. 仲介手数料が節約できる
  2. 相手が知り合いならスムーズに話が進む

それではひとつずつ見ていきましょう。

2-1.仲介手数料が節約できる

個人売買は、仲介手数料が節約できる点が大きなメリットです。
仲介手数料は取引額に応じて下表のように上限額が決まっており、個人売買であれば仲介手数料なしで取引することができます。

取引額 (売買金額) 速算式(上限額)
200万円以下 5%
200万円超から400万円以下 4%+2万円
400万円超 3%+6万円

仲介手数料には別途、消費税が発生します。

2-2.相手が知り合いならスムーズに話が進む

既に買主が決まっており、相手が知り合いならスムーズに話が進む点はメリットです。
法人とその代表者個人が取引を行う場合等であれば、わざわざ第三者の不動産会社を間に入れる必要はないといえます。

3.個人売買のデメリット

メリットがある一方で、高額な取引だからこそ注意しておきたいデメリットもあります。
本章では個人売買のデメリットについて、以下の2点を解説します。

  1. 適切な売り出し価格の設定が難しい
  2. 適切な売買契約書の作成が難しい

それではひとつずつ見ていきましょう。

3-1.適切な売り出し価格の設定が難しい

個人売買は不動産会社による査定を伴わないため、適切な売り出し価格の設定が難しいという大きなデメリットがあります。

売主と買主の双方が全く異議なく同意できる価格があれば良いのですが、そうでない場合はどちらかが妥協する形になります。
妥協が生じることで、その後の人間関係に影響を及ぼすケースも皆無ではありません。

また、個人から法人への売却の場合、「みなし譲渡所得」の問題も生じるのが面倒な点です。
みなし譲渡所得については、「第9章2 法人への売却でみなし譲渡所得が生じることがある」にて詳しく解説します。

3-2.適切な売買契約書の作成が難しい

個人売買では、適切な売買契約書の作成が難しいという点もデメリットです。
まず、適切なひな型を探さなければなりませんし、契約不適合責任を回避するために適切な文言を記載する必要もあります。
専門的なアドバイスをくれる人がいないため、取引のリスクが大きくなります。

4.個人売買が向かないケース

個人売買が向かないケースは、「知り合い」、「親族」、「物件のことをよく知っている買主」等以外の人に土地を売る場合です。

ゼロの状態から買主を見つけることは、大変手間がかかります。
専門的な内容をプロに相談できない個人売買は大金を支払う買主にとってリスクが大きく、仲介よりも買主を見つけることが困難となります。
また、適切な売り出し価格を設定することも難しいです。

仮に買主が見つかっても、全くの第三者は売主に敵対的な契約不適合責任を追及してくる可能性があります。

仲介であれば不動産会社が買主に対して重要事項説明を行うため、物件のことをよく知らない買主に対しても購入可否を判断できる適切な情報を与えることができます。

本来的に不動産会社は買主を保護する役割を果たしますが、同時に売主の説明責任も代行しているため、「売主の盾」の役割も果たしているのです。

よって、ゼロから買主を見つけなければならない売却の場合は、取引を安全に進めるためにも、不動産会社による仲介が適切といえます。

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土地の所在地や広さなど簡単な項目を入力するだけで、土地の売却が得意な不動産会社をシステムが自動でピックアップしてくれるので、手間なく優良なパートナーを見つけることができます。
複数の不動産会社の査定を受ければ、どの会社が一番高く売ってくれそうかを比較することも可能です。

ぜひ「不動産売却HOME4U」を上手に活用して、安心安全な土地の売買を行ってください。

5.土地を個人売買するときの流れ

リスクもしっかり踏まえた上で、個人売買を行うことになったら、どのような手順を踏めば良いのでしょうか?
本章では、その流れを解説します。

土地を個人売買するときの流れは、以下の通りです。

土地を個人売買するときの流れ

(1)売買条件の合意

個人売買では、まず買主との間で「売買代金」や「引渡時期」といった基本的な売買条件を合意します。

(2)売買契約書の作成

基本的な売買条件が確定したら、売買契約書を作成します。
不動産は金額が大きいため、トラブルを防ぐためにも書面による売買契約書を作成することが適切です。

また、売買契約書の写しは、売却の税金計算の根拠資料として確定申告時に提出が必要な書類となります。

(3)売買契約書の締結

売買契約書を作成したら、双方で署名押印して売買契約書を締結します。
通常の仲介の売買では売買契約の締結と引渡を別日にしますが、売主と買主が合意している場合には、引渡と同日でも構いません。

