不動産売却の税金計算!知って得する5つの特例・控除まとめ

不動産売却 税金 計算

個人が不動産を売却すると次のような税金が発生します。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 消費税(不動産仲介手数料がある場合)
  • 所得税
  • 住民税
  • 復興特別所得税

印紙税や登録免許税など分かりやすい税金もありますが、所得税と住民税は、計算方法やルールが複雑なため、多くの人がわかりにくいと感じているようです。

不動産売却をした人全員が、所得税や住民税を払わなければいけないわけではありません。「譲渡所得」と呼ばれる所得が発生した場合のみ税金が発生するのが原則です。

さらに、譲渡所得が発生したとしても、一定の要件を満たす自宅を売却したときは税金を節税できる特例もあります。
節税の特例を使うと、税金が発生しないことも少なくありません

一方で、譲渡所得が発生しない場合であっても、一定の要件を満たす自宅を売却すると、税金が戻ってくるというお得な特例も存在します。

しかしながら、せっかくの特例も知らないままでいると損してしまうため、不動産の売却前はしっかりと税金のルールを知ることが重要です。

そこでこの記事では、特にルールが複雑な所得税と住民税など不動産売却時の税金の計算を中心に解説します。
併せて後半では自宅の売却で使える税金特例についてもご紹介します。

最後までお読みいただき、不動産売却の税金計算方法をきちんと理解いただき、損のない不動産の売却を進めていただければと思います。

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この記事の執筆者
竹内 英二
不動産鑑定士事務所および宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役を務める。 不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。
(株)グロープロフィット

1.税金のツボがわかる譲渡所得とは

不動産を売却した際、譲渡所得を計算する必要があります
この章では最初に譲渡所得について解説します。

1-1.譲渡所得とは?

個人の所得には、給与所得の他、譲渡所得、不動産所得、事業所得、山林所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得、雑所得と言った10種類があります。
このうち、不動産を売却したときに発生するのが「譲渡所得」です

譲渡所得とは、以下の計算式で表されるものになります。
計算の結果、譲渡所得がマイナス、つまり「譲渡損失」が発生する場合には税金は生じないことになります。

譲渡所得 = 譲渡価額※1 - 取得費※2 - 譲渡費用※3

※1 譲渡価額とは売却価額です。
※2 取得費とは、土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価額になります。取得費に関しては「第2章 取得費の計算方法」にて詳しく解説いたします。
※3 譲渡費用は、仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用のことを指します。

譲渡所得は「所得」という名前が付いている通り、発生すると所得税と住民税、復興特別所得税が増える形になります。

サラリーマンであれば、給与所得の所得に対し、所得税と住民税、復興特別所得税が課税されています。

不動産を売却した年に譲渡所得が発生すれば、普段の税金に所得税と住民税、復興特別所得税が加算されるということになります。

給与所得以外に譲渡所得のような所得が発生した場合には、確定した総所得を税務署に申告しなければならないため、確定申告を行う必要があります。
また譲渡所得の有無に関わらず、税金の特例を利用する場合には、確定申告は必要です。

譲渡所得の計算方法や税金については、こちらの記事で詳しく解説しています。

不動産売却のときに生じる所得と税金について

1-2.譲渡価額ってなに?

譲渡価額とは、基本的には売却価格のことです。

ただ、譲渡価額は「価額」と表記されており、厳密には売却「価格」のことではないという点がポイントとなります。

価額とは値段のことではなく、品物の値打ちに相当する金額を表す言葉です。
それに対して価格とは値段のことを指します。

具体的には、不動産売却で固定資産税の精算を行った場合には、売却価格に固定資産税精算金を加えたものが譲渡価額となります。

固定資産税および都市計画税は、1月1日時点の所有者に納税義務があります。
不動産の売却では、例えば7月1日に売却を行った場合、残りの半年分の固定資産税および都市計画税の相当額を買主からもらいます。

