工業地域とは?準工業地域、工業専用地域の違いや、住むメリット・デメリットを紹介

工業地域にある住宅 メリット・デメリット

用途地域の一つである工業地域には、あらゆる工場に加え、住居や店舗も建てることが可能です。工業地域は土地や物件の価格が安い反面、工場が近いことでさまざまなデメリットも生じます。

本記事では、用途地域の概要や、工業地域に建てられる建物、準工業地域との違い、工業地域に住むメリット・デメリットについて解説します。

この記事を読むと分かること
  • 工業地域の概要、建てられる建物と建築制限
  • 工業地域に住むメリット・デメリット
  • 工業地域の不動産の売却可否
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1.工業地域とは?基礎知識をおさらい

上空から見た風景

はじめに、用途地域と工業地域の概要のほか、その他の工業系地域との違いについて解説します。

1-1.用途地域とは?

用途地域とは、計画的に市街地を形成するために、用途に応じて分けた13の地域のことで、建てられる建物の種類や大きさなどに制限があります。

用途地域が設定されるのは、都市計画法に基づき都道府県が制定する「都市計画区域」です。都市計画区域とは、計画的に市街地化または保全を進める地域のことを指します。

都市計画区域

用途地域を設定する目的は、同じ種類の建物を集中させ、生活環境や利便性を高めることです。例えば、大きな工場や商業施設がある地域に住居を建てると、日当たりの悪さや騒音などで住みにくい環境となってしまいます。無秩序に建物が建たないよう、用途地域により建てられる建物を制限するのです。

用途地域には「住居系」「商業系」「工業系」の3つの区分があり、さらに13種類の用途に細分化されます。

区分 用途地域
住居系 第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
田園住居地域
商業系 商業地域
近隣商業地域
工業系 工業地域
準工業地域
工業専用地域

参考:“用途地域”. 国土交通省. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

1-2.工業地域とは?

工業系の用途地域である「工業地域」とは、主に工場における業務の利便を増進することを目的とした地域です。

工業地域では、工場と住居・店舗が混在しているのが特徴です。なお、どのような種類の工場でも建てられますが、学校や病院、一部の店舗などの建設は認められません。

参考:“都市計画制度の概要”. 国土交通省

工業地域に建てられる建物、用途制限は次のとおりです。

建物
住居 住宅、共同住宅、寄宿舎など
兼用住宅
(非住宅部分の床面積が50平米以下、かつ延べ床面積の1/2未満)
医療・福祉 老人ホーム、老人福祉センター
身体障害者福祉ホーム、児童更生施設など
公共施設 図書館
寺院、神社、教会
公衆浴場
診療所
保育所など
店舗 床面積が1万平米以下の店舗
ボーリング場
水泳場
ゴルフ練習場
バッティング練習場
カラオケボックス(床面積1万平米以下)など
風俗施設 麻雀(床面積1万平米以下)
パチンコ屋(床面積1万平米以下)
馬券投票券販売所、場外車券場(床面積1万平米以下)など
工場 すべての種類
倉庫 倉庫業倉庫
自家用倉庫

参考:“みらいに向けたまちづくりのために-都市計画の土地利用計画制度の仕組み-”. 国土交通省. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

ただし、用途地域では、建物の用途や面積の制限が設けられています。工業地域における建物の制限は次のとおりです。

制限 数値
建ぺい率(%) 50、60
容積率(%) 100、150、200、300、400
道路斜線制限(m) 適用範囲:20、25、30、35
勾配:1.5
隣地斜線制限(m) 立上り:31
勾配:2.5
北側斜線制限 制限なし
絶対高さ制限 制限なし
日陰規制 制限なし
最低敷地面積 自治体で異なる

参考:
“みらいに向けたまちづくりのために-都市計画の土地利用計画制度の仕組み-”. 国土交通省
“建築基準法(集団規定)”. 国土交通省. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

1-3.工業地域と準工業地域、工業専用地域の違い

準工業地域とは、工業地域と同じ工業系の用途地域です。すべての工場を建てられる工業地域とは異なり、準工業地域では危険性や、環境悪化の恐れがある工場は建てられません。

一方、工場以外の住居や店舗に関しては、工業地域と比べて建物の規制が緩やかです。例えば、工業地域では建設が禁止されている以下の建物は、準工業地域では建てられます。

建物
学校 幼稚園、小学校、中学校、高等学校
大学、高等専門学校、専修学校
店舗 床面積が1万平米を越えるもの
ホテル、旅館
カラオケボックス、麻雀屋、パチンコ屋(床面積1万平米超)
劇場、映画館、演芸場、観覧場、ナイトクラブ、キャバレーなど
公共施設 病院