売買契約の締結と引渡の間を空ける場合、売主は契約の証拠として売買契約時に手付金(売買代金の10%程度)を買主から受領することが一般的です。

(4)引渡

引渡は買主が売買代金を支払います。
手付金を支払っていれば、手付金を除く残代金を支払います。
売主は、所有権移転に必要な書類を渡します。

(5)確定申告

売却した土地で税金が発生する場合、売却した翌年の2/16~3/15に確定申告を行います。
税金については、「第10章 知り合いに売ったら税金はどうなる?個人売買の税金」にて詳しく紹介します。

6.司法書士が必要となるケース

個人売買でも、抵当権の抹消や設定を伴う取引の場合は、司法書士が必要となります。
抵当権とは、債権者(銀行)がその抵当物件から優先的に弁済を受けることができる権利のことです。

売却する土地に抵当権が設定されているときは、引渡時に抵当権の抹消が必要です。
また、買主が購入する土地に抵当権を設定するときは、新たに抵当権の設定登記が必要となります。

抵当権の抹消や設定に必要な書類は、銀行が有しています。
銀行は予定通りに抵当権の抹消や設定ができないことを嫌がるため、プロの司法書士に依頼することを条件としてくることが一般的です。

抵当権の抹消や設定を伴わない取引であれば、司法書士に依頼せず売主と買主だけで所有権移転登記をすることはできます。

ただし、高額な取引となる不動産の売買では、引渡を不動産会社や司法書士等のプロの第三者に見届けてもらうことが昔からトラブル回避策とされています。

取引に不安がある場合には、抵当権の抹消や設定がなくても最低限、司法書士に立ち会ってもらうことをおススメします。

7.土地の売買契約書には2種類ある

土地の売買契約書には、「公簿売買」と「実測売買」の2種類があります。
「公簿売買」とは登記簿謄本に記載された地積をもって売買対象面積とする取引です。

それに対して、「実測売買」とは、広義の意味で実測面積をもって売買対象面積とする取引のことを指します。
狭義の意味で、売買契約後に実測を行い引渡時に過不足を精算する「実測精算」を伴う取引も実測売買と呼びます。

通常の宅地の取引では、買主が全ての境界が確定していることを購入条件とすることが多いことから、実測売買の契約書を用いることが一般的です。

ただし、個人売買の場合、買主が境界は確定していないことを了承して購入することもあります。
買主が了解している場合には、公簿売買の契約書を使っても構わないといえます。

土地の売買契約書は、「公簿売買」か「実測売買」で実測精算の有無等の記載内容が微妙に異なるため、当事者間でどちらの売買を採用するかを決めて、適切な売買契約書を選択することがポイントです。

8.土地の個人売買の必要書類

土地の個人売買における必要書類は、下表の通りです。

書類種別 書類名 取得方法
買主へ引き渡す書類 実測図(確定測量図が望ましい) 売り主が保有している
筆界確認書 売り主が保有している
越境の覚書 売り主が保有している
登記に必要な書類 権利書または登記識別情報通知書 売り主が保有している
印鑑証明書 市町村、300円(3ヶ月以内)
固定資産税評価証明書 市町村、300円〜400円
住民票 市町村、300円
本人確認書類 売主が保有している(司法書士に依頼する場合)
抵当権の抹消に必要な書類 銀行が用意
確定申告に必要な書類 売却した土地の謄本 法務局、窓口申請なら600円
売ったときの売買契約書の写し 売り主が保有している
買ったときの売買契約書の写し 売り主が保有している
譲渡費用の分かる領収書等 売り主が保有している

【買主へ引き渡す書類】
買主が境界を確定していることを購入の条件としている場合、「確定測量図」や「筆界確認書」、「越境の覚書」等を引渡します。

確定測量図とは、全ての境界が確定しているときに発行される実測図のことです。
宅地を第三者との間で取引する場合、通常は買主から確定測量図を求められます。

ただし、個人売買の場合、買主が確定測量図まで求めないことを合意していれば、確定測量図等の境界に関連する資料は不要となります。

【登記に必要な書類】

買主に所有権を移転する登記を行うために、「権利証または登記識別情報通知書」、「印鑑証明書」、「固定資産税評価証明書」、「住民票」が必要です。
司法書士に登記手続きを依頼する場合には、免許証等の「本人確認書類」も必要となります。