売主と買主との間で行うこの精算行為を「固定資産税の精算」と呼びます。
固定資産税の精算金は、残りの期間の固定資産税の立替払いの精算ではありません。

固定資産税の納税義務者は、あくまでも1月1日時点の所有者であるため、買主が納税すべきものではないのです。

すると、買主から受け取った固定資産税精算金は立替金という扱いにはならず、値上げという扱いになります。

譲渡価額は値打ちに相当する金額であるため、値上げに相当する固定資産税精算金は譲渡価額に加算します。

譲渡価額 = 売却価格 + 固定資産税精算金

尚、マンションなどの売却では管理費等を精算することがあります。
マンション管理規約にもよりますが、管理費用の支払義務者は基本的に所有者です。

管理費のように買主が支払うべきものを売主が払っている場合は、立替払いということになります。

立替払いの精算は、値上げではないので品物の値打ちに相当する金額とはならず、譲渡価額には含まれないことになります。

1-3.譲渡費用ってなに?

譲渡費用は仲介手数料等の売却に要した費用のことになります。

  • 売却の際の仲介手数料
  • 売却のために要した測量費
  • 売却に伴う広告費
  • 売却時の売買契約書に貼付けした印紙税
  • 売却に伴い支払った立退料
  • 売却時の建物の取壊し費用

尚、譲渡費用の中には、抵当権抹消関連費用は含まれません
抵当権抹消関連費用とは、具体的には「抵当権抹消の登録免許税」と「司法書士手数料」です。

抵当権抹消費用は、借入金を完済した際に不要となった抵当権を抹消するための費用であり、売却には直接関係のない費用と解釈されているためです。

譲渡費用に関しては、何を含めて、何を含めないのか税務署に個別に相談することをおススメします。

税務署は、あくまでも「売却するために直接かかった費用」としか説明していませんので、個別の費用は、都度、税務署に相談し判断を仰ぐ必要があります。

はじめて家を売る方もこれを読めば安心!
不動産売却を成功させるために知っておきたいポイントを全網羅
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抵当権抹消に必要な書類や費用・手順については、こちらの記事で詳しく解説しています。

抵当権抹消登記費用はいくら?自分で行う手順や注意点を解説!

2.これで攻略!取得費の計算方法

取得費とは、土地は購入価額、建物は購入価額から減価償却費を控除した額です。1-1.の譲渡所得の計算式でも簡単に登場した費用です。こちらで詳しく解説いたします。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用

取得費には以下のものも含みます。

  • 土地の購入価額
  • 建物の購入価額から減価償却費を控除したもの
  • 購入の際の仲介手数料
  • 購入の際に支払った立退料・移転料
  • 購入時の売買契約書に貼付けした印紙税
  • 購入時の登録免許税や司法書士へ支払った登録手数料
  • 購入時の不動産取得税
  • 購入時の搬入費や据付費 (例えばエアコンなどの搬入や取付工事の費用)
  • 購入時の建物等の取壊し費用

譲渡所得の計算では、取得費を求めることがポイントとなるため、ここでは取得費について詳しく解説していきます。

2-1.減価償却費の求め方

減価償却費とは、建物の取得原価を建物の法定耐用年数に渡り計画的・規則的に費用配分する会計の手続き上で発生する費用です。

非事業用の減価償却費は以下の計算式で求めます。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

耐用年数と償却利率は、建物の構造によって異なります。

   非事業用※2 事業用※3
建物構造 耐用年数 償却率 耐用年数 償却率
木造 33年 0.031% 22年 0.046
軽量鉄骨※1 40年 0.025% 27年 0.038
鉄筋コンクリート造 70年 0.015% 47年 0.022

※1 軽量鉄骨とは、鉄骨の厚さが3㎜超4㎜以下のものを指します。
※2 非事業用とはマイホームやセカンドハウスを売却するときに利用します。
※3 事業用とはアパートのように居住用の賃貸物件を売却するときに利用します。

減価償却は建物のみに行われ、土地に対しては行われないことがポイントです。
そのため、不動産の購入額は、まず土地価格と建物価格に分ける必要があります。

取得費は、減価償却後の建物価額を求め、土地購入価額と合算した物となります。

取得費 = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)