参考:“みらいに向けたまちづくりのために-都市計画の土地利用計画制度の仕組み-”. 国土交通省. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

準工業地域における、建物の建築制限は次のとおりです。

制限 数値
建ぺい率(%) 50、60、80
容積率(%) 100、150、200、300、400、500
道路斜線制限(m) 適用範囲:20、25、30、35
勾配:1.5
隣地斜線制限(m) 立上り:31
勾配:2.5
北側斜線制限 制限なし
絶対高さ制限 制限なし
日陰規制 制限なし
最低敷地面積 自治体で異なる

参考:
“みらいに向けたまちづくりのために-都市計画の土地利用計画制度の仕組み-”. 国土交通省
“建築基準法(集団規定)”. 国土交通省. (参照2024-03-25)をもとに、HOME4Uが独自に作成

なお、同じ工業系の用途地域である「工業専用地域」では、学校や病院だけではなく、住宅も一切建てられません。

2.工業地域に住むメリット・デメリット

住宅イメージ

工業地域に家を建てる場合、工業地域ならではのメリットとデメリットを把握しておきましょう。

2-1.工業地域に住むメリット

工業地域は住居系の用途地域と比べ、土地の価格が安い傾向にあります。工業地域は工場を建設する需要が高く、住居や店舗の需要の低さが価格に反映されるためです。

住居系の用途地域と比べて建築制限が厳しくないこともあって、工業地域にある物件は、比較的手頃な価格で購入できる可能性があります。

さらに、工業地域は工場に囲まれている反面、近隣の工場に勤務する方は通勤時間を短縮できるメリットもあります。

2-2.工業地域に住むデメリット

工業地域には危険性の高い工場も建てられるため、基本的に人が住むことは考慮されていないのが実情です。

工業地域の住環境が劣る理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 大型車両の交通量が多いため、騒音や振動に悩まされる恐れがある
  • 夜間の人通りが少なく、治安の悪さにつながる
  • 日照規制がないため、近隣に建物が建つと日当たりが悪くなる
  • 有害物質で土壌が汚染されている危険性がある

工業地域よりも利便性が高く、住みやすい環境を求める場合は「準工業地域」に住むのがおすすめです。準工業地域も比較的土地代が安く、学校や病院も建設できるため、工業地域よりも住みやすい環境といえます。

また、準工業地域には危険物を扱う工場は建てられないため、工業地域と比べて周辺の環境悪化のリスクも低いでしょう。

ただし、工業系の地域であることには変わりなく、工場が発する騒音や臭い、交通量の多さなどの問題が生じやすい点は留意が必要です。

3.工業地域の物件は売れる?

売物件

前述のとおり、工業地域は基本的に人が住むための土地ではありません。そのため、住居用の不動産として売却するハードルはやや高いといえるでしょう。

どのような工場でも建設できる工業地域は、今までに稼働していた工場によって土壌が汚染されている可能性も否定できません。土壌汚染が見つかり、土壌改良の費用がかさむと売却益が出ないことも考えられます。

さらに、工業地域は日影規制(にちえいきせい・ひかげきせい)の対象外であるため、日当たりが悪くなる場合があります。日影規制とは、一定時間以上の日影が生じないように、建物の高さを制限する制度のことです。

日影規制について詳しく知りたい方は「日影規制とは?概要やケース別の考え方をわかりやすく解説」を確認してみてください。

日影規制が適用される用途地域の場合、建物の高さに制限がかかる反面、一定の日当たりを確保できます。しかし、日影規制がない工業地域では、最初は日当たりが良い土地であっても、周囲に高い建物が建つと土地全体が日陰になる可能性があります。

このような事情が影響し、工業地域の物件価格は比較的安くなるのが一般的です。少しでも有利な条件で売却するには、実績が豊富で信頼のできる不動産会社を探すことが重要です。

まとめ

工業地域は、居住系の用途地域と比べて土地を安く購入できる点がメリットです。しかし、どのような工場でも建てられるため、騒音問題や交通事故、土壌汚染などのリスクが高いというデメリットもあります。

工業地域は売れにくい土地であるからこそ、自身の所有する物件を売却するのに最適な不動産会社を選ぶことが大切です。工業地域にある土地や建物の売却を検討している方は、NTTデータグループが運営する不動産一括査定サイト「不動産売却 HOME4U (ホームフォーユー)」をぜひご活用ください。

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