また、土地に抵当権が設定されている場合には、「抵当権の抹消に必要な書類」も必要です。
抵当権の抹消に必要な書類は、抵当権を設定している銀行が保有しています。

【確定申告に必要な書類】

確定申告には所有期間を証明するために「売却した土地の謄本」が必要です。
また、譲渡所得と呼ばれる利益の計算根拠を示すために、「売ったときの売買契約書の写し」や「買ったときの売買契約書の写し」、「譲渡費用の分かる領収書等」も必要となります。

9.土地を個人売買するときのトラブル

誰もが「トラブルなく、土地の売買を行いたい」と思いますよね?
本章では、土地を個人売買するときのトラブルについて、以下の3点を解説します。

  1. 売却後に契約不適合責任を問われてしまう
  2. 法人への売却でみなし譲渡所得が生じることがある
  3. 印紙の貼り忘れをしてしまう

しっかり理解を深めて、トラブル回避をしてください。
それではひとつずつ見ていきましょう。

9-1.売却後に契約不適合責任を問われてしまう

個人売買では、売却後に契約不適合責任を問われてしまうというトラブルがあります。
契約不適合責任を回避するには、売買契約書に懸念事項を容認事項としてきちんと記載し、買主の了解を得て売買することが必要です。

不動産会社が仲介に入った売買であれば、不動産会社が容認事項をきちんと記載してくれますので、売主も安心して取引をすることができます。

しかしながら、個人売買の場合、容認事項をどのように書けば良いのか分からず、契約書に記載しないまま取引してしまい、後で契約不適合責任を問われてしまうことがあります。

土地の売買で契約不適合責任が問われる可能性のある部分は、主に「土壌汚染」と「地下埋設物」、「境界・越境」の3点です。

これらの容認事項の記載例としては、以下のような記載方法が挙げられます。

(土壌汚染)
本件土地は土壌汚染の可能性はありますが、買主はそれを容認の上、本契約の売買代金で購入するものとし、買主は売主に対して契約不適合責任を問わないものとします。
(地下埋設物)
買主は、本物件土地に浄化槽が埋設されていることを容認のうえ、本物件を買い受けるものであり、本件について売主に一切の異議・苦情等を申し出ないものとします。
(境界・越境等)
本件土地は隣地境界の立合いおよび植栽・フェンス等の越境の是正は行わずに現況にて引渡しますが、売主は契約不適合責任を負わないものとします。

その他、土地の売買に関しては、「破損した擁壁」等も契約不適合責任を追及される要因の一つに挙げられます。

契約不適合責任が問われる可能性がある箇所は、個々の土地によって異なりますので、物件の状況をよく見た上で、買主と協議して容認事項を定めることがポイントです。

9-2.法人への売却でみなし譲渡所得が生じることがある

個人から法人へ売却する場合、みなし譲渡所得が生じることがあるというトラブルがあります。

みなし譲渡所得は、買主が「法人」であるときのみに生じる問題である点がポイントです。
譲渡所得とは、売った土地の売却益のことを指します。

みなし譲渡所得とは、時価よりも低い価格で売却したときに売主が「時価で売ったものとして」計算される譲渡所得のことです。

例えば、時価が1億円の土地を3,000万円で法人に売却した場合、売主は1億円で売ったものとして譲渡所得が計算されます。

著しく安い金額とは、個人から法人への売却の場合、「時価の2分の1に満たない金額」がみなし譲渡所得の発生基準です。

9-3.印紙の貼り忘れをしてしまう

個人売買では、印紙の貼り忘れをしてしまうというトラブルがあります。
不動産の売買契約書は印紙を貼らなければならない課税文書ですので、個人売買であろうがなかろうが売買契約書を作成したら印紙を貼り付けることが必要です。

売買契約書は、通常2通作成して売主と買主の双方で保管します。
印紙を貼り忘れると、例えば買主に何らかの理由で税務調査が入った場合、印紙が貼り付けられていないことが発覚すると売主まで過怠税が及ぶことがあります。

印紙税の脱税は自分に税務調査が入らなかったとしても、取引の相手方に税務調査が入ることで発覚する恐れがあるため、印紙は必ず貼らなければならないのです。

印紙税は、売買契約書に記載する金額に応じて下表のように決まっています。

契約書に記載する売買金額 本則 軽減税率※
1万円未満 200円 非課税
1万円以上10万円以下 200円 200円
10万円超50万円以下 400円 200円
50万円超100万円以下 1,000円 500円
100万円超500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円 10,000円
5,000万円超1億円以下 60,000円 30,000円
1億円超5億円以下 100,000円 60,000円
5億円超10億円以下 200,000円 160,000円
10億円超50億円以下 400,000円 320,000円
50億円超 600,000円 480,000円
金額の記載のないもの 200円 200円