減価償却費は、累計額が建物購入代金の95%までが最大です。

95%まで償却された建物はそれ以上償却されないため、建物の取得費は建物購入価額の5%ということになります。

例えば、非事業用の木造建物の建物購入価額が1,000万円だった場合、50万円となるまで償却され、それ以降の建物取得費はずっと50万円として計算されます。

また、個人が自宅を売却する場合で、途中から自宅を他人に貸して売却するようなケースがあります。
この場合、耐用年数と償却率は非事業用から事業用に切り替わることになります。

具体的に、以下のようなケースで減価償却費を計算してみます。

償却限度額95%以内で売却するケース

建物:木造
建物購入価額:3,000万円
利用状況:築15年目まで自宅として利用

減価償却費 = 非事業用の減価償却費
      = 3,000万円 × 0.9 × 0.031 × 15年
      = 1,255.5万円 <= 2,800万円(=3,000万円 × 0.95)

建物取得費 = 3,000万円 - 1,255.5万円
      = 1744.5

償却額限度額95%超で売却するケース

建物:木造
建物購入価額:3,000万円
利用状況:築40年目まで自宅として利用

40年間の減価償却累計額 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
              = 3,000万円 × 0.9 × 0.031 × 40年
              = 3,348万円 > 2,850万円 (償却限度額95%を超えていることが判明)

よって、減価償却費は最大額である建物購入代金の95%を採用します。

減価償却費 = 非事業用の減価償却費
      = 3,000万円 × 0.95
      = 2,850万円

建物取得費 = 3,000万円 - 2,850万円
      = 150万円

2-2.土地と建物の内訳価格が分かっている場合の計算シミュレーション

取得費は、建物だけ減価償却を行いますので、原則、土地と建物の購入価額の内訳が分かっている必要があります。
ここでは土地と建物の内訳価格が分かっている場合の計算について解説します。

取得費は、土地取得費と建物取得費の合算です。
取得費を式で表すと以下の通りになります。

取得費 = 土地取得費 + 建物取得費
    = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)

更地の売却の場合には、取得費は土地購入価額のみになります。
仮に建物を取り壊して売却する場合には、取り壊し費用が「譲渡費用」に計上されます。

以下に取得費の計算方法の具体例を示します。

売却した不動産の条件

物件種別:マイホーム(非事業用)
建物構造:木造(耐用年数33年、償却率0.031)
土地購入価格:4,000万円
建物購入価格:3,000万円
購入日:2000年1月に新築竣工
売却日:2019年3月に売却引渡

取得費の具体的な計算方法は以下のようになります。

最初に償却期間を求めます。
償却期間は、引渡日を基準とし、経過年数6ヶ月以上の端数は1年、6ヶ月未満は切り捨てて計算します。
売却の引渡は2019年3月、購入の引渡は2000年1月であり、19年2ヶ月であるため経過年数は19年と計算します。

減価償却費は以下の通りです。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
      = 3,000万円 × 0.9 × 0.031 × 19年
      = 1,590.3万円

ゆえに、取得費は以下のようになります。

取得費 = 土地取得費 + 建物取得費
    = 土地購入価額 + (建物購入価額 - 減価償却費)
    = 4,000万円 + (3,000万円 - 1,590.3万円)
    = 5,409.7万円

2-3.購入価額が不明の場合の計算は?

契約書を紛失してしまっている場合や相続で引き継いだ古い不動産を売却する場合等、購入価額が不明の場合があります。

購入価額が不明の場合には、概算取得費」と呼ばれるものを用いるのが一般的です。
概算取得費とは、「譲渡価額の5%」となります。

概算取得費は、「譲渡価額の5%」のように計算して差しつかえないとされているだけであり、法的に強要されているものではありません。

しかしながら、5%に代わる合理的な計算が難しく、実際にはほとんどのケースで概算取得費が用いられています。

概算取得費 = 譲渡価額 × 5%

また、取得費に関しては、平成12年(2000年)11月16日の国税不服審判所で判決されて「合理的な計算方法」というものがありますので、参考までに紹介させて頂きます。