※軽減税率は2022年3月31日までの売買契約書で適用

10.知り合いに売ったら税金はどうなる?個人売買の税金

本章では、「知り合いに土地を個人売買したときの税金」について解説します。
ここでは、「知り合い」のことを「他人の個人」と定義します。
「親族の個人」は含みません。

知り合いに土地を売却した場合でも、譲渡所得が生じれば所得税および住民税、復興特別所得税の税金が発生します。

「他人の個人」は「法人」ではないため、安く売ったとしても「みなし譲渡所得」は生じず、「実際に売った金額」で普通に税金の計算が行われる点がポイントです。

譲渡所得とは売却益のことであり、以下の式で計算されるものです。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1譲渡価額とは売却価額です。
※2取得費とは、土地については購入額になります。
※3譲渡費用は、測量費や印紙税、建物の解体費用など、売却に要した費用のことです。抵当権抹消に要した費用は譲渡費用にはなりません。

計算の結果、譲渡所得がマイナスの場合には、税金は発生しないことになります。
譲渡所得がマイナスの場合は、確定申告も不要です。

また、土地の取得費が不明な場合には、概算取得費と呼ばれるものを用います。
概算取得費は「譲渡価額の5%」です。

譲渡所得がプラスの場合、税金は譲渡所得に税率を乗じて求められます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

採用される税率は、所有期間によって2つに分かれます。
売却する年の1月1日時点において所有期間が5年超のときは「長期譲渡所得」、1月1日時点において所有期間が5年以下のときは「短期譲渡所得」の税率を用います。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

復興特別所得税の税率は、所得税に対して2.1%を乗じます。

相続した土地を売る場合、所有期間は親の所有期間も引き継ぎます。

親の所有期間が5年超であれば、相続後すぐに売っても長期譲渡所得の税率が使われることになります。

買主が知り合いの場合、仮に安く売ったとしても取得費が不明で概算取得費を用いる場合は売主に税金が生じます。

ここで、取得費の分からない土地を100万円で知り合いに売ったときの税金を計算してみます。

(条件)

譲渡価額:100万円
取得費:不明(概算取得費を用いる)
譲渡費用:0円(印紙代500円は発生しますが、簡略化のため無視します。)
所有期間:25年(長期譲渡所得が適用される)

税金は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 100万円 - 100万円×5% - 0円
     = 100万円 - 5万円 - 0円
     = 95万円

所得税 = 譲渡所得 × 税率
    = 95万円 × 15%
    ≒ 14.3万円

復興特別所得税 = 所得税 × 税率
        = 14.3万円 × 2.1%
        ≒ 0.3万円

住民税 = 譲渡所得 × 税率
    = 95万円 × 5%
    ≒ 4.8万円

税額 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
   ≒ 14.3万円 + 0.3万円 + 4.8万円
   ≒ 19.4万円

19.4万円は、譲渡価額100万円に対して約2割弱です。
取得費が不明で長期譲渡所得となる土地を売却した場合には、ざっくりいうと譲渡価額の2割弱の税金が生じます。

譲渡所得は取得費が判明していると小さくなるため、売却時の税金が節税できます。
そのため、土地を売却する場合には、最初に取得費が分かる「購入当時の売買契約書」等がないかどうかを確認することがポイントです。

尚、買主が個人の場合、相手が他人であっても無償譲渡や備忘価格(例えば1円など)による売却の場合、買主側に贈与税が生じるという問題が出てきます。

買主が個人の場合には、買主が法人のときのように「時価の2分の1未満を著しく低い価格」とする明確な基準はなく、贈与に該当するかどうかは取引に応じて個別判断となります。
買主に贈与税を発生させたくない場合には、ある程度の金額で売ることが必要です。

まとめ

いかがでしたか。
土地の個人売買について、解説してきました。

個人売買は、敵対的な責任追及を避けるため、買主を知り合い等に限定した方が安全です。

個人売買には「適切な売り出し価格が設定しにくい」、「適切な売買契約書の作成が難しい」といったデメリットがあるので、全くの第三者に土地を売る場合には仲介の利用をおススメします。

個人売買でも抵当権の抹消や設定が伴う場合には、司法書士に依頼することが必要です。
「売却後に契約不適合責任を問われてしまう」といったトラブルが生じないよう、くれぐれも慎重に行うようにしてください。

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