土地の取得価額は、一般財団法人日本不動産研究所が公表している市街地価格指数から算定する。
建物の取得価額は、一般財団法人建設物価調査会が公表している着工建築物構造別単価から算定する。

これらの統計資料は有料で購入する等の手間がかかり、簡単に求められるものではありません。
また、上記の方法はあくまでも一判決であって、いかなるケースでも認められるとは限りません。

判決の方法を利用する場合には、税理士や税務署に相談して利用の可否を判断するようにして下さい。

尚、比較的最近に購入した不動産であれば、売主または当時仲介した不動産会社が売買契約書の写しを残している可能性があります。
売買契約書のコピーが入手できれば、税務署に対して購入額を証明することができます。

契約書を紛失してしまい、取得費が分からない場合には、念のため売主や不動産会社に当時の売買契約書を残していないか確認してみましょう。

2-4.土地だけ購入価額が不明の場合の計算は?

相続で引きついた土地の上に、注文住宅やアパート等を建てた場合、建物の購入価額は分かっても、土地だけ購入価額が不明の場合があります。

土地だけ購入価額が不明の場合は、まず建物取得費を通常通り求め、譲渡価額から建物取得費を引いて5%を乗じたものを土地取得費とします。

土地だけ購入価額が不明の場合の取得費の求め方

土地の取得費 = (譲渡価額 - 建物取得費) × 5%

取得費 = 土地の取得費 + 建物取得費
    = (譲渡価額 - 建物取得費) × 5% + 建物取得費
    = 譲渡価額×5% + 建物取得費×95%

3.税率ってどれくらい?

この章では税率についてご紹介します。
税金は、譲渡所得に対して税率を乗じて求めます。

税金 = 譲渡所得 × 税率

譲渡所得は他の所得とは分離して税金が計算される「分離課税制度」が採用されています。

給与所得で発生する所得税等は、所得が大きいほど税率が上がる累進課税制度が採用されます。

所得税は累進課税制度が原則ですが、不動産売却では譲渡所得がとても大きくなる可能性もあるため、累進課税を適用してしまうと、その年だけ極端に税率が高くなってしまうこともあり、税負担が過剰に重くなる可能性があります。

そこで、譲渡所得に関しては、他の所得とは合算せずに分離して税金が計算されます
このように他の所得とは分離して税金を計算する制度を分離課税制度と呼んでいます。

譲渡所得に対する税率は不動産の所有期間によって決まります。
所有期間は、不動産を譲渡した1月1日時点において判定されます。
また相続した不動産は、被相続人(他界した人)の取得日を引き継ぎます。

1月1日時点において所有期間が5年超の場合は長期譲渡所得、1月1日時点において所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得と分類されます。

それぞれの税率は以下の通りです。

所得の種類 所有期間 所得税率 住民税率
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%
長期譲渡所得 5年超 15% 5%

まず上記の税率でそれぞれ計算し、さらに2037年までは「所得税」に対して一律2.1%をかけた金額が「復興特別所得税」として納税額にプラスされます。

ここで以下の条件で税金の計算を行ってみましょう。

前提条件

譲渡価額:5,000万円
取得費:3,850万円
譲渡費用:150万円
購入日:2000年12月
売却日:2019年3月

所有期間は2019年1月1日時点において5年を超えていますので長期譲渡所得となります。
税金の計算方法は以下の通りです。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
     = 5,000万円 - 3,850万円 - 150万円
     = 1,000万円

所得税 = 譲渡所得 × 長期譲渡所得に係る所得税率
    = 1,000万円 × 15%
    = 150万円

復興特別所得税 = 所得税 × 復興特別所得税率
        = 150万円 × 2.1%
        = 3.15万円

住民税 = 譲渡所得 × 長期譲渡所得に係る住民税率
    = 1,000万円 × 5%
    = 50万円

税金合計 = 所得税 + 復興特別所得税 + 住民税
     = 150万円 + 3.15万円 + 50万円
     = 203.15万円

少し複雑な計算となりますが、譲渡所得さえわかれば、順番に計算式に当てはめるだけで税金が計算できます。
しかし、ここで出た税金合計が実際に納めるべき税額というわけではありません。
特例を利用することで、税金が少なくなったり、払わなくてもよくなったりする可能性があるからです。

4.お得な特例がいっぱいの居住用財産

ここからは、特例が多い居住用財産とその特例について解説します。
居住用財産とは、自分が居住の用に供している家屋とその敷地のことです。
言い換えると、自宅(マイホーム)のことになります。

賃貸アパートや賃貸ワンルームマンションは、自分が住んでいるわけではないので居住用財産ではありません。

居住用財産は、以下のいずれかのものが該当します。

居住用財産の定義

  1. 現に居住している家屋やその家屋と共に譲渡する敷地の譲渡の場合
  2. 転居してから3年後の12月31日までに、居住していた家屋やその家屋と共に譲渡するする敷地の譲渡の場合(この間に貸付や事業用に供していても適用となる)
  3. 災害などにより居住していた家屋が滅失した時は、災害のあった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その敷地だけ譲渡する場合
  4. 転居後に家屋を取り壊した場合には、転居してから3年後の12月31日までか、取り壊し後1年以内か、いずれか早い日までに譲渡する場合(取り壊し後にその敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりすると適用外となる)

転居した後も3年後の12月31日までに売却すれば居住用財産です。
その間、人に家を貸しても居住用財産ということになります。

例えば老人ホームに入所した後、その後、他人に家を貸して3年以内にそのまま売却するケースは居住用財産に該当します。

また、取り壊しても、転居してから3年後の12月31日までか、または取り壊し後1年以内か、いずれか早い日までに売却した場合も居住用財産です。
ただし、取り壊し後に駐車場等で事業の用に供した場合には居住用財産にはなりません。

居住用財産に該当し、さらに他の条件を満たすと、以下の5つの特例が利用できます。

譲渡所得が発生した場合の特例

  1. 3,000万円の特別控除
  2. 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え特例

譲渡損失が発生した場合の特例

  1. 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  2. 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

上記の特例は全て利用できるわけではなく、「1.3,000万円の特別控除」と「2.所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」の重複適用の組合せ以外は併用して利用することはできません。
それぞれの特例で最も有利なものを選んで適用することになります。

譲渡所得が発生した場合の特例は、節税ができる特例です。

それに対して譲渡損失が発生した場合の特例とは、税金の還付を受けることのできる特例になります。
譲渡損失とは、譲渡所得がマイナスになることを指します。

また、居住用財産の売却であっても、以下のような売買では特例を利用することができません。

  1. 特定の親族や同族会社への譲渡では適用することができません。

(1) 配偶者、直系血族(親、子、孫など)、生計を一にする親族、譲渡後にその家屋に居住する親族
(2) 本人、配偶者、直系血族、生計を一にする親族が主宰している同族会社

  1. 居住用財産の特例は、3年に1度だけしか適用を受けることができません。

尚、特例を利用するには、確定申告が必要です。
節税特例の結果、税金を納める必要がなくても、特例を使うためには確定申告が必要となります。

譲渡損失が発生した場合は、本来なら確定申告は不要です。
ただし、譲渡損失が発生した場合の特例を利用する場合には確定申告が必要となります。

4-1.「3000万円特別控除」

3000万円特別控除とは、譲渡所得の計算で3,000万円を控除することができる特例です。

譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円

3000万円特別控除は居住用財産の売却であれば利用可能です。
所有期間は無関係に使えますので、購入して次の年に売却するようなケースでも使えます。

3000万円特別控除の適用の結果、譲渡所得がマイナスとなった場合、譲渡所得はゼロとして扱われます。

マイナスになっても譲渡損失の扱いにはならず、「ゼロ」であるため、譲渡損失が発生した場合の特例の二重適用はできません。

3000万円控除については、こちらの記事で詳しく解説しています。

居住用財産の3,000万円特別控除とは

4-2.所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例

所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例とは、税率を小さくしてくれる特例です。

3000万円特別控除と重複適用できる特例ですので、3000万円特別控除を適用してもなお譲渡所得がプラスとなるようなケースではじめて使います。

特例の適用要件は、「居住用財産で所有期間が10年超となるもの」に利用できます。
特例を適用すると、税率は以下のようになります。

譲渡所得金額※ 所得税 住民税
6,000万円以下の部分 10% 4%
6,000万円超の部分 15% 5%

 ※譲渡所得は、3,000万円の特別控除の適用後の譲渡所得が対象です。

さらに2037年までは「所得税」に対して一律2.1%をかけた金額が「復興特別所得税」として納税額にプラスされます。

4-3.特定の居住用財産の買換え特例

特定の居住用財産の買換え特例は、買い替えを前提としています。
税法上、買い替えの表記は「買換え」となります。

特定の居住用財産の買換え特例は、買換えで、今の家を売却した金額(譲渡価額)よりも、新しく購入した家の方が金額(取得価額)の方が高い場合、課税されないという特例になります。

買換え資産の関係 課税の有無
譲渡価額 > 取得価額 課税される
譲渡価額 ≦ 取得価額 課税されない

 買い替えの売却で譲渡所得が発生した場合、「3,000万円特別控除」か「特定の居住用財産の買換え特例」のいずれか有利な方を選択することになります。

特定の居住用財産の買換え特例では、売却する不動産と購入する不動産が以下のような要件を満たすことが必要です。

売却する居住用財産の要件

次に掲げる居住用財産で、その譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えているもので、譲渡にかかる対価が1億円以下のもの

  1. 現に自分が住んでいる住宅で、居住期間が10年以上のもの
  2. 以前に自分が住んでいた「1」の住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までに譲渡されるもの
  3. 「1」や「2」の住宅及びその敷地
  4. 災害によって「1」の住宅が滅失した場合において、その住宅を引き続き所有していたとしたならば、その年の1月1日における所有期間が10年を超えるその住宅の敷地

購入する居住用財産の要件

  1. 譲渡資産を譲渡した年の前年の1月1日から譲渡した年の12月31日までの間に居住用の住宅やその敷地を取得すること
  2. 譲渡資産を譲渡した年の翌年12月31日までの間に、取得した住宅を居住の用に供すること、または供する見込みであること
  3. 取得する住宅は、床面積が50㎡以上であること
  4. 買換え資産が中古の耐火建築物である場合には、その中古耐火建築物が新築後25年以内であるか、または新耐震基準に適合することが証明されたものであるか、もしくは既存住宅売買瑕疵担保責任保険に加入していること
    買換え資産が非耐火建築物である場合には、新築後25年以内であるか、または地震に対する安全基準を満たすものであること
  5. 取得する敷地は、その面積が500㎡以下であること

4-4.居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、譲渡損失が発生した場合に源泉徴収税額が戻ってくる特例です。

譲渡した年に発生した損失を翌年以後3年間にわたり、他の給与所得等と「損益通算」することができます。

損益通算できる損失の額は、以下の式で計算される譲渡損失です。

譲渡損失 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 < ゼロ

損益通算とはプラスの給与所得にマイナスの譲渡所得を合算し、全体の所得を下げる手続きです。

給与所得から譲渡所得の損失分がマイナスされるため、全体の所得が下がります。
所得が下がれば、給与所得を前提に天引きされていた所得税が払い過ぎていることになり、払い過ぎた源泉徴収税の還付を受けることができます。

特例の適用を受けるために、売却する資産および購入する資産は以下の要件を満たす必要があります。

売却する資産の定義

平成31年12月31日までの間に譲渡される自己の居住の用に供する家屋またはその敷地で、その譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、次の「1」から「4」のいずれかに該当するものであること

  1. 現に自分が住んでいる住宅
  2. 以前に自分が住んでいた住宅で、自分が住まなくなった日から3年後の12月31日までの間に譲渡されるもの
  3. 「1」や「2」の住宅及びその敷地
  4. 災害によって滅失した「1」の住宅の敷地で、その住宅が滅失しなかったならば、その年の1月1日における所有期間が5年を超えている住宅の敷地
    ただし、その災害があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されるものに限る。

購入する資産の定義

  1. 譲渡資産の譲渡した年の前年の1月1日から翌年12月31日までの間に取得される自己の居住用に供する家屋またはその敷地
  2. その家屋の居住部分の床面積が50㎡以上であること
  3. その取得の日から取得した年の翌年の12月31日までの間に自己の居住の用に供すること、または供する見込みであること
  4. 繰越控除を受けようとする年の12月31日において、買換え資産に係る住宅借入金等(返済期間10年以上のローン契約等によるもの)の金額を有していること

4-5.居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、基本的に前節で紹介した特例と同じですが、オーバーローンの場合に利用できる特例です。
買い替えは要件としておらす、売って終わるパターンで使えます。

オーバーローンとは、売却した不動産の住宅ローン残高が売却価額よりも大きいことをいいます。
それに対して、売却した不動産の住宅ローン残高が売却価額よりも小さいことをアンダーローンといいます。

損益通算できる損失の限度額は、譲渡損失ではなくオーバーローンの額です。

損益通算できる損失の額 = 住宅ローンの残高 - 譲渡価額

売却する不動産の要件は、前節の「4-4.居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」における売却する資産の定義と同じです。

さらに売買において、以下の3つの要件が必要となります。

売買に必要な要件

  1. その個人がその譲渡にかかる契約を締結した日の前日においてその譲渡資産に係る一定の住宅借入金等の金額を有すること
  2. 繰越控除する各年分の合計所得金額が3,000万円以下であること
  3. 譲渡先が、その個人の配偶者その他特別の関係がある者ではないこと

この特例はオーバーローンの金額が損益通算できる損失の限度額となるため、譲渡損失が発生してもアンダーローンの人は利用できません。

オーバーローンで売却した場合には、損益通算をすることによって、少しでもオーバーローン部分を所得税還付で取り戻せるという特例となります。

4-6.住宅ローン控除との併用はどうなるの?

買い替えの場合、購入する不動産で住宅ローン控除を利用する場合があります。

住宅ローン控除とは返済期間が10年以上のローンを組んで住宅を購入した際、自分が住むことになった年から一定の期間に渡り、所定の額が所得税から控除される制度です。
住宅ローン控除は、サラリーマンにとって最大の節税策ともいわれています。

譲渡所得が発生した場合、節税系の特例は住宅ローン控除と同時に併用することができません

例えば、買い替えにおいて、売却で3,000万円特別控除を使い、購入で住宅ローン控除も使うという重複適用はできないということになります。
どちらか一方を選ぶことになり、より節税効果の高い方を選択することになります。

一概には言えませんが、一般的には住宅ローン控除の方が節税効果は高いことが多いため、売却では税金を払い、購入では住宅ローン控除を使うケースが多いです。

一方で、譲渡損失が発生した場合の税金還付を受けられる特例は住宅ローン控除と併用することは可能です。

居住用財産の特例と住宅ローン控除との併用できない特例を挙げると以下の通りになります。

住宅ローン控除と併用できない特例

  1. 3,000万円の特別控除
  2. 所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換え特例

買い替えの売却で譲渡所得が発生する場合には、住宅ローン控除の利用とどちらが得かを考慮した上で、一方を選択するようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか。
不動産売却における税金計算について見てきました。

不動産売却における税金は、まず譲渡所得を計算することが必要です。
譲渡所得を求めるには、取得費の計算がポイントとなります。

譲渡所得は他の所得とは分離して税率を乗じる分離課税方式を採用します。
税率は所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分かれます。

また、居住用財産を売却した場合、特例が5つあります。
節税系の特例は住宅ローン控除とは併用できないため、買い替えの際は、選択適用することになります。

税金の仕組みをしっかりと理解し、損をしない不動産売却を目指しましょう。

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